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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科28巻3号

1974年03月発行

雑誌目次

講演 学会原著

糖尿病性網膜症に対する網膜光凝固療法の効果と限界について

著者: 福田雅俊 ,   田村正 ,   田村正昭

ページ範囲:P.325 - P.335

結語
 糖尿病性網膜症(以下網膜症と略す)に対する網膜光凝固療法(以下光凝固と略す)の効果は今日もはや疑うべくもないが,これが病理に適つた根治療法でないことも事実であり,すでに多くの再増悪例が経験されている。他方光凝固そのものの害も,注目されつつあり,この新しい有力な治療法も一時の爆発的流行からようやくその反省期に入り,適応症例の厳選と,必要最少限の凝固量の決定とが目下の課題となりつつある。
 著者ら1)は,先に網膜症に対する光凝固療法の適応は増殖型網膜症の早期のものにあると述べ,さらにその早期発見法としての螢光造影検査の有用性を強調してきたが2)3),今回はさらに凝固後の再増悪時期とその原因につき検討し,臨床上注目すべき成績を得たので報告したい。

カタプレサン点眼の緑内障に対する作用

著者: 小口昌美 ,   清水暢夫 ,   水谷由紀夫 ,   清水由規 ,   細田淳雄 ,   大貫善信 ,   井関源太

ページ範囲:P.337 - P.343

緒言
 緑内障の薬物療法として,従来より眼圧降下剤としては,全身使用による薬剤では炭酸脱水素酵素抑制剤(ダイアモックス,ダラナイド等),高張滲透圧溶液(ウレア,マニトール,グリセロール等)等が知られている。しかしながら,これらの薬剤は高眼圧を一時的に降下させるにはその目的を十分に果してくれるが,長期使用に対しては種々の副作用の出現により,その使用を困難にすることが多い。一方,点眼薬としてはピロカルピン,エゼリン,またさらに強力な縮瞳剤としてDFP,フォスホリンアイオダイド,アーミナン等が多く使用されている。これらは縮瞳剤と名の付くごとく縮瞳作用が存在する。時に強力な縮瞳剤では逆説的眼圧上昇が起こり急激な眼圧上昇をきたすことがあるという。また,視野の暗黒化や調節力の変化等の副作用が知られている。また,虹彩炎による続発性緑内障には一般に縮瞳はむしろ不都合である。ところが,カタプレサン点眼薬は瞳孔反応に影響がなく,降圧が得られるという。
 カタプレサンはイミダゾリン誘導体であり,化学名は2—(2,6—ジクロロフェニルアミノ)−2—イミダゾリン塩酸塩である。構造式は第1図のようであり,この分子量は266.57である。

虹彩切除または毛様体解離術の房水経脈絡膜排出に対する影響

著者: 小林直樹

ページ範囲:P.345 - P.348

緒言
 脈絡膜を介しての房水排出路を,近藤1)は中性赤色素による生体染色法を用いて組織学的に証明している。そこで私は虹彩根部切除,あるいは毛様体解離術実施が,この経路による房水排出に対していかなる影響があるかを,近藤と同じく中性赤生体染色法を用いて調べてみたので,ここに報告する。

Keratometric Gonioscopyの経験とその臨床的意義についての考察

著者: 永田誠 ,   木村好美

ページ範囲:P.349 - P.353

緒言
 緑内障の診断,治療方針決定にあたつての隅角鏡検査の重要性についてはいまさら論ずるまでもないことであるが,隅角所見の解釈や判定結果の正確さに関して全く問題がないわけではない。
 現在わが国で最も頻繁に用いられている隅角鏡は,岩田8)が指摘しているように,細隙灯顕微鏡とともに坐位で検査する間接型隅角鏡の代表であるGoldmann1,2,3面鏡型のGonioprismと考えられるが,その他入手可能なものとしてAllen—Thorpeと同型式の荻野式4面鏡WorstのLo-vac型各種隅角鏡Zeiss4面鏡などが挙げられる。第1表のごとく,これら各種の間接型隅角鏡は原理的に大差ないとしても,そのデザインの細目に関しては多少の差が認められ,これらを用いて得られる隅角所見の判定結果にも境界領域に属する症例では微妙な差が生ずる恐れがないとはいえない1)5)12)

映画によるSchlemm管動態の記録

著者: 岩田和雄 ,   八百枝浩 ,   難波克彦 ,   祖父江邦子 ,   布田竜佑

ページ範囲:P.355 - P.358

緒言
 Schlemm管は房水流出のconventional routeの途中に存在する一種のsinusである。しかしその存在理由についてはなんら知られていない。
 房水は最終的には静脈系に入るが,血液の前房内逆流を食い止めるためにはsinus状の緩衝地帯が必要である。また房水の流れを定常に保つためにも貯溜池が必要である。さもないと末梢が枯渇したり,ダクトが閉塞したりして調整がスムーズになされず,最終的には眼圧を一定に保つことが困難になる。

緑内障眼前房隅角の微細構造—(3) Schlemm管線維柱切除術

著者: 瀬川雄三 ,   松尾俊彦 ,   吉田啓三

ページ範囲:P.359 - P.360

緒言
 原発性開放隅角緑内障眼の前房隅角組織は電顕レベルでも研究が行なわれつつある。しかしながら,通常これらの電顕試料は死後摘出眼から得られるため,観察された病変が死後変化そのものであるとか,経年変化であるといつた反論が起こつてくる。電顕的研究のためには手術摘出眼より試料を作ることが理想であるが,緑内障眼の場合それはほとんど不可能なことである。唯一の手段は,緑内障手術時に得られる生検試料が電顕的研究に利用できないかということである。過去において管錐術のさい得られる組織片を電顕的研究に利用しようと試みたことがあつたが,その内部に前房隅角組織を認めることはできなかつた。Zim—mermanも管錐術試料が光顕的研究にすら不適であると述べている1)。しかしながら近年緑内障手術にも新しい手術法が導入され好成績をあげつつある。Schlemm管線維柱切除術(Trabec—ulectomy)もその一つである。今回はTra—beculectomyによつて得られた組織片が電顕的研究に利用可能かどうかという問題を,従来の手術摘出眼より得られた試料と比較しつつ検討し,この手術によつて得られる試料が電顕的研究に十分利用可能であることを確認した。

"Optic Cup"の定量化と臨床的応用—第1篇基礎的検討

著者: 塩瀬芳彦 ,   神田孝子

ページ範囲:P.361 - P.366

緒言
 Optic cupの定量化に関する文献は現在に至るまで数少なく,古くには1928年Pickqrdの報告1)があるが,その後長い空白期間を経て1964年Snydackerの研究2)を端緒にArmaly3),Tom—linson and Philips4),Beckerら5)によるCup/Disc直径比,Tomlinson and PhilipsのCup/Disc面積比,Holm et al.6)のcup容積の算定,さらにはDaviesら7) によるmicrodensitometryを用いた乳頭色調の解析などの実験的な研究がある。
 以上のうち臨床的に応用されているのは,その簡便さからCup/Disc直径比(C/D比)であるが,これを普遍的な基準とするには個体差その他の要因で問題が多く,検眼鏡的に判定するとなれば主観による誤差が大きく,optic cupのわずかな変動を知るには適当でない。その他の方法はoptic cupの精密な計測を目差したものであるが,その時間と労力は臨床的応用とは程遠いものであり,また多くの誤差因子を含む写真を精密に解析することは,その方法論に対する厳しい批判もあり,自ら限界を感じさせるものである。

"Optic Cup"の定量化と臨床的応用—第2篇症例による考察

著者: 塩瀬芳彦 ,   神田孝子

ページ範囲:P.367 - P.374

緒言
 緑内障の経過観察,病期判定にさいし,定量視野とならんで視神経乳頭所見が最も信頼すべきparameterとして注目を集めつつある1)
 とくに眼圧の変動に対応して生じる"opticcup"の変化を数量的に記録することは,データの客観性から臨床上非常に興味ある問題である。

網膜芽細胞腫の臨床的病理学的統計的観察

著者: 桑原洋子 ,   船橋正員 ,   加藤和男 ,   中島章 ,   桑原紀之 ,   福田芳郎

ページ範囲:P.375 - P.386

緒言
 網膜芽細胞腫(以下Rtb)は遺伝性の証明される数少ない悪性腫瘍の1つに数えられ,昨年の小児悪性新生物全国登録では白血病,脳腫瘍,神経芽細胞腫,悪性リンパ腫,ウィルムス腫瘍についで第6位にあり,また眼内悪性腫瘍中最も多いもので小児眼科領域では重要な位置を占める疾患である。そこでわれわれは1962年より1973年の12年間に当教室で扱つたRtb 41例55眼につき,発生,治療法,病理,予後,遺伝関係,体内体外環境について片眼性Rtbと両眼性Rtbとを比較検討した結果を報告し,その人類遺伝,癌病理学的意義について述べる。

眼窩骨腫と思われた過骨症のエコーグラム

著者: 月花一 ,   新居啓子 ,   荻野総夫 ,   谷善行 ,   岡本途也

ページ範囲:P.387 - P.392

緒言
 前頭骨等に発生するいわゆる眼窩骨腫は比較的稀なものとされているが,近くは1971年福田ら1)による報告等,本邦においても何例か記載されている。また本疾患類似の過骨症は本症との鑑別が非常に困難である2)とされているが,今回われわれは本症を疑わせる症状,すなわち患眼の視力障害,視野狭窄,複視,眼球突出,眼筋麻痺等を主訴として来院した患者に対して超音波診断装置による検査を中心に種々の検索を行なう機会を得たので報告する。

連載 眼科図譜・197

特発性前房内遊離虹彩嚢腫の一例

著者: 飯島幸雄 ,   能勢晴美

ページ範囲:P.309 - P.310

〔解説〕
 特発性前房内遊離虹彩嚢腫は,他の虹彩嚢腫とは異なり,前房内に遊離している嚢腫で,形態学的に興味深く,きわめて珍しい嚢腫である。1867年のBusinelli1)の報告をはじめとし,われわれが調べた範囲では全世界で30例,本邦では越智2),伊藤,重河の3例をみるのみである。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のために その7膠原病と眼

著者: 本間光夫 ,   大高裕一 ,   宇山昌延 ,   鹿野信一

ページ範囲:P.312 - P.324

 鹿野(司会)今日はえらい先生お2人にわざわざきていただきまして,ありがとうございました。お二人ともおそらくきていただけないのではないかと思つて,山かけておいでをお願いしたら,快くきていただいて,ほんとうにありがたいと思います。
 本間先生は,慶大の内科の方でございまして,「膠原病」という本をごく最近医学書院から出された方でございますし,東京医大病理の大高先生は古くからこの方面のベテランで,ずいぶん先生にいろいろと教わつているかたでございます。さてそれで,眼科のほうからも誰かを選ばなきやならないということになつたのですけれども,膠原病ということですと,どなたにご指名申し上げていいか,たいへん人選に困りました。というのは,大阪市立医大の池田先生がこの方面の大家であつたんですが,もうお亡くなりになつていますし,そこで,そこにおいでになつていただいた宇山先生に対してたいへん申しわけないのでございますけれども,いろいろ最近の先生のお仕事を拝見しておりますと,血管の変化について,ことに血管炎については,かなり独自の見解を持つておられ,詳しいところがあられるので膠原病についても大いに発言していただけると思つてお願い申し上げました。

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お知らせ

ページ範囲:P.343 - P.343

第18回日本コンタクトレンズ学会
 上記学会を下記の通り開催いたしますのでご通知申し上げます。

第28回日本臨床眼科学会を担当するにあたつて

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.402 - P.404

 第28回日本臨床眼科学会は本年10,月26日,27日の両日に亘つて徳島において開催されることになりました。徳島ではすでに小児科,産婦人科,耳鼻科,歯科などの3,000人ないし5,000人級の全国学会が開かれていますが,眼科の全国学会が四国で開かれるのは最初のことです。この機会に四国の観光をなさる方も多いことと思います。こういう立場から考え,今回の学会は純学会としての設営と,エクスカーションとしての設営と,両者を分離しかつ融合させるようにしてみたいと考えています。分離してかつ融合させるということは矛盾しているように考えられる方もあるかもしれませんが,必ずしも両立しない問題ではないように思います。
 まず学会全体の運営方針としては,臨眼運営委員会のご意向にそつて,質素で堅実な学会を目標としますが,あれにもこれにもという「こまぎれ」的総花的な費用を支出することなく,その代り重点的にきめた事項にまとまつた費用を使う計画です。

臨床報告

糖尿病性網膜症ERGの律動様小波陰性の振れの面積値(ΣNA)とO1頂点潜時

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.393 - P.396

緒言
 さき1)に糖尿病性網膜症(以下本症と略す)のERGにおける律動様小波のO1頂点潜時は,正常眼と比較して,Scott 0期よりほぼ病期の進行は応じて高度に有意の延長を示すことを報告した。
 今回は,律動様小波の陰性の振れの面積値(ΣNA)2)の面からもあわせ検討を加えたので,ここにその結果を報告する。

蜂巣状類嚢胞黄斑部変性症の一例

著者: 高橋寛 ,   内田璞

ページ範囲:P.397 - P.401

緒言
 Vogt (1918)1)は,網膜色素変性症,網膜剥離および亜急性虹彩毛様体炎の黄斑部を無赤光線で観察して類嚢胞状を呈する症例を見出し,Bienen—wabenmaculaと命名している。これが蜂巣状類嚢胞黄斑部変性症(honeycomb cystoid macu—lar degeneration)の最初の報告と思われる。網膜剥離,網膜静脈閉塞症の黄斑部が類嚢胞状を呈することは珍しくなく,またこのような続発性の類嚢胞黄斑部変性症の報告2)〜5)もまれではない。同様の病変が,原発性あるいは特発性に発症することも知られてはいるが,個々の症例に関する詳細な記載は見当たらず,黄斑部変性症における位置づけも定かではない。
 最近,われわれは,原発性と思われる両眼の蜂巣状類嚢胞黄斑部変性症の1例を経験し,螢光眼底撮影をふくめ興味ある所見を得たので報告する。

GROUP DISCUSSION

遺伝性眼疾患

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.409 - P.413

 今回の遺伝性眼疾患グループディスカッションははじめての試みとして,第11回北日本眼科学会に先立ち,その前日に仙台市で行なわれた。遠隔の地故,演題,参加者が減るのでないかと心配されたが,演題数11,延参加者60名となり,臨眼と併行した場合と大差がなかつたことは喜ばしかつた。
 開会に先立ち,世話人より,今後このグループディスカッションは「眼遺伝・先天異常」と改名したい旨計り,会員の賛成を得た。したがつて,今後は遺伝性眼疾患のみならず,種々な原因に基づく先天異常性眼疾患に関する研究者にも,発表,討議の機会が与えられることとなつた。

糖尿病性網膜症

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.415 - P.417

 今回の糖尿病性網膜症グループディスカッションは,10月27日午前9時から千葉市自治会館の大会議室で開かれ,地理的な不便にもかかわらず100名以上の会員が集まり,広い会場も座席が不足する状態で,13題の演題が発表され熱心な討論が行なわれた。時間の関係から長崎大,高久教授のご発表を追加の形にしてしまつたことや,天理病院菅氏の発表に対する討論がほとんど行なえぬという不手際があり,誠に残念であつたが,内容の豊富な,それだけ時間不足が目立つ研究会であつた。この報告は例により頁数の制限があるため,各位の講演内容,討論内容をご提出願つた抄録を参考に要約したもので,十分意をつくせぬ不満があるが,文責は世話人にあることをおことわりしておく。
 なお,次回は光凝固の会と合同で糖尿病性網膜症に対する光凝固の問題を討議することを世話人より会場ではかり,参加者の了承を得た。詳細は後日発表の予定である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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