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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科28巻1号

1974年01月発行

雑誌目次

特集 第27回日本臨床眼科学会講演集 (その1)

第27回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.2 - P.2

講演
〔特別講演〕
斜視学における神経眼科学的アプローチ
 弱視および斜視の感覚運動異常を中心に………………筒井 純………23
慢性二流化炭素中毒の網膜症…………………高橋正孝・他…47

講演 特別講演

斜視学における神経眼科学的アプローチ—弱視および斜視の感覚運動異常を中心に

著者: 筒井純

ページ範囲:P.23 - P.45

緒言
 弱視,斜視の神経眼科学的異常を一言で表現すれば,視機能の感覚運動異常ということになる。すなわち,視感覚系と眼球運動系が表裏一体となつて異常を形成する。この両者の関係には,そのいずれかの一方から弱視,斜視を形成する主因が始まつていることが多い。
 弱視,斜視の神経生理学的研究,特に電気生理学的に脳の異常ととりくんだのは私の師であるBurian1)であろう。彼はすでに20余年前に弱視のEEGの研究をしており,その後現在にいたるまで,神経生理学的な方法による研究を続けられている。この点がBurianの系統をくむ斜視学と他学派との相違であり,このような神経生理を主流にする先生に20年前にめぐりあつたことは,私にとつて大きな幸運であつた。

学会原著

慢性二硫化炭素中毒の網膜症

著者: 高橋正孝 ,   加藤桂一郎

ページ範囲:P.47 - P.54

緒言
 19世紀半ばヨーロッパにおいてゴム工場の職工に多くの弱視患者が発生した。これはゴム製造過程に使用される二硫化炭素ガスの吸入による中毒性弱視であるとされ,定型的な中心暗点を特徴としながら眼底にあまり変化を認めないことから,慢性球後視神経炎の一つと考えられていた。その後漸次職場環境,労働条件等が改善され,初期の激しい中毒症状がほとんど見られなくなつたため,すでに本中毒症は忘れ去られようとしている。
 しかし今日でも二硫化炭素(以下CS2と略す)は主としてビスコースレーヨンおよびセロファン工業において人絹,スフ,セロファンの製造に用いられており,眼科的にも本中毒患者が糖尿病性網膜症ときわめて良く似た螢光パターンを呈することが報告されている1)2)3)

網膜のいわゆる水泡細胞(foam cells)—コーツ病の1症例についての検討

著者: 石川豊子 ,   生井浩 ,   猪俣孟

ページ範囲:P.55 - P.63

緒言
 通常の光学顕微鏡標本において泡沫状形態を呈し,リピッドを含有する細胞,いわゆる水泡細胞(foam cells)が出現する網膜疾患は少なくないが,典型的な同細胞が出現するものにコーツ病(滲出性網膜炎)がある。この場合,網膜内および剥離網膜下の滲出液中に多数の水泡細胞が現われ,これはコーツ病の組織学的所見の一特徴に数えられている。しかしながら同細胞の本態については異論が多く,その起源および意義についてもいまだ十分解明されていない。
 今回私どもは滲出液中に出現する水泡細胞の起源およびその形成過程を,細胞の微細構造の観点から検討したので,その結果を報告する。

ベーチェット病患者の下垂体・副腎皮質機能について

著者: 大口正樹 ,   青木功喜 ,   杉浦清治

ページ範囲:P.65 - P.70

緒言
 ベーチェット病に対する副腎皮質ホルモンの功罪については,眼科領域において議論の多いところであるが,このホルモンの影響については臨床的経験に基づいた報告1)〜4)が主であつて,下垂体・副腎皮質機能について実験的検討を加えたものが少ない。われわれは今回本病患者についてこの点の検討を行ない,若干の知見を得たので,ここに報告したい。

Uveal Effusionの2例3眼

著者: 清水昊幸 ,   佐藤千里子 ,   内野允

ページ範囲:P.71 - P.76

緒言
 網膜剥離をおこす疾患を二大別し,有裂孔(rhegmatogenic)のものと無裂孔(non-rheg—matogenic)のものとすると1),従来特発性網膜剥離と呼ばれてきたものは前者に属し,後者には種々な疾患が含まれる。今その代表的なものをあげれば脈絡膜の炎症性疾患である原田病,網膜色素上皮の異常によると考えられる2)中心性網脈絡膜炎,脈絡膜感染症であるトキソプラスマ性脈絡膜炎,網膜血管障害による浸出性網膜炎(Coats病)等があるが,最近では周辺性ブドウ膜炎がこれに加わり報告例も多い3)〜6)
 われわれは最近特発性網膜剥離に似て高度な網膜の剥離を生じ,しかも裂孔がなく上記続発性網膜剥離のいずれとも違う特異な症例を経験した。これら症例はその全経過を通じて前房,硝子体に全く混濁を生ぜず,網脈絡膜にもほとんど炎症所見がなく,薬物療法は消炎剤,抗生物質等種々のものを試みたが無効であつた。われわれの経験した症例に類似のものとしてはSchepensらのいうUveal Effusionがあり7)8),さらにGass9),倉知ら10),浦山ら11),の報告も注目に値する。最近では塚原ら12),三村ら13)によつてわれわれの症例と類似の症例が病因論的に中心性網脈絡膜炎との関連において論じられている。

ブドウ膜炎の統計的観察

著者: 小暮美津子 ,   佐治加世子

ページ範囲:P.77 - P.84

緒言
 内因性ブドウ膜炎の原因については,いまだに明らかにできない部分が多い。これは諸家が認めるように,眼病巣部から生検材料が容易に得られないこと,ブドウ膜が多くの全身病の影響をうけやすく,そのうえ,免疫学的修飾をこうむりやすい組織であること等が理由としてあげられている。したがつてブドウ膜炎の病因の大部分は,血清学的検査をはじめとする補助的診断法や,他の身体部位からの起因物質検出による間接的証明法にゆだねられている。このように確定診断が行なわれにくくても,せめてブドウ膜炎の病因と考えられる事象について,可能な限りの検索を行なえるようにしたいと考え,私どものブドウ膜外来では各方面に協力をお願いして,第1表にかかげた検査を昭和46年2月から行なつている。さらに可能なものには眼内液を採取し,起因物質の検索を行なつている。1972年12月までに,その総数が200例に達したので,その結果の要約をここに報告する。なお,今回は表中●印を付けたルチンの検索結果のうち病因に関するものを中心に述べる。

人眼ERP (Early Receptor Potential)の臨床的研究—第5報網膜剥離のERP

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.85 - P.96

緒言
 網膜剥離のERPについてはすでにいくつかの報告1)〜8)があるが,術前のERP所見と剥離の程度および罹病期間との相関性,ならびに復位後のERP波形の動向について詳述した報告はまだない。
 今回は,これらの点の解明を目的として,網膜剥離患者にERP的検索を施行したので,ここにその結果を報告する。

続発性網膜剥離の新しい病型

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.97 - P.105

緒言
 1973年,著者を含めて数名の人々2)〜6)によつて,従来注目されなかつた後極部付近に原発病巣をもつ続発性網膜剥離についての報告があつた。すでに1971年,浦山ら1)は,従来の文献に記載されていない,比較的後極部に限局した脈絡膜炎で,続発性網膜剥離を伴つた2例について報告している。これらの症例はおそらく同一疾患の症例と思われるので,著者の自験例7例,文献に記載された浦山ら1)の2例,三村ら2)3)の7例,古岡7)の4例,Gass4)の5例合計25例を対象として本症の臨床所見,鑑別診断および原因について述べたい。

後天性網膜分離症(Acquired Retinoschisis)の診断と治療

著者: 広瀬竜夫 ,   ,   L. Schepens ,   H. Mackenzie

ページ範囲:P.107 - P.114

緒言
 Retinoschisisは網膜(Retino)披裂(Schisis)とでも直訳されようが,実際には網膜が視細胞層と視神経線維層との間で層状に二葉に分離する(Splitting,Aufspaltung)状態をいい1),これを本報告では網膜分離症と呼ぶことにする。
 本症は網膜が色素上皮と視細胞との間で接触を失う網膜剥離とは,病理,臨床所見あるいは治療方針において本質的に異なる疾患であるが,その眼底所見が網膜剥離のそれときわめて類似するので,過去および現在において網膜分離症と思われる多くの症例が網膜剥離として報告されてきたし2)〜6),また日常診療中にも剥離と誤診されて紹介されてくる網膜分離症の患者はあとをたたない。

網膜剥離に対する流体シリコン注入後の経過

著者: 浦山晃 ,   桜木章三 ,   高橋信夫 ,   酒井文明 ,   田中泰雄 ,   斉藤武久

ページ範囲:P.115 - P.120

緒言
 重症の網膜剥離に対する手術のひとつとして,流体シリコンを硝子体内に注入する方法SiliconeRetinopiesisは,Stone (1958),Armaly (1962),Cibis (1962)等以来諸家により推進されたが,術効は一時的で永続性のないことと合併症の点からもまたその評価は必ずしも高くはない。しかし元来,もはや希望がないとみられるほどの難治性のものに対する手段であるからには,たとえごく少数例ではあつても長期にわたり予後佳良なものがあるとすれば,それなりの価値は認めてやらなければなるまい。われわれ1)が20例の経験を第21回臨床眼科学会に発表したのは1967年秋のことであるが,その後,5年余を経過したので,ここに続報として長期追跡の結果を報告する。

広大眼科における予防的裂孔閉塞術の遠隔成績

著者: 調枝寛治 ,   三嶋弘 ,   井上暁二 ,   郡山昌太郎 ,   稲原明肆 ,   石田尚史 ,   重河康弘 ,   百々次夫

ページ範囲:P.121 - P.127

緒言
 網膜剥離の手術的予防措置に関しては,すでに1934年以来,多くの人々によつて論ぜられているが,わが国においては,百々1)が1943年の第47回日眼総会で,片眼剥離患者の非罹患側眼に網膜裂孔や類嚢胞変性巣の潜在する頻度の高いことを指摘し,これらの潜在病巣を検出し,定期精査によつて監視し,必要に応じてこれに閉塞手術を加えることによつて,積極的予防に努めるべきであるとの見解を述べた。
 その後,Meyer-Schwickerath (1949)によつて創始された光凝固は,予防的裂孔閉塞手段としての有用性がきわめて優れているところから,予防的手術を積極的に実施するという趨勢を推し進めるのに大いに貢献した。さらに最近になつて冷凍手術が取り入れられ,予防手術の障害は軽減されてきた。

増田型中心性網脈絡膜炎の5%ブドウ糖液静注負荷による螢光眼底検査

著者: 益山芳正 ,   谷口慶晃 ,   藤田晋吾

ページ範囲:P.129 - P.136

緒言
 近年,増田型中心性網脈絡膜炎の治療法として光凝固法が用いられ,螢光漏出点に光凝固を行なうことにより,短期間に治癒を期待しうるようになつたが,そのためには早期に漏出点の存在を明確にし,凝固目標を確実に把握することが重要である。
 漏出点を明確にする方法として,飲水負荷などの試み1)があるが,これらは多量の飲水に苦痛を伴うばかりでなく,腸管からの水分吸収が不確実であり,常に良い条件を期待できるとはいえない。

Rieger型中心性滲出性網脈絡膜炎の螢光眼底所見

著者: 杉田新 ,   吉岡久春

ページ範囲:P.138 - P.147

緒言
 1939年Rieger,H.は黄斑部付近にみられる一種特有な疾患と題して5例を報告し11),氏はこの黄斑部の変化を黄斑部に限局したコーッ病とみなし,その原因を結核と考えたが,1960年,氏がはじめに報告した症例を中心性外層滲出性網膜炎(Rieger)という名称にかえ,その50例につきSabin-Feldman-Testを行ない,84%に陽性だつたことから,本病は後天性トキソプラスマ症に関係があると考えた12)。しかし,Pau10)は1968年,Riegerがはじめに報告した症例を中心性(出血性)滲出性脈絡網膜炎という名称で呼び,その9例を報告し,3例にしかSabin-Feldman-Test陽性例がみられなかつたことから,本病原因にトキソプラスマ症はあまり意義がないと考えた。
 一方,わが国では1966年鬼木5)が中心性滲出性網脈絡膜炎(Rieger型)を紹介し,本病の40症例の臨床成績を報告した,,そして本病は後天性トキソプラスマ症に関係があると考えたが,その後現在では,本病は結核,トキソフ。ラマス症,ヒストプラスマ症その他の原因でおこる症候群名7),あるいはトキソプラスマ症やヒストプラスマ症の黄斑部病変をRieger型として表現1)する考え方にかわつている。

連載 眼科図譜・195

von Recklinghausen病にみられた視神経膠腫の一例

著者: 大野新治 ,   田中俊夫 ,   平石聡

ページ範囲:P.5 - P.6

〔解説〕
 欧米ではRecklinghausen病に視神経腫瘍,特に視神経膠腫を合併する症例は多いが,本邦ではかかる症例はきわめてまれで,その報告はまだないようである。
 最近われわれは,視神経膠腫によつて眼球突出が起こつた3歳の男子で,虹彩の小結節のほか躯幹部および臀部に散在性のcafé—au-lait様の色素性母斑が存在したReckHinghausen病の症例を経験したので供覧する(本文159頁参照)。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のためにその6高血圧と眼

著者: 大島研三 ,   松井瑞夫 ,   松山秀一 ,   木村重男 ,   桐沢長徳

ページ範囲:P.10 - P.22

 桐沢(司会)今日は内科の大島先生を初め,松井先生,それから遠方から松山先生,木村先生においでいただいてたいへんありがとうございました。
 全身疾患と眼のシリーズの1つとして"高血圧と眼"という題でお話し願うわけですが,最初に全身疾患としての高血圧と眼の関係,もつと具体的にいえば眼底所見の意義というようなことをテーマにしたいと思います。

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お知らせ

ページ範囲:P.96 - P.96

第12回北日本眼科学会
会場:北海道大学クラーク会館
   (札幌市北区北8条西8丁目)
日時:昭和49年7月20日(土)〜21日(日)

談話室

学校用色覚異常検査表(1968年版),幼児用色覚異常検査表(1970年版)の思い出

著者: 沢潤一

ページ範囲:P.153 - P.155

 石原先生が亡くなられてもう10年になる。先生の色覚異常検査表がスクリーニング表として世界に冠たるものであることはすでに定評があつたが,先生は終生この表の改良を研究しつづけておられ,数々の腹案を持たれ,そのうちのあるものは原稿もできていた。しかし先生の生前に実現したのはコンサイス版および旧版の「幼児用色盲検査表」までであつて,この時先生は最後の病床にあられた。死期の遠くないのを覚られた先生は,色盲表に関する後事の一切をあげて財団法人一新会に托され,昭和38年1月3日82歳で逝去された。
 先生のお作りになつた表は陸軍在職時代以来多数にのぼるが,現在ひきつづき刊行されているのは「38表版」,「24表版」,「コンサイス版」および学校用色盲検査表,幼児用色盲検査表であつて,前3者は主として国外向けのものである。先生の一新会に対するご遺嘱は,石原表の声価をおとすことのないよう厳重に管理するとともに改良すべき点は改良するようにとのことであつた。先生の表は原理的には偽同色表であるが,その基礎になる異常者の混同色について非常に広範な深い研究をされ,それらの色のいくつかの組合わせを作られ,生前刊行されたものは7種類の組合せをとられていた。

学会印象記

第27回日本臨床眼科学会

著者: 田村修

ページ範囲:P.156 - P.157

 10月27日,今日から学会が始まる。昨日は暗くなつて旅館に着いたので,会場の場所がわからない。旅館で聞いたところ,すぐそこに見える尖つた屋根の建物が文化会館だと聞かされた。天気も良いことだし,時間に余裕もあるので文化会館まで歩くことにした。文化会館の屋根の上の小高い丘に緑に囲まれたお城が見えた。後で聞いたところでは,これはお城の形をした郷士館だとのことで,古い時代の出土品等も沢山あるとのことだつた。この郷土館は会場から近くもあるし,一度行つてみようと思いながら時間の都合が悪かつたり,雨が降つたりでその機会がなく残念だつた。
 郷土館のすぐ下に特徴のある屋根が見え,その前の広場では自動車が慌しく出入している。これが本日のグループディスカッションの会場の一つである文化会館で,明日の総会の会場でもある。玄関を入ると天井の高いロビーがあり,その中央に大きな男の人の像が背中を向けて立つている。またそこにはブラジルから送られてきたとかいう化石もあり,美術館へ入つたような気分になつた。このロビーで学会の受付をすませた。名礼とホールダーの大きさが合わないのがちよつと気になつた。時計を見ると開始までに30分近くもあり,機械展示もまだ準備している所もあるので西側玄関前の広場へ出てみた。

臨床報告

von Recklinghausen病にみられた視神経膠腫の一例

著者: 大野新治 ,   田中俊夫 ,   平石聡

ページ範囲:P.159 - P.164

緒言
 Recklinghausen病の眼症状として眼瞼部および眼窩の叢状神経腫(plexiform neurofibroma—tosis),虹彩の小結節,緑内障,ブドウ膜外反の発生などはよく知られている。欧米では,同病に高頻度に視神経膠腫の発生が報告されて,両者の関係が注目されているが,本邦ではこのような症例の報告はまだないようである。
 最近,著者らは視神経膠腫によつて眼球突出の起こつた幼児で,虹彩の小結節のほか躯幹部および臀部に散在性のcafé—au-lait様の色素性母斑が存在したRecklinghausen病の症例を経験したので報告する。

眼窩壁を穿孔した稀有な巨大鉄片異物の一例

著者: 太田安雄 ,   加藤晴夫

ページ範囲:P.165 - P.168

緒言
 眼窩内における異物の報告例は,文献上かなり多数認められるが,異物の長さが眼窩軸以上に達する巨大鉄片異物の報告例は,きわめてまれである。今回,われわれは左眼に飛来した長さ9.5cm,直径2cm,重量147.5gの巨大鉄片が,眼窩下壁を破壊して,鼻中隔を穿孔し,右側軟口蓋にまで達した一例を経験した。このような例は内外の文献上いまだその記載がなく,稀有な例と思われるのでここに報告する次第である。

低眼圧緑内障にPosner-Schlossmann症候群を合併した一症例

著者: 五十嵐良 ,   田中宣彦

ページ範囲:P.169 - P.173

緒言
 視神経乳頭緑内障性陥凹と萎縮,それにともなう視野変化がありながら,眼圧の高くない症例についてはVon Graefeがはじめて認めて以来,多くの人によつて報告され,分類されてきた。しかしその意味するところは必ずしも同じでなく,病因論的にも種々の問題がある。一方Posner—Schlossmann症候群(以下P-S症候群)はPosnerおよびSchlossmannがglaucomato-cycliticcrisesとして症状,診断基準を体系づけで以来,P-S症候群としで多くの報告がなされてきた。しかし両疾患が合併したという報告はまだみない。われわれは低眼圧緑内障(以下low tension glau—coma)に片眼性P-S症候群を合併したと思われる興味ある症例を経験し,約2年半にわたつてその経過を観察したので報告する。

周辺部網膜凝固による糖尿病性網膜症の治療

著者: 菅謙治 ,   永田誠

ページ範囲:P.175 - P.183

緒言
 糖尿病性網膜症に対する光凝固は,1959年のMeyer-Schwickerath1)の悲観的な報告をはじめとして,その後数多く報告されるに至り,その効果は網膜症の早期に光凝固を行なえば,網膜症の進行を遅らせることができるとするのが大勢の結論となつた2)。しかしこれらの報告のほとんどすべては病的網膜や新生血管などの網膜症病変を直接に凝固してえられた成績であるので,凝固しえない部位の病変,たとえば乳頭上からの血管新生などはいかんともしがたく,光凝固の限界はここにある3)〜6)とされてきた。また一方光凝固の治療効果も網膜病変が凝固破壊されたことによつてえられたものなのか,あるいは病変の破壊というよりはむしろ広範囲の網脈絡膜が凝固されたことに関係があるのか7)といわれており,いまだその奏効機序に関しても結論がえられるに至つていない。
 本報においては上下耳側血管のArcade内のみを除いて広い範囲の網膜を凝固し,この凝固がArcade内の凝固を行なつていない後極部病変におよぼす効果を報告するのであるが,先に述べた理由からこれは従来の光凝固の限界への挑戦であり,また光凝固の奏効機序を考察する上でも有用であろう。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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