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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科27巻1号

1973年01月発行

雑誌目次

特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その1)

第26回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.2 - P.2

講演
結膜血管の映画撮影について……………………………落合淳郎・他…8
北海道地方の急性出血性結膜炎について………………越智通成・他…11

講演 学会原著

結膜血管の映画撮影について

著者: 落合淳郎 ,   山下竜雄 ,   滝浪寿郎 ,   古謝将昭 ,   早川真人 ,   間世田博之 ,   山崎芳治

ページ範囲:P.8 - P.10

緒言
 従来より,動物の腸間膜などの血管はしばしば映画にとられてきたが,自然の状態での人の結膜血管は,われわれの知るかぎりではその報告をみない。
 われわれは,カール・ツァイス製のフォトスリットランプが,同社の手術顕微鏡用16ミリシネアダプターを用いることにより,映画撮影機を装着できるように設計されているので,これを利用して前眼部の映画撮影機を試作し,結膜血管の映画を撮影したので,その撮影方法について報告する。

北海道地方の急性出血性結膜炎について

著者: 越智通成 ,   河野通弘

ページ範囲:P.11 - P.13

 昨年秋わが国各地で流行した新型の急性出血性結膜炎acute haemorrhagic conjunctivitis (以下AHCと略す)は,北海道では昨年10月末から多発し,4カ月間に3000名以上の人が罹患した。われわれは道内各地の症例につきその臨床症状,疫学的調査および結膜ぬぐい液から分離した14株のvirusの性状につき一部発表1)2)してきたが,その後各地分離virusとペア血清の中和試験一部交叉中和試験が行なわれ,道内各地の流行がそれらと血清学的に同一のものであることが一層確かめられるとともに,道内流行以前の健康者血清の本症virusに対する抗体保有が30歳以下では陰性で,壮年者でも低率かつ低値であつたことも判明した3)。さらに世界各地の流行地と材料が交換され,このvirusが共通した病原体である可能性が強く示唆されている現状である。
 われわれは道内の症例中のvirusが分離された例と,血清学的にAHCと考えられる21例につき臨床症状を検討したが,その臨床的特徴はおおむね第1表のようにまとめることができ,流行性角結膜炎との鑑別も多くは可能であつた。しかし時に診断を誤りやすい例があった。以下の2例はいずれも血清学的に上記分離virusと反応しなかつた症例である。

大気汚染による石神井南中学校集団被害の眼症状について

著者: 蒲山久夫 ,   鈴木弘一 ,   石崎百合子

ページ範囲:P.15 - P.21

緒言
 1972年4月末より7月にかけて東京都下の多数の学校において,光化学スモッグによるといわれる集団被害があいついで発生し,テレビや新聞等で大きく報道された。中でも最も著しい被害が発生して休校せざるをえなくなつた練馬区石神井南中学校について,筆者らは被害の頭初より夏期休暇に至る約2カ月間,東京スモッグ対策研究プロジェクトチーム臨床医学的調査研究分科会(長岡滋委員長)に協力し,被害者の眼検診を行なう機会をえたのでその結果をここに報告する。

円錐角膜の角膜移植後に認められたいわゆる「不可逆性散瞳」について

著者: 小向正純 ,   大橋孝治

ページ範囲:P.23 - P.24

 円錐角膜に対する角膜移植後に異常な散瞳の起こることが知られている。この散瞳は移植術後間もなく始まり縮瞳薬はほとんど効果がなく,虹彩色素の脱落,虹彩後癒着などを起こしながら次第に虹彩萎縮に陥り,散瞳は不可逆性となる。その経過中に水晶体前嚢下の混濁を生ずることがあり,また二次的に緑内障を起こすこともある。これまでの報告では自然軽快例はあるが,有効な治療法は報告されていない。
 われわれは最近10年間にこの不可逆性散瞳をきたした症例を7例経験した。そのいずれもが円錐角膜の症例であつた。7例中の4例では,Pilocarpine, Escrineに全く反応せず,最終的に不可逆性の散瞳状態に固定した。その2例では術後8日目および20日目より眼圧上昇を認め,後日瀘過手術を行なうに至つた。また他の1例では術後260目より角膜潰瘍を起こし,この3例では移植片は混濁した。残る3例中の1例は移植翌日より散瞳が始まりPilocarpine, Eserine, Phospholine iodide, D.F.P.のいずれも無効であつたが,術後2カ月から3カ月にかけて次第に縮瞳傾向を示し,最終的に径6.0mm程度となつたが,この状態でも縮瞳薬は無効であつた。すなわち不完全な自然軽快例と思われる。

人眼角膜形状に関する研究

著者: 新井達朗 ,   中尾主一 ,   西岡啓介 ,   西信元嗣 ,   原嘉昭 ,   松田俊彦

ページ範囲:P.25 - P.28

緒言
 著者らは,先に開発した新しい角膜計測装置を用いて,正視眼56眼,近視眼44眼,遠視眼5眼について計測を行なつたので,その結果について報告する。

虹彩Juvenile Xanthogranulomaの1例

著者: 桜木章三 ,   高橋信夫 ,   酒井文明

ページ範囲:P.29 - P.35

緒言
 Juvenile Xanthogranulomaは皮膚科領域では比較的古くからNevoxantho-Endotheliolnaと呼ばれ,一種の良性腫瘍として知られた疾患である。1949年Blankら1)によって,前部ブドウ膜に本疾患の病巣,発生例が報告されて以来眼科的にも注目され始めた疾患である。その後眼内症例の報告が増加し,臨床的には幼児における片眼性再発性前房出血,続発緑内障,虹彩の肥厚と黄色調の斑状病巣が特徴とされ,さらに皮膚症状が伴えば確診につながるものとされている。組織学的には組織球の浸潤と新生血管,Touton型巨細胞の出現がみられる。
 今回われわれは前房出血をくり返し,続発緑内障を起こした症例で,虹彩試験切除により診断を確定,放射線治療により全治せしめ得た症例を経験したのて,光顕像,電顕像を加えて報告する。

瞳孔膜起源と思われる水晶体前線維増殖症

著者: 松尾信彦 ,   岡部史朗 ,   石幸雄

ページ範囲:P.37 - P.42

緒言
 瞳孔膜は,人眼においては5カ月の胎児に最もよく発達しているが,胎生8カ月半頃までには萎縮退化し,出生時には認められない1)2)
 最近著者らは瞳孔膜の過形成に由来すると思われる水晶体前線維増殖症の1例を経験し,電子顕微鏡で検索することができたので報告する。

先天性無虹彩に水晶体亜脱臼を伴つた症例のアミノ酸代謝

著者: 山本覚次 ,   松尾英彦 ,   山元和子 ,   井内岩夫

ページ範囲:P.43 - P.45

緒言
 水晶体偏位,または水晶体亜脱臼を起こす先天的な因子を持つている疾患として,Marfan症候群,Marchesani症候群,Homocystinuriaがよく知られているが,非常にまれにはEhlers Dan—loo症候群,Oxycephary, Crouzon's diseaseに認められる1)
 Marfan症候群,Homocystinuriaにおける水晶体亜脱臼とアミノ酸代謝,つまり前者はハイドロオキシプロリンの過剰な尿中排泄,後者は尿中へのホモシステインの排泄が症状の発現と因果関係があると考えられ,チン氏帯の脆弱性を説明することが試みられている。

水晶体前嚢剥離を伴つた硝子工白内障—臨床的および電顕的検索

著者: 中野秀樹 ,   今川亘男

ページ範囲:P.47 - P.52

緒言
 硝子工なとの高熱下労働者にみられる火熱白内障に,しばしば水晶体前嚢の剥離を伴うことは,1922年El3chnig1)が最初に報告し,Vogt2)は,水晶体前面瞳孔領で水晶体嚢の表層が薄く剥れるのを見て,Feuerlamelle (火薄板)またはSolutiolaminae superficialis (表層薄板剥離)と命名した。その後HollowayとCowan3)による報告などが相次いだが,一方これらの人々は,嚢性緑内障に見られる水晶体前嚢の落屑をも同一のものと考えていた、ところが,1954年Theobald4)水晶体前嚢の剥離を,その臨床像と病理組織像とから詳細に検討した結果,火熱白内障に伴う前嚢剥離と,嚢性緑内障に見られる水晶体前嚢落屑とは,全く異なるものであることを明らかにし,前者をtrue exfoliation,後者をpseudoexfoliationと名づけた。この論文をきつかけとして,欧米ではpseudoexfoliationにっいての研究が進んだが,true exfoliationの報告は激減した。その原因は,工場の急激な近代化に伴つて,眼の防護手段が強化されたためであろう。
 ところで,本邦におけるtrue exfoliationについての報告は,1942年の池田・山田 5),1943年の池田・山田・岡崎6)によるものが認められるのみである。

風疹白内障の手術成績—患児のウイルス学的検索

著者: 大島健司 ,   生井浩 ,   加納正昭 ,   中尾文紀 ,   岡義祐 ,   日吉康子

ページ範囲:P.53 - P.59

緒言
 妊娠初期の婦人が風疹に罹患した結果,胎児に風疹ウィルスの慢性持続性感染が起こり,種々の先天異常を伴つて生まれてくる,いわゆる先天性風疹症候群1)は,わが国では1964年以前にはきわめてまれとされ,散発的な報告を見るのみであつた。
 しかし,1965年から1966年にかけて沖縄地方に本症が多発して以来2),日本本土,特に西日本各地においてかなりの症例が発見されるに至つた。このように最近かなりの数の症例がみられる理由の一つとして,風疹の疫学,つまり風疹の流行と妊娠可能な年齢の婦人の風疹抗体保有率との関係などの血清疫学的研究の進歩があげられるが,その他に,本症のprospectiveおよびretrospe—ctiveな診断技術の進歩に負うところが大きいとされている。

中年片眼白内障の特殊性について

著者: 村田忠彦 ,   日隈陸太郎 ,   池間昌陸 ,   岡沢洋子

ページ範囲:P.61 - P.67

緒言
 中年の人で,片眼にのみかなり進行した白内障を認め,他眼には白内障を全く認めないか,あるいはきわめて軽度の水晶体混濁を認めるのみで,視力は正常な症例をみることがある.このような症例では,白内障手術中および術後に,術前に予期しなかつた異常の発生することが多く,時には予後不良となることもあるといわれ,積極的に手術を行なうべきか否かについて疑問をもつている人さえもある。
 われわれは中年片眼白内障の15例について手術を行なう機会を得たので,その特殊性について報告する。

小児の硝子体混濁について(予報)

著者: 荻野總夫 ,   月花一 ,   杉本圭弘 ,   芹沢昭子 ,   沢田道子

ページ範囲:P.69 - P.72

緒言
 近来小児の視力障害の原因の一つとして重要視されているHoganらのいわゆるChronic Cy—clitisについては,以前われわれは症例報告1)を行なつたが,今回症例は少ないが本症に関係の深い小児の硝子体混濁について,予報として発表する。

連載 眼科図譜・183

巨大な結膜上皮性嚢腫

著者: 升田義次 ,   堀ヤエ子

ページ範囲:P.5 - P.6

〔解説〕
 患者は61歳の女性である。5カ月前より右上眼瞼の腫脹を認めている。疼痛などの自覚症状がないので放置しておいたが,少しずつ増大してきた。眼瞼の外傷およびトラコーマの既往はない。上眼瞼を反転すると結膜円蓋部に母指頭大の嚢腫がある(第1図)。結膜には円蓋部の一部に充血を認める以外に炎症症状や瘢痕は見られない。
 手術は局所麻酔で行なつたが,嚢腫は結膜や周囲の組織とは癒着がなく完全に摘出できた。大きさは12mm×12mm×22mmの卵形で,内容は無色透明のわずかに粘稠な液で満たされていた。

臨床実験

頭頸部外傷症候群の眼障害と治療について

著者: 楢崎嗣郎 ,   木村高明 ,   野口順治

ページ範囲:P.77 - P.84

緒言
 むち打ち症は衆知のように受傷機転を示すもので,傷病名ではない。一般にむち打ち症にさいしては頭部の打撲を伴うことが多い。たとえ頭部の打撲がない場合でも,頭蓋内と関係する種々の症状を生ずる場合があり,また,頭部外傷のさいにも「むち打ち症」同様の機転を生ずることも多い。したがつて頭部外傷とむち打ち症の眼障害は厳密な区別ができないため,これらを総称して「頭頸部外傷症候群」と呼んでいる。
 このように頭頸部損傷にさいして生ずる症状には,眼科のみならず,整形外科,脳神経外科,耳鼻科および精神科の各領域におよぶ多彩な症状を示す。場合が多いようである。

螢光眼底写真へのSubtraction methodの応用—第2報Color Subtraction method

著者: 堀内二彦 ,   神前正敬 ,   加藤光雄 ,   大滝明

ページ範囲:P.85 - P.90

緒言
 Subtraction methodは放射線科領域で発展し,すでにColor Subtraction methodも広く応用されているが,螢光眼底写真への応用は,まだSimple Subtraction methodにとどまつている1)2)
 螢光眼底写真はレントゲン造影写真と異なり,陽画で,漏出,偽螢光,背景螢光等,多彩な変化が多く,また血管も毛細血管に至るまでの観察がなされ,経時的変化も重要で,そのColor Subt—raction methodの目的とするところも,放射線科領域のそれと若干異なる。

眼・光学学会

Carl Zeiss Jena連続螢光撮影装置の使用経験

著者: 金上貞夫

ページ範囲:P.92 - P.96

緒言
 近年螢光眼底撮影法の普及はめざましく,その応用,研究についても著しい進歩をとげている。螢光眼底撮影法を用いて網膜循環時間を知る研究は,Dolleryら(1962)以来多くの報告がなされている.螢光眼底写真連続自動撮影装置が開発されたことは,これらの研究を発展させた大きな要素であるといえる。
 自動撮影装置はCarl Zeiss Oberkochen (西独)をはじめ,Carl Zeiss Jena (東独),国産でも東京光学,オリンパス光学で製品化され,実用期にはいつている。

視機能スクリーニング検査自動化装置Auto-Screeno-Scopeについて

著者: 大島祐之 ,   浜野光 ,   永井虎雄 ,   正能裕久 ,   加藤康夫

ページ範囲:P.97 - P.101

緒言
 人体は外界からの情報の80%を,視覚を通じて取り入れるともいわれるが,社会機構の進歩複雑化に即応して,われわれが正常なる生活,業務を行なう上で,視覚の健全さが要求される面が少なからずあり,眼の機能の検査には眼科領域のみならず広範な分野において関心が持たれ,簡易にそれを測定する機器への要求が高まつている傾向がある。一方,精密なる医学的検査法が種々発達したのに伴い,精密検査を要するケースを選び出すための省力化されたスクリーニング検査の必要性も増してきている。
 集団検診と適性検査を主目的とし,無資格者によつて操作され得る視機能スクリーニング検査器械は古く米国において開発され,Crotho-Rater(Bausch & Lomb), Sight-Screener (A.O.),Rodatest (Rodenstock),その他の製品が彼地で広く普及しているが,わが国には1960年東京光学から発表され,その後改造されたスクリーノスコープ1)〜3)があり,現今では主として産業医学の分野で注目され(大石4)),活用されている。このたびわれわれは,この種の検査器械の改良を図り,視標提示,応答の正否判定,結果の印字記録を自動化した試作器Auto-Screeno-Scopeを完成し,実用の見透しが樹てられるに至ったので,その装置の機能を中心に報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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