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雑誌目次

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臨床眼科27巻3号

1973年03月発行

雑誌目次

特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その3)

第26回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.262 - P.262

講演
EDPによる螢光眼底像の解析………………岡野 正・他…268
緑内障手術(Scheie手術,Walser手術,周辺虹彩
 はめこみ術,虹彩切除術)その1,緑内障手術の
 白内障進行に及ぼす影響とその原因について………………菅 謙治…277

学会原著

EDPによる螢光眼底像の解析

著者: 岡野正 ,   川島忠昭

ページ範囲:P.268 - P.276

緒言
 螢光眼底造影では,頻回撮影記録装置を利用することによる循環動態の解明のほか,螢光漏出(extravasation)や,microangiographyとして微小循環系の血管構造を把握することがその主な特色となつているが,その定量的解析はほとんど行なわれておらず,コンピューターによる濃度測定も実験的には試みられてはいるものの,まだ実用化の城には達していない。われわれは,EDP(equidensitmetric processing scanning mi—croscope)1)による螢光像の解析を試みた結果,これにより,眼底組織内の螢光色素を等濃度曲線としてとらえることに成功したのみならず,従来異論の多かつた螢光造影法上の諸問題の解釈に新知見を得ることができた。EDPが螢光造影の新しい日常的な補助方法であることを具体的に例示するとともに,具体的な問題についてのわれわれの解釈を以下に述べたい。

緑内障手術(Scheie手術,Walser手術,周辺虹彩はめこみ術,虹彩切除術)—その1.緑内障手術の白内障進行に及ぼす影響とその原因について

著者: 菅謙治

ページ範囲:P.277 - P.286

緒言
 緑内障手術後のもつとも大きな合併症の一つとして術後に発生または進行する白内障がある。この白内障には2種類があつて,
(1)術後2〜3週間以内に水晶体全体が混濁してしまうもの。

巨大裂孔を伴つた網膜剥離眼の治療成績

著者: 高橋明 ,   稲原明肆 ,   百々次夫

ページ範囲:P.287 - P.295

緒言
 自発網膜剥離に対する手術術式の進歩は,本疾患全般の復位成績の向上に大きく寄与したが,難治条件をもつ症例のそれはなおはるかに低い水準に低迷している。難治条件の一つに巨大な裂孔があるが,これは比較的若年者にみることが多く,とるべき術式に苦慮せざるをえないものもある。Schepensらは経線範囲が90°以上にわたるすべての裂孔を巨大裂孔と定義して,その多数例について治療の方法と成績を報告しているが,その復位成績はやはり十分に満足すべきものとは思われない。私どもも最近約10年間にとり扱つた網膜剥離治療例において,Schepensの定義による巨大裂孔をもつものを集計して17人17眼をえたので,その概要を報告する。

明順応野をとりつけたアノマロスコープ

著者: 深見嘉一郎 ,   藤井徹

ページ範囲:P.297 - P.299

 色覚異常の検査には二つの方向がある。その一つは生理学的に被検者の色覚を測定するものであり,もう一つは適性を定めるための検査である。後者の目的には,Panel D−15やランタン・テスト等が用いられ,前者の目的の検査にはアノマロスコープがその主軸をなすといえる。2色型色覚と異常3色型色覚の正確な鑑別は今のところアノマロスコープによる以外によりよい方法はない。
 ところがこのアノマロスコープの検査法が大変むずかしいものであり,測定結果の信頼性がしばしば議論の的となる。それというのも,この検査はあくまでも被検者の応答にたよるものであり,被検者がおおまかな答えをする時は大変測定しにくいものだからである。その上被検眼を常に明順応状態におくことが必須の条件である。そのために,被検者は眼を均等野と明順応野とに交互に向けねばならず,この種の測定になれていない被検者はまごまごして,いたずらに時間をついやし,疲労するのみである。

視神経疾患の診断治療における中心フリッカー値測定の意義について

著者: 大鳥利文 ,   中尾雄三 ,   当麻信子 ,   真鍋礼三

ページ範囲:P.301 - P.310

緒言
 ちらつき光が融合する限界における光刺激の単位時間の頻度(Critical Fusion Frequency,以下CFFと略す)測定の視神経疾患への応用についての歴史をふりかえつてみると,第1表のとおりである1)〜20)。まず,Braunstein1)は1903年視神経疾患をはじめ各種の眼疾患患者の中心CFFを測定し,1933年Phillips2)は視交叉部腫瘍にフリッカー視野(Flicker Fusion Field,以下FFFと略す)測定を応用している。
 その後,1930年代のGranit21)〜26),Hecht21)〜28)Crozier29)らの生理学的研究によりフリッカー光のCFFについての生理が解明された30)31)

明度識別フリッカー視野における光波長特性の臨床的研究

著者: 山岨三樹

ページ範囲:P.311 - P.324

緒言
 Tübinger Perimeterを用いた研究を,今までに教室においてすでに,古田氏1)が「網膜各部位における明度識別閾値」,「光波長特性」を,藤堂氏2)は「フリッカー明度識別閾値」に関する基礎研究とその臨床的応用を,さらに遠藤氏3)は「光波長特性に関する臨床的研究」をそれぞれ発表してきた。著者は,今回この分野の研究をさらに発展させることを目的として実験したので,その成績について報告する。
 これまでの文献によると,フリッカー視野は,中心部のフリッカー検査が多く,視神経疾患にて,中心部のフリッカー機能低下が認められている。また色フリッカーについては外間氏6)の研究があり,色フリッカー値により,病巣が視交叉前または視交叉以降のいずれにあるかの鑑別をされている。

瞳孔の近見反応に関する研究—第2報瞳孔の病的近見反応に関する研究(その2)頭頸部外傷症候群の瞳孔の近見反応の分類ならびに頸部交感神経との関連について

著者: 清水春一

ページ範囲:P.325 - P.329

緒言
 第2報(その1)1)で病的な瞳孔の近見反応と輻湊との関係について検討を加えたが,頭頸部外傷症候群にみとめられる瞳孔の近見反応と輻湊運動との関係を4群に分類し,この各群患者の訴える不定愁訴を調べたところ,不定愁訴と瞳孔の近見反応との間には密接な関連があり,また,本症患者に対して頸部交感神経Block (星状神経節遮断)を行ない,瞳孔の近見反応機構に興味ある知見を得たので報告する。

新作他覚的調節測定装置とその臨床応用

著者: 久保田伸枝 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.331 - P.337

緒言
 視力を正しく測定するためには,視標の位置に正しく調節しているかどうかを確認することが必要であるが,従来の方法ではそれを簡単に確認することができなかつた。また,他覚的に調節を測定しようとする試みはなされてはいるが,まだ試験的な段階であつて,調節状態を簡便容易に把握できる方法はない。
 今回,視標を固視しているときの調節状態を他覚的に測定する装置を新たに老案した。この装置により正常者を検査したところ,調節量を正確に測定することができ,また,技術的にも非固視眼の屈折力の変化をレフラクトメーターで測定するだけの簡単なものであるから容易であり,臨床応用が可能であることが確かめられたので,ここに報告したいと思う。

PEAGによる調節機能の研究

著者: 鈴村昭弘 ,   谷口正子 ,   寺田邦昭 ,   水谷晃

ページ範囲:P.339 - P.347

緒言
 眼精疲労,屈折異常の診断,あるいは眼疲労測定に調節機能の測定は欠くことのできない検査法である。調節機能の測定は量的なものとして近点の測定,質的なものとして調節時間の測定などがある。調節時間の測定は本邦では萩野にはじまり,その後多くの学者によつて研究されている。筆者らもAccommodo-polyrecorderを試作し,緊張時間と弛緩時間の反復測定により,調節機能の変化を解析し,臨床診断を行なつてきた。しかしこうした調節時間の変動の内容,たとえば緊張時間の作業負荷後の延長という現象は,それが視作業でも,肉体労働でも同様である。ただ反復測定での変化あるいは弛緩時間の変動状態などから総合的に判断し,調節機能の変動に負荷の種類による差を解析している。したがつてこの場合緊張時間の延長そのものに両者の差があるかどうかは必ずしも明確ではない。この点を明確にすれば,臨床的な調節時間の測定結果の評価あるいは治療指針としてもさらに進歩すると考える。
 そこで今回は実験的に,2,3の視作業あるいは肉体運動を負荷し,従来著者らが行なつてきた調節時間の反復測定をAccommodo-polyrecor—der1)(HS−9C)によつて行ない,さらにすでに報告したInfra-red optometerによるphotoElectric Accommodo Gram (PEAG)2)によつて作業負荷前後の調節機能の解析と相互の関係について検討を試みた。

調節曲線の臨床

著者: 中林正雄 ,   前田裕子 ,   嶋本寿 ,   愛川和代

ページ範囲:P.349 - P.353

緒言
 われわれはアコモドメーターを開発して以来,これを臨床的に用いて調節異常者の診断,経過の観察を行なつてきた。最近では乱視の矯正装置を加えたII型(第1図)が完成し,測定の精度を加えた。これらのアコモドメーターによる臨床的成果のうち,今回は興味ある二つの症例を中心としてのべる。

連載 眼科図譜・185

珍しい植物性前房内異物

著者: 井出醇 ,   木村良造 ,   原田正夫

ページ範囲:P.265 - P.266

〔解説〕
 眼部へ飛入した異物は,角・結膜等眼球外にあるものと,硝子体網膜等の眼内異物とに分けられる。また異物の種類により鉱物質,動植物質等に分けて考えることもできる。
 われわれはこのたび葛の蔓が右眼に当たり,多数のとげが球結膜,角膜に刺入し,さらに角膜裂傷を生ずることなく前房から虹彩上にも竄入した症例を経験したので報告する。

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第27回日本臨床眼科学会開催ならびに演題募集のお知らせ

著者: 鈴木宜民

ページ範囲:P.358 - P.359

 第27回日本臨床眼科学会を下記のごとく開催致しますので,ご演題をたまわるようお願いします。

臨床実験

テンシロンテストによる筋無力症の診断—特に外眼筋筋電図によるテンシロン効果の検討

著者: 向野和雄 ,   副島直子

ページ範囲:P.361 - P.369

緒言
 重症筋無力症にみられる眼球運動障害の診断において,テンシロンテストは最も有力な方法であり,その効果判定にはいろいろな方法が考案されている。すなわち,(1)肉眼的方法1),(2) Tensi1lon tonographyd2)〜4),(3)"Tensilon red green—test"5),(4)"Tensilon EOG, ENG4)6)",および(5)"Tensilon EMG"7)〜12)などがある。これらのうち(5)の外眼筋筋電図検査を応用したテンシロンテストは,原理的にみて最も直接的でしかも特異性のある検査法といわれている。
 この"Tensilon EMG"の判定基準には,一般に3種類の方法がある。すなわち,第1にテンシロン静注後約30秒してすでに認められる干渉液における振幅の増大,放電間隔の短縮などをその目標としたもの7)8),第2は外眼筋をその運動方向に働かせ,放電間隔の延長(fatigue phenomenon),振幅の減衰(waning)を引き起こさせておいた後,テンシロンを静注し,その疲労状態の回復をみるもので,第1と同様に干渉波をその判定の目標にするもの9)と,外眼筋よりの単一放電(sin—gle unit)を捉え,その頻度および振幅の減少の回復を目標とするもの10)の2つがある。

全身の神経症状を伴つた網膜中心動脈攣縮症の一例

著者: 月本伸子 ,   茂木劼 ,   井上治郎

ページ範囲:P.371 - P.375

緒言
 全身的に血行障害によると思われる発作を2回経験し,左上下肢のしびれ感と右下肢の痙性麻痺をもつ症例で,突然左眼に霧視の発作が出現した。この症例の眼底を発作後約20時間で見る機会を持ち,後極部一帯に多数のふわふわした白斑を見出した。この眼底所見は非常に珍しく興味深いものであるので報告する。

眼・光学学会

超高感度撮像管を用いた螢光眼底テレビ装置

著者: 滝沢志郎 ,   油大作 ,   加藤康夫 ,   神谷稔

ページ範囲:P.377 - P.380

緒言
 1961年Novotny,H. R., Alvis, D. L.により開発された螢光眼底撮影法は,網膜血管のAn—giographyとして脚光を浴び,現在では広く利用されている1)
 最近眼底網膜循環器系の循環状態の時間的変化を記録解析し,診断治療の情報を得ようとする要求が高まりつつあるが,現在最高といわれる高速螢光眼底カメラを使用しても毎秒3コマ2)では,微細変化を記録することは困難である。この循環状態を記録するには,シネ撮影を行なうか3)〜5),撮像管を用いビディオ信号として取り出しビディオテープに記録する6)かの,二つの方法がある。前者では,そのフィルムの感度が低いため,撮影速度に同期させて非常に高輝度な光源を使用せねばならない7)。また,後者のビディオ記録においても,従来の高感度イメージオルシコンを使用した場合,撮像部が大型となりカメラ操作性および撮像管調整が煩雑化し,その上一般の観察用光源では,通常の白黒眼底記録が限界で,カラーおよび螢光眼底を記録しようとすると,シネ撮影と同様高輝度な光源を必要とした。このため被検者に与える影響は大きく,長時間の観察および記録は困難である。

Slit-lamp用非球面前置レンズ

著者: 梶浦睦雄 ,   橋本洋 ,   高橋文男

ページ範囲:P.381 - P.384

諸言
 従来困難であつた非球面製作法の最近の進歩1)〜4)と相まつて検眼レンズ5),眼底カメラ光学系6)あるいは白内障患者用眼鏡レンズ7)〜8)などに非球面が実用化されるに至つている。
 今回,Slit lampがその立体的観察により前眼部の観察に用いられる他面に,後眼部観察に重要な役割りを果している実情から,マイナス前置レンズに検討を加え,設計製作したので報告する。

抄録

有限距離におけるZero-verging Powerを有するレンズの実験—第1報Overall type iseikonic lenses

著者: 保坂明郎 ,   加藤桂一郎 ,   岡島弘和 ,   松居和男

ページ範囲:P.385 - P.385

 注視点を眼前有限距離に置いた場合の角倍率の式,またこの場合にZero-vergingになるための条件をもとにして,注視点が前後に移動しても角倍率が変化しない条件を加味してoverall type iseikonic lensを設計した。
 実際には注視点より眼の入射瞳までの距離を750mm,レンズ後面より入射瞳までの距離を25mmとしたが,今回の設計では第三の条件をも満足するようにデザインされたので,各レンズの中心厚,前後面の屈折力は一義的に決定された。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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