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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科27巻2号

1973年02月発行

文献概要

特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その2) 学会原著

上顎癌放射線治療後にみられた放射線網膜症について

著者: 吉岡久春1 木原秀司1

所属機関: 1久留米大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.163 - P.169

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緒言
 放射線療法の発達にともない,今日では多くの領域で放射線療法が悪性腫瘍の治療に用いられ,その効果とともに,反面放射線による合併症もみられている。就中,眼科領域でも,前眼部,水晶体に対する放射線障害については,以前から多数の報告があり,周知の事実であるが,放射線が網膜に及ぼす障害,すなわち,放射線網膜症については,Moore (1935)10)が最初に報告して以来,数氏の報告があるが,あまり注意されていない。
 近年眼組織の悪性腫瘍に関する治療として,60Coが多く使用されるようになり,その報告例も次第に増加し,Bedford,Bedotto,Macfaul(1970)1)らは,眼内新生物に対する放射線治療後は,放射線網膜症の発生に注意する必要があることを強調している。また,眼組織以外の悪性腫瘍でも,その放射線治療のさい,放射線が眼組織に影響することがあり,このような場合にも,放射線網膜症の発生に注意する必要があるが,いまだあまり注目されていないように思われる。事実,今日までに,眼組織以外の部位の悪性腫瘍の放射線療法後に本症を起こした症例の報告2)3)6)8)9)10)12)13)が発見されるにすぎない。しかもこれらの報告では本症発生の注意についてはあまり強調されていない。またこれらの報告例をみると,使用放射線はX線,または60Coによるものが主で,ライナックによるものは田中らの14)報告をみるにすぎない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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