文献詳細
特集 第27回日本臨床眼科学会講演集 (その4)
講演 学会原著
多発性硬化症の眼症状を中心とした統計的観察
著者: 大岡良子1 河本道次1 棚橋雄平1 川名洋美1
所属機関: 1東邦大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.527 - P.533
文献概要
欧米において人口10万人に対し20〜50人1)の頻度であるといわれている多発性硬化症(以下MSと略記す)が,本邦において1954年沖中等に2,3)より明らかにされるまで,その原因が不明であること,初発症状や経過の多様性,剖検例の欠如などのためその存在が否定的であつたことは衆知のことである。従来本邦には定型的なMSが少なく頻度も低いこと,病変部位として視束脊髄型が多いなど,欧米のMSと異なつた特徴があるとの論が唱えられてきたが,病理学的研究面において,定型的な散在性の病巣を示した症例が発見されるとともに,最近では脱髄性疾患のうち多くがMSであつて,Devic病,急性散在性脳脊髄炎等(視東脊髄型)は比較的少ないことも報告され欧米との差異はあまりないとの論も強くなり本邦におけるMSの臨床報告は,この10年間に急速にその数が増加しつつあるのが現況である4〜6)。
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