icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科28巻5号

1974年05月発行

雑誌目次

特集 第27回日本臨床眼科学会講演集 (その5)

第27回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.590 - P.590

講演
<臨眼特別講演>
初期の視神経疾患と緑内障における
 視神経線維層欠損の検眼鏡的所見について………………William F. Hoyt M. D.…609
網膜再循環時間……………………………………岡野 正・他…611

講演 臨眼特別講演

初期の視神経疾患と緑内障における視神経線維層欠損の検眼鏡的所見について

著者: William F.

ページ範囲:P.609 - P.610

 前部視路の神経線維の萎縮は網膜神経線維層に直接反映される。これらの下降性の萎縮性変化は軽微なものではあるが,検眼鏡で見ることができ,無赤光線を用い眼底カメラで写真にとることもできる。
 多発硬化症ならびに他の原因による脱髄性視神経疾患の患者で,乳頭周囲の弓状の神経線維束のスリット様の欠損と,これに対応する視野の弓状の欠損が,しばしば視力,色神,乳頭の血管変化が生ずる以前に検眼鏡により検出できる。これらの微細な,早期の視神経障害を示す検眼鏡的な徴候は,球後の病変による軸索の散在性の消失を示すものである。これらの視神経の早期の障害を示す検眼鏡的所見は,脳幹あるいは脊髄症状のある患者の神経学的診断にさいして重要である。このような症例では,網膜の変化は中枢神経系統疾患がmulticentricな性質のものであることを示す。

学会原著

網膜再循環時間

著者: 岡野正 ,   堀内知光 ,   猿谷繁 ,   助川勇四郎

ページ範囲:P.611 - P.620

緒言
 正常の網膜内循環動態については多くの報告があり,その形態学的血行動態については,Dollery1)Ferrer2), Evans3)4), Henkindら5)および清水6)〜8)らのものがあり,眼内血行速度の測定についても多くの記載がある1)〜5)8)〜14)。特に網膜内微細血行速度の測定には,現状では高速度シネ撮影によらねば不可能に近い。しかし,それを臨床的にroutineに用いるには,きわめて困難な問題が多い。また,眼内の異常循環を呈する種々の疾患について,その循環時間を定量的に測定し検討した報告8)11)〜14)は乏しい。先にわれわれは,眼内循環動態の定量的把握を目的とした臨床一般で用いうる比較的平易な方法を考案した11)12)。すなわち頻回連続高速度モータードライヴカメラを用い,螢光眼底造影を眼内の造影開始直前から記録し,同時に適切な循環時間測定時点(第1表,第1図)を設定し,その時間を測定するものである。しかるに既報において,われわれはその循環時間の標準値を設定し,さらに眼内の循環障害の例として,糖尿病について,網膜症の進展に応じた眼内循環遅延を,時間という尺度によつて定量的に,かつ,推計学的に証明してきた11)12)

若年性家族性黒内障性白痴患者の空胞化リンパ球について

著者: 久冨玲文 ,   国司昌煕 ,   正司和夫

ページ範囲:P.621 - P.628

緒言
 本疾患における末梢血リンパ球の空胞化現象については多くの報告がある4)〜8)12)〜14)17)。著者らは最近,臨床的に本症と診断された患者の,末梢血リンパ球の光学顕微鏡および電子顕微鏡による検索を行なつた。リンパ球にみられる空胞や顆粒と細胞内小器官の関係について報告する。

ブドウ膜炎を伴つたBourneville-Pringle病と思われた2例

著者: 馬嶋慶直 ,   新美勝彦 ,   鈴木みち子 ,   田辺吉彦 ,   安積輝夫

ページ範囲:P.629 - P.633

緒言
 Bourneville-Pringle病に伴つた網膜腫瘍については本邦でもしばしば報告される所であるが,私どもは最近,定型的ではないが本症と思われる2例に急性ブドウ膜炎が伴い,かつ次世代にほぼ定型的といえるBourneville-Pringle病の出現のあつたのを観察したので報告したい。

Dominant Vitreo-Retinal Dystrophyの一家系—特に本症と黄斑偏位との関係

著者: 三河隆子 ,   白木泰子 ,   松村香代子

ページ範囲:P.635 - P.642

緒言
 Vitreo-retinal dystrophyの中で常染色体優性遺伝をする型のものは1938年Wagner1)がはじめて報告した疾患で,Wagner's diseaseとも呼ばれる。本症はまれな疾患である。本邦では斎藤ら2)が一家系を報告しているのみである。本症の特徴は硝子体の変性,網脈絡膜の変性,および思春期から始まる進行性の白内障である。多くの場合,近視または近視性乱視を伴う。今回われわれは一家系中に4世代にわたり11人(うち7人は直接検査,他の4人は家族歴より推定)の本症患者を発症した家系を経験した。これらのうちERG,EOG,螢光眼底撮影を行なつた症例で,本症に関して若干の新しい知見をうるとともに,外方への黄斑偏位とこれに伴う偽外斜視のあることが本疾患の特徴的症状の一つに数えられるべきではないかと考えるに至つた。

いわゆる東京光化学スモッグ被害者の眼症状と全身症状について

著者: 蒲山久夫 ,   横田庸男

ページ範囲:P.643 - P.646

緒言
 いわゆる光化学スモッグによる集団被害は東京では1970年7月18日の立正高校事件に始まるが,千葉県ではそれより約1カ月早く,6月28日に事件が起こつている1)。1970年6月28日,千葉県木更津の海岸で魚釣りをしていた小学生12〜13名が,突然"のどが痛い","咳こんでたまらない","呼吸ができない"などを訴え,その場で横になる者もあつたと吉田氏が記載している。この事件がわが国で最初の光化学スモッグによる集団被害ではないかと思われる。
 翌1971年は比較的被害は少なかつたが,はじめて大阪方面で集団被害が生じ医学界に報告された。

人工涙液持続点眼装置の試作

著者: 真鍋礼三 ,   村井保一

ページ範囲:P.647 - P.651

緒言
 わが国には重篤なdry eye syndromeを訴える患者が諸外国に較べて少ないといわれているが,最近Stevens-Johnson syndromeをはじめ原因不明の重症なdry eye syndromeの患者が増加しているように思える。これらの症例に対しては原因不明のまま第1表に示すような種々の治療がなされているが,必ずしも満足すべき結果が得られていない。私らは今回,人工涙液を頻回に点眼したにもかかわらず,乾燥感等の症状が消失せず持続点眼によりはじめて自覚症状および他覚症状の改善を認めた症例に遭遇したので,私らの試作した持続点眼器について報告する。

先天性色覚異常に対するサンビスタ治療の長期観察

著者: 関亮

ページ範囲:P.653 - P.657

緒言
 著者1)は1967年の日本眼科学会総会の宿題報告「色覚異常の治療と対策」の中で,今村氏2)〜4)の選択刺激周波訓練(商品名サンビスタ)が,先天性色覚異常に対して,従来の方法に比べてより有効な治療法であると述べた。その当時は約1年半程度の経過観察であり,あまり決定的なことはいえなかつたのであるが,その後観察を継続し,最長8年8カ月の長期にわたり観察を行なうことができた。著者は現在1000例以上のサンビスタ使用例を経験しているが,今回は6年以上の観察例についてのみ報告する。

スリットランプによる眼球非球面光学系の計測

著者: 西信元嗣 ,   松島省吾 ,   原嘉昭 ,   松田俊彦 ,   河野優子 ,   広森達郎 ,   牧野弘之 ,   中尾主一

ページ範囲:P.659 - P.662

緒言
 眼球非球面光学系の計測法として,角膜面については,フォトケラトスコピー,水晶体については,ファコメトリーを用いて実験を行なつてきたが,今回はスリットランプを用いて眼球全光学系の計測を試みたので発表する。あわせてファコメトリーの方法についても検討する。

内頸動脈閉塞ならびに網膜中心動脈閉塞を併発した真性多血症の眼底所見

著者: 宮本吉郎 ,   落合淳郎 ,   間世田博之 ,   山崎芳治 ,   北野周作

ページ範囲:P.665 - P.680

緒言
 本邦において真性多血症の第1例が,1909年北村によつて報告されて以来1968年までに234例の報告例が日比野ら1),古徳ら2)の統計で明らかにされている。しかしその眼底所見についての記載はきわめて少なく,わずか10例2)〜11)にすぎない。特に網膜中心動脈閉塞をきたした例は本邦においてはまだ報告をみない。欧米においても真性多血症で網膜中心動脈の閉塞をきたした例はきわめて少ない12)13)
 今回われわれは,左内頸動脈閑塞を併発した真性多血症の患者で,左網膜中心動脈閉塞をきたした例を経験したので,その眼底所見について報告する。

学会抄録

眼内異物に対する超音波診断の検討

著者: 大根節直 ,   河越睦郎 ,   青柳健男

ページ範囲:P.663 - P.663

 超音波診断の応用において,1つの重要な分野として眼内異物の検査が挙げられる。この方面では,Oksala,Ossoinig, Panner, Coleman, Bronson,および山崎らの報告をみるが,われわれも,Echographyを従来のX線検査法と併用すれば,さらに眼内異物の診断精度を向上させ得ることを経験し,かつこれらの点に関しいくつかの特色を検討し,新知見を得たと思われるのでその大要を述べることにした。
 検査に用いた眼科用超音波診断装置は,ゼネラル製ZD−251型で,AおよびBモードを行ない,LH振動子5mmφ,15MHzを用い,坐位で水浸法,水平スキャンを行ない,またわれわれの開発した仰臥位用超音波スキャナーも用いて,仰臥位による子午線360°全方向のセクタ・スキャンも行なつて,眼内異物の定位を行なつた。

連載 眼科図譜・199

視神経乳頭のDrusen

著者: 霜島政光 ,   佐藤裕子

ページ範囲:P.593 - P.594

〔解説〕
 乳頭のdrusen (hyaline bodies)は乳頭上にあると,その特徴的な白色のビーズ様かたまりを呈するので診断は容易である。しかし乳頭深部のものは時に乳頭浮腫や乳頭炎との鑑別が必要となる。
 症例は64歳の女性で高血圧のため内科治療を行なつており,1972年3月31日眼底検査に来院した。既往歴,家族歴に特記すべきものはない。この時の眼底所見は高血圧眼底KW Ⅱa程度の変化で,乳頭は特に異常なかつた。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のためにその9小児疾患と眼

著者: 鴨下重彦 ,   湖崎克 ,   植村恭夫 ,   田村昭蔵 ,   三島済一

ページ範囲:P.596 - P.607

 三島(司会)私,学生時代に小児科の講義に出たとき,冒頭に,子どもというのは小さな大人ではない,別の世界があるんだから,ぜんぜん違つた心構えでみないと誤ることが多い--といわれたことを記憶しております。毎日の臨床をやつていて,子どもの眼の疾患くらい,私にとつてはさつぱりわからないものはないので,やはりこれは違う世界だなと思うわけです。今日はそういう子どもの病気について,われわれが日常どういう考え方でもつて子どもに接して,これを診療していつたらいいか,あるいはまたわれわれの知らない最近の発展についておうかがいしたいと思いまして,その道の専門家であられる東大小児科の鴨下先生,慶応大学産婦人科の田村先生,それからわれわれの仲間である,しかも小児眼科を専門にやつていらつしやる植村,湖崎両先生においでいただきまして,これからお話をうかがいたいと思います。
 まず子どもをみるときに,子どもというのはいつたいどういうものかを知つていないと診療できないと思いますが,生まれてから,大人になるまでの間に非常に激しい移り変りがあると思いますが,そういう点について,鴨下先生からうかがいたいと思います。

お知らせ

第18回日本コンタクトレンズ学会

ページ範囲:P.607 - P.607

 上記学会を下記の通り開催いたしますのでご通知申し上げます。
1.期日:1974年9月8日(日)

臨床報告

帯状角膜変性の一治験例

著者: 山本節 ,   田淵昭雄 ,   村井正明 ,   山本隆朗

ページ範囲:P.685 - P.688

緒言
 帯状角膜変性band shaped keratopathyは石灰変性の特殊なもので,角膜中央部からやや下方へ,瞼裂に沿つて角膜輪部より中央に向かう灰白色の点状混濁が見られる。最初,小さな顆粒状で左右からのびた混濁が角膜露出部中央でつながつて,次第に不規則な結節状,さらに膜状となることもあるが,進行は非常に遅く帯状変性が完成するまでに数年かかるのが普通である1)
 この帯状角膜変性は1848年Dixon2)によりはじめて記載されたが,calcareous film of thecornea, girdle-shaped opacity, band or ri—bbon-shaped opacity, band-keratitis, trophickeratitis, zonular opacityなど種々の名称がある。

日本人の眼瞼の形態および上眼瞼挙筋機能

著者: 中川喬 ,   志賀満 ,   大川忠 ,   竹田真

ページ範囲:P.689 - P.692

緒言
 眼瞼の形態異常の診断または眼瞼の形成を行なうにあたり,各年齢層における日本人の標準的な形態が,診断あるいは形成の一つの目安となる。
 われわれは北海道に在住する者を対象として,眼瞼の高径,横径,内眼角間距離,瞳孔距離,上眼瞼挙筋機能(Levator function)について調査したので報告する。

光学顕微鏡用試料から作製された電子顕微鏡標本による病理診断—眼窩横紋筋肉腫の病理診断

著者: 雨宮次生

ページ範囲:P.693 - P.696

緒言
 光学顕微鏡レベルでの病理診断にさいして,各種特殊染色を施しても,なおかつ鑑別診断の困難なことがある。こういう場合に,電子顕微鏡用に固定包埋された試料があれば,電子顕微鏡によつて,発生母細胞や細胞の鑑別同定が容易になり,診断が可能となる。しかし,大抵の場合,電子顕微鏡用の固定包埋はなされていないし,それが当然である。このような場合には,鑑別しようとする細胞の特徴のみをみつける目的で,光学顕微鏡用試料から,電子顕微鏡用試料に作り変える方法がとられる。眼科領域では,AFIPのZimmer—man一派によるこうした試みがいくつか報告されてきた1)〜5)
 本篇では,光学顕微鏡用試料を電子顕微鏡用試料に作り変える方法4)を紹介すると共に,著者の方法と症例を報告したい。

GROUP DISCUSSION

色覚異常

著者: 市川宏

ページ範囲:P.697 - P.700

 昭和48年度の色覚異常グループディスカッションは臨床眼科学会(千葉市)の前日午前9時〜12時の間で行なわれた。大熊前世話人から引き継いで第3回目であり,この間の努力目標は色覚異常学を眼科学のひろい領域のひとに関心をもつてもらおうということで,今回の主テーマ「色光の条件」は視機能全般に共通した問題を提起しようとしたものである。当日の講演内容と討議の概要を述べる。

高血圧・眼底血圧

著者: 入野田公穂

ページ範囲:P.701 - P.706

1.中心静脈閉塞症の視機能について
 比較的長期観察した主幹静脈閉塞症8例を検討し,下記の結果が得られた。
1)発症が明確に自覚されないため,初診までにかなりの期間がある。2)初診時視力0.1以下のもので0.1以上に改善された例はなかつた。3)周辺視野は正常であつた。4)初期には中心暗点は認められなかつた。5)螢光眼底の無血管領域に一致した暗点はなかつた。6) ERGはa,b波は正常で律動様小波の減弱や消失が見られた。7)暗順応の障害は軽度であつた。

網膜剥離

著者: 岸本正雄

ページ範囲:P.707 - P.713

1.最近5年間の網膜剥離入院患者の統計的観察
 1968年1月1日から1972年12月31日までの5年間に当科に入院し,手術治療を受けた特発性網膜剥離192眼および外傷性網膜剥離14眼,合計206眼(204名)の裂孔検出率は93.7%,復位率は83.5%であつた。詳細は眼臨に投稿予定。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?