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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科27巻12号

1973年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・194

潜在眼球症候群

著者: 井出醇

ページ範囲:P.1357 - P.1358

〔解説〕
 Cryptophthalmos潜在眼球とは,上下の眼瞼も,瞼裂もなく,眼窩口はひとつづきの皮膚で覆われ,皮下に発育の異常な眼球の潜在するものをいうが,ほとんどのものが他にも奇形を合併する。そこで,以前には独立した一疾患と考えられていたCryptophthalmosも,最近ではmalformative syndrome with CryptophthalmiaとかCryptophthalmos-syndactyly syndromeとか呼ばれる症候群の一つの部分症と見なされるものが大部分であると考えられるようになつた。
 同様に病因についても,これまでは羊膜索の圧迫による眼瞼の形成障害に続発するものとする説が有力であつたが,今日では染色体異常と解釈される傾向にある。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のためにその5糖尿病と眼(網膜症について)

著者: 小坂樹徳 ,   福田雅俊 ,   石川清 ,   谷道之 ,   鹿野信一

ページ範囲:P.1360 - P.1373

糖尿病と網膜症の頻度
 鹿野(司会)今日は内科の小坂先生をお迎えして,「糖尿病と眼」の話をすることになりました。小坂先生は,内科でもことに糖尿病の専門家といわれる方なので,眼科としてはわからないことがたくさんありますのでこれからいろいろ教えていただこうと思います。ひとつよろしくお願いいたします。
 福田先生,谷先生,石川先生,みんな糖尿病の専門家ですから,きつとおもしろい話がうかがえることと思います。正確でなくても,科学的な根拠がないようなものでも,感じだけでもいいですから意見をどんどん吐いていただきたい,それが座談会の一つのいいところだろうと思いますので,ひとつよろしくお願いいたします(読者の方もそのおつもりで)。

臨床実験

潜在眼球症候群

著者: 井出醇

ページ範囲:P.1375 - P.1385

緒言
 Cryptophthalmos,潜在眼球とは,眼瞼および瞼裂を欠き,眼窩口は前額部より上顎部に至る連続した皮膚により覆われ,眼窩内に発育異常な眼球の潜在するものをいう。1872年Zehender,Manz1)が第1例を報告して以来世界的には約50例の報告があるといわれる2)が,実際にはもつと多いものであろう。事実,本邦だけでも1911年大西3)の第1例以来今日まで18の報告で21例4)〜20)を数えるほどである。しかし単眼症などと較べてもきわめてまれな先天異常であることは確かである。表題のmalformative syndrome with cry—ptophthalmiaとは1965年François21)が(1)潜在眼球,(2)頭蓋骨や顔面の奇形,(3)合指症,(4)性器奇形,の四主徴をもつて一つの症候群と見なし,これを命名したものである。このたび著者は本症候群の1例に遭遇し,臨床的な観察とともに組織学的検索を行なう機会にも恵まれ,2,3の知見を得たのでここに報告する。
 生後間もない典型的なCryptophthalmosの完全な1個の眼球が手に入つたのは,わが国ではもちろん初めてのことで,世界的にもほとんどその例を見ない。

抗生物質によるベーチェット病の治療

著者: 国司昌煕

ページ範囲:P.1387 - P.1392

緒言
 ベーチェット病の病因については,ウイルス説1)〜4),細菌説,アレルギー6)7)ないしは自己免疫説,あるいは膠原病の範疇に入れる考え方9)など諸説があり,したがつてその治療に関しても,ありとあらゆる薬剤が試みられてきたといつても過言ではない。
 抗生物質は過去勢力的に使用された時期もあつたが,その効果については疑問視されたまま現在に至つている。はたしてベーチェット病にはすべての抗生物質が無効なのであろうか。著者はさきにテトラサイクリン系の抗生物質で,効果が期待できそうであることを述べた10)が,その後の症例を加えてここに報告する。

眼底カメラの多目的利用—その1網膜上チャート投影法

著者: 堀内二彦

ページ範囲:P.1393 - P.1398

緒言
 螢光眼底撮影,赤外吸収血.管造影撮影,立体撮影,両眼同時眼底撮影など,眼底Cameraを単なる眼底所見記録装置にとどめず,多目的に用いることが盛んに試みられているが,本来の眼底Cameraの精度を低下させないかぎり,これは意義があることと考え,今回著者は,OlympusCamera GRCの光路内に,Focus微調節を付けた網膜上chart投影装置を試作し,その利用価値について検討したので,ここに報告する。

除草剤グラモキソン(Paraquat)による角結膜のChemical burnの1例

著者: 藤田邦彦

ページ範囲:P.1399 - P.1401

緒言
 グラモキソン(Gramoxone)はParaquatを含んだ強力な除草剤で,英国等では1960年代より,日本では1970年代より使用されている。著者はこのグラモキソン原液(24%)を両眼に誤入した結果,酸による角結膜のChemical burnと同様の変化,すなわち急性カタル性結膜炎および角膜ビランを伴つた症例を経験したので報告する。

Xenon光凝固による網膜静脈枝血栓症の治療—第2報光凝固の奏効機序について

著者: 菅謙治 ,   永田誠

ページ範囲:P.1403 - P.1408

緒言
 第1報1)においては網膜静脈枝血栓症の病態,光凝固の網膜組織におよぼす影響,光凝固方法,治療成績,光凝固施行時期などについて報告したが,本報においては光凝固の奏効機序について報告したい。
 奏効機序については,すでに清水,Krill,福地,瀬戸川らによつて諸説が提唱されているが,著者らはこの度新しい機序をも推定するに至つたので,この新しい機序を提案するととも奏効機序一般について考察を行なつてみた。

角膜小斑状混濁を合併したRelapsing Polychondritisの1例

著者: 大口正樹 ,   村井恭子

ページ範囲:P.1413 - P.1416

緒言
 1923年にJaksch-Wartenhorstが手足の関節の腫脹,疹痛,耳介,鼻の変形を示した32歳の男性をPolychondropathiaとして報告した1)。その後,1960年にカリフォルニア大学のPearsonは反覆性に起こる全身の軟骨の系統的疾患をRelapsing polychondritisとして総括することを提案した2)。この反覆性多発性軟骨炎は耳鼻科的および呼吸系の障害から死亡することもまれではないため3),耳鼻科および内科領域での報告は散見されるが,眼科医にとつてはきわめてまれな疾患である4)。われわれは角膜実質表層の小斑状混濁,上強膜炎,漿液性虹彩炎という比較的特徴的な眼所見を呈したRelapsing poychonldri—tisの1症例を経験したので報告する。

糖尿病性網膜症と線溶能

著者: 三根亨 ,   渡辺良子 ,   千原小夜子 ,   坂田道子

ページ範囲:P.1417 - P.1423

緒言
 著者1)はさきにBehçet症候群患者の線溶能を一年あまりにわたつて測定して,その変動について報告したが,その後糖尿病性網膜症をはじめ,その他2〜3の眼疾患について線溶能を調べたので,その結果を報告する。
 線溶能の動きを見る場合,同時に凝固系の変動も考慮に入れなければならない。それはこれらの酵素系が常に一定の状態にあるものではなく,凝固系の亢進のあつた場合には必ず代償的に線溶能の亢進が起こり,これらが一定期間続けば再び代償的に凝固系の亢進あるいは線溶系の低下が起こるからである。生理的な状態ではこのような動きの幅は少ないが,糖尿病や炎症,腫瘍等の場合にはその振幅が大きく,また止血剤や抗炎症剤の投与による影響も考えられ,1回あるいは数回の検査結果で長期間の線溶能を推定することは不可能である。

CORDES眼科學会特別講演

Acute Hemorrhagic Keratoconjunctivitis, A New Type of Keratoconjunctivitis in Japan

著者: 中泉行信

ページ範囲:P.1410 - P.1411

 今般アメリカのCORDES眼科学会より3月に開かれた総会に外人講演者として指名招待された。今年はCORDES眼科学会の25周年記念学会ということと毎年どこかの国から外人講演を指名しているが,アジヤからはこれが初めてであるので躇躊したが,関西医大塚原教授,日本医大小口教授のおすすめで招待をお受けし,カリフォルニヤのボヘミアングローヴでの学会場で講演した。
 以下は1973年3月CORDES眼科学会で講演したものである。ここに絶大なるご指導を賜わつた関西医大の塚原教授に深く感謝すると同時に各種の文献ご助言を頂戴した東京女子医大内田教授,日本眼科医会理事木村泰三博士,日本医大小口教授,清水助教授,順天堂大糸井助教授,埼玉医大野寄教授ならびにU.C. Eye SOCIETY IN JAPANのメンバーの各先生方に厚くお礼申し上げる次第である。

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臨床眼科 第27巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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