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雑誌目次

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臨床眼科27巻6号

1973年06月発行

雑誌目次

特集 第26回日本臨床眼科学会講演集(その6)

第26回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.694 - P.694

講演
網膜剥離手術の合併症
 1.術前合併症について………………宇山昌延・他…699

学会原著

網膜剥離手術の合併症—1.術前合併症について

著者: 宇山昌延 ,   浅山邦夫 ,   近藤武久 ,   岸本正雄 ,   坂上英 ,   内田璞

ページ範囲:P.699 - P.706

緒言
 網膜剥離の手術的療法にさいして,術前に罹患眼に存在する種々の合併症が,手術の施行を困難にし,また術中,術後に生ずるいろいろな合併症は,手術の遂行を困難にしたり,術後の治癒過程に悪影響を与え,術後経過を複雑にしたり,さらには手術成績を不良にすることがある。今回われおれは,最近4年間に本院眼科において行なわれた網膜剥離手術をふりかえつて,これら合併症の種類,頻度,発生原因や,手術成績に及ぼす影響を調査した。また,合併症の発生を少なくする対策や,合併症に遭遇したときにとるべき処置について,われわれの経験をもとに検討した。
 本篇では,術前に存在する合併症とその処置についてのべ,術中に生ずる偶発症1),術後の合併症2)については別稿にのべた。

網膜剥離手術の合併症—2.術中合併症について

著者: 浅山邦夫 ,   近藤武久 ,   宇山昌延 ,   岸本正雄 ,   坂上英 ,   内田璞

ページ範囲:P.707 - P.713

緒言
 網膜剥離の治療は,その手技ならびに術式の進歩により手術成績が近年向上しつつある。しかし,手術中に遭遇するさまざまの合併症が経過を複雑にし,手術成績を大きく左右することがある。今回われわれは,網膜剥離手術における合併症を調査した。本篇では手術中におこる合併症を調査し,それが手術成績に及ぼす影響を検索し,その対策について考按した。

網膜剥離手術の合併症—3.術後合併症について

著者: 近藤武久 ,   浅山邦夫 ,   宇山昌延 ,   岸本正雄 ,   坂上英 ,   内田璞

ページ範囲:P.715 - P.722

緒言
 網膜剥離手術にさいして,手術操作はほぼ順調に遂行され,手術終了時には網膜の復位が期待されたにもかかわらず,術後に予想外の合併症の出現により,網膜の復位に複雑な経過をとつたり,不成功に終わつたり,または視機能の回復の不良をみる症例に時に遭遇する。これらの術後合併症の原因を探り,その予後を調査して,その反省のもとに,手術操作の改善をはかることは網膜剥離の手術成績の向上に重要なことと思われる。
 ここで,われわれの最近4年間の網膜剥離手術症例の中から,剥離手術の術後合併症のうち,網膜の復位や,術後の視機能に影響を与えた重篤な合併症の発現したものをえらんで,その種類,発生頻度,予後に及ぼす影響を調査し,それぞれにつき,原因,対策の検討を加えた。

眼窩壁骨折の臨床経過

著者: 種田光成 ,   馬嶋孝 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.723 - P.730

緒言
 眼部を強打することにより眼球陥凹,複視をきたす報告はかなり古くよりみられるが1)2),1957年SmithとRegan3)は,受傷後,眼球陥凹および複視を生じた眼窩壁骨折のうち,特に興味ある症例を見出し,これをblowout fractureと名づけ,さらに1967年Converseら4)はその成因および骨折の分類に関して考察し,交通外傷が最も多いと述べている。交通外傷によるものは顔面の変形を伴い眼科的治療以外に形成外科,耳鼻科的治療が必要である。一方,交通外傷以外は若年者の遊戯中の事故により複視を主訴とする眼機能障害を生ずるものが多く,眼窩壁骨折に関し眼科医の立場からの分類5)6),診断7)8)および手術法6)7)9)〜14)に関して多くの報告がなされている。この種の骨折における種々の要因,たとえば受傷原因,臨床所見,骨折部位等の関連性,術後の眼機能障害の回復に関する報告はいまだほとんどない。著者らは,1967年より1971年9月までに16例の眼窩壁骨折を経験し,これらの症例に対し,年齢,性別,受傷原因,骨折部位,眼球運動制限等の関連性について,また,X線診断,術前術後の臨床所見を検討したので報告する。

興味ある慢性有機燐中毒の2例

著者: 大野新治 ,   今井弘子 ,   石川哲

ページ範囲:P.731 - P.736

緒言
 近年有機燐剤が殺虫薬として農村のみならず都会においても頻繁に使用されるようになつた結果,それに原因する急性中毒例の報告は非常に多い1)。これに反し,慢性中毒についての事例は非常に少なく2)3),ほとんどその存在が明らかにされていなかつた。しかし,わが国では石川が1969年4),佐久地方の小児における多発例を報告して以来,かなりの症例が発表されている5)〜7)。われわれは,大人の慢性有機燐中毒を疑われた2症例を経験し,これに対してコリンエステラーゼの再活性化剤のPAM (pralidoxime methiodide)の点滴静注を中心とした治療を行ない,治癒せしめることができたので報告する。今回は,慢性中毒の決定に重要な役割を有するこれらの症例の治療経過期間中,一眼の調節刺激に対する他眼の調節反応(以下A/A)の変化を調べた結果を紹介し,あわせてその間の血中コリンエステラーゼ値の推移,さらにガスクロマトグラフィーにより患者の尿中および汚染源と考えられた飲料地下水,および朝鮮人じんより有機燐がかなりの量で検出されたので紹介する。
 なお調節刺激に対する調節反応についてのすぐれた研究はRipps9)らによつてなされたが,これを臨床に直接応用し,しかも長期経過を追跡したものはなく,この検査を有機燐中毒患者の症例で行なつた結果,きわめて興味ある知見が得られたので,その点について特に強調する。

農薬の眼組織脂肪酸代謝に及ぼす影響

著者: 宮下浩

ページ範囲:P.737 - P.749

緒言
 農薬による慢性中毒の実態は,臨床的にも実験的にも,いまだ解明されていない。遅ればせながらも,1967年以降,強毒性あるいは強残留性の農薬の大半は行政的措置によつてその使用が禁止されたが,しかし,過去20数年にわたつてばく大な量の農薬が,この狭い国土にばらまかれてきたわが国では,農業従事者のみならず,残留毒によつて環境汚染された全国民が,農薬によるなんらかの影響を受けているといつても決して過言ではない。
 各種の農薬が,微量毒性物質として長期間体内に残留して蓄積される場合,いかなる影響が生体に出現するかを明らかにすることは,今回,早急に解決を求められている問題である。しかし,この場合,従来より行なわれてきたような,比較的大量の毒物が生体内に蓄積されることによつて生じる不可逆的な組織学的変化を検索する方法では,現時点で問題となつているごく微量の農薬が体内に蓄積したさいに起こる影響を追求する目的に対しては,必ずしも妥当とはいえない。したがつて,著者は,組織学的変化に先立つ各種の代謝異常を,生化学的に追求せんと試みた。

Myopathyの症状を伴つた農薬中毒と思われる症例について

著者: 河本道次 ,   菊池信彦 ,   深見悠紀人

ページ範囲:P.751 - P.755

緒言
 最近,農薬の人体に及ぼす影響に関する数多くの報告が見られるが,特に有機燐中毒の眼障害について,社会問題として広くとり上げられるようになつた。
 今回著者らは有機燐剤を含む数種の農薬を本業として水田,ならびに副業としてビニールハウスの栽培に使用している農業従事者母子にmyo—pathyの症状と合併した慢性農薬中毒と思われる症例につき検索する機会を得たので報告する。

眼瞼部形成に用いたSynthetic Implantsの組織反応—第1報家兎背部埋入後60日までの組織反応について

著者: 遠藤耀子

ページ範囲:P.757 - P.765

緒言
 現今,合成素材の普及は目ざましく,外科系のほとんどの分野で,修復や置換,牽引支持,bri—dging,組織補強(reinforcement),整容などを目的としてmedial-gradeの種々の合成素材が実用化され,あるいは試用されており,一部の領域では,特に人口血管に関しては大動脈およびその主幹分枝の置換が基本的手術手技として評価されるに至つている。
 眼科領域でも縫合糸のみならず,眼球摘出後の義眼台,眼窩骨折修復,眼窩および周辺軟部組織の補填,涙道再建1),眼瞼修復など外眼部および付属器の治療に対し,紐状,管状,塊状,sheet状,織布状,液体状などいろいろの形で使用されている。内眼治療に関しては,網膜剥離に対して液体siliconeの前房内または硝子体内注入2)3)を,緑内障に対しindwelling drain造設を行なう報告が散見されたが,常用されるまでには至つていないようである。

連載 眼科図譜・188

Xenon光凝固によるHippel病の治療

著者: 三嶋弘 ,   百々次夫 ,   三嶋昌子

ページ範囲:P.697 - P.698

〔解説〕
 Hippel病(Angiomatosis retinae)の治療において,現時第1選択順位を占めるものはXenon光凝固であるが,図譜はこの療法を実施した2症例の治療記録の一部である。
 〔第1図〕27歳男,右片眼例の耳下側(M.N.224°,V.W.40°)に位置した唯一の血管腫である。大きさは1.5P.D.大で,後極部と乳頭周囲に黄色浸出斑を伴つていた。

臨床実験

糖尿病性網膜症と視力

著者: 小嶋克 ,   新美勝彦 ,   小嶋一晃 ,   酒井寿男

ページ範囲:P.767 - P.773

緒言
 本症において視力を扱うこと自体に問題が多く,結局は各症例について眼底との関係を考えねばならないのは自明の所である。ここでは,現時点でどのような面で研究されているかを概察して,2〜3の間題を扱つてみた。
 材料として1969年までの5カ年間,一定の症例を追跡した。

糖尿病性網膜症とO'Hare分類

著者: 小嶋一晃 ,   酒井寿男 ,   鈴木裕之 ,   小嶋克

ページ範囲:P.776 - P.784

緒言
 Background retinopathy1)は,血管新生,fi—brous proliferationをおこす以前の網膜症を総括して扱つている。増殖性網膜症は,血管新生のlife cycleに相当するものであり,Malignantretinopathyとして扱われる。従来,増殖性網膜症(stage V)の前期(stage IV)として硝子体出血をこれにあてているが,これは血管新生+BeadsといったKeith-Wagener分類等がこの意味で合理的といえる。光凝固法の利用から特に,その悪性化の防止にも血管新生のlife cycleとしてその初点が目標となつている。したがつて,増殖性網膜症もearly surface Neovascula—rization, moderately advancedまたはseve—re phase, late phaseと細分していく必要もでてくる。また,Meyer-Schwikerath2)のように光凝固や,BeethamのようにLaserをBackgr—ound retinopathyに応用するようになると,眼底パターンのもつ意味を究明する上にも,一定の標識化が要請されてくる。

糖尿病性網膜症における藤井式網膜感電力測定器の使用経験

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.785 - P.790

緒言
 糖尿病患者に藤井式網膜感電力測定器を使用して,網膜感電力指数(指数と略す)を測定し,ERG律動様小波の消長ならびに糖尿病性神経障害の程度を比較検討したのでここに報告する。

Xenon光凝固によるHippel病の治療

著者: 三嶋弘 ,   百々次夫 ,   三嶋昌子

ページ範囲:P.791 - P.798

緒言
 Meyer-Schwickerathは1959年に刊行された彼の著書Lichtkoagulationの中に,網膜血管腫症に光凝固で血管腫破壊を試みた26例についての治験を報じ,ついで1961年には59例の治験例を追加報告して,網膜血管腫症に対する光凝固法の有用性を強調した。
 われわれの眼科でも1962年から5ヵ月間に主として光凝固法によつて加療したHippel病の4例について,百々・調枝が1963年の第16回臨床眼科学会で報告したが,その後に8治験例を加え,症例の一部については遠隔成績も調査したので,それらの概略を述べ,本症に対する光凝固について検討を加える。

急性球後視神経炎を先駆した高齢者の頭蓋咽頭腫例

著者: 井街譲 ,   井出俊一 ,   大上和彦 ,   大槻真

ページ範囲:P.799 - P.808

緒言
 Erdheim (1904)がはじめて頭蓋咽頭腫について発表してから,多数の報告がみられるが,その発病年齢については10歳代に最も多く認められ,60歳以上では非常にまれなものとされている。今回,われわれは球後視神経炎を起こした67歳の女性に開頭して,クモ膜炎とともに頭蓋咽頭腫を認め,術後約5年間にわたり,神経眼科的および内分泌学的に経過観察を行なつたので報告する。

GROUP DISCUSSION

第11回白内障

著者: 増田義哉

ページ範囲:P.813 - P.820

1.強角膜切開の位置による虹彩脱出の有無
 目的:従来,白内障手術時の強度膜切開の部位については,角膜寄りと強膜寄りといずれが秀れているか議論が多く,いまだ明らかでない。そこで今回,虹彩脱出の有無について,実験的成績ならびに臨床的成績の2点から比較検討し,両者の優劣をみた。
 方法:1)成熟白色家兎の右眼に角膜縁より1mm角膜側,左眼には2mm強膜側において曲槍状刀による切開を行ない,小川剪刀で創を約150°拡大,その後直ちに3糸縫合す。術中,術直後,および3日目に切開創の状態をコーワ眼底カメラにて撮影した。2)過去4年問に久留米大学眼科で手術を行なつた老人性白内障患者について,角膜寄りと,強膜寄りとの切開による術中,術後の虹彩脱出に関する統計的観察を行なつた。

斜視・弱視

著者: 丸尾敏夫

ページ範囲:P.821 - P.825

 斜視・弱視グループディスカッションは昭和47年度日本弱視斜視研究会総会として,田辺竹彦博士(名古屋第一赤十字病院)および井上浩彦博士(東京都立府中病院)の司会のもとに開催された。

小児眼科

著者: 湖崎克

ページ範囲:P.827 - P.830

問題提起と討論
小児の視野(その1)
 小児視野検査の特殊性について種々検討し,以下のごとく総括した。
1)5歳以上の小児の場合には,大人と同じ方法で視野測定が可能である。

高血圧・眼底血圧

著者: 入野田公穂

ページ範囲:P.831 - P.834

1.網膜中心静脈血栓と視力
 網膜静脈枝閉塞症で,3カ月以上経過観察し得た症例について検討した。
1)視力はcylindric lensを用いることで比較的良く矯正され,0.9以上の視力を示すものが初診時すでに41%みられ,終診時には59%を占めていた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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