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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科27巻4号

1973年04月発行

雑誌目次

特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その4)

第26回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.402 - P.402

講演
〔特別講演〕角膜ジストロフィー………………Michael J. Hogan et al.…407
眼疾患者の爪床部皮膚毛細血管観察………………桐渕利次…423

特別講演

角膜ジストロフィー

著者: J. ,  

ページ範囲:P.407 - P.422

緒言
 角膜ジストロフィーについては,臨床的,遺伝学的な面での多くの報告がある。最近の研究はこの病気の種々の面を明らかにし,その結果それらの病因について一層効果的な議論がなされるようになつた。
 Dystrophyという言葉は遺伝性の角膜変性(degenerations)として,特別の意義をもつようになつてきた。角膜ジストロフィーという概念(entities)は,しばしば病変の特徴的な位置と形,それに特異的な進行の傾向を包含している。ある種のジストロフィーは以前は角膜に限局していると思われていたが,実は全身の代謝異常の部分的表現であることが明らかとなつた。たとえばFabry病にみられるCornea verticillata (渦巻き状角膜変性)である。その他の角膜に限局しているジストロフィーも,組織の変化はたとえば汎発性アミロイドージスのような他の部位の変化に類似している。また原発性の角膜ジストロフィーとされているものが,全身疾患の部分症状にすぎず,ただ現在の方法では診断ができないのかもしれない。たとえばScheie症候群はムコ多糖症(mucopolysaccharidosis)と確定されるまで,ずつと見逃されていたものである。

学会原著

眼疾患者の爪床部皮膚毛細血管観察

著者: 桐渕利次

ページ範囲:P.423 - P.434

緒言
 1916年,Weiss氏によつて,簡単な操作の下に,生体の皮膚毛細血管を観察する方法が,老案されて以来,Müller1)氏によつて,多数の報告がなされた,,眼科領域においても,Scheerer2)Meszaros3),Toth3)Mielke4),三条5),松山6),難波7)氏等の報告がある。眼球結膜血管については,特別な操作を施すことなしに観察し得るので,古くよりその検索が行なわれ,Müllerをはじめとして,現在でも多数の報告がある。著者は今回,緑内障患者を主たる対照として,爪床部皮膚毛細血管を観察した。また,同時に角膜辺縁血管蹄係綱の状態も観察した。

全身麻酔下の小児眼圧について(第2報)

著者: 湖崎克 ,   山崎康宏 ,   柴田裕子 ,   北村征治

ページ範囲:P.435 - P.440

緒言
 先にわれわれは,シェッツ眼圧計を用い,小児を対象にして局所麻酔下,全身麻酔下の測定値をScale readingにて表示した14)。しかし,小児に対してシェッツ眼圧計を用いることは,測定技術はいうまでもなく,Ocular rigidityの問題や角膜の性状などが,成人の正常眼と同一であるかどうかという配慮のもとに測定が必要であり,この点でも正しくシェッツ眼圧計の測定値を評価することがむずかしかつた。このためぜひ圧平眼圧計を用いることにより,圧平眼圧計の測定値を求めるとともにOcular rigidityの値を検討する必要があつた。しかし小児に対して圧平眼圧計を用いるには,やはり技術上の問題が多く今回測定に用いた器械の選択までには,かなりの時間を要したが,結局あたらしいタイプの眼圧計として,fast acting application tonometerであるマッケイマーグ眼圧計を選び,他方ゴールドマンタイプの圧平眼圧計に類似したドレーガーの手持圧平眼圧計を用いた。

緑内障と診断されて受診した患者の検査成績

著者: 松尾治亘 ,   小暮文雄 ,   中西堯明 ,   古野史郎 ,   松島利明

ページ範囲:P.441 - P.445

緒言
 日常の診療にさいし,眼圧上昇や視機能,乳頭および視野等の変化を伴う定型的緑内障の診断は容易である。しかし診断技術の進歩した昨今でも,眼精疲労や単なる頭痛と,早期緑内障を鑑別することは非常に困難であり,かつめんどうなものである。
 非可逆的な視機能の障害を生ずる前に緑内障を発見し,早期治療により失明を予防することが緑内障の診療に当たつて最も望ましいことである。けれどもなかには非緑内障患者が簡単な検査で緑内障と診断され,不安と絶望の念に駆られて転医してくる場合がしばしばある。

高倍率biomicrogoniophotographyについて—その1:従来の方法の評価

著者: 岩田和雄 ,   八百枝浩 ,   藤井青

ページ範囲:P.447 - P.453

緒言
 眼科診療において隅角鏡検査が重要であることは論をまたない。特に緑内障の診断,マネージメントには不可欠な検査となつている。この隅角鏡検査は隅角に関する大まかな構築上の情報をもたらすものである。
 たとえば隅角が広い,狭い,色素沈着がある,先天性遺残がある等の所見にとどまるもので,実際に房水の主流が通る隅角壁およびそれより末梢の流路に関する情報は得ることができない。広隅角緑内障における流出抵抗の場は隅角壁より末梢にあるはずであるから,現在の隅角検査法ではなんらの情報も得ることができないことになる。近年の光顕,電顕,走査電顕の進歩はその部分の構造をあきらかにしつつある。しかしいずれも"biomicro"所見ではなく,流路の病態に関しては全く不明である。

放射線障害による絶対緑内障眼に見られた前房隅角部変化の電顕所見

著者: 田村正

ページ範囲:P.455 - P.459

緒言
 眼部または上顎部悪性腫瘍の治療に放射線照射がしばしば行なわれるが,後に不快な副作用の一つである緑内障を生ずることがある1)。その発生機序はいまだ不明であるが,房水排出路の構造になんらかの変化の生じていることが予想される。すでに光顕レベルで,放射線照射後の緑内障眼には虹彩隅角部癒着や虹彩前面のfibrovascularmembraneの形成が見られたという報告2)があるが,trabecular meshworkおよびそれ以後の扉水流通路の構造変化,ことに微細構造についてはほとんど知られていない。この報告では,Co60照射後絶対緑内障に陥つた2症例より得た眼球の虹彩隅角癒着部およびtrabecular meshworkの電顕的研究を行なうことにより,その機序解明の手がかりとしたい。

緑内障眼前房隅角の微細構造—(1)走査宣顕的研究

著者: 瀬川雄三

ページ範囲:P.461 - P.463

緒言
 正常人眼前房隅角の微細構造が,一連の電顕的研究によつて明らかにされてきたので1),これらの所見と緑内障眼前房隅角の微細構造との比較研究は,緑内障の病因を解明する上での重要な問題の一つである。
 今回は,腫瘍ならびに眼痛のため摘出した,4例の緑内障眼の前房隅角組織を,走査電子顕微鏡を用いて表面的に観察し,前報2)の正常人眼のそれと比較し,次の結果を得たのでここに報告する。

超音波(Amode)による眼内病変の検索—特に検眼鏡による診断が困難な症例について

著者: 加藤桂一郎

ページ範囲:P.465 - P.469

緒言
 超音波を使用して眼内病変を診断する試孜は多数の研究者によりなされており,網膜剥離,眼内腫瘍等の補助診断法として欠かせぬ位置を占めつつある。特にAmodeは病変の位置を正確に定位できる点より,Bmodeより価値のある場合も少なくない。著者もAmodeを用い,診断面で非常に有益な結果を得ているが,今回はその内特に興味深い2〜3の症例について報告し,あわせて著者の用いた眼内病変定位法を紹介する。

眼科超音波診断に関する研究—(第5報)正常限ならびに原発性緑内障眼の超音波計測

著者: 太根節直 ,   河越睦郎 ,   武本信年

ページ範囲:P.471 - P.477

緒言
 成人の原発性緑内障100余眼における眼内各光学要素の超音波計測を行ない,開放隅角緑内障眼と閉塞隅角緑内障眼における前房深度,水晶体前後径,眼軸長などをそれぞれ測定し,正常眼の成績と比較したので,その大要を報告する。
 最近の超音波計測技術の進歩に伴い,正常眼や特に屈折異常眼の超音波による計測は,Oksala,A.,Purnell,E.&Sokulla,A.,Franken,S.,Jansson,F.,Sorsby,A.,Gernet,H.,Busch—lnann,W.,およびわが国でも山本,中島ら,大塚,荒木らが行なつており,また,緑内障眼に対する測定は,Hollwich,F.Massin,M.&Pou—jol,J.,およびLowe,R.らのものを見るが,わが国ではまだこれは見られない。

涙液減少症への軟性コンタクトレンズの試み

著者: 馬場信義 ,   根来良夫 ,   橘俊子 ,   今西二郎

ページ範囲:P.479 - P.482

緒言
 涙液減少症は,流涙症と異なつて角膜障害を伴うことが多く,臨床的にはむしろ重要視されなくてはならない。またわが国においても,冷暖房の普及につれて,このような涙液減少にもとづく眼症状を訴える患者の増加する傾向のみられることから考えても,その対策を急がねばならない。
 今回われわれは,これらの涙液減少症に対して,軟性コンタクトレンズを使用する機会を得たので,その結果をここに報告する。

連載 眼科図譜・186

新型流行性結膜炎

著者: 木村泰三

ページ範囲:P.405 - P.406

 新型流行性結膜炎(出血性流行性結膜炎)がわが国に現われたのは1971年夏である。間もなく日本全土にひろがつたが,各地の開業医は伝染力が非常に強く,ショッキングな症状で爆発的に発生するこの奇妙な結膜炎には大いに困惑した。経過が良くかつ速かなのが救いであつた。
 筆者の診療所にも1972年夏1カ月の間に76例の患者が発生した。

臨床実験

診療所に多発した新型結膜炎について

著者: 木村泰三

ページ範囲:P.489 - P.499

緒言
 1969年6月から10月にかけ,西アフリカのガーナに結膜下出血を主症状とした奇妙な結膜炎が大流行した。ちようどアポロ11号が月から帰つた頃なので,これが持つてきたとして,アポロ病とあだ名された。
 この病気についてはじめて発表したガーナ大学眼科のChatterjee,S.1)は,次のような特徴をあげ,流行性出血性結膜炎(epidemic hemorrha—gic conjunctivitis)と名づけた。

手術

顕微鏡下白内障手術の遠隔成績と手術法の検討

著者: 清水昊幸 ,   戸張幾生 ,   佐藤千里子 ,   内野允 ,   澁谷英美

ページ範囲:P.501 - P.507

緒言
 先に著者の一人清水は,最近急速に発達した諸技術を取り入れた術前処置から手術手技,術後管理にわたる安全確実な方法を「顕微鏡下白内障手術法」と題して発表した1)
 その後約2年を経た今日,顕微鏡手術の会を主たる媒介の場として,上記手術法はその各部分がかなり広範な影響を他の手術者に及ぼすとともに,手術法自体も実際に普及し始めている。

眼・光学学会

模型眼の試作研究

著者: 三国政吉 ,   八百枝浩 ,   霜島正 ,   松山初男

ページ範囲:P.511 - P.515

緒言
 眼球を模式化してそのモデルを作製することにはいろいろな意義がある。近年光学像の情報処理法としての眼球の機能が注目され,その神経伝達のパターンのモデルなどもつくられている。
 眼球の光学的モデルは今までいくつか試作されてきたが,利用目的によつてそれぞれ異なつたものが設計されている。

抄録

Soft Contact Lensの光学—(第2報)

著者: 平野東 ,   中島章 ,   柴田博彦 ,   曲谷久雄 ,   黒川幸子 ,   高井信 ,   小坂雄二 ,   厚沢正幸

ページ範囲:P.517 - P.519

緒言
 第1報において述べたごとく,親水性軟性コンタクトレンズ(以下C.L.と略)の膨潤時の各要素の測定は実験的には可能であるが,実際問題として手順の繁雑さおよび時間的な問題等,日常の臨床上の手段として用いることに問題がある。
 しかし装着後の種々の症状の解析のため重要な要因となり得る場合が多い。

GROUP DISCUSSION

第9回眼感染症

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.521 - P.523

 第9回眼感染症グループ研究は,1)最近世界的に注目されている出血性結膜炎,2)真菌,縁膿菌,ヘルパス感染,3)感染と関係のあるブドウ膜炎,4)その他感染症一般,の主題の下に演題を募集した。演題締切日までに予定数をはるかに越えた演題が集まつたので,興味あるものでも期日に遅れたものは割愛した。以下プログラムの順に,抄録を参考とし,講演の要約に討論の主なものを加えて,規定の範囲内にまとめて記録した。

糖尿病性網膜症

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.525 - P.528

 今同の糖尿病性網膜症グループディスカッションは,10月21日午前9時から横浜市従会館で行なわれた。例年通り非常な盛会で,12篇の演題について発表と討論が熱心に続けられ,心ならずもしばしば時間の節約をお願いしなければならぬ程であつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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