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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科28巻9号

1974年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・202

クリプトコッカス性ブドウ膜炎の一例

著者: 谷口慶晃 ,   原田一道 ,   益山芳正

ページ範囲:P.1013 - P.1014

〔解説〕
 クリプトコッカス症は,癌などの消耗性疾患や副腎皮質ホルモンなどの免疫抑制剤使用の患者にみられ,近年増加の傾向にある。本症は中枢神経系に親和性があり,髄膜炎をおこして,うつ血乳頭や複視などの眼症状を呈する1)が,直接眼内炎をおこすことはまれであり,最近ではKhodadoustら2)やGriecoら3)の報告がある。
 われわれも,最近Hodgkin病の患者で,クリプトコッカス性髄膜炎を併発し,続いてブドウ膜炎をおこした症例を経験した。

臨床報告

Trabeculotomy後の前房隅角所見(予報)

著者: 塚原勇 ,   武田幸信

ページ範囲:P.1015 - P.1018

緒言
 最近,先天性緑内障,成人の原発性広隅角緑内障に対して,trabeculumあるいはSchlemm管外壁付近に侵襲を加える新しい術式が注目され,手術顕微鏡および手術器具の進歩により普及してきている。その一つであるtrabeculotomyは,すでに外国ではBurian1)によりはじめて報告されて以来,Dannheim-Harms2)3)をはじめとして多数の報告例があるが,わが国でも北沢ら4),永田5),高久ら6)により試みられ報告されている。その成績についてはDannheim-Harms2)3),Kes—sing7)らは良好な成績を示しており,国内では,北沢ら4)はかなり悲観的な考えをもつているようであるが,永田5),高久ら6)は高く評価しており,現段階でのわが国における評価に関しては,さらに症例の増加が必要である。
 しかしながら,従来の濾過性瘢痕形成術,すなわちby-passによつて房水を排出させる方法よりも,房水排出障害の存在する部位に直接手を加える術式の一つであるtrabeculotomyが合理的であると考えるので,私どものところでもtrabecu—lotomyを取り入れている。

瞳孔の近見反応に関する研究—第2報瞳孔の病的近見反応に関する研究(その3)頭頸部外傷症候群の眼障害の治療—半月神経遮断の効果について

著者: 清水春一

ページ範囲:P.1019 - P.1023

緒言
 頭頸部外傷症候群の眼障害における治療法は,当教室の木村1)の融像練習,山崎ら2)の薬物療法および神経節Block3)〜5)などの報告がある。
 今回,著者は半月神経節Blockを浸潤麻酔で行ない,不定愁訴の軽快と幅湊および輻湊に伴う瞳孔の近視反応の改善に好成績を得たので報告する。

新しい緑内障手術,Aqueo-Suprachoroidal Tunnelの提案

著者: 菅謙治

ページ範囲:P.1025 - P.1028

緒言
 対緑内障手術の一つである毛様体解離術は,前房水を脈絡膜血管に吸収させて眼圧を下降せしめんとする術式である。これは広い適応範囲をもち,しかもくり返して行なうことができるという利点を有するので,1906年Heineの報告以来広く使用されているが,その反面手術成績があまり良くなく,術後に白内障を合併しやすいと1)いう欠点を有する。そこで前者の欠点を補うために,解離間隙にいろいろの異物を嵌置する試みが行なわれてきたが,いまだ決定的な方法は見出されていない。
 このたび著者が考案した対緑内手術,Aqueo—Suprachoroidal Tunnelとも呼ぶべき術式は,強膜内にトンネルをつくり,このトンネルによつて前房と上脈絡膜腔とを交通せしめて房水を脈絡膜血管に吸収せしめんとする方法であるが,本法によれば毛様体解離を行なわないので,水晶体損傷の危険は少なく,また硝子体の圧迫によつて間隙が閉塞することもない。

小児の術後無水晶体症に対する軟性コンタクトレンズの臨床的応用

著者: 湖崎克 ,   小山賢二 ,   山崎康宏 ,   福井久子

ページ範囲:P.1029 - P.1035

緒言
 先天性白内障の小児に白内障手術を行ない,術後早期に眼鏡矯正を行ない,その視力の発達を計ることは当然である。このために,まず白内障手術自体は手術手技の改良と,顕微鏡手術の導入などによつて,より一層の確実性が高まりつつあることはいうまでもない。しかし手術対象が乳幼児である場合には術後に眼鏡装用を行なつたり,あるいは従来のハードコンタトレンズ(以下ハードCL)を使用することは医師と患児の両親にかなりの忍耐と努力が必要であり,しばしば健全なる視力の発達をみすみす見過ごしてしまうこともあつた。このため術後に検影法で得られた屈折度を何としても装用させる必要があり,この点から今度軟性コンタクトレンズ(以下軟性CL)を術後の患児に用い,その臨床的経過を観察する機会を得たのでその概要を以下に記す。

フルオレスセイン結膜下注射による前房染色に関する研究—第3報Prone-position testとの併用によるPupillary blockの観察

著者: 鈴木昭子

ページ範囲:P.1037 - P.1042

緒言
 Primary angle-closure glaucomaにおいて,pupillary blockが眼圧上昇の要因を占めることはすでに広く認められているが,その房水動態を直接観察した報告はない。
 著者はこの度fluorescein-Na溶液(以下Fと略記)の結膜下注射による前房染色法1)〜4)と,prone-position test (以下PPTと略記)とを併用することにより,pupillary blockの状態における房水動態に種々の型があることを知り得たので,その結果と緑内障診断への応用について報告する。

外傷性虹彩嚢腫の2例

著者: 松野令 ,   三木弘彦 ,   福地悟

ページ範囲:P.1043 - P.1047

緒言
 外傷性漿液性虹彩嚢腫を2例経験し,嚢腫後壁(後房に面する方の嚢腫壁)の組織学的検索を行なう機会を得た。うち1例は電子顕微鏡で観察したので所見を報告する。

Geographic Choroiditis について—一群のPigment Epitheliopathyの考え方

著者: 荻野誠周 ,   永田誠

ページ範囲:P.1053 - P.1059

緒言
 Gass (1968年)1)が,いわゆるacute posterlormultifocal placoid pigment peitheliopathy(以下APMPPE)のclinical entityのもとに,後極部に散在性あるいは融合性に出現する網膜深部もしくは脈絡膜の急性炎症性浮腫に始まり,数カ月の経過で地図状色素上皮障害を遺して治癒する予後良好な両側性疾患を,感染性・毒性物質に対する網膜色素上皮細胞の反応性炎症として報告して以後,APMPPEの記載は,Hyvarinenら(1969年)2),Maumenee (1972年)3),Van Buskirkら(1971年)4),Perkinsら(1972年)5), Ryanら(1972年)6),Kirkhamら(1972年)7),Birdら(1972年)8),Deutmanら(1972年)9),Fitzpatrickら(1973年)10),および吉岡ら(1973年)11)とますます増加しつつある。
 一方,geographic choroiditis, geographicchoroidopathy, serpiginous choroidopathyまたはhelicoid choroidopathyなどといわれる概念の定かでない形態的名称を持つ疾患群が存在する。APMPPEも,形態的にはこのような疾患群に属するといえる。

涙腺腫大を伴つたSjögren's syndromeの2例

著者: 計屋隆子 ,   舌間宴 ,   中山巌

ページ範囲:P.1061 - P.1067

緒言
 Sjögren's syndromeは1930年Sjögren, H.により報告されて以来,その研究には著しい進歩をみている。しかしながら,その病像の複雑さや歴史的背景の複雑さのために,いまだ問題の多い症候群のうちのひとつであろう。近年MartinA.Shearnによつて,本症について多方面からの研究のReviewが出版されたことは,われわれにとつて福音であつた。これまでの症例報告をみるに,唾液腺腫大を伴うものは多いが,涙腺腫大を伴う例は少ない。
 われわれは涙腺腫大を伴つたSjögren's syn—dromeと思われる2例を経験したので報告する。

II型広視野手術用顕微鏡(永島)を用いた角膜移植術

著者: 杉田慎一郎 ,   杉田雄一郎 ,   山田寿一 ,   山崎みき子 ,   中島豊槌

ページ範囲:P.1069 - P.1073

緒言
 手術用顕微鏡の進歩につれ,それを用いてきわめて精巧な手術が行なわれるようになり,また顕微鏡下でなくではできない手術が次第に数多く幅広く開発されつつある。現在まで,手術用顕微鏡には幾多の改良が行なわれてきたが,その完壁性からはほど遠いものと思われる。完壁な理想像は,絶えず自由に変わる倍率,深い焦点深度,十分な照明を持つたルーペ式のもので,顔をどのように動かしても像の動揺や歪みを生じないようなものであろう。しかし,現在の光学的理論からして,かかるものが完成されない以上,われわれはガリレオ式や,望遠式の顕微鏡を支持台に取り付けて,それを通して手術する以上に良い方法はないようである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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