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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科28巻6号

1974年06月発行

雑誌目次

特集 第27回日本臨床眼科学会講演集 (その6)

第27回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.734 - P.734

講演
眼窩リンパ腫の臨床的病理組織学的検討………杉本浩一・他…753
euthyroid Graves' diseaeseの眼所見について………井上洋一・他…761

講演 学会原著

眼窩リンパ腫の臨床的病理組織学的検討

著者: 杉本浩一 ,   安澄剛興 ,   乾慶助 ,   桧垣忠尚

ページ範囲:P.753 - P.760

緒言
 眼科領域に出現するリンパ腫(lymphoma)は,Reese1), Forrest3)らによると眼窩,涙腺,球結膜に多いと報告され,とりわけ眼窩にはリンパ様組織の欠如していることなどから,眼窩リンパ腫の発生病理について古くから多くの議論がなされている。また臨床的に全身の系統的なリンパ節腫大が認められ,眼窩リンパ腫が全身的な悪性リンパ腫(malignant lymphoma)の部分症状として発現してくる場合の診断は比較的容易であるが,孤立して出現してくる場合の診断はかなり困難である。さらに病理組織学的にも明らかに悪性所見を示すものから良性リンパ腫(benign lymphoma)と考えられるものまで存在する上,眼窩炎性偽腫瘍(orbital infla—mmatory pseudotumor)との鑑別などの面からもその確定診断は決して容易ではない。
 1964年より1973年までの10年間に当教室において6例の眼窩リンパ腫(細網肉腫3例,良性リンパ腫3例)を経験したので臨床的,病理組織学的に若干の考察を加え報告する。

euthyroid Graves' diseaseの眼所見について

著者: 井上洋一 ,   井上トヨ子 ,   鈴木琢弥

ページ範囲:P.761 - P.772

緒言
 バセドー病の際に現われる眼所見は,バセドー病の経過観察上,見逃すことのできない因子として重視されているが1)2)3),この眼所見は臨床上混乱を招く1因ともなつている。それは,バセドー病の治療をうけ,甲状線機能の亢進状態が正常化された後に,眼所見が出現してくる場合があるためである。甲状腺機能の異常によつて,眼所見の出現してくる機序が未だに明らかにされていないことにもよるが,古くから,バセドー病において,甲状腺機能状態と眼所見に相関があるような誤つた見解4)が示されたことにもよる。著者らの調査2)では,甲状腺の機能状態とは全く無関係に現われていた。このことから前報で,甲状腺臨床における眼の異常をdysthyroid ophthalmopathyと定義づけ,臨床的に有用な眼所見の解析を行なつた。今回は,バセドー病にみられる眼所見が現われているにもかかわらず,甲状腺機能状態が全く正常な症例に対して,眼科的な検索を加えた結果興味ある知見をえたので報告する。

視機性眼振の臨床的応用—乳幼児の視機性眼振の発達について

著者: 涌沢成功 ,   佐藤裕也

ページ範囲:P.773 - P.779

緒言
 新生児の視機性眼振,:optokinetic nystagmus:(以下OKN)について報告したNordmann1)はOKNが出現するのは生後3週〜1カ月であり,その運動は急速かつ不規則であると述べ,その後,この運動は衝動性運動であるとされた2)。Kestenbaum3)は成人にみられるようなOKNは固視の発達する以前には出現せず,滑動性運動が出る生後3〜5カ月で本来のOKNが生ずると述べた。しかしながら,以後,改良された回転視標の導入により,OKNは生れつき出現する反応であることがわかつてきた4)5)6)
 これらの報告は主としてOKN出現の時期,新生児,乳児の視力測定の面から追求がなされており,どのような発達過程をとるかについては述べられていない。われわれは乳幼児を対象として,OKNの発達過程,およびその発現型について家兎および成人と比較追求を試みた。

Accommodo-polyrecoderによる近点および調節時間反復測定値の判定法について

著者: 鈴村昭弘 ,   鈴木直子 ,   今井三矢成

ページ範囲:P.781 - P.789

緒言
 全身あるいはは,眼局所の異常に調節機能は,敏感に反応する。こうした時の近点および,調節時間の多くは,延長する。しかし,これを反測測定したとき,測定回数を重ねるに従つて,しだいに延長したり,あるいは,短縮を示したりする。前者の変化を量的とするなら,後者は質的と表現することが出来る。それは,多くの臨床経験から後者の場合は,単なる測定値の平均より,変化の状態から調節機能の微妙な変状を察知することができると思われるからである。
 萩野,鈴村1)は,こうした近点及び調節時間の反復測定値の変動について,多数例から検討した結果,第1図に示すごとき6つの変動型に分類出来ることを明らかにした。そして,これらの変動型の臨床的意義については,必ずしも明らかではないが,萩野,鈴村2),寺本3),堀4),萩野5),鈴村6),らによる報告から,その臨床的意義の大きいことが予想される。

眼精疲労患者の循環動態について(第2報)

著者: 安藤文隆 ,   鈴木裕之 ,   邱信男 ,   中道五郎 ,   矢部義昌

ページ範囲:P.791 - P.798

緒言
 神経性眼精疲労患者の循環動態を,指尖容積脈波を用いて検査したところ,多数例に潜在性心不全を表わすといわれている,同一傾向をもつ異常patternが認められたことは,第1報1)にて報告した。
 これに対して,神経性眼精疲労以外の,系統的な眼科臨床検査によつて,従来より主訴の原因となるものと考えられている異常所見の見出される,いわゆる眼精疲労患者についても,脈波上同一傾向のpatternがえられた。そして,局所(視器)的処置を施さず,循環動態の改善のみにて,以前より使用していた眼鏡等も不要となるなど,眼精疲労症状の消退が多数例で認められたので,眼精疲労の本態について,少し考えてみたい。

進行性錐体ヂストロフィー

著者: 大庭紀雄 ,   廖富士子

ページ範囲:P.799 - P.803

 網膜広範囲の錐体機能が強く障害された4症例を記述した。発症年齢は後天性に,10歳台ないし30歳台であり,症状は緩慢に進行した。主症状は視力低下,色覚異常,昼盲であり,夜盲はなく眼振もなかつた。暗順応,ERG検査などにより広範囲の錐体機能の異常と,正常な桿体機能が認められた。4症例とも単発例であり,2症例の両親には血族結婚が認められ,常染色体性劣性遺伝による網膜のヂストロフィー的変化が考えられた。
 これらの症例は,欧米において報告されている進行性錐体ヂストロフィーに類似していたが,眼底にほとんど異常が見出されないことや,EOGが正常のことなどから,それらの病型の異型か,または新しい疾患である可能性が考えられた。
(東京大学・三島済一先生の日頃の御鞭撻を感謝します。有益な討議をして下さつたアメリカ合衆国ミシガン大学・M.Alpern先生と三重大学・横山実先生に感謝します。この仕事の一部は文部省科研費(昭48-867115)の援助により行なわれた。なお,詳細はJapanese Journalof Ophthalmology,18:50-69,1974に発表された。)

進行性錐体ヂストロフィーにおける網膜のスペクトル反応について

著者: 横山実 ,   宇井健二 ,   吉田輝也

ページ範囲:P.805 - P.813

緒言
 眼底所見および一般の眼科検査所見では,Stargardt病あるいは他の黄斑部疾患に類似するが,進行性に,より広汎な錐体系のヂストロフィーを来す一種の網膜変性症があり,すでに1956年にFrançois4), Steinmetz14)らが報告している。1963年に,Goodman5)らが類似疾患と共に分類を試みて以来,その臨床上における存在はより鮮明となり,一般には"progressive cone degenera—tion"という病名が用いられてきた。しかし,最近,KrillおよびDeutman9)は,本症がしばしば遺伝的傾向を示すところから"cone dystrophy"とした方がより適切であると述べている。
 本症の特徴は,徐々に進行する羞明を伴つた視力,色覚の障害,中心暗点,暗順応経過における第1次曲線の異常など,錐体系視機能の障害を,これに並行して多くの例に出現する眼底,黄斑部の変性病巣である。また,正常に近い暗順応ERGと,対照的に,著明に侵害される明順応ERGとが,診断上きわめて重要なきめ手となる。さらに心理物理的な手法による網膜中心部のスペクトル感度が短波長側へ移行することも特徴の一つとされている6,13,2)

慢性緑内障眼の網膜電図と網膜組織学的所見

著者: 米村大蔵 ,   河崎一夫 ,   柴田二郎 ,   田辺譲二 ,   森田嘉樹 ,   松原藤継

ページ範囲:P.815 - P.820

緒言
 緑内障眼ERGについては,必ずしも見解の一致をみない1)6)12)14)17)19)22)。本報では,10年来強角膜ぶどう腫および緑内障に罹患していた患者のin vivoおよびin vitro ERG所見を記し,あわせて網膜組織学的所見を報告する。

白内障全摘出術の遠隔成績—前房内所見について

著者: 阿部泰昭 ,   宮地誠二 ,   桝田英郎 ,   田中直彦

ページ範囲:P.821 - P.827

緒言
 われわれの教室では,白内障全摘出術の臨床成績と,主としてその手術所見を発表5)6)7)して来たが,これら近年の術式による症例の遠隔成績についても,ここに検討することとした。これのうち今回は老人性白内障で全摘出術を行なつた症例の前房内所見として虹彩の癒着の状態,隅角所見および硝子体面の所見などについて観察をおこなつたので,その所見についてここに報告する。

学会抄録

小児の量的視野について

著者: 友永正昭

ページ範囲:P.780 - P.780

緒言
 他覚的視野計測がまだ完成されていない今日,小児の視野については多くの問題が残されている。
 1970年頃より農薬中毒,有機水銀中毒などの公害による視野が問題となり,特に小児の視野狭窄について検討されるようになつてからは,小児の正常視野の平均値および年齢による発達が論じられるようになつた。そこで今回私は,70名の小児に対し,Goldmann視野計(以下GPと略す)による動的量的視野とTubinger視野計(以下TPと略す)による静的量的視野を計測し,年齢別および性別について検討した結果について報告した。

連載 眼科図譜・200

原発性脈絡膜ヂストロフィー

著者: 大庭紀雄 ,   南波久斌 ,   小島孚允

ページ範囲:P.737 - P.738

(解説)
 原発性脈絡膜ヂストロフィーは,脈絡膜の進行性萎縮を主徴とし,網膜萎縮がこれに随伴して視覚機能の障害を生じる。症例の報告は比較的少ないが,遺伝性の明らかなものが多く(常染色体性優性,または劣性,ときにX染色体性劣性)ヂストロフィーの範ちゆうに入る臨床的疾患単位である。脈絡膜硬化症(Choroidal sclerosis)または脈絡膜血管硬化症(Choroidal angiosclerosis)の名で呼ばれることも多い。Deutman1)によれば,病変の部位により3つの病型に細分される。1) Diffuse,generalized型,2) Peripapillary型,3) Central are—olar型である。脈絡膜萎縮を主徴とする疾患には,この他にGyrate atrophyやChoroideremiaがあるが,本症とは別の疾患単位である。
 ここには私どもが経験した2例を紹介する。いずれも単独例であるが,炎症などの病因は考え難く,進行性病変であることからヂストロフィーが最も考えられる。

座談会

全身疾患と眼—その全体像把握のためにその10遺伝と眼

著者: 中島章 ,   大倉興司 ,   小林守 ,   桐沢長徳

ページ範囲:P.740 - P.751

 桐沢(司会)座談会を始めさせていただきます。最初にお断りしたいのは,大倉先生のような基礎的な,りつぱな学者をお迎えし,また眼科の側の遺伝の大家であられる中島教授,小林博士のようなそうそうたるメンバーをそろえて座談会をしていただくにもかかわらず,私自身,遺伝のことを何も知らないで司会をするということはたいへん不適当ではあると思いますけれども,編集の役目がら,司会の順番に回り合わせたものですから,やむを得ず司会をすることになつたわけです。ご諒恕をお願いいたします。従つて,わかりきつた,初歩的なことをうかがうかもしれませんが,その点はどうぞあしからず。しかし,その方が却つて読者にわかつていただける面もありますので,あまり深く知らないものが司会するということもいいのかもしれません。したがつて,愚問はどうぞお許し願いたいと思います。

臨床報告

外斜視に調節性内斜視を合併した症例

著者: 井上浩彦 ,   市田忠栄子

ページ範囲:P.835 - P.837

緒言
 生来外斜視の患者が幼児期に調節性内斜視を合併すれば,眼位が外斜視から内斜視の間を往復するであろうことは,理論的には考えられるが,実際にはこのような現象が著明にみられる症例はまれである。今回われわれはこのような症例を経験したが,調査し得た範囲の文献では,英国の文献に1例見出し得たのみで,本邦の文献には見出し得なかつたので報告する。

イールズ病とヒッペル病に対する光凝固術

著者: 瀬戸川朝一 ,   富長瑞穂

ページ範囲:P.839 - P.842

緒言
 Myer-Schwickerath1)はイールズ病をはじめとする一連の網膜血管病変に対して,光凝固術がきわめて有力な治療手段であると述べている。
 われわれはさきに網膜血管病変に対する光凝固術の有効性を報告して来たが2,3),今回イールズ病およびヒッペル病の各1例ずつ,前者は約4年間,後者は1年間,Xenon光凝固により治療観察を続け,比較検討したので報告する。

高硝子体圧眼に対する嚢内水晶体摘出法と壮年期白内障手術の成績について

著者: 菅謙治

ページ範囲:P.843 - P.846

緒言
 白内障手術時の硝子体脱出は,白内障手術における重要な合併症の一つであり。難解な問題である,硝子体脱出の予防法として,術前には降圧剤の投与や眼球マッサージ,手術時には眼輪筋や眼外筋の完全な麻痺,Fliringa'sRingの使用,糸による開瞼などが提唱されてきたが,手術時には眼輪筋や眼外筋の完全な麻痺状態が常にえられるとは限らず,またたとえ完全な麻痺がえられたとしてもこれらの筋肉の弾性の強い人やもともと眼窩内組織の多い人においては,硝子体圧が高い場合があるから,先に述べたような予防法によつては硝子体脱出をかなりの程度にまで低減することはできても皆無とすることはできない。
 そこで著者は約3年前から,硝子体圧の高い場合には特殊な摘出法によつて,水晶体を娩出してきたのであるが,最近になつてほぼ100%安全に,硝子体脱出なしに娩出させうるという確信を持つに至つたので,この摘出法を紹介したい。

中心性網脈絡膜炎に対する負荷螢光

著者: 酒井広 ,   横山葉子 ,   石川昭 ,   斎藤恒秋

ページ範囲:P.849 - P.853

緒言
 中心性網脈絡膜炎に対する螢光眼底撮影法の導入により,螢光漏出点の存在が確認され更に,その部に光凝固を行なうことにより本疾患の多くに,その治癒が早められていることは事実である。しかし,螢光漏出点を確認できない症例も,ごくわずかであるが存在し,他疾患との鑑別に苦慮する場合もある。しかるに,1972年増田により,一つの試みとして,飲水1000mlで負荷を行ない,螢光漏出点の確認が可能だという報告12)があり,今回,われわれも少数例ではあるが,追試する機会に恵まれ,この方法が,螢光漏出点の確認,そして,早期治癒にとどまらず,きらには,診断鑑別,治癒判定などに用いられる可能性があると思われるので,ここに報告する。

GROUP DISCUSSION

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.857 - P.860

〔特別講演〕
顔面神経麻癖の手術的治療
 近年顔面神経麻痺の手術的治療は長足の進歩を来たし,内耳道から,耳下腺内までの神経麻痺が手術の対象となつた。側頭骨内と側頭骨外で神経麻痺を起こす原因が証明され,保存的療法で原因が除き難く,回復の期待がもたれない状態(neurotmesis)にあるとき,手術により原因を除き,麻痺の回復を計るにとどまらず,積極的に神経自体に操作を加え,機能の回復を計るのである。技術的には神経剥離術によつて神経に対する圧迫を減荷し,神経の縫合,移植によつて,再建が企図される。
 ベル麻痺,腫瘍,中耳炎,外傷等が側頭骨内の手術の対象となる病因で,側頭骨外では耳下腺腫瘍,またはその摘出手術,外傷などが主な病因である。診断は原疾患に対する検査と神経に対するNET, EMGなどを参考にして,neurotmesisを予想する。なお可能なかぎり,顔面神経の再建に努力するが,それが危険であると診断された場合,たとえば中耳癌のような場合には舌下,副神経のいずれかと,顔面神経の吻合を行なう。

斜視・弱視

著者: 丸尾敏夫

ページ範囲:P.861 - P.865

 斜視・弱視グループディスカッションは昭和48年度秋季日本弱視斜視研究会総会として,加藤和男講師(順天堂大)の司会のもとに開催された。

第15回緑内障

著者: 須田経宇

ページ範囲:P.867 - P.871

I.緑内障の視野に関する諸問題—診断の面から
 北沢(司会)今回は視野に関する種々の問題を討議することになつています。前半は診断に関するものですが,まず湖崎先生の宿題報告からうかがいましよう。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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