icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻8号

1972年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・178

網膜芽細胞腫の2症例

著者: 箕田健生 ,   龍山内子

ページ範囲:P.1005 - P.1006

〔解説〕
 両側性網膜芽細胞腫で一眼を眼球摘出し,軽症な他眼をラドン針強膜縫着術および光凝固による保存的療法を行ない,良好な視力を保つて治癒せしめた2症例の眼底写真を示す(本文参照)。
 第1図3歳,男。右眼,乳頭下鼻側に約4乳頭径大の球形白色の網膜芽細胞腫があり,腫瘍周辺には光凝固斑が認められる。

臨床実験

網膜芽細胞腫の保存的療法

著者: 箕田健生 ,   龍山内子

ページ範囲:P.1007 - P.1014

緒言
 網膜芽細胞腫の保存的療法に関しては,Reese一派のX線,超高圧X線照射とTEM (triethy—lene melamine)頸動脈灌流療法1)〜8),Stallard等の放射性同位元素(ラジウム,ラドン,60Co)の強膜上縫着照射とEndoxan (cyclophospha—mide)内服療法9)〜12),およびMeyer-Schwi—ckerath一派の光凝固とEndoxan内服療法13)〜17)等が,数多くの症例において試みられ優れた業蹟が報告されている。わが国では南18),百々19),大島20),清水21)諸氏の報告があるが,いずれも1例報告であった。最近,桐淵22)はわが国でははじめての多数例における各種の保存的療法の成果を報告し,21例中9例は視力を保持したまま腫瘍の治療に成功している。
 われわれは最近,両側性網膜芽細胞腫の患児4例に,ラドン・シード強膜上縫着照射,光凝固,およびEndoxan内服の三者併用療法を試みたところ,3例は良好な視力を保って全治し,残りの1例は現在経過観察中である。本論文の主な目的は第1に,網膜芽細胞腫の腫瘍の大きさ,位置.数と保存的療法の成績との関係について従来広く用いられているReeseの分類7)を若干修正した新しい分類を提唱することである。

眼科手術患者の術前における結膜嚢細菌培養成績と抗生物質の影響について(第2報)—Gentamicin (Gentacin,Schering,U.S.A.)点眼の効果

著者: 檜垣忠尚 ,   阪本善晴 ,   豊田公子

ページ範囲:P.1015 - P.1021

緒言
 私どもは,前報1)報において当科入院手術患者57例62眼について,手術前に結膜嚢を無菌化するためにcephaloridine (CER)を,点眼し,その前後に結膜嚢の細菌培養を行なつた結果,genta—micin (GM)が検出菌に対して最大の感受性を示し,かつ耐性菌株が最も少ないことを明らかにした。今回はその成績に基づいて,GMを手術前の眼に点眼し,その前後の結膜嚢内細菌の消長について検討した。
 GMはMicromonospora purpureaにより産生される抗生物質で,広範囲の病原菌に強い抗菌作用を示す,いわゆる広範囲抗生物質の一つである。GMは第1図に示すような構造式のGenta—micin sulfate C1,C1a,C2の混合物で,その性状は白色非結晶性粉末で,温度,湿度,光に対してきわめて安定な塩基性,水溶性物質である。

一卵性双生児の両者にみられたDevelopmental Glaucoma

著者: 前川暢男 ,   木村良造

ページ範囲:P.1023 - P.1026

緒言
 われわれ1)は,先にDevelopmental glauco—maでは家族歴に緑内障が証明される例が多く,家族歴の問診および同胞の検査が重要であることを述べた。このたび,一卵性双生児の両者にDevelopmental glaucomaがみられた例に遭遇したので報告する。

嚢胞腎患者にみられた細動脈硬化性網膜症

著者: 田中幸子 ,   田中洋 ,   内山稔朗

ページ範囲:P.1027 - P.1031

緒言
 腎性高血圧をきたす疾患には,急性および慢性糸球体腎炎,腎盂腎炎などの他,嚢胞腎もその一つとされ古くから知られているが,われわれの経験ではそれほど多くは認められず,その眼底所見に関する報告もきわめて少ない。今回,腎不全を伴つた嚢胞腎の1症例に,細動脈硬化性網膜症を認めたので報告する。

Behçet病における血清蛋白像,特に血清γ—グロブリンの動態と眼症状(視力予後)について

著者: 窪田靖夫 ,   高野元明

ページ範囲:P.1033 - P.1036

緒言
 Behçet病の原因については,Virus説,細菌感染アレルギーないし病巣感染アレルギー説,自己免疫機構の介在する膠原病説等があるが,いまだ確定的なものはない。しかし,その病因の基盤に抗原抗体反応が介在することはほぼ誤りのない事実であると考える。したがって,血清中のγ—グロブリンの消長と病態について検討することは病因解明に大きな手がかりを与えるものであろう。
 小林および高野1)はさきにBehçet病患者の血清蛋白成分について検討を行ない,血清蛋白像を頻回に検査し,各症例につき経時的にみた血清γ—グロブリン値と臨床像について考按を加えた。その結果,平均値の高値のものは比較的女性に多く,眼症状を欠くものが多いこと,低値のものは眼症状重篤なものが多いこと等を認めた。

人工透析による腎性網膜症の眼底所見の変化(第2報)—眼底所見と内科的管理状態との関係

著者: 保坂明郎 ,   山形幸枝 ,   山形陽

ページ範囲:P.1037 - P.1040

緒言
 慢性腎不全に対する人工透析の眼底変化については,以前保坂ら1)が報告したが,引続いて実施しているもの,および新しい症例を加えてその後の観察結果を報告する。

Posner-Schlossman症候群について

著者: 相沢芙束 ,   大川忠 ,   志賀満

ページ範囲:P.1041 - P.1047

 Posner-Schlossman症候群(以下,P-S症候群と記載)は1948年PosnerおよびSchlos—sman1)によつて"Syndrome of unilateral re—current attacks of glaucoma with cycliticsymptoms"として9症例の記載がされて以来,多数の症例報告がされ,現在では特に珍しいものではないが,その特異的な病態は注目されている。すなわちglaucomatocyclitic crisisとも呼ばれ,一眼性,再発性のK.P.を伴う眼圧上昇の発作,隅角色素消失,予後良好等の臨床像を呈し,前ブドウ膜炎,特に毛様体炎に伴う続発性緑内障として一応位置づけられている2)。しかし,その本態,原因は不明の点が多く,十分には解明されていない。厳密には原発性とも続発性ともつかない特殊な緑内障といわれ,清水氏3)は隅角の線維柱上の色素欠除,発作時所見および間歇期眼圧等より単なる眼内炎によつて起こる続発性緑内障とは軌を異にするもので,独立した疾患単位であるとしている。
 P-S症候群は原著で,発作はさまざまの頻度で判然とした誘因,原因なしに起こつてくると述べられ,症例報告では突発する発作のみが記され,誘因,原因について検討されているものは少ない。

学会原著

網膜剥離に対する冷凍手術療法(第2報)—Amoils冷凍手術装置による網膜剥離手術治療

著者: 内田璞 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1049 - P.1055

緒言
 網膜手術における裂孔閉塞手段の一つとして,冷凍手術療法が,症例によつてはジアテルミー凝固法に比肩し得る秀れた術式であることは,Lincoff1)〜6)をはじめ多くの追試者によつて実証されているところである。われわれも,先年Union Carbide社製のCryosurgical unitを使用した網膜剥離手術の治験例を報告し7)8),冷凍手術に対する評価を示したが,その経験をもとに最近約2年半の間にAmoils冷凍手術装置を用いてCryoretinopexyを行ない,良好な治療成績を得たので報告する。

眼・光学学会

手持眼底カメラについて

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   田中宏和 ,   加藤尚臣 ,   田尾森郎

ページ範囲:P.1061 - P.1064

はじめに
 手持眼底カメラはすでに10年以上の臨床的経験があり1),最近は種々の市販モデルもあつて,広く応用されている。しかしこれらの多くは,著者のオリジナルモデルと同じく2),直像鏡型の照明方式を用いたもので,手持眼底カメラとしては簡易,小型等の長所はあるが,一方では瞳孔の中心光軸を使用する方式に比べて,どうしても画質が劣るとか,また角膜反射をさけるために,カメラを極端に被検眼に近づけなくてはならないという欠点がある。著者は1961年にハーフミラーを用いた手持眼底カメラを製作したが3),光学系特に観察系がきわめて複雑であつたので重量も増し(2.2kg),小型カメラとしては操作が不便であつた。しかし得られた画像は,ほぼ同性能の大型眼底カメラに匹敵した。その後,日本光学が(1963年)ハーフプリズムを用いた小型カメラを製作市販した4)。これは形も小さくなり重量も軽減した(1.7kg)ものであるが,カメラバックに既製のカメラを使用したために,他の手持カメラ(たとえばコーワ眼底カメラ)にくらべてはるかに重かつた。しかし画質も良く,作動距離(角膜表面とカメラ先端までの距離)も大(10m/m)であつた。しかし一方にプリズムによるフレアーが生じやすく,特にその前面が汚れると,強いフレアーが生ずるという欠点があつた。この種のフレアーは大型カメラでも起こることであるが,手持カメラは被検眼に近く,睫毛等で汚れる機会が多かつた。

コンタクトレンズによる矯正の限界

著者: 中尾主一 ,   西信元嗣 ,   山田勝則

ページ範囲:P.1065 - P.1067

緒言
 コンタクトレンズの最も頻度の高い使用法は屈折異常矯正である。当然のことながら,屈折異常矯正レンズは,その装用状態において,あらゆる径線にて,無限遠の点と網膜中心窩が共軛関係にあることが要求される。著者の一人西信は,かつてこの問題を検討し,臨床に便利な計算表を発表している。われわれは今回,先に中尾らの発表せる光学的模型眼を用いて光線追跡を行ない,コンタクトレンズの矯正効果を検討したので報告する。

試作したプラスチック非球面白内障レンズについて

著者: 大島祐之 ,   岡島弘和

ページ範囲:P.1069 - P.1073

緒言
 眼鏡レンズを理想に近づける一つの条件を示すTscherning楕円から明らかなように,遠用レンズの場合,+8Dをこえる強度凸レンズでは球面レンズを以てしては非点収差を除くことが不可能で,非球面が必要となる。先に第1報1),第2報2)において,非点収差を除去した光学ガラス製の楕面レンズの矯正眼鏡を装用させた時の無水晶体眼の視機能を球面レンズ,双曲面レンズ装用時のそれと比較検討し,光学的な特性が視機能に反映された結果を得たが,今回さらに光学プラスチックCR39を材料とした軽量の楕円面白内障レンズの遠用ならびに近用眼鏡を無水晶体症例に使用させたので,ここに報告する。

第7回日本眼・光学学会 パネルディスカッション

「眼底カメラ」について

著者: 三国政吉

ページ範囲:P.1077 - P.1089

 一般講演にひきつづいて,午後3時10分より5時半まで,「眼底カメラについて」というテーマでパネルディスカッションが行なわれた。これは日本眼・光学学会としては初めての企画である。メーカー,ユーザーが一堂に会しての討論で,素直に発言しがたい面もあろうかと心配されたが,終始忌憚のない活発な意見の交換がなされたことは大変によろこばしいことである。また,内容的にもきわめて興味深い話題が多く,実り多い会であつた。以下にその内容をご紹介したいと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?