icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻6号

1972年06月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・176

皺状剥離を伴つた術後性脈絡膜剥離

著者: 升田義次 ,   堀ヤエ子

ページ範囲:P.781 - P.782

〔解説〕
 脈絡膜剥離は,白内障や緑内障の手術後に前房形成不全とともに見られることがある。この脈絡膜剥離は一度経験しておくと二度目からはそんなに驚かないが,網膜剥離や脈絡膜腫瘍に類似しているために,最初はそれらとの鑑別にかなり気をつかうものである。しかし,その眼底写真は意外に少なく,われわれの調べたかぎりではわが国では見当たらないようである。したがって,ここにその2例を供覧する。

臨床実験

チメロサール(点眼薬防腐剤)によるアレルギー性結膜炎,眼瞼結膜炎

著者: 鈴木宏

ページ範囲:P.783 - P.788

緒言
 外科または皮膚下領域では,チメロサール(マーゾニン)によるアレルギー性接触性皮膚炎は日常しばしば見られるところである。一方,チメロサールは点眼薬の防腐剤として,あらゆる医薬用,一般市販用点眼薬に含まれている。しかるに,眼科領域では,チメロサールによるアレルギー性結膜炎,または眼瞼結膜炎はあまり問題にされていない。
 著者は市販用点眼薬によつて起こつたアレルギー性結膜炎と思われる例に遭遇し,チメロサールを含むステロイド点眼剤で治癒しえなかつた。その後の治療経過から,その患者はチメロサールに対し過敏性を持つていることがわかつた。著者は,さらに,点眼薬によつて眼の充血,またはなんらかの眼症状を起こしてきた患者に,チメロサールのパッチテストを行なつたところ,これらの患者の中には,チメロサールに対し過敏性を有するものが多いことがわかつた。これまでの症例から,われわれの日常の臨床には,チメロサールに対し過敏性を持つ患者が潜在していて,疾患の診断,治療,経過観察の上で,誤つた解釈がなされる可能性があることがわかつた。ここに,これまで経験された症例の数例について報告する。

結膜掻痒と花粉症

著者: 能戸清 ,   実藤誠 ,   山賀力 ,   上谷彌子 ,   我妻義則 ,   松山隆治

ページ範囲:P.789 - P.801

緒言
 札幌では4月の雪解けとともに草木が一時に花を開く。このころより初秋にかけて強い眼の痒みを主訴として来院し,他覚的には結膜の軽い充血を認める程度の患者について,アレルギー性結膜炎,結膜掻痒症の診断のもとにステロイドの点眼,抗ヒスタミン剤の内服により短時日の間に症状の寛解をみる例が少なくない。
 このような患者について,発病時期の季節性,毎年の回帰性等の点から花粉症の眼症状としての疑問がもたれ,1969年より市立札幌病院アレルギー外来と共同で花粉エキスの皮内反応を主体に検索を行なつたところ,意外に多数の症例に花粉症が認められたので報告する。

小児弱視の統計的観察

著者: 小島道夫

ページ範囲:P.802 - P.813

はじめに
 弱視とは検眼鏡的に識別し得る眼底異常のない視力低下と定義されるならば,この定義に適合したものの中でもいろいろの型を分類することができる。特にすべての型にわたつて斜視が合併している故に,斜視弱視と他の型との間の鑑別診断は臨床的に重要である。近年弱視についての知識の進歩とともにBangerter (1955)以後の弱視分類も変わつてきたので,今回はBangerterの分類とvon Noorden (1967)の分類とに従つて著者の症例を分類し,弱視治療成績などから若干の検討を加えてみた。

GELATINOUS DROP-LIKE DISTROPHY OF THE CORNEA—LIGHT AND ELECTRON MICROSCOPIC STUDY OF SUPERFICIAL STROMAL LESION

著者: ,   ,  

ページ範囲:P.815 - P.826

 The clinical and genetic features of gelatinous drop-like dystrophy that has been reported in Japan since 1914 were described. An investigation of three cases with gelatinous drop-like dystrophy revealed amyloid material on the corneal lesions by histochemical and electron microscopical tech-niques. Gelatinous drop-like dystrophy in Japan is almost certainly a localized form of heredo-familial corneal amyloidosis to differ from lattice dystrophy.

原田病における続発緑内障—その定型像

著者: 木村良造 ,   鈴木昭子 ,   前川暢男

ページ範囲:P.827 - P.830

緒言
 いわゆる原田病は,1923年原田1)によりはじめて報告された疾患であり,その報告例はすでに枚挙にいとまがない。
 しかし,その眼圧に関しての詳細な記載は少なく,一般に緑内障の合併は少ないとの見解がとられている2)3)

眼科手術におけるタラモナールによるNeuroleptanalgesiaの経験

著者: 田辺詔子 ,   佐竹成子

ページ範囲:P.831 - P.834

緒言
 眼科手術は顕微鏡下で行なわれることが多いので,術中患者が静穏であることが特に大切である。全身麻酔であればこの点は問題ないが,筋注,静注による麻酔は効果に個人差があり,偶発事故が多く,気管内挿管は安全確実であるけれども,チューブやマウスピースが手術操作の邪魔になつたり,覚醒時のパッキングが不都合である。また老人では全身状態から全麻の適応とならない場合もしばしばある。
 最近私たちは,タラモナール静注と局麻併用によるNeuroleptanalgesiaで満足すべき結果を得た。Neuroleptanalgesiaは意識消失をきたさないので,患者は術者の指示を理解し従うことができる。タラモナール1)〜3)は循環系に対する影響が少ないため,老人にも比較的安全に使用できること,制吐作用が長時間持続することなどから,眼科手術に非常に有用であると思うのでここに報告する。

眼・光学学会

眼科領城におけるLenticular Filmの応用

著者: 三国政吉 ,   藤井青 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.841 - P.846

緒言
 物体を立体観察,研究する学問はstereologyといわれ,非常に広い応用分野をもち,医学領域においても近年ますますさかんになりつつある。眼科領域においても前眼部,前房隅角,眼底等,立体観察が有利なところが多い。私どもは眼科領域の立体観察について,写真を中心に少しずつ研究を続け,立体撮影の原理,装置の開発,その観察法,立体計測,等高線図化,体積計算,立体模型の作製等について発表してきた。
 立体写真に関するこれら一連の研究を通じて,常に痛感されることは,この発展,普及には,良い写真を撮影することと同時に,撮影された写真から容易に適確な立体像の再現できる良い観察法の開発ということである。

フォトケラトメーターによる角膜形状の計測

著者: 丸山節郎 ,   藤井徹 ,   服部政光

ページ範囲:P.847 - P.851

はじめに
 先に著者らは,角膜形状を広い範囲に渡つて測定するための原理,および方法を本誌1),その他2)3)で発表し,2,3の基礎実験の結果を報告してきた。そのさい用いた実験装置は,光学ベンチを使用した装置で,移動不可能であり,かつ角膜の水平断面しか測定し得ないものであつた。今回,基礎実験で得られた諸結果をもとに,臨床検査に使用できることを目的に,持ち運び可能で,かつ種々の方向の断面形状を測定できるよう,コリメーター部を回転させる機構をもつ装置を試作した。

第25回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

糖尿病性網膜症

ページ範囲:P.855 - P.861

 100名近い参会者(署名者79名)を得て,13題の講演が行なわれ,終始活発な討論が交された。網膜症に限定されぬ演題も加わり,光凝固療法の作用機序をはじめとして,今後の検討に期待すべき問題がなお多数あることを知る実り多い研究会であつた。

小児眼科

ページ範囲:P.863 - P.865

テーマ:小児眼科形成治療について
1.先天性眼瞼下垂の手術とその問題点
山本 節・田淵昭雄(兵庫県立こども)
 眼瞼下垂は美容的,機能的,心理的要素を考慮して早期に治療の必要があるが,私たちは10歳以下の先天性眼瞼下垂27症例について手術を行なつたので報告した。
 手術術式としては眼瞼挙筋前転術が優れた方法と考え,主にBlaskovics法(19例),Berke法(6例)を使用した。

コンタクトレンズ

ページ範囲:P.867 - P.869

 曲谷より今回は,(1)角膜形態とコンタクトレンズ,(2)ソフトレンズについての二つの問題に関して自由な討論を行なう予定であつたが,出題者が予想以上に多かつたので,プログラムのような演題について講演を行なつてから討論を行なうと説明があつた。
 中島は,ソフトレンズに関しての意見を述べた。すなわちその現況,外国からの売り込み等の問題をあげ,われわれは各種の製品について偏らぬ評価をしなければならぬ,本日の討論は米国からの参加者もあるので,特に自由な形で情報を交換しあいたいと挨拶した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?