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特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その1) 講演 学会原著
水晶体前嚢剥離を伴つた硝子工白内障—臨床的および電顕的検索
著者: 中野秀樹1 今川亘男1
所属機関: 1東京医科歯科大学眼科学教室
ページ範囲:P.47 - P.52
文献購入ページに移動硝子工なとの高熱下労働者にみられる火熱白内障に,しばしば水晶体前嚢の剥離を伴うことは,1922年El3chnig1)が最初に報告し,Vogt2)は,水晶体前面瞳孔領で水晶体嚢の表層が薄く剥れるのを見て,Feuerlamelle (火薄板)またはSolutiolaminae superficialis (表層薄板剥離)と命名した。その後HollowayとCowan3)による報告などが相次いだが,一方これらの人々は,嚢性緑内障に見られる水晶体前嚢の落屑をも同一のものと考えていた、ところが,1954年Theobald4)水晶体前嚢の剥離を,その臨床像と病理組織像とから詳細に検討した結果,火熱白内障に伴う前嚢剥離と,嚢性緑内障に見られる水晶体前嚢落屑とは,全く異なるものであることを明らかにし,前者をtrue exfoliation,後者をpseudoexfoliationと名づけた。この論文をきつかけとして,欧米ではpseudoexfoliationにっいての研究が進んだが,true exfoliationの報告は激減した。その原因は,工場の急激な近代化に伴つて,眼の防護手段が強化されたためであろう。
ところで,本邦におけるtrue exfoliationについての報告は,1942年の池田・山田 5),1943年の池田・山田・岡崎6)によるものが認められるのみである。
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