icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科27巻2号

1973年02月発行

雑誌目次

特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その2)

第26回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.122 - P.122

講演
視神経乳頭部の先天異常について―朝顔症候群と乳頭部
 第一次硝子体過形成遺残―………………植村恭夫・他…128
成人にみられた高濃度酸素による不可逆的眼障害………河崎一夫・他…137

学会原著

視神経乳頭部の先天異常について—朝顔症候群と乳頭部第一次硝子体過形成遺残

著者: 植村恭夫 ,   森実秀子 ,   池山恵子 ,   田中靖彦

ページ範囲:P.128 - P.136

緒言
 日常の眼科診療において,従来の成書に記載されている分類や病名にあてはまらない症状を示すものに遭遇することがある。ことに,先天性眼異常においてはそのことが多い。文献を調べてみると,その類似症候を示すものにつきあたることはあるが,まちまちの名称がつけられている。また,その症状が経過とともに変化するものがあり,その実体を捉えるには,数年の経過をみる必要のあることもある。このような分類,名称の不明,あるいは同一疾患を別個の名称でよばれているようなものは,これらの症例を丹念に集め,その特徴的な所見を明らかにし,病理組織学的の検索,さらには原因を究明し,名称,分類を確立してゆく必要がある。著者らは,すでに2,3の先天異常については,以上の研究方法によつて新しい病名,症候群を発表してきたが,今回は,視神経乳頭部の異常のなかで,小児の網膜剥離との関連において注目されており,Morning glory syn—drome Posterior hyperplastic primary vitre—ousなどの名称で報告されているものについて症例をあげて報告し,いささか論じてみることとする。

成人にみられた高濃度酸素による不可逆的眼障害

著者: 河崎一夫 ,   奥村忠 ,   田辺譲二 ,   米村大蔵 ,   西沢千恵子 ,   山之内博 ,   中林肇 ,   東福要平 ,   遠山竜彦 ,   村上誠一 ,   小林勉

ページ範囲:P.137 - P.140

緒言
 高濃度酸素吸入によつて不可逆的眼障害をきたしうる疾患として,未熟児網膜症が知られている1)。本症では網膜血管が著しく狭細化する。成人においても高濃度酸素吸入によつて脳および網膜の血管が狭細になると報告された2)。この狭細化は,高濃度酸素吸入を止めた後には消失した(可逆的)2)。成人で高濃度酸素吸入によつて網膜血管の不可逆的狭細化をきたしたという報告はまだないようである。本報では,生命維持のため止むをえず高濃度酸素を長期にわたり吸入した重症筋無力症成人患者で起こつた網膜中心動脈(central retinal artery,CRAと便宜上記す)の白線化などの著しい眼底異常を記し,成人においても長期にわたる高濃度酸素療法は不可逆的眼障害をきたすおそれがあることを指摘したい。

南九州における眼トキソプラスマ症の検索

著者: 谷口慶晃 ,   益山芳正 ,   佐藤淳夫

ページ範囲:P.141 - P.145

緒言
 近年ブドウ膜炎ないし網膜脈絡膜炎の病因の一つとして,トキソプラスマ症が重要視されるに至つている。1908年,北アフリカで山あらしから発見されて以来,トキソプラスマ原虫は世界各地の人獣に寄生していることが報告されており,本症は一般に熱帯地方に多く,寒冷および乾燥地帯に少ないといわれている。
 特に,南九州は本土最南端に位置しており,高温多湿な気候であるため,当然その浸潤度は他の地方に比較して高いと考えられる。そこで,われわれは1970年および1971年の過去2年間に鹿児島大学眼科外来を受診した患者について,眼トキソプラスマ症の統計的観察を行ない,南九州における本症の疫学的実態を明らかにし,興味ある知見を得たので報告する。

光凝固および冷凍術による脈絡膜血管腫の1治験例

著者: 横山実 ,   近藤紀次 ,   津坂洋子 ,   森正宏

ページ範囲:P.149 - P.155

緒言
 脈絡膜血管腫は,末期に角膜変性,白内障,眼内出血,ブドウ膜炎,続発性縁内障を起こし,治療法に関しては確実なものがなく,眼球摘出するしか方法はないとされている。しかしながら,続発性緑内障をきたす前に脈絡膜血管腫の診断が下される場合には,ジアテルミー凝固,光凝固および放射線療法がしばしば有効であると多くの人々により報告されている。最近,われわれは孤立性の脈絡膜血管腫と思われる1例に光凝固および冷凍凝固を用いて治癒せしめ得た症例を経験したので報告する。

糖尿病性網膜症におけるERG律動様小波面積値の検討

著者: 藤永豊 ,   瀬戸川朝一 ,   玉井嗣彦

ページ範囲:P.157 - P.162

緒言
 人眼ERG律動様小波の計測では,その振幅を求めるwavelet indexとしてAlgvere1)2),宇佐美8),米村ら9)10),Brunette3)等の報告があるが,われわれ4)〜6)はその面積値を計測することにより,律動様小波消長へのアブローチを行なつてきた。今回は特に陰性の振れの面積値を求め,各面積値とwavelet indexを比較検討した。

上顎癌放射線治療後にみられた放射線網膜症について

著者: 吉岡久春 ,   木原秀司

ページ範囲:P.163 - P.169

緒言
 放射線療法の発達にともない,今日では多くの領域で放射線療法が悪性腫瘍の治療に用いられ,その効果とともに,反面放射線による合併症もみられている。就中,眼科領域でも,前眼部,水晶体に対する放射線障害については,以前から多数の報告があり,周知の事実であるが,放射線が網膜に及ぼす障害,すなわち,放射線網膜症については,Moore (1935)10)が最初に報告して以来,数氏の報告があるが,あまり注意されていない。
 近年眼組織の悪性腫瘍に関する治療として,60Coが多く使用されるようになり,その報告例も次第に増加し,Bedford,Bedotto,Macfaul(1970)1)らは,眼内新生物に対する放射線治療後は,放射線網膜症の発生に注意する必要があることを強調している。また,眼組織以外の悪性腫瘍でも,その放射線治療のさい,放射線が眼組織に影響することがあり,このような場合にも,放射線網膜症の発生に注意する必要があるが,いまだあまり注目されていないように思われる。事実,今日までに,眼組織以外の部位の悪性腫瘍の放射線療法後に本症を起こした症例の報告2)3)6)8)9)10)12)13)が発見されるにすぎない。しかもこれらの報告では本症発生の注意についてはあまり強調されていない。またこれらの報告例をみると,使用放射線はX線,または60Coによるものが主で,ライナックによるものは田中らの14)報告をみるにすぎない。

螢光漏出点のない中心性網膜炎の漏出点発見法(水負荷試験)

著者: 増田寛次郎

ページ範囲:P.171 - P.173

緒言
 螢光眼底検査で中心性網脈絡膜炎に,1個ないし数個の螢光漏出点が認められることはすでに良く知られているところである。しかし,この螢光漏出を認められない例もごくわずかであるが存在する。螢光漏出点の発見は,中心性網脈絡膜炎,増田型の診断には非常に重要な決め手であるばかりでなく,この螢光漏出点を光凝固することにより高い治癒率を,しかも短期間に達成できるようになつた。しかし漏出点のわからない例は,その光凝固をする目標がないために,薬物療法を行なうか,あるいは特にあやしい点,たとえば検眼鏡的に色素の異常を認める所とか,螢光眼底検査で螢光のはつきりした漏出点は認められないが,なんとなくむらむらした異常螢光像を認める所を目標としたり,網膜浮腫内で乳頭よりでない部位を光凝固したりしているのが現状である。しかし,このようにして光凝固した例では再発例が多いこと,治癒がながびくこと等があり,はたしてこれらのあやしい点が本当の漏出点であつたのか疑わしいものである。今回,このような螢光漏出点がはつきりしない例の漏出点をはつきりさせるべく一つの試みとして,水1000ml飲んで飲水負荷を行ない,その後30分から1時間たつて再び螢光眼底検査を行ない,少ない例であるが,最初の螢光眼底検査ではつきりしなかつた場所に明瞭に漏出点を認め,この点を光凝固することにより治癒した。

若年者にみられた網膜中心静脈閉塞症症例の検討

著者: 山之内夘一 ,   高久功 ,   中塚和夫 ,   舌間宴

ページ範囲:P.175 - P.188

緒言
 網膜中心静脈血栓症に関しては,これまで統計的観察,病理組織学的研究,実験的研究があり,さらに近年は螢光眼底撮影法の導入により血行動態の観点から詳細な研究が行なわれ,この分野における多くの新知見が得られている。しかし対象の多くは高血圧,血管硬化,糖尿病などによると考えられる中年以上の網膜中心静脈血栓症についてであり,40歳未満の症例もそれらの中に含まれているとはいえ少数で,高齢者の場合と40歳未満の若年者の場合を同一に論ずることには問題がある。われわれはさきに若年者にみられた一側性網膜血行障害について報告し23),静脈に由来するもの2例,動脈に由来するもの2例についてのべ,静脈性のものはともにVasculitisが考えられ,血管変性より血管炎に留意すべきことを強調した。今回はさらに若年者の中心静脈閉塞症例をふやし,検討を加えたのでここに報告する。

Stargardt型黄斑部変性症に試みた螢光眼底像と光凝固

著者: 向井正直

ページ範囲:P.189 - P.194

緒言
 思春期に発症し,その後緩徐な経過を辿りつつ次第に視力低下をきたし,絶えず失明の危機にさらされているStargardt型黄斑部変性症に対しては,現在のところ他の遺伝性網膜変性症とともに的確な治療法がない。
 1966年Braley1)は,3例の黄斑部変性症に光凝固術を行ない,2例に好結果を得,慎重に試みるならば変性病巣の進展を阻止し,かつ視力改善をもたらし希望のもてる療法の一つとなるであろうと述べている。

網膜静脈血栓症における網膜血管新生について

著者: 福地悟 ,   浅山盾夫

ページ範囲:P.195 - P.204

緒言
 網膜静脈血栓症において見られる網膜血管の拡張や新生は,近年螢光眼底血管造影法の開発や網膜トリプシン消化法,電子顕微鏡等の病理組織学的研究の進歩により,従来単に検眼鏡のみの観察で認められていた以上に,より広範にかつ多彩に発達しているものであることが明らかになつてきている。網膜静脈血栓症において出現する網膜血管の拡張や新生は,循環障害による網膜のHy—poxiaを補わんとする生体防御反応にほかならず,個々の症例において示されるさまざまな血管拡張あるいは血管新生の様相は,循環障害の範囲や時間経過,さらには病態改善の予後をも示唆しており,重視されるべき所見である。著者らは1971年の第25回日本臨床眼科学会において,25眼の網膜静脈血栓症に対して抗凝血療法と光凝固の併用療法を行なつて,網膜浮腫の消退,視力改善に著効をおさめた治療成績を報告したが1),その後さらに症例がふえて1972年10月1日現在までに,42名43眼の網膜静脈血栓症を上記の方法により治療し,経過を観察している。これら43眼の症例について,さまざまな網膜血管拡張あるいは新生の発生過程が観察でき,さらにこれら新生血管が光凝固を施行することにより種々の変容を示し,光凝固が加えられる部位と範囲によつて一定の型式で変化し消退していくことが判明した。これらの知見をここに報告する。

中心性網脈絡膜炎における循環動態の検討—容積脈波よりのApproach

著者: 安藤文隆 ,   矢部義昌 ,   中道五郎

ページ範囲:P.205 - P.218

緒言
 中心性網脈絡膜炎(増田型)の発症部位については,近年細隙灯顕微鏡による精査,螢光眼底写真の発達,および光凝固療法による病巣の変化等により,ほぼ確定した感がある1)〜5)。しかしその原因については,不明の血管障害によるものとの考え方が有力ではあるが,現在なお不明である。
 今回著者らは,中心性網脈絡膜炎患者の胸部X線写真,および光電式指尖容積脈波(以下脈波と略記)より,興味ある所見を得たので報告する。

連載 眼科図譜・184

Two Cases of Cystoid Macular Edema Following Cataract Extraction (Irvine-Gass Syndrome)

著者: 高橋寛 ,   内田璞

ページ範囲:P.125 - P.126

〔解説〕
症例1:68歳女
初診時診断:両眼後嚢下白内障

学会印象記

第26回日本臨床眼科学会

著者: 鈴木宜民

ページ範囲:P.221 - P.224

 第26回日本臨床眼科学会は去る10月21(土),22(日)の両日,横浜市紅葉が丘の県立音楽堂を中心会場として,横浜市大眼科学教室および神奈川県眼科医会の主催のもとに開かれた。その時の印象記をとの本誌編集子からの依頼であるが,考えてみればこれははなはだ責任の重い仕事である。しかし引き受けたからには私なりに見たこと,聴いたことについて,できるだけ率直に,かつくわしく書いてその責任をはたす必要がある。このことに関しては,従来も学会の都度,それぞれの人がその印象記を書いている。しかし今までは主として個々の口演内容の紹介あるいは質疑等について重点がおかれてきた感がする。今回はそういつた従来の印象記と異なつて,学会に参加して受けた印象そのものを主にしてほしいとの編集子の注文である。そこで私もその線にそつて,印象の薄くならないうらにと考えたわけであるが,それはなかなか簡単なものでない。全会場を見て回つたわけではないから,どの程度に学会の雰囲気というようなものを掴み得たかはなはだ心もとない。限られたものにならざるを得ない。この点は幾重にもお含みいただきたい。
 今回の学会で最初から私の最も感じたことは,神奈川県眼科医会の先生方がすごく協力をされていたのではないかということである。

臨床実験

動眼神経麻痺の経過中にみられた瞳孔の異常連合運動について

著者: 大野新治 ,   向野和雄

ページ範囲:P.229 - P.239

緒言
 動眼神経麻癖の経過中に同神経支配下の筋にみられる異常連合運動は,1879年Gowers1)によつてはじめて報告されたものである。しかしその論文では瞳孔の異常に関しては全くふれられていない。その後Fuchs (1895)2)は,この動眼神経支配下の外眼筋相互間の異常連合運動のほかに,瞳孔と外眼筋との間にも,異常連合運動がみられることがあるのを指摘し,注目をひいた。その後も筋相互間の異常連合運動の報告は多く,最近では筋電図学的検査も行なわれるに至つている3)4)。しかしながら瞳孔と眼筋との異常連合運動に関しては一般の関心も薄く,眼筋相互間の異常連合運動の報告に付随して簡単にふれられているだけであり,きわめて不十分な記載があるにすぎない。ただFord,WalshとKing (1941)5)は特に瞳孔の異常神経支配にも言及していて,注目に価するが,これとても詳細なものではない。
 われわれも先に外眼筋の異常連合運動の9症例に筋電図学的検索を加え,瞳孔の異常についても簡単に言及した6)。今回はこの9症例中先天性の異常連合運動の1例を除いた8例と,ほかにその後経験した2症例を加え,あわせて10例について特に瞳孔の異常連合運動に留意して,写真撮影による検査を行なつたところ,10例中6例に明らかな瞳孔の異常連合運動を発見した。

眼・光学学会

新型細隙灯顕微鏡について

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   長谷川弘 ,   田尾森郎 ,   児玉明彦 ,   加藤尚臣

ページ範囲:P.241 - P.244

緒言
 細隙灯顕微鏡は日常の眼科診療において,もつとも使用頻度が高く,また眼光学器械としても基本的なものである。しかも絶えまない改良が行なわれ,その付属装備も発達し,写真撮影が可能なものも市販されている1)。最近では,進歩した光学技術をもとにして国産の細隙灯顕微鏡が市販されているが,いまだに外国製品とくにHaag—streit,Goldmann900が,もつとも高い評価を得ている。この顕微鏡は約16年前に発表されたものでありながら,他の追従を許していない。たとえばAmerican Optical製,Campbell型細隙灯顕微鏡は,1964年に発表されたものであり,Goldmann型を研究し,とくにスリットの輝度を高めたものであるが,その操作性が劣ることからGoldmann900ほど普及していない。また細隙灯顕微鏡として古い歴史をもつ西独Zeiss社のLittman型顕微鏡も,1965年にそのステージをGoldmann型に改良し,操作性を改善した。
 このように最近の細隙灯顕微鏡にたいする要求を考えてみると,とくに操作性を重視する傾向がある。この点で,Haag-Streit社の顕微鏡の光学系が,他のもの,たとえばZeiss社製に比して,すぐれているわけではないが,その操作性がきわめてよいために普及したものと考えられる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?