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連載 眼科図譜・203
視神経乳頭Melanocytomaの1例
著者: 大野重昭1 喜早光紀1
所属機関: 1北海道大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1101 - P.1102
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視神経乳頭に発生する色素性腫瘍は,その頻度が少なく,良性か悪性かの鑑別に有用な検査法も少ないため,その診断あるいは治療法の選択上,著しい困難をきたすことが多い。今回われわれは,左眼視朦感を主訴として北大眼科を受診し,眼底検査で左視神経乳頭上の巨大な黒褐色腫瘤を発見された36歳の男子の症例を経験した。左視力低下と周辺視野狭窄が著明であり,入院後さらに,左眼底小出血や白斑,静脈周囲の色素沈着などが出現し,進行性の臨床像を示した。これらの特徴は,melanocy—tomaのそれというよりは視神経乳頭原発の悪性黒色腫,あるいは脈絡膜原発のjuxtapapillary malignant melanomaに酷似しているため,悪性腫瘍として左眼球摘出術を行なつた。そして,病理組織学的検討を行なつたところ,黒色腫瘍は乳頭を中心に直径約6mmあり,硝子体中へ約3mm突出し,連続切片標本では腫瘍は乳頭内に限局して存在し,周囲の網膜や脈絡膜から視神経内への浸潤,またはその逆はみられなかつた。また,腫瘍は中心部でlamina cribrosaをこえて視神経内へ約1mm浸潤していた。メラニン漂白標本では,均一で異形性に乏しい類円形または多角形の腫瘍細胞がぎつしりつまつており,核は小型で円形または楕円形のものが多く,核分裂像もみられなかつた。以上の組織所見は悪性黒色腫とは異なつており,良性の視神経乳頭melanocytomaと診断された。
視神経乳頭に発生する色素性腫瘍は,その頻度が少なく,良性か悪性かの鑑別に有用な検査法も少ないため,その診断あるいは治療法の選択上,著しい困難をきたすことが多い。今回われわれは,左眼視朦感を主訴として北大眼科を受診し,眼底検査で左視神経乳頭上の巨大な黒褐色腫瘤を発見された36歳の男子の症例を経験した。左視力低下と周辺視野狭窄が著明であり,入院後さらに,左眼底小出血や白斑,静脈周囲の色素沈着などが出現し,進行性の臨床像を示した。これらの特徴は,melanocy—tomaのそれというよりは視神経乳頭原発の悪性黒色腫,あるいは脈絡膜原発のjuxtapapillary malignant melanomaに酷似しているため,悪性腫瘍として左眼球摘出術を行なつた。そして,病理組織学的検討を行なつたところ,黒色腫瘍は乳頭を中心に直径約6mmあり,硝子体中へ約3mm突出し,連続切片標本では腫瘍は乳頭内に限局して存在し,周囲の網膜や脈絡膜から視神経内への浸潤,またはその逆はみられなかつた。また,腫瘍は中心部でlamina cribrosaをこえて視神経内へ約1mm浸潤していた。メラニン漂白標本では,均一で異形性に乏しい類円形または多角形の腫瘍細胞がぎつしりつまつており,核は小型で円形または楕円形のものが多く,核分裂像もみられなかつた。以上の組織所見は悪性黒色腫とは異なつており,良性の視神経乳頭melanocytomaと診断された。
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