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特集 第25回日本臨床眼科学会講演集(その3) 学会原著
1971年東京都に発生した光化学スモッグ(オキシダント)公害による眼症状とその治療について
著者: 蒲山久夫1 鈴木弘一1 石崎百合子1
所属機関: 1東京都立豊島病院眼科
ページ範囲:P.465 - P.468
文献購入ページに移動スモッグというのはsmoke (煙)とfog (霧)とをつないだ通称語で気象学の学術用語ではない。光化学スモッグとは,自動車の排気ガスや工場などの排出ガス中の窒素酸化物,オレフィン系炭化水素あるいは亜硫酸ガスその他が上空の強い紫外線の作用で光化学反応を起こした結果生ずる酸化性物質を総称したもので,オゾンのほか過酸化物,亜硫酸,アルデヒド類,その他の酸類が含まれる1)2)。黄白色の煙霧として眼に認められることもあるので,光化学スモッグの名がついたが,オキシダントとも呼ばれる。オキシダントは通常紫外線の強い夏期の無風快晴時の昼間に発生し,その作用は植物を枯死させるほか,人体に対して眼および咽喉粘膜に対する刺激症状を起こし,ぜんそく様の発作,時には呼吸困難,卒倒,けいれん発作などを起こさせることがある。
東京都でオキシダントによる著しい被害が発生したのは,1970年7月18日に始まる。この日杉並区堀之内から八王子市に至る住宅地および田園地帯の各地でオキシダント濃度が0.2ppmを上まわり,約6,000名が被害を受け新聞紙上に大きくとり扱われた。被害の主なものは,一過性の眼の刺激痛であつたが,立正高校では数名の生徒が卒倒するという事件も起こつた3)。
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