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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科27巻8号

1973年08月発行

文献概要

臨床実験

Xenon光,凝固による網膜静脈枝血栓症の治療—第1報新鮮例に対する光凝固方法とその効果について

著者: 菅謙治1 永田誠1

所属機関: 1天理病院眼科

ページ範囲:P.1021 - P.1031

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緒言
 網膜静脈血栓症には中心静脈血栓症と静脈枝血栓症との2種類があるが,大野1)の301例中85%が後者であつたという報告にみられるように後者が圧倒的に多く,しかもそのうちの70〜80%は耳上側静脈に発生し,耳下側静脈に発生することは少なく,鼻側静脈に発生することはさらに少ないとされており(Foster2),Koyanagi3)),われわれの統計においても上耳側と下耳側との発生比率は約3:1である。これは網膜動静脈交叉全体の2/4は耳上側血管に存在し,1/4は耳下側血管に,1/4は鼻側血管に存在し,しかも耳上側においては交叉の70%以上が動脈が静脈の上を走る(Ko—yanagi3),Jensen4))という解剖学的形態と関係を有するものと考えられる。
 視力と関係の深い黄斑部は上下いずれの耳側血管とも関係を有し,しかも網膜浮腫は黄斑部に貯留しやすいという性質を有するから,静脈血栓症の場合にはほとんど常に中心視力が障害される。その上黄斑部は血管網が少なく,酸素消費量が高く,かつ組織が繊細であるという特殊性を有するから,黄斑部における出血,浮腫は吸収されがたく組織障害をきたして永久的機能障害を残しやすい。すなわち黄斑に嚢腫や円孔を形成したり,結合織増殖,網膜皺襞形成,色素消失や増殖をきたす。Wise5)によつて5年間と21年間の長期にわたつて黄斑部に出血が残存した症例が報告されている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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