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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科28巻4号

1974年04月発行

雑誌目次

講演 学会原著

眼窩腫瘍の超音波断層法による診断

著者: 金子明博

ページ範囲:P.457 - P.465

緒言
 眼窩腫瘍の診療において,病変の位置,広がり,性質を知ることは的確な治療のために必要である。軟部組織の変化であるため,単純X線撮影では十分な情報のえられない場合も多い。このためいろいろの特殊造影法(眼窩静脈撮影,Pneu—moorbitotomography,頸動脈血管撮影など)が考案されているが,血管確保のできにくい場合もあり,また造影剤に対する特異体質者も存在するため,必ずしも,すべての症例に可能な方法ではなかつた。
 超音波が眼科領域に用いられてから,17年になるが1),電子工学の目ざましい発展に伴つて,その性能も向上し,重要な補助的診断法となりつつあるが,超音波像の判読に関しては,まだ十分に確立していない。これは,使用する診断装置が,それぞれ研究者によつて異なり,表示のための処理の方法も異なつているためである。現在は,いかなる装置で,どのように表示したら,最も有用な情報が得られるかを,研究者が互に,探索している時代といえる。

間歇性眼球突出の1例

著者: 松尾英彦 ,   中条節男

ページ範囲:P.467 - P.472

緒言
 間歇性眼球突出は1805年,Schmidt1)が最初に報告して以来,かなり多数の報告がみられる。Duke-Elder2)の成書にも,相当数の引用があり,わが国でも住田3),武田ら4)による集計があり,既に40例近く報告されている。間歇性眼球突出の原因はSattler5)以来,その大部分は眼窩内静脈瘤に起因するものと考えられているが,必ずしも明確にされているとはいえない。このたび私たちは,眼窩静脈撮影により,眼窩内に静脈瘤様の陰影を認めたが,組織学的には血管腫であつた本症の1例を経験したので報告する。

匐行性角膜潰瘍治療の検討

著者: 山本敏雄 ,   根来良夫 ,   今西二郎

ページ範囲:P.473 - P.479

I.緒言
 匐行性角膜潰瘍については,現在まで数多くの研究がなされてきた,特に,抗生物質の登場によつて治療方法にも一大転機がもたらされ,その臨床像もかなり変化し,視力に関する予後も以前に比べて期待がもたれるようになつた。しかし,緑膿菌感染症の場合,従来は薬物療法のみでは効果は不十分であり,電気焼灼,前房穿刺,ゼーミッシュ角膜切開術などを併用して治療が行なわれてきた1),2)
 近年,緑膿菌感染症に対しても,ゲンタマィシン,スルベニシリンなどの優れた抗生物質が登場して来た現在,浅前房,虹彩前癒着をもたらす危険のある角膜切開術が果たして必要な処置であろうか,角膜移植術を行なつた臨床例を検討し,あわせて,抗生物質投与下での角膜切開術の効果について,動物実験を行なつたので,その結果を報告する。

角膜全層移植の視力効果

著者: 今泉亀撤 ,   渥美健三 ,   葉田野雅夫 ,   星兵仁 ,   宮下浩 ,   今泉博雄

ページ範囲:P.481 - P.492

緒言
 最近,ほとんどの都道府県に眼球銀行が設立され,角膜移植に提供される眼球の入手は,往時に比較して,はるかに容易になつたといわれている。この現象は,各眼球銀行の母体である大学病院眼科などに,古くから登録されていた主として陳旧な移植適応患者の大部分が,一応手術を実施されたため,需要と供給のバランスが,見かけ上,安定してきたためと思われる。しかし,僻地に居住してまだ発見されていない患者,あるいは難治性の角膜疾患で新に移植の適応となつてきた患者が,大学病院以外の一般臨床医の診療圏内に,なお,多数存在していることは想像に難くない。したがつて,近い将来,技術がさらに進歩改良され,しかも,角膜の長期保存法の開発が実現して,眼球銀行の本来の業務である角膜あつせんが円滑に行なわれるようになつたさいには,角膜移植は,大病院のみでなく,かなり広い範囲の第一線臨床医の手で行なわれる可能性が十分に期待される。実際に,microsurgeryが急速に普及されている今日,白内障などの内眼手術に熟達した眼科医であれば,眼球の入手が容易となり手術器械とスタッフさえ確保されれば,現在でも,角膜移植術の施行は可能である。
 しかしながら,現時点における最大の問題点は,わが国の眼科臨床医の大部分が,いまだ本手術の実際経験の多くを持たないことである。

Major tranquilizerによると思われるOculogyric crises症例について

著者: 下奥仁 ,   青山達也 ,   鈴木有朋

ページ範囲:P.493 - P.498

緒言
 oculogyric crisesとは,発作的に出現する両眼の不随意的なけいれん性上方偏位であり,数分〜数時間の発作がみられ,oculogyric spasms,oculogyric seizures,visual fits,tonic eye fitsとも呼ばれる15)。このoculogyric crisesは多くの場合,postencephalitic syndromeの1つとしてみとめられ,Onuaguluchi23)によると29.8%の高率に出現するという。
 一方,1950年代の前半頃からmajor tranquil—izerとして精神科領域で多く用いられて来たphenothiazine誘導体(chlorpromazineその他)は,その副作用として錐体外路反応をきたし,老人よりも小児に頻々にみられることが報告せられている11)。しかし,phenothiazine誘導体は,小児の悪心,嘔吐に対しては,その原因の如何にかかわらず有効であるために,日常繁用せられている薬物である12)。major tranquilizerの副作用としてのoculogyric crisesの発症は,かなり大量,かつ長期にわたつて用いた場合にみられることが多い28)

Systemic Diseaseによる乳頭浮腫の4症例

著者: 諫山義正 ,   山中弘光 ,   田地野正勝 ,   岡本のぶ子 ,   馬場茂明 ,   老籾宗忠 ,   水野信彦

ページ範囲:P.499 - P.506

緒言
 乳頭浮腫の原因は多種多様であるが,脳腫瘍によるものが圧倒的に多い。諸家の報告では約60〜80%である。次いで多いのが脳腫瘍以外の頭蓋内病変であり,Systemic diseaseによる乳頭浮腫の症例は稀である。
 今回,われわれはSystemic diseaseによると考えられる乳頭浮腫を示した稀な4症例を経験したので報告する。

眼性斜頸とその治療

著者: 丸尾敏夫 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.507 - P.516

緒言
 眼性頭位異常のうち,垂直筋異常による眼性斜頸は日常しばしばみられ,決してまれなものではないが,わが国では眼性斜頸に関する詳細な報告は少なく1)2)3),とくに多数例についての検討は行なわれていない。また,斜頸の方向と異常筋との関係についても,種々論議があり,未だ結着がつけられていない現状でもある4)。しかも,先天性ないし後天性でも乳幼児期に発病した眼性斜頸は頭位異常ばかりでなく,顔面の左右非対称をおこすので,正しい早期診断と,早期治療が要求されねばならない。
 そこで,最近2年間に経験した62例の幼時から存在する眼性斜頸について検討を加えてみた。その結果から現時点での眼性斜頸の診断と治療,および問題点を述べてみたいと思う。

精神病患者に多発せる眼科的異常所見について

著者: 本多繁昭

ページ範囲:P.521 - P.526

緒言
 著者1)は,向精神薬を投与された精神病院入院患者のなかに眼科的に異常所見を呈するものがいることを報告した。今回はその患者の視力の推移と組織学的所見並びに手術によりえられた若干の知見について報告する。

多発性硬化症の眼症状を中心とした統計的観察

著者: 大岡良子 ,   河本道次 ,   棚橋雄平 ,   川名洋美

ページ範囲:P.527 - P.533

緒言
 欧米において人口10万人に対し20〜50人1)の頻度であるといわれている多発性硬化症(以下MSと略記す)が,本邦において1954年沖中等に2,3)より明らかにされるまで,その原因が不明であること,初発症状や経過の多様性,剖検例の欠如などのためその存在が否定的であつたことは衆知のことである。従来本邦には定型的なMSが少なく頻度も低いこと,病変部位として視束脊髄型が多いなど,欧米のMSと異なつた特徴があるとの論が唱えられてきたが,病理学的研究面において,定型的な散在性の病巣を示した症例が発見されるとともに,最近では脱髄性疾患のうち多くがMSであつて,Devic病,急性散在性脳脊髄炎等(視東脊髄型)は比較的少ないことも報告され欧米との差異はあまりないとの論も強くなり本邦におけるMSの臨床報告は,この10年間に急速にその数が増加しつつあるのが現況である4〜6)

重症筋無力症の眼症状およびコリンエステラーゼについて

著者: 向野和雄 ,   石川哲 ,   疋田春夫

ページ範囲:P.535 - P.542

緒言
 重症筋無力症(以下MGと略)はその初発症状として眼瞼下垂をほぼ90%に,また複視を70%にみるとされ,その経過中には眼症状が100%近く出現するなど1)その診断の面においても本症は眼科医にとつて極めて重要な疾患である。今1つMGの眼科的に重大な問題の1つに眼瞼下垂,マヒ性斜視による弱視,両眼視発達障害の問題がある。これらの問題の解明のための第1歩として,MG患者の眼症状の特徴を明らかにする必要があるが多数例のまとまつた報告はみられない。今回私どもは北里大学眼科自験例50例について,眼症状(眼瞼下垂,眼位,眼球運動)の特徴を調べた。
 MGの病因については現在もなお多くの議論があるが,本症の本質とも関わる問題として,患者が正常人と比しアセチルコリンに低感受性であるという報告2)がみられる。これらの事実とも関連して,患者の血中および組織の,コリンエステラーゼ(ChEと略)の異常の有無は検討すべき重要なことと考えられる。今回はその第1段階として患者の血中ChEの活性および性質について検討し,2,3の興味ある所見を得たので報告する。

連載 眼科図譜・198

Choroideremia (II)—キャリアーの眼底

著者: 大庭紀雄 ,   長龍重智 ,   小島孚允 ,   小室優一

ページ範囲:P.441 - P.442

〔解説〕
 ChoroideremiaはX染色体性劣性遺伝をすることが確立されている。私どもの調査した二家系もその通りである。この場合,男性罹患者は前の図譜に示したような著明な網脈絡膜萎縮と重い視覚機能障害を示す。他方,女性は遺伝子運搬者として,まれに男性罹患者と同様の重症例もあるが,一般に症状は軽度である。私どもの経験した5例の女性キャリアーはいずれも軽微な眼底異常を示していた。主として赤道部に,一部症例では後極部にも,点状または斑状の色素脱失が散在し,不正円形状や糸屑状の色素集積が網膜深層に存在した。しかし,脈絡膜萎縮を示唆する所見はない。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のために/その8皮膚疾患と眼

著者: 久木田淳 ,   奥田観士 ,   永井隆吉 ,   松井瑞夫 ,   三島済一

ページ範囲:P.444 - P.455

 三島(司会)われわれ眼科の日常診療をやつておりますと,つい眼に注意が移りがちで,ほかの全身疾患のことを忘れることがあるのですが,とくに今日は皮膚と眼の関係について,その道の権威であらせられる東大皮膚科の久木田先生,横浜市立大学の永井先生をお招きいたしまして,眼科側としては国立岡山病院の奥田先生,日大の松井先生のお2人にご出席いただき,眼の疾患と皮膚の疾患についてお話をうかがいたいと思います。
 皮膚といえば,眼には皮膚そのものは眼瞼だけしかないのですが,ちよつと考えてみますと,眼瞼結膜,角膜,水晶体,以下網膜,orbitaの眼のあらゆる組織に皮膚の疾患がからみ合つてきていることを知るのでありまして,決して皮膚の病気というのは,眼科医にとつては眼瞼だけの問題ではないということがよくわかります。

お知らせ

—第28回日本臨床眼科学会—「糖尿病性網膜症」グループディスカッション,他

ページ範囲:P.465 - P.465

 今秋,徳島における臨床眼科学会の折に,「糖尿病性網膜症」グループディスカッションを下記のごとく開催しますので演題をご提出下さい。なお,前回皆様に計りましたごとく糖尿病性網膜症の光凝固に関するご演題は一括して午前中,同一会場で開催されます「光凝固」のグループディスカッションの演題に加え合同の研究会を持ちたいと思いますので,奮つてご応募のうえご参加下さるようお願いいたします。

臨床報告

内臓転移を伴つたMarchesani症候群の1例

著者: 藤田邦彦 ,   高橋禎二 ,   羽里信種

ページ範囲:P.549 - P.554

緒言
 Marchesani症候群は1939年,Marchesaniが短躯,短指趾,球状水晶体および緑内障より成る症候群を報告して以来約200例の報告が見られる。これらの内,心臓疾患を合併した例は,心室中隔欠損を伴つた例6),および肺動脈弁口狭窄に心房中隔欠損と右室肥大が合併した例がある14)。筆者等は,Marchesani症候群と内臓転位を伴つた一例を経験した。更に本症を先天性結合織異常疾患であるMucopolysaccharidosisと考え病因論的検討を加えたので報告する。

眼窩腫瘍に対するMicrosurgical Techniqueの応用

著者: 府川修 ,   田中輝彦 ,   須田栄二 ,   福士和夫 ,   早川むつ子

ページ範囲:P.555 - P.560

緒言
 眼窩腫瘍は,統計上眼疾患の約0.01〜1.47%13)を占めるに過ぎないといわれている。しかし,その治療に関しては予後はもとより,眼球を保存しうるか否か,あるいは眼球を保存しえた場合でも眼球運動障害,視力,視野障害,その他眼瞼下垂等の眼機能障害をおこさぬようにするという点で,きわめて重要な問題を含んでいる。
 われわれは,昭和44年1月1日より昭和47年12月31日までの4年間に,青森県立中央病院,脳神経外科において9例の眼窩腫瘍を経験し,主として経前頭開頭により腫瘍を摘出してきた(第1表)。さらに最近では,microsurgical techniqueを応用することによつて,眼窩内の神経,血管,筋肉等に与える損傷を最少限度におさえ,術後の眼機能障害をなるべくきたさぬように努力してきた。

Behçet病の免疫抑制療法—臨床症状に対する効果

著者: 高畠稔 ,   奥田観士 ,   山名征三 ,   大藤真

ページ範囲:P.561 - P.564

緒言
 Behçet病の原因は,現在なお不明であり,したがつて其の治療法も未だ確立されていない。本疾患の臨床像,経過,病理組織所見等より考えると,本症の発症にはいわゆる免疫異常による膠原病類似の病態がうかがわれ,したがつてこの方面からの治療が行なわれつつあるのが現状である。すなわち,Cyclophosphamide,6—mercaptop—urine等に代表される化学的免疫抑制剤が本疾患に試みられ,文献的にBuckleyら1),森田2),青木ら3),大藤,山名4),Mamoら5)が有効であつたと報告している。
 われわれは今回,完全型10例,不全型6例の計16例のBehçet病患者にステロイド剤(STH),Cyclophosphamide (CP),6—mercaptopurine(6MP),Azathioprine (AP)などの抗炎症,抗免疫剤を長期間投与し,その臨床症状とくに眼症状に及ぼす影響を検討し新知見をえたので報告する。

GROUP DISCUSSION

白内障(第12回)

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.565 - P.577

1.人眼併発白内障における前後極部の電顕的観察
 網膜色素変性症患者3例5眼(58歳,63歳66歳の男性)の前後極部に限局した併発白内障を電顕的に観察して次の結果を得た。
1)水晶体嚢は均質無構造であつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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