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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻10号

1975年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・215

後毛様動脈閉塞によると思われる扇形網脈絡膜萎縮の症例

著者: 沖波聡 ,   荻野誠周 ,   浅山邦夫 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1111 - P.1112

〔解説〕
 脈絡膜動脈の閉塞症については,最近までその存在が確認されていなかつた。しかし,近年脈絡膜血管の分布に関する実験的研究,ならびに螢光眼底撮影による臨床的知見などから,後毛様動脈の閉塞により脈絡膜にも梗塞が起こることが認められるに至つた。今回われわれは,黄斑円孔による網膜剥離の手術後に,眼底後極部から赤道部にかけて扇形に,色素沈着斑と脱色素斑を伴う網脈絡膜萎縮をきたした症例を経験し,術後の種々の検査と経過から,その原因は黄斑部強膜に対するジアテルミー凝固などの手術操作により,後毛様動脈の閉塞をきたしたものと考えられた。
症例:26歳女

座談会

眼科顕微鏡手術—その入り方と将来

著者: 宮田典男 ,   林文彦 ,   杉田慎一郎 ,   永田誠 ,   湖崎弘 ,   深道義尚 ,   小暮文雄 ,   清水昊幸 ,   三島済一

ページ範囲:P.1114 - P.1129

 三島(司会)本日は先生方お忙しいところをありがとうございました。今回,日本の古都奈良での顕微鏡手術の会,および中部眼科学会の開催に当たり,ちようどよい機会ですので,わが国において顕微鏡手術の先覚者であられる先生方にお集まりいただきまして,顕微鏡手術に入るに当たつてのいままでのご経験や,また若い方を指導されるに当たつての指導のやり方,後輩へのご助言などをいただき,また同時に顕微鏡手術に対する考え方,さらには将来顕微鏡の手術というものがどういう方向にあるべきか,あるいはどういうふうにあらしめたいか,というふうなお考え方をうかがいたいと存じます。
 今回,顕微鏡手術が幸いにして健康保険でも認められるようになり,わが国においてもこれを契機として顕微鏡手術が非常に普及することが考えられます。したがいまして,私はこういう企画が,これら顕微鏡手術を始められる方にとつてご参考になれば非常に幸いだと思います。

臨床報告

網膜剥離と鑑別を要したSex-linked juvenile retinoschisisの一例

著者: 飯島幸雄 ,   石川清 ,   柳田泰

ページ範囲:P.1131 - P.1136

緒言
 Sex-linked juvenile retinoschisisは本邦ではきわめて珍しい若年性遺伝性の眼疾患である。この疾患のPeripheral retinoschisisと網膜剥離は病理組織学的にも検眼鏡的にもまつたく異なつた所見を呈す。一方,通常の眼科的検査方法では両者の鑑別がまつたく困難な症例もまれではあるが存在する12)16)18)。この時は治療が関係してくるので確実な診断が要求され,より積極的な診断方法をとる必要がある。われわれは通常の眼科的検査方法で鑑別に苦しみ,診断的光凝固術を施行することによつて確定診断できた症例を経験したので報告する。

遠近両用眼鏡レンズの新構想

著者: 藤井良治

ページ範囲:P.1137 - P.1140

緒言
 眼鏡のレンズを上下2つに区切つて遠用と近用とに使い分ける方式は,避雷針の発明で知られるアメリカの科学者,また政治家としても有名だつたベンジャミン・フランクリン(1706〜1790)の発想によるもので,現在ではバリラックスやズームなどと呼ばれる累進多焦点のタイプも含めてさまざまの遠近両用眼鏡がその便利さを買われて普及している。
 さて,現在一般によく使われている遠近両用眼鏡レンズでは近用部がレンズの下方部分に設けられているが,ヒトの眼の自然な働き方をみると,眼球つまり視線が下に向くほど調節力が大きくなるというものではない。たしかに外界の物体は下方に存在するものほど近くになるという傾向は正しいが,実際にヒトが近くの細かいものを見ようとする場合は顔面を下に向けるため,眼球はたいして下転しない場合の方が多い。実際にヒトが視線を下に向けるのは,その頻度からみれば「歩くときに足もとを見る」場合が最も多く,その場合に使われる調節力はせいぜい1D足らずにすぎない。

視神経乳頭サルコイドージス

著者: 酒井寿男 ,   渡辺郁緒

ページ範囲:P.1141 - P.1146

緒言
 1961年わが国にサルコイドージス総合研究班がおかれ,この時点を境にして眼科領域においてもサルコイドージスパ注目され,その眼科的な臨床的特徴も次第に明らかにされてきている。眼サルコイドージスにおいては,眼底も含め眼球のほとんど全領域にわたつて病変部がみられている。私たちは国際分類ⅠAのpleocytosisを伴う髄膜炎およびArgyll Robertson pupilを示すneu—rosarcoidosisの症例で,左眼の視神経乳頭肉芽腫を3年にわたつて経過観察中であり,また他に国際分類ⅣAに入る症例の右乳頭に肉芽腫様変化をみたので報告する。

新しい抗緑膿菌性抗生剤Amikacin (BB-K8)の眼内移行ならびに臨床的検討

著者: 大石正夫 ,   西塚憲次 ,   本山まり子 ,   小川武

ページ範囲:P.1147 - P.1151

緒言
 近年,新しい抗緑膿菌性抗生剤が相ついで登場しているが,なかでもアミノ配糖体抗生剤の耐性機序が解明されたことにもとづいて,いくつかの半合成アミノ配糖体抗生物質が検討されている。
 Amikacin (BB-K8)もその一つで,Kana—mycin Aの構成成分である2—Deoxystrepta—mine部分のC−1アミノ基をL (—)—γ—Amino—α—hydroxybutyric acid (L-HABA)でアシル化してえられた抗生剤で,第1図の構造式で示される。

副腎皮質ホルモン剤内服の人眼眼圧に及ぼす影響について—第2報20例33眼のprimary open angle glaucomaについての推計学的考察

著者: 木村良造 ,   前川暢男

ページ範囲:P.1153 - P.1157

緒言
 1959年Linn[e]r,E.は,corticosteroids (以下CSと略す)の局所投与により房水産生量が有意に上昇すると報告した1)。そのさいepiscleralvenous pressureやscleral rigidityには変化はなかつたという。同じ報告の中で,房水産生量は日中に多く,夜間に減少するとのsuction cup法を用いたEricson, L. A.の成績2)を引用し,plasma cortisolも同じく夜間に低い日内変動を示していることから考えて,両者の間,すなわち,房水産生量とplasma cortisol値との間になんらかの関係があるのではないかと予測した。1961年Boyd, T. A. S.3)らは,緑内障眼においては大多数の例で眼圧日内変動とplasma cortisolの変動がほぼ平行していると報告した。また,3例6眼について,11—hydroxylaseの働きを阻害し,11—desoxycortisolからhydrocortisoneへの過程を遮断するSU−4885を朝8時より静脈内点滴投与することにより,その後の眼圧上昇が抑制されることを報告した。同じくBoyd,T.A.S,ら4)は1964年の報告の中で,上記3例を含めた4例8眼のSU−4885投与群について,推計学的処理を行ない,SU−4885による眼圧上昇抑制が推計学的にも有意であると述べている。

眼疾患と遺伝相談

その1網膜色素変性症

著者: 小林守

ページ範囲:P.1163 - P.1166

はじめに
 遺伝相談の実例を今後数回にわたつて本誌上にて解説する予定であるが,最初に総論的な注意事項を略記してみよう。
 第1に遺伝相談は症例によつては1時間以上もかかるケースが少なくないので,網膜剥離の手術に要する位の時間と心身の疲れを伴いやすいものである。したがつて遺伝相談は原則として予約制が望ましい。

眼・光学学会

有限距離におけるZero-verging Powerを有するレンズの実験—第2報Meridional Type Iseikonic Lenses

著者: 加藤桂一郎 ,   保坂明郎 ,   梶浦睦雄 ,   岡島弘和 ,   松居和男

ページ範囲:P.1169 - P.1172

緒言
 前報において注視点が移動しても角倍率が変化しないOverall iseikonic lensを試作し,その光学的特性ならびにそれを用いた基礎実験について述べた1)。今回試作したMeridional iseiko—nic lensはBi-cylinderすなわち両面とも円柱面で,しかもそれらの軸が互いに平行になつている単レンズである。したがつてMeridianの方向によつて角倍率が異なり,倍率が極大になるMeridional断面はOverall typeのレンズの断面に等しく,その光学的Processはまつたく同じである。角倍率が1%より7%までのZero-verging meridional iseikonic lensを使つて,幾何効果(Geometric effect),誘発効果(lnduced effect),および2,3の眼機能について基礎実験を行なつたので以下報告する。

視機能スクリーニング検査自動化装置Auto-Screeno-Scopeについて—第2報装置の改良と検査成績

著者: 大島祐之 ,   安藤慈子 ,   滝沢志郎 ,   加藤康夫

ページ範囲:P.1173 - P.1176

緒言
 現代生活の中では視機能の健全さがことさらに要求される面が少なからずあるのに鑑み,その検査法は関連分野から関心がもたれ,無資格者によつて操作されうる視機能スクリーニング器械が普及してきており,従来の手動式器械よりも省力化,検査条件の一定化を図つたAuto-Screeno—Scopeの試作を私ども1)は先に発表したが,今回は改良した装置とその使用成績について報告する。

螢光・赤外同時撮影眼底カメラについて

著者: 別所建夫 ,   須田秩史 ,   西川憲清 ,   小林啓子 ,   真鍋礼三

ページ範囲:P.1177 - P.1181

緒言
 近年Hochheimerら(1972)1)により赤外吸光眼底影撮法(infra-red absorption angiograp—hy)が報告されている。本法は赤外吸光色素Indocyanine Green (以下ICG)を用い,螢光眼底影撮法と同様の色素の静脈内投与による安全な眼底造影法であるが,螢光眼底造影像と異なり,脈絡膜血管の造影が可能で,色素の血管外漏出がみられないという特徴がある。すなわち,螢光眼底影撮法を網膜血管造影法とすれば,本法は脈絡膜血管造影法といえるものである。したがつて螢光眼底影撮法と,赤外吸光影撮法を同時に影撮することができれば,おのおのの造影法のもつ利点を十分に臨床応用できるものと考えられる。
 かかる視点より,われわれは螢光色素と赤外吸光色素の混合静脈内投与による影撮方法について検討しているが,今回,広域干渉フィルター,フィルター・ミラー,dualphotosystemを利用した螢光赤外同時撮影機を試作したので報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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