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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科27巻8号

1973年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・190

人間ドックの眼底検査で発見したRetinoschisisの1例

著者: 武尾喜久代 ,   井上治郎 ,   金上貞夫

ページ範囲:P.981 - P.982

〔解説〕
 Retinoschisisは欧米にはかなりの報告例があるが,日本ではあまり報告がなく,その報告もすべて視力障害を起こして眼科医を訪れて発見されたものである。今回私どもは,62歳の男子の両眼にこの病変を見出した。この例は人間ドックで偶然発見したもので,自覚症状は全くない。他覚的には軽い周辺視野欠損と,両側眼底の下外方にみられた嚢腫様の病変である。網膜剥離とは異なり境界が鮮明であり,剥離している内層を通して脈絡膜紋理がよく見える。この病変はsenile Retinoschisisの初期と思われるが,本人もこの病変をまつたく自覚していないし,視野欠損も少しなので,このままなんら手を加えないで観察している。
 第1図初診時(1972年2月25日)の眼底。右眼の下外方に嚢腫様隆起があり,境界鮮明,脈絡膜紋理がよく透見できる。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のためにその1脳・神経疾患と眼(1)

著者: 豊倉康夫 ,   井街譲 ,   石川哲 ,   中村紀夫 ,   三島済一

ページ範囲:P.984 - P.996

座談会「全身疾患と眼」シリーズをはじめるにあたつて
 眼はその光学器機としての構造を満足させるためにはなはだ複雑な構造を持つています。眼には上皮組織あり結合組織があり,また分泌細胞があります。このように多様な組織から構成されている眼は,いろいろな全身疾患の一分症としておかされることが多く,ほとんどあらゆる種類の全身的系統疾患と関連しているといつてもいいすぎではないと思います。このようにデリケートな眼の組織がおかされる場合には,非常に早期に症状が発現し,またわれわれの持つ検査法の発展とともにこれら系統疾患において早期に眼に症状が現われ,これが早期診断の鍵をにぎることもしばしばみられます。また,眼は生きた組織を直接みることができる唯一の器官であり,特に血管系においては最近の螢光眼底造影法の導入とあいまつて,その循環動態まで詳しく検査することが可能となりました。したがつて種々の疾患の診断のみならず,その状態把握ひいては経過の追跡に占める眼症状の役割も次第に大きくなつてきたと言わざるを得ません。したがつて,われわれ眼科医が眼の疾患を眼だけの立場から観察するということは,もはや許されない時代になつたと言つても過言ではないと思います。すなわちわれわれは日常診療において,眼と関連した全身疾患についても詳しい知識を持つ必要にせまられてまいりました。

臨床実験

人間ドックの眼底検査で発見したRetinoschisisの1例

著者: 武尾喜久代 ,   井上治郎 ,   金上貞夫

ページ範囲:P.997 - P.1001

緒言
 Retinoschisis (以下RSと略す)とは,Duke—Elder1)によれば,「網膜が2層に分かれるということであり,通常視細胞層と双極細胞層の間の外網状層で分かれる病変である」。欧米にはかなり多数例の報告2)〜8)があるが,本邦ではあまり報告がなく,その報告も,すべて視力障害を起こして眼科医を訪れて発見されたものである9)〜15)
 しかし,最近,私どもは人間ドックでの眼底検査で偶然RSと思われる病変のある1例を見出し精査をしたので,ここに報告する。

特異な続発性網膜剥離—漿液性中心性脈絡膜症(増田)および周辺性ブドウ膜炎との関連

著者: 塚原勇 ,   森井文義

ページ範囲:P.1003 - P.1008

緒言
 続発性網膜剥離の原因としては種々の疾患が列挙されているが,脈絡膜からの著しい滲出による高度な網膜剥離を伴い,日常比較的よく遭遇する疾患としては,わが国では原田病がよく知られている。原田病は特徴的な臨床所見を呈するので,診断を誤ることはまずない。この疾患をのぞいて最近話題となつているものに周辺性ブドウ膜炎がある。わが国でも周辺性ブドウ膜炎に関する報告5)〜9),解説5)が少なくなく,眼科医の関心をあつめている。
 著者らは,これらの疾患とは別の疾患で,不明な原因によつておこる高度な続発性網膜剥離が存在することを推定している。本稿ではその発病機序,原因を推定するのに好都合と思われる2症例を選択供覧し,その発病機序に関し,漿液性中心性脈絡膜症(増田)(増田型漿液性中心性脈絡網膜炎)と関連づけて考察してみたい。

シェイエ手術後に発生した白内障の消長に関する臨床的観察

著者: 清水敬一郎 ,   松井久和

ページ範囲:P.1009 - P.1009

 37歳の男性の緑内障眼に,シェイエ手術後6日目に白内障の発生しているのを認めた。本自内障は手術中の水晶体嚢の損傷による一種の外傷性自内障と考えられるが,その混濁の平面的な広がりは発見時においてすでに水晶体上半分を覆つており,その深さはほぼ後嚢近辺に限局したものであり,前嚢部皮質中心部には認められなかつた。混濁の性状には2種類が区別された。すなわち上方部はあたかも毛糸を密により合わせて後嚢部を裏打ちしたような,徹照不能なほどの濃い混濁であり,下方部の混濁の先端部は一見後嚢内面における小水泡の群生,あたかも水面を覆う氷片のごとき淡い混濁で,特に水泡の中心部はほとんど透明であり,周辺部のみやや肥厚し,不透明となり,徹照所見では真中のすけたモザイク模様のようにみえる混濁である。この混濁は術後10日目の観察で先進部はほとんど水副本下縁に達しており,上方の密な混濁部も瞳孔領を覆う状態であった。しかしながら混濁の深さにはほとんど変化は認められなかつた。発見時より4日間の間の混濁先進部の拡大の速度は平面的には1日約1mm位と推定される。
 本症例の混濁の発生機序に関する問題,特に赤道部近辺の水晶体嚢の損傷において,なぜ前嚢部には混濁が発生せず,後嚢部近辺のみに限局して比較的平面的な発達をするかということに関して,ある程度形態学的にも説明しうるものと思われる。

特異な経過をとつた幼児の眼窩内異物

著者: 藤江容 ,   馬杉則彦

ページ範囲:P.1011 - P.1014

緒言
 最近のわが国の眼外傷の統計によると1),小児眼外傷は約17%を占め,そのうち幼児期が40%で最も多く,ついで学童期の31%となつている。外国文献もこれにほぼ一致し男子に多い2)。一番頻度の多い幼児期の外傷の特徴は,受傷場所がほとんど家庭内であることと,外傷の内容が片手に簡単に持つことのできる細長いものをもつて一人で振り回しながら容易に転び,転んだ拍子に持つていたもので眼の外傷をひきおこしていることである。ほとんどの親は子供の泣声に驚き,もつていたもの,あるいはそばに落ちているものを確かめずに,腹立ちまぎれにすぐ捨ててしまうために,来院のさいに当時の状況を聞いても要領をえず,これが誤診を招く遠因となつている。
 われわれは,黒鉛筆をもつて遊んでいて眼外傷をうけたが,その時の状況判断が明らかでなく,眼窩内異物を見落としたために,特異な経過をとつた症例を経験したので報告する。

周辺性網膜剥離を伴う特異な網脈絡膜病変—第2報病因論の検討と鑑別診断

著者: 三村康男 ,   法貴隆 ,   湯浅武之助 ,   当麻信子 ,   森山穂積

ページ範囲:P.1015 - P.1020

緒言
 第1報1)において,眼底後極部の灰白色性滲出斑によつてはじまり,その経過中に周辺性網膜剥離を呈した7症例の臨床像とその特徴について報告した。これらの症例は軽重の差,経過などで若干の差異をみとめるが,多くの共通点を示し,独立した疾患と考えられる。しかし,初発病変の性状,周辺性網膜剥離の出現,螢光眼底の所見など,個々の症状をとりあげてみると,類似する他の疾患も少なくない。本報では,本症に関する病因論的な検討と他の疾患との鑑別について報告する。

Xenon光,凝固による網膜静脈枝血栓症の治療—第1報新鮮例に対する光凝固方法とその効果について

著者: 菅謙治 ,   永田誠

ページ範囲:P.1021 - P.1031

緒言
 網膜静脈血栓症には中心静脈血栓症と静脈枝血栓症との2種類があるが,大野1)の301例中85%が後者であつたという報告にみられるように後者が圧倒的に多く,しかもそのうちの70〜80%は耳上側静脈に発生し,耳下側静脈に発生することは少なく,鼻側静脈に発生することはさらに少ないとされており(Foster2),Koyanagi3)),われわれの統計においても上耳側と下耳側との発生比率は約3:1である。これは網膜動静脈交叉全体の2/4は耳上側血管に存在し,1/4は耳下側血管に,1/4は鼻側血管に存在し,しかも耳上側においては交叉の70%以上が動脈が静脈の上を走る(Ko—yanagi3),Jensen4))という解剖学的形態と関係を有するものと考えられる。
 視力と関係の深い黄斑部は上下いずれの耳側血管とも関係を有し,しかも網膜浮腫は黄斑部に貯留しやすいという性質を有するから,静脈血栓症の場合にはほとんど常に中心視力が障害される。その上黄斑部は血管網が少なく,酸素消費量が高く,かつ組織が繊細であるという特殊性を有するから,黄斑部における出血,浮腫は吸収されがたく組織障害をきたして永久的機能障害を残しやすい。すなわち黄斑に嚢腫や円孔を形成したり,結合織増殖,網膜皺襞形成,色素消失や増殖をきたす。Wise5)によつて5年間と21年間の長期にわたつて黄斑部に出血が残存した症例が報告されている。

GROUP DISCUSSION

遺伝性眼疾患

著者: 水野勝義・他

ページ範囲:P.1037 - P.1042

 延参加者100名近くが活発な論議を行ない,盛況であつた。48年度の本グループディスカッションは7月7日(土)仙台で開くことが決定した。

網膜剥離

著者: 岸本正雄・他

ページ範囲:P.1043 - P.1051

1.網膜剥離クリニック用保存カードについて
 網膜剥離の臨床上の各種情報を要領よく整理保存して,後からの統計的研究に役立てる目的で,4年来上記カードを使用している。研究上甚だ便利なのでここにその経験を紹介する。
 本カードは情報保存整理用のみならず臨床上のmi—nimal requirementとしてメモ用に使用したり,また教育用に使用することもできる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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