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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻11号

1975年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・216

先天性巨大硝子体嚢胞の1例

著者: 小嶋一晃 ,   原田敬志 ,   市川宏

ページ範囲:P.1211 - P.1212

〔解説〕
 本症例は,41減の女性の片側にみられた巨大硝子体嚢胞で,先天性と老えられるものである。既往歴としては,外傷・南方旅行などの経験はない。老眼鏡の変更のために来院したが,病歴を詳細に問い合わせると,かがむ動作をするときに,眼前に黒い影がゆききするのを見るという。視力は両眼とも矯正視力1.0を得る。眼圧にも異常を認めなかつた。前眼部には両眼とも異常を認めなかつたが,左眼のほぼ後極部一帯に,検眼鏡により,8ないし9乳頭大の浮遊する巨大硝子体嚢胞が観察された。水晶体・網膜との結合部は観察されないが,表面は平滑で,褐色の豊富な色素沈着を証明する。嚢胞は,水様透明な液体を容れているが,その化学的性状に関して特別の検査は,本症が治療を必要としない性質のものであるため行ないえなかつた。嚢胞をゴールドマン三面鏡で観察しても,虫頭と考えられる所見は得られず,自発運動もみられなかつた。ただ,患者に下方視を命ずると,1/4乳頭大ほど上方に嚢胞は移動し,上方視を命ずると,ほぼ等距離ほど下方に移動するのを認めた。しかし,数秒後には嚢胞はゆつくりと原位置に復帰する。なお,この第1図,第2図には明瞭に現われていないが,嚢胞壁には狭窄部(くびれ)が観察され,これにより嚢胞は上下の二部に分たれる。鑑別を要する疾患として,(1)硝子体内寄生虫症,(2)網膜嚢胞が硝子体中に遊離したもの,を考慮すべきであるが,既応歴と以上の所見から鑑別は困難でないと考えられる。

臨床報告

先天性巨大硝子体嚢胞の1例

著者: 小嶋一晃 ,   原田敬志 ,   市川宏

ページ範囲:P.1213 - P.1215

緒言
 硝子体嚢胞は1898年,Thompson1)による報告をもつて嚆矢とするが,わが国においては,1941年の清水による報告例を初めとして,過去に6症例を数えるのみである。今回,われわれは硝子体嚢胞と思われる1例を経験したので,その眼科的所見と文献的考察とを併わせて報告する。

大阪市立小児保健センターにおける色覚検査統計について

著者: 湖崎克 ,   原田清 ,   山崎康宏 ,   小山賢二 ,   中岸裕子 ,   岩井寿子 ,   佐藤妙子 ,   福井久子

ページ範囲:P.1217 - P.1223

緒言
 小児保健センターが1966年に開設されてから1974年まで,色覚精密検査を受けた者は332名で,その全員が医療機関,若しくは在籍している学校からの依頼によるものであつた。色覚異常は,学校での定期健康診断で検出されるのが通例で,一般には放置されることが多く,特に関心を払う場合に限つて医療機関を訪れるものだが,これらの色覚異常に対する対策は,現在社会的,教育的な指導が行なわれるだけで,受診者に対する医学的手段は療養指導に準じた医学的進路指導以外には何もない。しかし,受診者について統計的な検討を行なうことは,地域医療への反省と同時に,社会的,教育的措置に計画性を持たせることにもなるため大阪市立小児保健センターの色覚検査受診者についてマーク式タナックカードを利用して分析を行なつたので,その結果を述べてみたい。

薬物点眼によるHorner症候群障害部位判定法

著者: 大野新治

ページ範囲:P.1225 - P.1233

緒言
 ホルネル症候群では,瞳孔は交感神経作動性散瞳薬の点眼に対して正常に散瞳しない例がみられるが,この瞳孔反応の異常は,交感神経経路中の障害部位に関係があるために,瞳孔の薬物に対する反応状態で障害部位を判定しようとする方法が種々試みられてきた1)〜4)。しかし,これらの成書に記載された方法に従つて実験を行なつてみても,臨床診断による障害部位と薬理学的なそれとが一致せず,納得のいく結果が得られない場合がある。例えばForesterらの方法では,正常眼は1,000倍のadrenalin点眼によつて散瞳しないのに反し,節後障害のHorner症候群では散瞳が起こるとしているが,節後の障害でも散瞳が起らないことの方が多い。また,Jaffe法ではcocaine点眼45分後にまず判定を行ない,その後adrenalinを点眼するのであるが(第1表),これは人種的な薬物感受性の相違のためか,日本人ではcoca—ineの作用を点眼45分後に判定するのは,判定時間が短いようである。
 Thompsonら5)は,1971年に5%cocaine,10%あるいは1%Neosynesine及び1%hydroxy—amphetamine (以下OH-amphetamine,商品名Paredrine)を使つた交感神経障害部位判定法を発表した。

Leber's congenital amaurosisの臨床経過とその組織学的特徴

著者: 武井洋一 ,   水野勝義 ,   堀美知子 ,   吉田稔男

ページ範囲:P.1235 - P.1242

緒言
 Leber's congenital amaurosisは稀な疾患であるため,その臨床像および組織学的所見についての統一見解は未だ示されていない。ましてその病因論に関する論文も見当らないのが現況である。今回,われわれは知能および発育障害を伴ない,両眼に多数の白斑を主体とする変性を認めた幼児例を験経し,その眼球を組織学的に検討する機会をえた。その眼底像は,Retinitis punctataalbescensやFundus flavimaculatusと一見類似しているが,臨床経過およびERGの反応はこれらと全く異なつており,その病理組織像も今迄に報告されている所見と異なつていた。組織所見では,G−3H遺伝盲マウスのそれに類似し,臨床所見も考慮すると,Leber's congenital ama—urosisの特徴をもつた疾患であることが考えられた。この疾患の臨床像には,いろいろなvaria—tionがあり初期例の組織学的検討もなされておらず,正確な比較は困難であるが,今回の例はその初期像を呈し,特徴的な臨床所見をかなり明瞭に説明しうる組織所見がえられたので報告する。

Coats氏病の1例

著者: 川田芳里 ,   生井浩 ,   石川豊子

ページ範囲:P.1243 - P.1248

緒言
 幼児の白色瞳孔を主訴とする疾患でもつとも頻度の高いものはRetinoblastolnaであるが,鑑別を要する疾患の1つにCoats氏病があげられる。Coats氏病で二次的な網膜剥離を生じたり,または眼圧上昇などを続発した場合などには,臨床的にRetinoblastomaとの鑑別がむずかしく,後者を否定できずして眼球を摘出せねばならないことがある1)。今回の私達の症例もRetinoblas—tomaの臨床診断のもとに摘出された眼球を肉眼的ならびに組織学的に検査したところ,Coats氏病と判明したものであつた。
 Coats氏病の病理組織学的所見についてはすでに多くの報告がみられるが2〜4,11),1971年生井ら4)が報告した症例にひきつづき,トリプシン消化法による血管標本,電子顕微鏡による検索も行なつたのでその結果を報告する。

眼疾患と遺伝相談

その2赤緑色覚異常

著者: 小林守

ページ範囲:P.1261 - P.1262

 眼科領域では赤緑色覚異常に関する遺伝相談が一番多いように思われる。
 第1例の遺伝相談は,第1図に示すごとく,夫が色弱,妻が色覚正常の夫婦から,色弱の男子が生まれた家系である。

眼・光学学会

Optical Fiberで照明した眼底カメラ(第2報)

著者: 納田昌雄 ,   長谷川弘 ,   高橋千代治 ,   中島章 ,   杉町剛美

ページ範囲:P.1263 - P.1265

緒言
 われわれが,血管やその流れを直視できるのは,眼底だだけである。このため,眼底観察は,他の検診ではえられない情報を与えてくれる検診として,必要かつ重要なものである。眼底を観察するためには,眼底を照明することが必要であり,照明光なしでは,われわれは,何も見ることができない。眼底を照明するには,照明光を瞳孔という限られた穴を通さなければならないしまた,同じ瞳孔を通して観察もしなければならない。照明光による角膜や水晶体での反射光は,眼底観察の妨げとなる。
 このようなことが,眼底観察を,難しいものにしている。

新しい隅角鏡の試作

著者: 岩田和雄 ,   八百枝浩 ,   長谷川弘 ,   納田昌雄 ,   高橋千代治

ページ範囲:P.1267 - P.1268

I.照明光路付き隅角鏡
 前房隅角は隅角鏡により観察可能となる。屈折媒体は角膜と前房水であるから,未開拓の分野である隅角の高倍率下生体観察のための光学的アプローチの方法は必ずしも困難ではないはずである。この場合特に対象となるのは房水が直接流け出るtrabecular meshwork, Schle—mm管,outletおよびunconventional route等である。
 以上の目的から光学的な条件を検討した。従来の隅角鏡の結像論については私どもは以前にspot diagramを用いて検討した(臨眼27巻)。これによるとKoeppe型でもGoldmann型でも非点収差様の結像パターンがえられた。これを補正すれば隅角鏡の解像はある程度よくなるはずである。

トノグラフィー用圧平眼圧計

著者: 糸井素一 ,   杉町剛美 ,   普天間稔 ,   加藤尚臣 ,   児玉明彦 ,   田中正司

ページ範囲:P.1271 - P.1275

緒言
 トノゲラフィーは,今世界中で広く使われているが,理論的にいろいろの弱点があり,測定値に誤差が多い1)。もちろん臨床ではそれほど正確な値が要求される訳ではないので,たとえ誤差があつても余り問題にはならない。
 しかし,もつと正確な測定法があればそれにこしたことはない。また,臨床はともかくとして,臨床研究を進めようとすると,どうしても,もつと良い測定法がほしくなつてくる。このような見地から,今迄沢山のあたらしい方法が提唱されたが,その中で定眼圧圧平トノグラフィー法が,理論的にも実際的にも一番良いとされている2,3)。そして,定眼圧圧平トノグラフィーの一種であるPvトノグラフィーが,今のところでは誤差が一番すくないことは,すでに発表したとおりである4,5)。ただ,定眼圧圧平トノグラフィーをするのに良い眼圧計がないので,このような方法を実際に採用しておるところはほとんどない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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