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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科27巻11号

1973年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・193

光凝固に対して特異な経過を示した糖尿病性網膜症における大静脈瘤の一例

著者: 福地悟 ,   鈴木康彦

ページ範囲:P.1273 - P.1274

〔解説〕
 62歳,男子の糖尿病性網膜症(Scott IIIb)に見られた拡大進行性の大静脈瘤およびビーズ玉状拡張部に対して,拡大や破綻性出血の防止のために直接光凝固を施行した。その時期待した効果は,大静脈瘤周囲組織の瘢痕化によつて無制限の増大を防ぎ,血管外漏出を抑制し,また大静脈瘤の縮小ないしは閉塞を計ることにあつた。しかし直接光凝固の結果は,大静脈(実はloop)のまわりに側副路が形成され,これが拡張して主流となり,より一層大きいloop形成を見るに至り,螢光漏出も前にも増して著明となつた。またビーズ玉状拡張部も,光凝固後は芽をふき出すように急速に憩室状になり,さらにloopへと進展した。今回の経験から,比較的太い口径の糖尿病性血管病変を直接に光凝固することは,かえつて病態を悪化させるので行なうべきでないと思われる。むしろ血管の両側でこれに接するごとくその周囲網膜を凝固することと,その近辺にあるanoxic tissueを十分凝固することがよい凝固法と考える。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のためにその4サルコイドージスと眼

著者: 本間日臣 ,   岩田和雄 ,   宇山昌延 ,   山田酉之 ,   桐沢長徳

ページ範囲:P.1276 - P.1286

 桐沢本日は「全身疾患と眼」の第4回座談会としてサルコイドージスをとりあげ,内科からはサルコイドージス研究班長の本間先生,眼科からは岩田先生,宇山先生,山田先生に遠路はるばるおいでいただいて,サルコイドージスの症状,原因,鑑別診断,治療および予後に至るまで,あらゆる角度からお話いただきたいと思います。

臨床実験

眼瞼におけるケジラミ(Phthirus pubis)寄生の一例

著者: 木下信之 ,   田中直彦

ページ範囲:P.1287 - P.1290

緒言
 眼瞼における動物性皮膚疾患にはいくつかのものがあげられるが,著者らは最近睫毛におけるPhthirus pubisすなわちケジラミの寄生例を経験した。睫毛におけるケジラミの本邦における報告例について日本眼科全書1)に8つの報告(9症例)が紹介されているが,医学中央雑誌により大正7年(1918)より昭和47年(1972)までのケジラミの症例報告は,この眼科領域における報告のほかに見あたらなかつた。眼科分野における報告の中においても昭和30年(1955)における岩沢の報告以降本邦眼科文献における報告例はみられず,本症は特に近年においてはまれなものと思われるのでここに症例の報告をする。

Down症候群の眼症状

著者: 山下壮之助 ,   中村晋作 ,   柿本末人 ,   中村正

ページ範囲:P.1292 - P.1299

緒言
 Down症候群はLangdon Down1)が1866年にMongolismなる名称を用いて詳しく報告した先天性疾患で,知能発達障害や骨格の異常に加えて,一見蒙古人に似ているということでDownにMongolismと呼ばしめたように特有の顔貌で知られている。1959年,Lejeuneら11)により本症の染色体の異常が発見された。また眼症状についても古くから瞼裂異常,眼瞼内反,内皆贅皮,眼振,斜視,眼瞼結膜炎,虹彩斑点,白内障,屈折異常,まれには円錐角膜,黄斑円孔等が報告されている。しかしこのような眼症状の報告はほとんど外国からのもので,わが国では1961年の丸尾13),丸尾・浜田14)の報告以外は,つい最近渡辺・黒住20)が報告しているにすぎない。
 著者らは1968年からDown症候群60数例を観察し,そのうちの約半数は数年間にわたる経過を追求している。本症について若干の知見を得ることができたので報告する。

単純ヘルペス性角膜炎の臨床的観察—その2重症例について

著者: 田中直彦 ,   石川凛子 ,   横山志津子

ページ範囲:P.1301 - P.1306

緒言
 前報1)において単純ヘルペス性角膜炎HerpesSimplex Keratitis (HSKと略)の経験例100眼における年齢分布,季節的変動,併発症,再発性や角膜の病像について統計的観察をなし,その結果をまとめ総括的に記載した。
 これらの症例の中には片眼性であるが,角膜白斑,Descemetocele,前房蓄膿性深部角膜炎,穿孔等の重篤な角膜病変を示したものが8眼あつた。本報においてはこれらの重篤な所見を示した個々の症例の臨床所見とその経過について記載し,これらの問題点について述べる。

結核性角強膜炎に対する手術的治療の症例

著者: 石川昭 ,   木村睦子

ページ範囲:P.1307 - P.1310

緒言
 現在,結核性病変に対し4種の抗結核剤,その他薬物投与および安静,高栄養等,保存的治療が,一般化されている。今回,角膜辺縁に接して認められた結核性角強膜炎に対し,抗結核剤の使用とともに結節摘出術を行ない,その欠損部に保存強角膜を移植した結果,良好なる成績を得たので報告する。

ポータブルERGユニットについて

著者: 野寄喜美春 ,   儘田直久 ,   天野清範

ページ範囲:P.1311 - P.1313

緒言
 ERGは生体の電気現象を応用した他覚的検査法であるが,現在までの広範な研究上の知見に比して1)臨床的適応の範囲は存外少ないようである。これはERGが網膜全体のマス・レスポンスであつて,フォーカルレスポンスでないという根本的な問題のため局所病変の診断に用いられないこと,また実際にはその操作が実験室的複雑さがあり,特にノイズの除去にかなり大きな問題があつたこと等によると考えられる。しかし一方に臨床応用という面から考えると唯一の網膜機能の他覚的検査法であり,たとえば網膜病変であるか否か,あるいは透光体が混濁して透見不能のとき網膜の機能を推定したいとき,または色素変性の初期等の診断には他の自覚的検査法,たとえば視力,視野以上に有効な検査法といえる。
 そこで前述のように従来のERG検査に伴う複雑さ不安定さを除き,また検査時間の短縮を行なうことができれば,上記のような利点を強調し広く用いられる可能性が大である。

光凝固に対して特異な経過を示した糖尿病性網膜症における大静脈瘤の一例

著者: 福地悟 ,   鈴木康彦

ページ範囲:P.1315 - P.1320

緒言
 糖尿病性網膜症における静脈のビーズ玉状拡張(beading)は,若年ないし中年の病期の進行した患者に時々見られる所見であるが,このビーズ玉状の静脈拡張の極度進行型とも見られる大静脈瘤の症例に遭遇し,これに光凝固療法を行なつたところ,特異な経過をたどつたので,ここに眼底写真とともに報告する。

私の経験

白内障手術にさいして行なつた塩酸プロカイン球後注射によるショック死の一例

著者: 原たか子 ,   原孜

ページ範囲:P.1325 - P.1332

緒言
 今回,私たちは白内障手術のさいに行なつた2%塩酸プロカイン(商品名オムニカイン,第一製薬製)2mlの球後注射によりショックを生じ,蘇生術を試みたにもかかわらず死に至つた症例を経験した。
 今日,塩酸プロカインは,塩酸リドカインとともに各科領域において最も広く使用されている薬剤であり,他家への警鐘となすためにも,今回の私たちの症例を公表することは意義あることと考え報告する次第である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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