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連載 眼科図譜・196
Choroideremia—(1)男性罹患者の眼底
著者: 大庭紀雄1 長龍重智1 小島孚允1 小室優一1
所属機関: 1東京大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.201 - P.202
文献購入ページに移動Choroideremiaは,網脈絡膜の進行性,びまん性萎縮を主徴とする遺伝性疾患である。欧米ではいくつかの詳細な記載があるが,本邦では明確な記載は従来なかつた。私どもは最近本症の二家系を経験している。本症の遺伝形式はX染色体性劣性で,男性罹患者は特有の病変を示し,女性の遺伝子運搬者は軽微な病変を示す。
男性罹患者は幼少時より夜盲を自覚し,長ずるとともに視野異常も加わり,晩年には視力障害も加わつて失明に至る。私どもの経験した症例中の最年長者は84歳で,一眼は失明,他眼は指数弁であつた。眼底所見はTapetoretinal degenerationとは,鑑別されるべきいくつかの特徴をもつ。周辺部にはじまり漸次後極部に至る広範な網膜色素上皮萎縮,脈絡膜毛細血管の萎縮をみ,さらに脈絡膜大血管の萎縮を生じる。黄斑部は比較的晩年近くまで障害が少ないが,末期にはそれも萎縮し白色眼底になる。網膜内層や網膜血管は長く健康に保たれる。本症は慣習的にChoroideremiaと呼ばれているが,Tapetochoroidal degenerationという名称が臨床像をより正確に記述すると思われる。
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