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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科28巻12号

1974年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・205

網膜動脈閉塞症の螢光眼底写真にみられたフルオレスチンの逆流現象

著者: 升田義次 ,   堀ヤヱ子

ページ範囲:P.1285 - P.1286

〔解説〕
 48歳の男子である。2週間前より頻回に一過性の右眼視力低下を認めている(2〜3回/週,1〜2分間)。その原因は,発作時の眼底所見から,右外下側動脈の乳頭より1乳頭径の部分にみられる動脈攣縮であると判断された。内科的に特に異常所見はない。塩酸ハパベリン,ニコチン酸,カリクレイン,カピランなどの内服,ニコリン,ウロキナーゼなどの静注を行なつたが,ついに完全な閉塞に至り回復しなかつた。一過性の動脈攣縮から永久的な動脈閉塞に至つた例である。
 閉塞後約12時間後の所見は次のごとくである。視力は右1.0(n.c),左1.5である。眼底は,右外下側動脈の乳頭より1乳頭径の所に動脈の閉塞部分(白線状)を認め,その末梢は細く,血柱が分節状にとぎれている。その分布領域の網膜は扇状に混濁し,それに一致して視野欠損を認める。

臨床報告

諸種点眼薬の軟性コンタクトレンズ内へのとり込みと放出に関する研究—第1報縮瞳剤(塩酸ピロカルピン)の場合

著者: 水谷豊 ,   三輪克治 ,   安井啓子

ページ範囲:P.1287 - P.1293

緒言
 Kaufman,H.E.らは,軟性コンタクトレンズ(以下SCLと略す)を点眼薬に併用することにより薬剤の効果が増し,かつ持続的効果のあることを報告し,ことにピロカルピンについては,各濃度のピロカルピンを用いてSCL装用眼にピロカルピン液を点眼しても有効ではあるが,SCLを点眼薬中に浸して用いると,低濃度でも,高濃度の点眼薬のみを点眼した場合よりもはるかに優れた降圧効果のあつたことを報告している。同様の成績はIDU,その他の点眼薬についても得られている。しかしなおわれわれが日常使用している点眼剤が,すべてピロカルピンと同じように作用するかどうかについては,くわしく調べた報告がない。著者らはこの点を解明するために,日常臨床に用いられる各種点眼薬がSCL内へどのように取り込まれるか,またどのように眼内へ放出されるかについて実験研究し,諸知見を得たので報告する。第1報では,ピロカルピンの効果について,薬剤の濃度,薬剤に対する処理方法,SCLの吸水率の種類を変えて検討を加えたので,その成績をここに報告したいと思う。

小児の眼腫瘍の電子顕微鏡的研究

著者: 雨宮次生

ページ範囲:P.1295 - P.1308

緒言
 小児の眼腫瘍は大変まれな疾患であるが,悪性のものが多く,不幸な転帰をとるものが多い。
 網膜芽細胞腫,眼窩横紋筋肉腫,神経芽細胞腫,緑色腫は小児の眼腫瘍の代表的なものである。著者は緑色腫の経験がないので,これについては報告できないが,Hand-Schüller-Christian病の研究経験を加え,4種の小児の眼腫瘍の超微細構造と,電子顕微鏡による検索の有用性について述べる。

糖尿病性網膜症に対する薬物効果における実験的,臨床的研究

著者: 小嶋一晃 ,   原田敬志 ,   杉田元太郎 ,   馬嶋慶直 ,   小嶋克

ページ範囲:P.1309 - P.1318

緒言
 糖尿病性網膜症の発生は,網膜自体の代謝系にたつて,さらに血管周囲がglia細胞やMüller細胞で囲まれるといつた構造にも関係があると思われる。本症では,糖尿病の早期発見とその管理が発生,進行にも重要であることは周知のごとくである。一般には良き管理のものでは5年以上の観察によつても,stage I〜IIの者の60%位は停在性を示すと思われる。したがつて眼科的の諸治療の効果を扱う場合では,以上の条件を考慮する必要がある。Aglumin使用もこの点例外ではない。Agluminが特に血管の透過性亢進を抑制しhyaluronidaseの拡散現象をおさえること(宮沢氏1),稲田氏2),Huguet3))や,毛細血管の抵抗性を亢めること(立井氏4))が報告されており,本症においては初期に適用が可能であると推定される。われわれは糖尿病性網膜症およびStrepto—zotocin-ratの組織所見を参照して,Aglumin併用実験成績と臨床例について考察した。

Carbacholの内斜視に対する応用

著者: 近江栄美子 ,   新井妙子 ,   井川千家子

ページ範囲:P.1319 - P.1324

緒言
 内斜視の薬物療法として,従来使用されていた抗コリンエステラーゼ剤の縮瞳剤としてトスミレン,PI,DFP等があるが,今回は縮瞳剤としてcarbacholを遠視を有する内斜視患者に使用し,前回われわれが使用したUbretid (以下UBR)と結果を比較しながら,本薬剤の内斜視に対する効果,使用期間,使用後の治療法,副作用等につき考察してみたいと思う。

メチアジン酸の研究—その2ブドウ膜炎に対する使用経験

著者: 大西宏司 ,   疋田春夫 ,   宮田幹夫

ページ範囲:P.1325 - P.1328

緒言
 ブドウ膜炎の治療には,アトロピン点眼,ステロイド剤,変調療法,免疫抑制剤および非ステロイド系消炎剤などが使用されている。最近の研究では,特にベーチェット病においてステロイドの全身投与を疑問視する傾向が強い。したがつてなんらかの抗炎症作用を有する薬剤が望まれている。われわれは最近フランスで開発された抗炎症効果を有し,鎮痛作用のある10—メチル・2—フェノチアジール酢酸(メチアジン酸)を各種ブドウ膜炎に応用した予報結果を,1973年度厚生省ベーチェット病研究会斑会議で報告した1)。本剤はヒスタミン,抗セロトニン作用がクロルプロマジン等より少ないといわれている。構造式は下記のとおりである。
 本剤の臨床的応用は,リウマチ性関節炎,各種疼痛に有効であることが本邦でもすでに報告されており,一方,ブドウ膜炎に対する応用はTho—mas2)等によりフランスで報告されている。本邦においても徳田3)の報告がある。今回は北里大学眼科において,各種ブドウ膜炎20例(うちベーチェット症候群15例),難治であつた眼痛を有するワレンベルグ症候群1例,絶対性緑内障2例,眼窩腫瘍1例に使用し,興味ある結果を得たのでここに報告する。

眼・光学学会

Moiré Patternsを用いた視力測定法について(その3)—遠隔操作付き縞視力測定器の測定条件の検討

著者: 神谷貞義 ,   山本時彦

ページ範囲:P.1335 - P.1339

緒言
 昨年,1昨年の中部日本学会において,「Moi—ré patternsを用いた視力測定法について」1)2)と題して,従来の視力検査に用いられるLandolt環を基本とした万国視力表を中心にして,各国の国情によりアラビヤ文字,仮名文字等を用いたいわゆるLandolt accuity (ランドルト環視力)を採用し使用されているが,著者らはこれらの意味を有する文字指標の基準化の困難性を解決するには,眼の解像力そのものを表示数量化し,かつ抽象的指標としてMoiré patternsの縞模様に着目し,縞幅をリモートコントロールにより連続的に自由に増減しうる縞視力測定器〔視標形状26cm (直径)正円形〕を紹介し,その試作器について,原理およびその構造,装置の操作法,基礎実験として縞視力に方向性が存在すること2)3),視標距離は3〜5mが適当であること,空間周波数表示により距離の影響は消失すること,空間周波数表示によるOrientumの差の軌跡が同心円的なものではなく,水平軸に長軸を有する楕円面であることは,網膜→大脳皮質系を含めての主観的な光感覚の場,視感覚そのものに差があることを示唆する等について言及した。

光束の平行移動によるパタン認識—その1基礎的事項と2〜3の実験例

著者: 武田啓治 ,   八百枝浩 ,   岩田和雄

ページ範囲:P.1341 - P.1345

緒言
 Stiles-Crawford効果1)は網膜視細胞の方向感受性を示す効果として知られている。この効果とは視細胞が細胞長軸に一致して入射する光に対して最も感受性が高く,斜めに入射するほど感受性が低下する現象をいう(第1図)。
 StilesとCrawfordによる実験結果によれば,瞳孔中心から入射した光に対して中心窩視細胞群は最も感受性が高く,瞳孔周辺へ外れるに従い,中心窩細胞群は感受性が低下している。したがつて,中心窩視細胞層の配列に障害があるとすれば,最大感受性を示す点がずれたり,カーブが平坦化することが予想される。1959年Enochは,弱視眼のStiles-Crawford効果を調べ,その曲線が正常眼のものとは異なり,曲線の頂点のずれ,あるいは平坦化等が認められたことから,視細胞層の配列の乱れが弱視の原因となつていることを推測させる結果を得た(receptor amblyo—pia)2)3)。網膜視細胞層の配列の乱れが視力障害を生ぜしめることは明らかであるが,Enochの実験は測光学的方法で複雑な実験装置による"brightness difference contrast thresholdmethod"を用いてある。

前眼部螢光血管撮影法に関する研究—その2撮影装置の改良

著者: 松井瑞夫 ,   浅井美子 ,   佐藤勝 ,   山本昭 ,   滝沢志郎

ページ範囲:P.1347 - P.1353

緒言
 前報において,著者らの一人松井は,焦点距離200mmの接写レンズを電動式一眼レフカメラにとりつけた撮影系と,観察用のタングステン電球と撮影用のクセノン電球とをもつた照明系とを,細隙灯顕微鏡用の架台にとりつけた前眼部螢光血管撮影装置を考案作製したことを報告した。また,これらの装置により,粒子性と被写体深度の点ですぐれた螢光血管造影写真がえられることを,数例の写真を供覧して報告した。
 今回われわれは,前報で報告した焦点距離200mmの接写レンズを用いる撮影装置にいくつかの改良を加えたので,ここに報告する。改良の主要目的は,高速連続撮影を可能にすることと,細隙灯撮影を可能にすることとである。結膜血管は,その透過性が網膜血管のそれと異なり,むしろ脈絡膜血管の透過性と類似しており,このため色素到達以後,まもなく色素のもれが始まるので,短時間のうちに連続撮影を行なう必要があることが,高速連続撮影を必要とする主な理由である。そして,高速連続撮影をクセノン管の放電によつて行なうためには,大容量,高出力の電源装置が必要となるので,この大きな光量を利用して,細隙灯撮影を行なうようにするというのが第2の改良である。

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臨床眼科 第28巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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