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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科27巻5号

1973年05月発行

雑誌目次

特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その5)

第26回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.538 - P.538

講演
人工涙道とくにJones tubeについて………………長嶋孝次…543
Wegener肉芽腫症について………………門田正義…549

学会原著

人工涙道とくにJones tubeについて

著者: 長嶋孝次

ページ範囲:P.543 - P.548

緒言
 復旧困難な涙小管閉塞については,涙嚢・鼻涙管の通過障害併発の有無によつて,涙道の全部,あるいは涙小管だけを廃管にして,バイパスをつくる方法しかない。

Wegener肉芽腫症について

著者: 門田正義

ページ範囲:P.549 - P.556

緒言
 鼻腔,副鼻腔,その他眼上気道において,重篤な進行性壊疽性肉芽性炎症を起こし,その後気管,肺にも同様の病変を起こし,全身の肉芽腫,血管炎を生じ,ついには死に至る疾患は1931年にKlinger1)がはじめて報告し,ついで1936年と1939年にWegener2)が詳細に記載してからWegener肉芽腫症と呼ばれるようになつた。いまだ原因不明で適格な治療法もなく,致命的である点で各科に注目されている疾患で,最近では耳鼻科を主として,眼科,内科等に多数報告を見る3)〜11)。最近著者は,眼瞼に初発して多彩な症状を呈し,臨床的にもWegener肉芽腫症と思われる患者で,初期より死に至るまで観察し剖検した1症例,および耳鼻科にてWegener肉芽腫症と診断され,長期にわたり治療を受けた後,眼症状の現われた2症例を経験したので報告する。

学童1万名眼科学校健康診断の経験

著者: 矢沢興司

ページ範囲:P.557 - P.569

緒言
 東京都保谷市教育委員会の要請により,市内全小学校,中学校の1971年度,1972年度の春季学校健康診断を順天堂大学が行なつた。保谷市は東京郊外の住宅地で,人口87,860のコミュニティであるが,地域の眼科医の不足から順天堂大学が向う5年間眼科校医として学校検診を受け持つことになつた訳である。大学の眼科がこのような集団の校医を受け持つたということはおそらく初めてのことで,意義あることと思う。
 学校検診には問題が多いが,これをできるだけ理想的に行なうにはどうしたらよいか,学校保健のあり方を考えるための基礎資料をつくる目的も考えながら,学校現場でのスクリーニング,眼科医による精密検査および事後措置をわれわれが一貫して行なつたので,ここに報告する。

眼窩静脈撮影法—その手技と前後像の読解法について

著者: 中村泰久 ,   能勢晴美 ,   斎藤俊吉 ,   能勢忠男

ページ範囲:P.571 - P.577

緒言
 1951年,Dejean等により記載された眼窩静脈撮影法(Orbital Venography,以下OVGと略す)は,その後眼科および脳神経外科領域で利用され,数多くの報告がある。わが国でも百瀬ら1),高久ら2〜4),Ito5)ら等の報告があり,その臨床的価値が認められつつある。
 われわれは,1969年より眼窩内静脈の解剖学的およびレ線解剖学的検索を行ないつつ,同時にこの検査法を日常臨床に応用してきた。今回は,一側性眼球突出を主訴とする症例のOVG前後像についてまとめたので報告する。

血管異常による眼球突出症の2例

著者: 浜井保名

ページ範囲:P.579 - P.586

緒言
 眼球突出は眼窩疾患の最も重要な症候とされ,その原因も種々多様である。またその診断および治療は困難をきたすことが多く,難解な疾患ではあるが,一方興味ある問題も多く含まれている。
 原因として血管異常(Circulatory disturban—ces)による眼球突出は比較的まれではあるが,眼科的に特異な症状を示すために古くから記載されている。拍動性眼球突出症(Pulsating exo—phthalmos)はTravers1)が1813年に,間歇性眼球突出症(Intermittent exophthalmos)は1805年にSchmidt2)による報告が認められる。

Blowout fractureの診断法,特にX線診断—第2報眼窩近接法,ならびにその立体撮影法について

著者: 青島周明

ページ範囲:P.587 - P.593

緒言
 近年,眼窩骨折,とくにblowout fractureの成因,治療法,その他について眼科医ならびに形成外科医の間で注目されつつあるが,まだその定義すら確立されていない現状である。したがつて,混乱をなくし,統一見解の確立のためにも早急な解決が望まれる。そのためには,正確な骨折像の把握が第一要件であり,種々のX線撮影法が試みられている。著者1)は,第1報においてdryboneを使用し,下壁の骨折を発見するのに適した単純X線撮影法について報告した。しかし,それのみでは十分満足すべき骨折像が発見できないので,今回,近接撮影法を眼窩に応用することを試みた。この近接撮影法は胸骨などの撮影に用いられ,フィルム面との距離が短い骨像を従来の方法より,より鮮明に写し出すことができる特徴がある。この方法はラウエンら2)によりはじめて胸骨撮影に用いられたのであるが,著者はその特徴を利用して眼窩下壁の撮影に成功し,その立体撮影法を考案し,さらにこの方法に造影剤を加味し,dry boneおよびblowout fractureの患者10症例に施行し,良い結果を得たので報告する。

角膜熱形成術(Thermokeratoplasty)について

著者: 糸井素一 ,   R. Gasset ,   崎元卓 ,   ,   E. Kaufman

ページ範囲:P.595 - P.600

緒言
 角膜の病気の中には,円錐角膜のように角膜は透明だが形が悪いために視力が出ないというものがある。
 今のところ,円錐角膜の治療は角膜移植以外はないとされているが,もし角膜の形をうまく変えることができれば,なにも角膜移植をする必要はない訳である。

網膜剥離の臨床(その12)—難治症例の検討Ⅱ—黄斑裂孔を有する網膜剥離

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.601 - P.606

緒言
 黄斑裂孔を伴う網膜剥離は治療の困難な網膜剥離と一般に考えられている。
 しからば,1)通常の網膜剥離と比べて,黄斑裂孔を有する網膜剥離に治療上の困難が多い理由は何か,2)いかなる手術手技を用いれば黄斑裂孔を有する網膜剥離の治療が成功するか。

他覚的視野計の試作その1

著者: 儘田直久

ページ範囲:P.607 - P.616

緒言
 自覚的視野検査法は,眼科学のみでなく神経学,脳神経外科学,内科学等の領域においてもその検査意義が確立されている3)。しかしながら,その検査結果の解析は詐病,精神身体疾患,視神経交叉以後の視路の病巣等の場合に多くの困難を有し,その補助となるべき検査法の開発が古くから考慮されている。この補助検査法として古くから注目されているのが,瞳孔の対光反応をインディケーターとする他覚的視野検査法であり4)5)6)10)11),新しくはコーペンハーバー等の行なつたコンピューターを利用する視覚誘発脳波(VEP)をインディケーターとする他覚的視野検査法等2)である。
 瞳孔の対光反応をインディケーターとする他覚的視野計については,Willbrand,Wernickeの半盲性瞳孔強直の記載以来その可能性がHessBraun等により検討され,Harmsにより一応の成功を納めたが,その視野測定装置および測定法自体にかなり不十分な点があり,臨床的実用に耐え得るものではなかつた6)

上斜筋麻痺例における下斜筋Myectomyの検討

著者: 粟屋忍 ,   野崎尚志 ,   三宅養三 ,   浅野俊樹 ,   酒井寿男 ,   吉兼美由紀

ページ範囲:P.619 - P.628

緒言
 上斜筋麻痺の症例はしばしば遭遇する疾患であり,とくに幼児で眼性斜頸を訴えてくるものの大部分は先天性上斜筋麻痺によるものである。しかし,このような斜頸がいつまでも放置されたり,時には眼性斜頸として扱われず,他の治療法により処理されたりしている場合もある。したがつて,上斜筋麻痺を正しく診断して適切な処置をすることが非常に大切であると思われる。とくに,その主症状である眼性斜頸は,適切な眼科的手術により術後短期間に改善がみられることはよく知られている事実である。
 上斜筋麻痺に対する手術法を大別すると,(1)麻痺筋である上斜筋の前転,短縮1)3),(2)ともむき筋である健眼の下直筋の後転4),(3)直接の拮抗筋である患眼の下斜筋の減弱手術等があり,とくに,(3)には後転法5)〜7)のほかTenotomy8)9)10)やMyotomy,Myectomy11)〜13)15)29)等があり,さらにその手術部位により,付着部,下直筋耳側部,下直筋鼻側部および起始部によりそれぞれ術式も異なる。

連載 眼科図譜・187

朝顔症候群の1例

著者: 高橋寛 ,   内田璞

ページ範囲:P.541 - P.542

〔解説〕
 Kindler (1970)1)は稀有な乳頭の先天異常を示す10例を報告し,視神経乳頭を中心とした眼底の様相が朝顔(Morning glory)に良く似ていることから,Morning glory syndromeと命名した。
 本症候群の眼底所見の特徴は,

臨床実験

Marcus Gunn現象をともなつたParadoxical upper lid retractionの1例

著者: 枝村加四子 ,   向野和雄

ページ範囲:P.629 - P.632

緒言
 Marcus Gunn現象1)〜5)は,三叉神経第3枝支配の外側翼突筋と,動眼神経支配の上眼瞼挙筋との異常連合運動によつて生じる眼瞼後退現象としてよく知られているが,その発生機構についてはさまざまな考え方があつて一定しない。この現象にその他の異常神経支配,多発奇型などが合併する6)〜8)ことも時に見られるが,同現象の発生機構を考える上に興味があると思われる。
 最近私達はMarcus Gunn現象を合併した奇異な上眼瞼後退現象(paradoxical upper lid re—traction)を示す1例を経験したので,両現象の発生機構を考える上で参考になる症例と思い,報告する。今までにこのような症例の報告は見られない。

脈絡膜血管腫とその光凝固による治療

著者: 荻野誠周 ,   大熊正人 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.633 - P.641

緒言
 脈絡膜血管腫は,現在までに約170例の報告があり,本邦例も約11例を数える。脈絡膜血管腫は従来まれとされてきたが,Lentら1),Linden—meyer2),Hillら3),Garrowら4)は,さほど珍しいものではないと示唆している。螢光眼底検査法の普及後,本症の臨床的診断が比較的容易となり,最近その報告が本邦においても増加している。注意すれば,今後さらに多数例の発見がなされるものと考えられる。
 最近われわれは,続発性網膜剥離を伴つた典型的な脈絡膜血管腫を経験し,腫瘤部に光凝固療法を行なつて,網膜剥離の完全な消失と,血管腫の著明な縮小をみた。術前の臨床像,ことにその螢光眼底撮影の所見,光凝固療法の実際と術後の経過をのべ,また本症の臨床的診断,とりわけ脈絡膜悪性黒色腫との鑑別について考察したい。

緑内障外来における水負荷試験成績

著者: 相沢芙束 ,   福居久義 ,   小野弘美 ,   音無克彦

ページ範囲:P.643 - P.649

緒言
 原発性緑内障の早期診断法として各種の負荷試験,Tonography,視野等の早期変化があげられ,検討されている。水負荷試験は飲水試験ともいわれ,Schmidt1)(1928)の報告以来多数の追試報告がみられ,現在では負荷試験中でも良く利用される方法の一つである。特に広隅角緑内障に対する早期診断法の一助として有用性が注目されている。
 一般に広隅角緑内障の早期診断は困難で,しかも徐々に視機能の荒廃を惹起し,患者の自覚症状により診療した場合は,著しく病期の進行していることが多い。早期診断法の確立が急がれる訳で,種々の負荷試験,誘発試験が検討され,おのおの長短が論ぜられている。

眼・光学学会

Auto-Subtractive Subtraction Methodについて

著者: 藤井青

ページ範囲:P.657 - P.663

緒言
 写真による像形成は,情報をfilmに撮し込むいわゆる撮影と,filmに陰画として記録された情報を感光紙またはfilmに反転,陽画となす画像再生との2つの程過によつて完成される。したがつて,写真を用いての観察が満足に行なわれるためには,撮影法のみならず,撮影以後の画像処理についても十分な配慮が必要である。
 すでに撮影されたfilm像から情報を引き出す処理方法として,次の2つが考えられる。

レンチキュラーレンズをスクリーンとして用いる立体写真の方式

著者: 久冨潮 ,   鈴木羊三

ページ範囲:P.665 - P.667

 われわれの用いるレンチキュラーレンズは,第1図のごとく円柱レンズを縦に並べた形のものである。一本の円柱の太さは色々に変えて作ることができるし,また板の厚みも目的に応じて作ることができる。材料は塩化ビニール等が用いられ,特に光学的特性の優れたものを必要とする場合にアクリールが用いられる。このような板を,レンチキュラーレンズ,レンチキュラーラスターフィルムと一般に呼んでいる。われわれの場合は円柱の細かいもので,厚み5mmのものと約2mmのものの2種類を用いた。
 このレンズに対して,第2図のごとく異なつた方向からプロジェクターでスライドを投影すると,レンズを通して,それぞれ別の位置に映像を結び,左右から投影した像が左右交互の縦縞になる。その面に印画紙を置けば,立体写真用の原画ができ,また写真版としてその原画の通りのものを印刷することができる。これらの絵は,その上に同じレンチキュラーレンズを載せて見ると,両眼視差による立体感覚を生ずることから,絵はがき,室内装飾等に使われている。

GROUP DISCUSSION

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.670 - P.674

A.腫瘍切除の原則
 眼瞼腫瘍の切除にあたつては,腫瘍切除の原則が適用されることはいうまでもない。すなわち,
1)診断の確定(必要に応じては試験切除を行なう)。

Contact Lens

著者: 中島章・他

ページ範囲:P.676 - P.680

 今回のテーマは「ソフトレンズの臨床」で,はじめ中島が他の会場に出席のため柴田の司会で開会。予定のプログラムに多少の追加と変更がある旨,告げられた。講演形式で演題の申込みのあつた方々の話を次の順序で行なつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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