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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻4号

1972年04月発行

雑誌目次

特集 第25回日本臨床眼科学会講演集(その3)

第25回臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.438 - P.438

講演
〈特別講演〉
緑内障診療上の二,三の問題点…………………………河本正一・他…444
糖尿病性網膜症に対する光凝固療法の反省……………福田雅俊・他…459

特別講演

緑内障診療上の二,三の問題点

著者: 河本正一 ,   景山万里子 ,   遠藤耀子 ,   神力忍 ,   山田栄一 ,   木村俊子

ページ範囲:P.444 - P.458

 緑内障診療上で,最も重要なのは眼圧測定である。まずこの問題をとり上げる。

学会原著

糖尿病性網膜症に対する光凝固療法の反省

著者: 福田雅俊 ,   小暮正子 ,   水落笙子 ,   加藤忍 ,   土方清乃 ,   戸張幾生 ,   武尾喜久代

ページ範囲:P.459 - P.464

はじめに
 あらゆる薬物療法に抵抗して進行し,糖尿病患者に失明の恐怖を与える増殖性の糖尿病性網膜症(以下網膜症と略す)に対しては,Meyer-Sch—wickerathにより開発された光凝固療法の導入により,積極的治療への一歩がふみ出されたことは事実である。しかしこれはあくまで対症療法であり,根本的治療への途はまだ前途ほど遠いものであることも事実であり,なお多くの未解決の問題が網膜症の治療に残されている。
 ともあれ,本網膜症に対する光凝固療法の発表は,近年流行といつてもよいほど多く海外の専門誌上を賑わし,国内の追試発表もすでに少なくない。しかもそのほとんどが本症の早期に対して適用すれば有効であり,増殖性変化の加わつた病期のものにはほとんど無効であるという結論で一致しているが,筆者ら1)は本療法が,外科的療法とも呼ぶべき瘢痕を残す治療であり,みだりに乱用すべきではないこと,増殖性病変の発生を極力早期に発見して,すみやかに本療法を適用すべきこと,重症網膜症にも有効なことなどを昨年臨眼グループディスカッションで発表したが,以後さらに症例を加え,経験を重ねるに及び,より多くの反省点を見出すことができた。そこで今回は,重症の網膜症に対する本療法の成績と,特に術後の合併症について報告し,今後の本療法の指針の一つとしたい。

1971年東京都に発生した光化学スモッグ(オキシダント)公害による眼症状とその治療について

著者: 蒲山久夫 ,   鈴木弘一 ,   石崎百合子

ページ範囲:P.465 - P.468

緒言
 スモッグというのはsmoke (煙)とfog (霧)とをつないだ通称語で気象学の学術用語ではない。光化学スモッグとは,自動車の排気ガスや工場などの排出ガス中の窒素酸化物,オレフィン系炭化水素あるいは亜硫酸ガスその他が上空の強い紫外線の作用で光化学反応を起こした結果生ずる酸化性物質を総称したもので,オゾンのほか過酸化物,亜硫酸,アルデヒド類,その他の酸類が含まれる1)2)。黄白色の煙霧として眼に認められることもあるので,光化学スモッグの名がついたが,オキシダントとも呼ばれる。オキシダントは通常紫外線の強い夏期の無風快晴時の昼間に発生し,その作用は植物を枯死させるほか,人体に対して眼および咽喉粘膜に対する刺激症状を起こし,ぜんそく様の発作,時には呼吸困難,卒倒,けいれん発作などを起こさせることがある。
 東京都でオキシダントによる著しい被害が発生したのは,1970年7月18日に始まる。この日杉並区堀之内から八王子市に至る住宅地および田園地帯の各地でオキシダント濃度が0.2ppmを上まわり,約6,000名が被害を受け新聞紙上に大きくとり扱われた。被害の主なものは,一過性の眼の刺激痛であつたが,立正高校では数名の生徒が卒倒するという事件も起こつた3)

網膜静脈血栓症に対する抗凝血療法と光凝固の併用療法

著者: 福地悟 ,   浅山盾夫 ,   加賀典雄

ページ範囲:P.469 - P.484

緒言
 近年平均寿命の延長に伴つて高血圧症や動脈硬化症,脳血栓症等の循環障害が増加してきており,眼科においても網膜静脈血栓症による高度の視力低下をきたした患者に遭遇することが多くなつた。本症は比較的高齢者に多く発症し,すでに網膜血管に動脈硬化症の病変が存在することが多いために出血の吸収に長期間を要し,これを放置した場合はもちろんのこと,従来の止血剤,ヨード剤等による消極的治療では網膜の出血,浮腫が長期間残存し,やがて網膜変性に陥つて視力の予後は一般的にいつて不良であることはよく知られている。
 本症に対する抗凝血療法はすでに1937年より行なわれ1)2),その後種々の新しい抗凝血剤の開発とともに多数の治療成績が報告されている。抗凝血療法を網膜静脈血栓症に対して行なうということは,誠に理にかなつた治療法であり,まず第一選択として用いるべき方法であると思われるが,残念ながら本邦においてはいまだ一般的に広く用いられていないきらいがある。

交感性眼炎の電顕的研究—メラニン生成細胞とメラニン貪食細胞

著者: 瀬川雄三

ページ範囲:P.485 - P.494

緒言
 交感性眼炎の病因に関しては古くから種々議論があるが,Vogt—小柳—原田症候群とともに交感性眼炎が色素細胞に密接に関係のある疾患であるという点についてはほとんど異論がない1)2)3)
 今回3例の交感性眼炎の起交感眼を電顕レベルで研究する機会を得たので,それらの後極部脈絡膜組織内のメラニン生成細胞(Melanocyte)ならびにメラニン貪食細胞(Melanophage)を,通常,連続切片ならびに細胞化学的電顕法を用いて観察し,それらを脈絡膜悪性黒色腫ならびに外傷によつて脱出した脈絡膜組織内のMelanocyteならびにMelanophageの微細構造と比較し,2,3の知見を得たのでここに報告する。

眼外傷の黄斑部に及ぼす影響に関する研究(第1報)—鉄片外傷による猿眼黄斑部の変化

著者: 渡辺千舟 ,   山岨三樹 ,   吉原正晴 ,   石原千栄 ,   山地慎三郎

ページ範囲:P.495 - P.501

緒言
 鉄片が眼内に残存すると眼内組織の障害が生じ,臨床的に鉄錆症が発現するが,その障害は眼内に平等に起こるのではなく,部位的に黄斑部が限局性変化を受けやすいことをHaabがはじめて記載して以来,内外ともに多くの報告がなされてきた。
 最近では,牧内氏がサルの硝子体内に鉄片を挿入して実験を行ない,初期のおもな組織的変化はHenle線維層の浮腫,色素上皮細胞の変性,脈絡膜後極部の滲出液貯溜であり,従来の鉄錆症臨床報告例にみられるごとく,黄斑部が限局性に侵されるのを確認した。

卵黄様黄斑変性の一家系について

著者: 宗岡玲文 ,   藤津道禧

ページ範囲:P.503 - P.510

緒言
 わが国の卵黄様黄斑変性については湯口36),塚原ら32)33),松井ら21)および山田35)の報告があるが,いずれも一家系に単独に発生したもので,同一家系に2人以上みられた例はまだない。著者らは最近同胞2人の両眼に卵黄様黄斑変性を認め,母親の両眼に黄斑部変性があり,経過観察中に同胞の1人の"卵黄"が変化していく過程を観察したので報告したい。

Behçet病治療法の検討—その6抗プラスミン剤

著者: 青木功喜 ,   斉藤一宇 ,   藤岡憲三

ページ範囲:P.511 - P.516

緒言
 慢性の経過をとつて眼科的な予後がきわめて悪いBehçet病における副腎皮質機能は,多くの場合長期に投与されるSteroid Hormonのために抑制をうけており,Homeostasisの保持はきわめて困難な状態となつている。その臨床像において血管透過性の亢進,血栓形成は比較的容易に見られる変化である。このような変化を示すBehçet病は,われわれの免疫血清学的検討からも,その背景には免疫学的機序の関与が考えられる1)〜6)。さらにこの抗原抗体反応に続いて起こつてくる組織障害には補体,線溶系,血管透過性因子,白血球遊走因子などが関与していることがわかつてきているが,Behçet病においてもこれらの因子の関与は考慮される点である。この中でも血栓形成傾向および血栓が器質化されることの少ない点など,Behçet病では特異な形で線溶系が関係していると思われる。今回は線溶系の関与およびこれに続く抗プラスミン剤の使用上の問題について考察を重ねてみたい。

姉妹に現われた家族性遺伝性黄斑変性

著者: 三河隆子 ,   田村修

ページ範囲:P.517 - P.523

緒言
 家族性遺伝性黄斑変性のうちBest型といわれるものは,初期には黄斑部に境界鮮明な卵円型の黄色い病巣を呈するため,一般に卵黄様黄斑変性と呼ばれている1)。本症はわが国には比較的少なく,湯口の1例2),塚原の3例3)4),松井の1例5),山田の2例6)等が報告されている。わが国の報告はいずれも散発例で,家族性の報告はみあたらない。今回われわれは3人姉妹のうち2人は卵黄様黄斑変性と思われる病変を示し,1人は卵黄様黄斑変性のごく初期であろうと思われる症例を経験した。そして初発症状は検眼鏡的変化のほとんどない時期から,EOGおよび後極部局所ERGに化が現われてくるのではないかという興味ある所変見をうることができた。

人眼ヘルペスウイルスの家兎水晶体培養細胞に及ぼす影響

著者: 佐藤泰司

ページ範囲:P.525 - P.534

緒言
 単純性疱疹ウィルス(herpes simplex virus=HSV)は,ヘルペスウイルス群に属する代表的なウイルス1)で,最も広くヒトを侵襲する2)といわれている。
 HSV感染による眼疾患には,ヘルペス性眼瞼炎,ヘルペス性角膜炎,ヘルペス性ブドウ膜炎等がある3)〜5)。特に,ヘルペス性角膜炎は,近年,コルチコステロイドの眼科的応用の急増に伴つて,その発生頻度ならびに重篤度が著しく増加し,従来は比較的まれとされていた両側性の罹患も多発化の傾向にある6)7)。さらに,本症はその難治性と再燃性とが特徴で,高度の視力障害を残すことから社会的にも重要な問題となりつつあつて,角膜移植術の最大の適応疾患となつているが,今泉8)が指摘したごとく,本症の角膜移植術には今日なお,大きな制約が存在している。

老人性白内障の薬物治療に関する問題点

著者: 山本覚次 ,   藤原久子 ,   小山武子

ページ範囲:P.535 - P.538

緒言
 老人性白内障の薬物治療は,現在カタリン,ファコリジン,シネラリア,グルタチオン,チオラ,パロチン等である。そしてこれら製剤による治療効果について多くの報告があるが,著者らはその治療効果の面で必ずしも満足すべきものではないことから,その理由について検討した。

第25回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

高血圧・眼底血圧

ページ範囲:P.575 - P.580

1.螢光撮影による網膜細動脈狭細の検討
松山秀一・○柳田 泰(弘大)
 高血圧性眼底所見としての狭細は,一般に機能的狭細と器質的狭細に分けられ,さらにこれは,限局性狭細とびまん性狭細とに分けられている。器質的狭細に関しては,組織学的にも証明され,その存在は確認されているが,機能的狭細の存在には反対の意見もある。今回はこれらを検討する目的で以下の実験を行なつた。
 実験は,高血圧症患者16人に血管拡張剤(Duvadilan,Ronicol,Vasculat,Apresoline)を投与し,その前後に螢光眼底撮影を行ない,その動静脈径を計測することにより,それぞれの変動を調べた。動時腎脈の拡張率は,症例や使用した薬剤によりさまざまであつたが,血管拡張剤としては,DuvadilanとApresolineを使用しなこ例において,特に著明な拡張を示すものを認めた。これら著明な拡張を示した症例は,軽度の網膜細動脈硬化症,血管痙縮性網膜症,網膜張力亢進症のものであり,眼底に強い網膜細動脈硬化症,軽度の網膜張力亢進症を認める症例においては,細動脈拡張率は小さかつた。これより,機能的狭細および器質的狭細の存在が考えられた。また,ある症例においては,細動脈の拡張率が一様ではなく,大きな変動を示したが,これは限局性狭細を意味するものと考えられた。

緑内障(第13回)

ページ範囲:P.581 - P.585

I.眼圧測定に関する問題点
〔宿題報告〕
中谷  一(大阪厚生年金)
 Schiötz, Goldmann applanation 両眼圧計で行なう眼圧測定に関して,次の諸点について考察を加えた。
 (Ⅰ)測定誤差については,眼圧計,検者,被検者に分けて検討し,(1)眼圧計は規格化され,精度の高いものを使う必要があり,(2)検者側からは,眼圧計使用時の問題,読みの誤差,眼科検査員に眼圧測定を委ねる問題,(3)被検者側から,①局所因子としてPt測定に介入する因子,さらにSchiötz眼圧計ではPt,Po換算にocular rigidityが介入して誤差が大きくなる可能性があり,②全身性因子として,中枢性,体位,眼内圧の波動について検討を加え,

色覚異常

ページ範囲:P.587 - P.590

I.一般的な記録
 1971年11月20日(土),すなわち臨床眼科学会前日の午後,前橋市の群馬県民会館地階の第2リハーサル室で行なわれた。世話人は今回より大熊教授から筆者の市川が引き継いだ。会場は青木教授のお世話により,また群大袖野先生のお心遣いによつて,ゆつたりした気持のよい研究会をもつことができた。またグループディスカッションの運営に高崎鉄道病院の看護婦4名と坂口美邑,加藤勝の両君の協力を得た。参会者39名。
 今回のグループディスカッションの主題は後天色覚異常で,他に一般演題を募集した。一般演題も含め演題数は12題。十分に討議を尽してなお定刻に終えることができた。グループディスカッション出席予定者にはあらかじめ抄録集を配布。当日,講演集用の原稿を400字詰2枚以内,図表2枚にまとめることを提案,了承され,1カ月後の今日ほとんどの講演原稿が私のところに集まつている。来年の2月までには講演集が出せる予定である。したがつて講演の要旨についてはなるべく簡単に紹介するに止め,討論を中心に記録することによつてグループディスカッションを印象づけたいと思う。記録は京都府立の深見先生のご努力によつた。(記録に関しては敬称を略させていただく。)

連載 眼科図譜・174

Hippel病における黄斑部移動の1例

著者: 武井洋一 ,   米地和夫 ,   涌沢成功 ,   佐藤紀子 ,   斉藤武久

ページ範囲:P.441 - P.442

〔解説〕
 黄斑部の背景螢光が微弱であることの解釈には,その部の色素上皮の解剖学的な差に帰するものと,網膜内にbarrierを求めるものと,大きくは二つに分けられるが,これはどちらが主役をなすかという程度であり,他方を除外しているわけではない。
 今回,Hippel病の患者に光凝固を行ない,その後,網膜剥離をひきおこし,黄斑部が乳頭側に牽引された1例を経験し,その前後のカラー,螢光撮影を行なつたので,その写真を供覧する。

臨床実験

白内障手術後にみられた交感性の脈絡膜剥離の一例

著者: 原敬三 ,   村田忠彦 ,   池間昌陸

ページ範囲:P.553 - P.556

緒言
 白内障手術後の前房再生遅延は重大な併発症であり,浅前房にしばしば伴つてみられる脈絡膜剥離の発生機転についても従来論議されてきた。私どもは1人の白内障患者に時期を異にして行なつた白内障手術後に,翌日より両眼同時に脈絡膜剥離をみとめた興味ある例に遭遇し,若干の知見を得たので報告する。

小児涙道疾患の統計および考察

著者: 黒住格 ,   二宮俶子

ページ範囲:P.557 - P.562

緒言
 小児,特に乳児の涙道疾患(主に先天性鼻涙管閉鎖)については,成書にも記載され,一般にもよく知られていてこと新しくのべ立てるほどのものでもない。しかし,すぐれた綜説記事には出会つても,多数の治験例に立つての考察は案外少ない。成書に記載された事項も必ずしも正確でなく,あいまいな記載や,誤りに近い記載も見うけられる。一方,実地医家のこの疾患の取り扱いに至つては,はなはだ消極的である。消極的にすぎることは,誤つた治療と言わざるを得ない。
 これらのことは,この疾患の症状,原因,治療がいたつて単純であるだけに,かえつて残念である。

最近9年間における白内障手術の統計的観察—特に老人性白内障手術における合併症について

著者: 稲富誠 ,   井上成紀 ,   梶尾高根 ,   普天間稔 ,   儘田直久

ページ範囲:P.563 - P.570

はじめに
 白内障手術は眼科手術の中で頻度も多く最も重要とされるもので,特に視力を回復するという点で最も喜ばれるものである。一般にどのような手術でも合併症の少ないほど良い結果を得ることができることはいうまでもなく,また,良い手術法とは簡単でかつ安全で手軽に行なえ,合併症発生の危険性が少なく,それでなおよい結果が得られるものであろう。最近白内障手術においてもいろいろ改良され角膜切開を小さくする方法の報告1)や,縫合の方法およびその数などに工夫がみられ,さらにCryosurgery2)〜4),microsurgery5),超音波破壊吸引法6)などが報告されているが,これらの中にはかなり高度のテクニックと高価な器械を必要とするものが少なくない。
 当教室では若い医師も入局1年目の後半より白内障手術を行なつている。その大部分は合併症も少なく良い結果を得ているが,かなりの経験者でも多数の症例の中にはどうしても良い結果が得られなかつた例がある。庄司氏は「白内障手術の回顧と成績」7)と題して氏の経験談をのべ,「全てに万全を期し処置にも遺漏なき様につとめた」にもかかわらず成績がよくなかつた例をのべておられる。比較的経験の浅い術者でもどうすれば事故なく安全にかつ完璧に手術を行なえるかは大切な問題であり,われわれは常にこれに対する反省と工夫を怠つてはならない。

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第26回日本臨床眼科学会開催ならびに演題募集のお知らせ

ページ範囲:P.542 - P.543

 第26回日本臨床眼科学会を下記のごとく開催いたしますので,ご演題を賜わるようお願いいたします。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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