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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻7号

1972年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・177

眼瞼種痘疹

著者: 佐竹幸雄

ページ範囲:P.893 - P.894

〔解説〕
 種痘の副作用が最近問題になつてきているが,眼科的には眼瞼の種痘疹が治療の対象となろう。種痘疹というのは種痘による皮膚合併症の総称で,通常次の病型に分けられる。
(1)副種痘Vaccinola:接種部周辺に生ずる丘疹ないし小膿疱。

臨床実験

脈絡膜血管腫

著者: 塚原勇 ,   福地悟 ,   服部ゆみ子

ページ範囲:P.895 - P.899

緒言
 脈絡膜血管腫は,1868年にLeber1)がcaver—nous sarcomaとして報告しているが,明確なものとしては1879年のPanas and Remy2)の報告が最初である。以後数多くの報告があり,多くの人々により述べられているように,いわゆるEncephalotrigeminal Angiomatosis (Sturge—Weber Syndrome)の場合は臨床診断が容易であるが,脈絡膜血管腫が孤立して存在する場合の診断,特に悪性黒色腫Malignant melanomaとの鑑別診断はきわめて困難である。本稿では顔面の血管腫および中枢神経症状を伴わない孤立性の脈絡膜血管腫と思われる症例に関するわれわれの経験を報告する。

兵庫県立こども病院における未熟児の眼科的管理(その2)—その臨床的および病理学的検索

著者: 田渕昭雄 ,   山本節 ,   水田滋都子 ,   竹峰久雄 ,   荻野仁志

ページ範囲:P.901 - P.908

緒言
 未熟児網膜症1)の系統的な眼科的管理の必要性2)が叫ばれてからすでに久しいが,今なお本症による失明患者は後を絶たない。「体重,頭囲,胸囲および身長の増加,その他すべて順調に経過して」退院した未熟児が網膜症による失明児である例は数多い。
 しかし,1968年永田4)による本症に対する光凝固術の開発によって,本症を早期に発見治療すれば,本症の重篤な進行を未然に防ぎうる可能性が出てきた現在,眼科医のみならず,未熟児に関与する人達の責任はますます重くなつてきたといつても過言ではない。

高度の網膜剥離を伴つた糖尿病性網膜症の治験

著者: 小林フミ子 ,   伊藤徳治 ,   原茂子

ページ範囲:P.909 - P.912

緒言
 近年における糖尿病治療の進歩により,患者の寿命が延長して一般人口のそれに近くなつていることは喜ばしいことであるが,一方罹病期間はそれだけ長くなつて,糖尿病性網膜症による失明者は増加しつつある。この対策として近来,光凝固術や脳下垂体別出術等も試みられているが,Scott VI度に達して網膜に広範囲の剥離を起こしてしまつた症例に対してはかかる手術によっても改善の望みはなく,失明は時間の問題とされている。著者らは前回8),このような症例に腹膜灌流を施行して強力に脱水をはかつたところ,網膜はほとんど完全に復位して,増殖性変化を呈しながらも視力0.7を得た例を報告した。これは,尿毒症性網膜症の末期に網膜全剥離を起こした症例に腹膜灌流を行なつているうち,全身状態の改善とともに網膜が完全に復位して以前の視力を取り戻した例にヒントを得て行なつたものである。
 今回われわれは,開放性肺結核のため腹膜灌流も困難であつたので,利尿剤(Furosemide)大量投与とMannitol点滴静注を行なつて5カ月間絶対安静を続けたところ,網膜は復位を認め,8カ月後に視力0.2を得た例を経験したのでここに報告する。

Myasthenia Ocularisの電顕像

著者: 松田一夫 ,   安積慶子 ,   神矢博子 ,   田中良章

ページ範囲:P.913 - P.918

緒論
 重症筋無力症に関する研究は,従来,電気生理学的,薬理学的,および病理組織学的方面において数多く行なわれてきた,それらは主として神経筋接合部におけるtransmissionの異常に注目されているものであるが,最近組織化学的研究の進歩とともに,本症において,神経原性および筋原性の病変が共存することが明らかになつてきた。著者らは1969年にMyasthenia gravisについて,その原因を自己免疫的疾患としての見地から考察を加えた実験例を発表した。一方本症の微細構造の変化については,Bickerstaff1),Woolf2),Zacks3)らの報告が骨格筋においてなされているが,いずれも神経筋接合部の変化についてのものであり,それらの所見について定説となつているものはない状態である。重症筋無力症患者の外眼筋の電顕的所見について崎元4),箕田5)6)の詳細な報告がはじめて本邦においてなされている。著者らもMyasthenia ocularis (OssermanI型)の患者について眼瞼挙筋を切除し得られた材料につき,電顕的観察を行なつた。なお明確にはMyasthenia ocularis (以後M.o.と略記す)といえない1眼のPtosisの患者について同様にして得られた材料につき,電顕的観察を行ない比較したので報告する。

眼・光学学会

Nikon細隙灯顕微鏡付属の立体撮影装置の試作

著者: 三国政吉 ,   八百枝浩 ,   藤井青 ,   長谷川弘 ,   児玉明彦

ページ範囲:P.921 - P.925

緒言
 細隙灯顕微鏡は一種の実体顕微鏡で,これにより立体観察が行なわれるものである。細隙灯検査の重要視される理由の一つは,この立体観察によりすぐれた像解析が得られることにもあると考えられる。
 したがって細隙灯顕微鏡による写真撮影は,観察像の再現という点からいうならば単に一方向からの撮影にとどまらず,立体撮影であるべきはずである。

Nikonアプラネーショントノメーターについて

著者: 長谷川弘 ,   児玉明彦 ,   野寄達司 ,   馬場賢一 ,   藤田邦彦

ページ範囲:P.928 - P.930

 アプラネーショントノメトリーは精密な眼圧測定法として臨床上不可欠の検査法であり,日常外来で広く利用されている。しかし,いまだ国産の製品はなく,主としてHaag-Streit社の製品を使用しなくてはならなかつた。また日本光学はスリットランプは製作しているが,これに付属するアプラネーショントノメーターはなく,かつHaag-Streit製のトノメーターはその構造上使用することが困難であつた。
 これらの理由から,われわれは新しいトノメーターの開発の必要に迫られ,従来のものより形も小さく,精度もすぐれ,またあらゆる位置で測定可能なトノメーターを設計した。さらにこのトノメーターを利用して,アプラネーショントノメトリー専用機を製作し,良好な結果を得たので報告する。

手持眼底カメラによる倒像眼底写真撮影法

著者: 永田誠 ,   鶴岡祥彦

ページ範囲:P.931 - P.935

はじめに
 眼底写真撮影技術の進歩には近年著しいものがある。眼底カメラそのものにも光学的,構造的な幾多の改良工夫がなされ,感光材料の進歩も加わつて眼底写真の画質はますます向上しつつあり,さらに螢光眼底撮影法の導入によって全く新しい立場から眼底動態の撮影記録が可能になつてきたことは眼科臨床にたずさわる者にとつて誠に喜ばしい限りであるが,眼底写真撮影の目的の一つである臨床的情報の正確な記録伝達という面から考えると,まだまだ完全なものとは言いがたく,種種の制約が存在する。そのような制約の一つに,現在一般に行なわれている眼底写真撮影においてはその記録範囲が比較的後極部に近い部位に限られており,赤道部より周辺の網膜部位の撮影は不可能ではないとしても,画質の著しい劣化のために所見を十分に記録伝達する目的を達することがむずかしいことがあげられる。一方,眼底周辺部に重要な特徴的所見を呈す疾患の数が決して少なくない事実を考えると,眼底周辺部の写真撮影技術の閉発は眼底記録法の一つの重要なテーマというべきである。
 また,臥床患者や無麻酔の乳幼児での眼底写真撮影の必要性も日常しばしば感じられることである。臥床患者については野寄1)による手持眼底カメラの開発によってわが国はこの面で最近まで世界における独占的地位を保つてきた。また,最近西独Zeissから従来の大型眼底カメラを丈夫な支持スタンドにとりつけた大規模な臥床患者用眼底カメラが発表された。

印象記 第76回日本眼科学会

評議員会,その他学界全般について,他

著者: 杉浦清治

ページ範囲:P.942 - P.969

 第76回日眼総会は昭和47年5月19,20,21日の3日間奥田会長主宰の下に岡山市において開催された。岡山は今春新幹線が開通したばかりで,新緑の市街はどことなく華やいでいるようにみえた。開会の前日プラザホテルにて理事会・評議員会が開かれ,昭和49年度の総会開催地を東京とし,医歯大大塚教授が会長として主宰されることが決まつた。またそのさいの特別講演演者としては,会員から推薦されていた12氏の中から投票によつて九大生井教授が当選された。また昭和50年度の日眼総会は,医学総会の分科会として京都で開催され,京大岸本教授が分科会長となられることが決定した。昭和49年度の宿題報告は会員から27のテーマが寄せられていたが,投票によつて「手術顕微鏡下の眼科手術が」第1位,「網膜の微小循環」「ベーチェット病の原因と治療」,「白内障の生化学」の3つが同点で第2位,「緑内障における近年の進歩」が第3位となつた。そこで上位の4テーマについて再投票になり,策1位「手術顕微鏡下の眼科手術」,第2位「ベーチェット病の原因と治療」が残ったが,過半数に達しなかつたので決戦投票になり,結局「ベーチェット病の原因と治療」に決定した。ついで宿題報告担当者の選考に移つた。恒例により自薦他薦で候補者をあげ,投票によつて上位3名を選ぶこととし,結局浦山晃教授(秋田大),鬼木信乃夫助教授(九大),西山茂夫教授(北里大皮膚科)の3氏に決定した。

第25回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

網膜剥離

ページ範囲:P.971 - P.978

 網膜剥離グループディスカッションは午前8時30分より12時まで行なわれ,18題の講演とそれに関する討論がなされた。
 例年のことではあるが,編集の都合上紙数の制約があり,膨大な記録を適宜短縮あるいは削除せざるを得なかつたことを,講演者および発言者におことわりする。

角膜移植

ページ範囲:P.979 - P.983

1.Osteo-Keratoprosthesis移植人眼の組織所見について
野中杏一郎・臼井正彦
山崎 秀樹(東京医大)
 合成樹脂による人工角膜を移植した人眼の組織学的所見についての報告はBrraquer, Torres,早野らの報告があり,生体組織を支持部とするBiological prosthesisの報告もStrampelli, Morganらによつてなされている。われわれは昨年本学会にて20歳の女性に移植したOsteo-Keratoprosthesisについて報告した。本症例は術後約7カ月間固着は良好であつたが,光学部周囲に潰瘍形成を生じ,感染防止のため残念ながらOsteo-Ke—ratoprosthesisを除去した。本症例の組織学的所見より若干の知見を報告した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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