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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻12号

1975年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・217

手持眼底カメラによる比較的容易な倒像眼底周辺部撮影法

著者: 糸田川誠也 ,   上野明廣 ,   三木弘彦

ページ範囲:P.1297 - P.1298

〔解説〕
 眼底所見を正確に記録するには,眼底写真が非常に重要でちる。現在の直像式眼底撮影装置による眼底周辺部撮影には,その撮影範囲に限界があり,倒像式眼底撮影の必要性を感じる。1972年永田氏1)らが,手持眼底カメラによる倒像撮影法を発表して以来,今日まで,2,3の変法の報告2,3)がある,われわれは,そのいずれの方法にも追試を行なつてみたが,操作が煩雑で,失敗が多く,よほど熟練を要すると思われる。"誰れもがより容易により安定した鮮明な倒像眼底写真が撮影出来る"ということを考え,永田らの撮影原理を応用し,下記の方法でほぼ満足する結果が得られた。

臨床報告

ローレンス腎性糖尿者の眼底所見—糖負荷血糖値上昇との関係について

著者: 横山葉子

ページ範囲:P.1300 - P.1305

緒言
 ローレンス腎性糖尿者の網膜に,しばしば細小血管瘤(第1図以下M.A.と略記),毛細血管の拡張,蛇行,閉塞(第4図),さらにこの毛細血管に連つて,あるいは,その付近にごく微細な毛細血管瘤,すなわち微小血管瘤(第3図,以下mmaと略記)を検出し,時には,これに滲出斑(第3図),出血(第2図),白斑(第1図)をともない。さらに螢光眼底撮影によつて,螢光色素の漏出を毛細血管にみとめることがあると,さきに報告した(第4図)。そしてこれらの所見が,糖尿病性網膜症の初期の4,5)それらと類似しており,このような網膜異常所見を検出するローレンス腎性糖尿者は,prediabetesではないかと推論した6)。今回,ローレンス腎性糖尿者の集団を6年間観察し,血糖値が糖尿病型に移行したものと,移行しなかつたものについて,その初診時の網膜所見との関係を調査した。

網膜芽細胞腫—術後アフターケァーの問題点(アンケート調査を中心に)

著者: 宮崎康子 ,   雨宮次生

ページ範囲:P.1307 - P.1311

緒言
 綱膜芽細胞腫の研究は,基礎的には,その発生起源,臨床的には,生存率や再発率,保存的療法の改善等に主力が注がれてきた。しかしながら,網膜芽細胞腫の患者も含めて,生後間もなく眼球摘出術を受けた患者のアフターケァーについては,ほとんど省みられなかつたというのが現状である。近年,医療技術の進歩,とりわけ形成外科の高度の発達や,国民の精神文化面での向上と相俟つて,幼少時眼球摘出術を受けた患者のその後について,真剣に考えてみる時期に来つつある。また,現在網膜芽細胞腫の全国登録の機運が盛り上りつつある1)
 本論文の目的は,網膜芽細胞腫により,幼少時眼球摘出術を受けた患者のその後について,患者から見た過去の疾病のこと,現状,精神面,日常生活等について,アンケート調査を行ない,この問題についての糸口としようとするところにある。

巨大網膜嚢胞の1症例

著者: 難波彰一 ,   桧垣忠尚 ,   松山道郎

ページ範囲:P.1313 - P.1318

緒言
 網膜嚢胞について,欧米では多くの報告がなされているが,本邦においてはきわめて少なく,わずか10数例をみるに過ぎず,比較的稀れな疾患であると思われる。最近著者らは,網膜裂孔を伴わない剥離網膜内に巨大嚢胞を認め,嚢胞が周囲網膜を挙上して剥離を起こすという所謂Weve1)の分類3型に属すると考えられる症例を経過したので,その大要を報告し,あわせて本邦の報告例を中心に文献的考察を加えた。

細隙灯顕微鏡による眼底撮影法

著者: 高橋正孝 ,   梶浦睦雄

ページ範囲:P.1319 - P.1323

緒言
 眼科医が患者を診察する第一関門として用いる検査法は細隙灯顕微鏡検査と検眼鏡検査である。特に前者は外眼部・隅角・中間透光体そして眼底と応用範囲が広く,従つて古くから多くの研究報告がなされてきた。他の諸検査を行なうに先立ち,より正確な見通しを立てることができれば無為な遠回りをすることなくスムーズに診断の確定が可能となるわけで,本法の改良ならびに応用範囲の拡充は大きな意義を持つものと信ずる。
 細隙灯顕微鏡により眼球内部を検索する方法は今日一見一般化したように思われがちであるが,①装置の改良,②所見の解釈,③撮影の何れにおいても未完成な部分が多い。とりわけ細隙灯の写真撮影ということになると,後眼部に関しては今迄ほとんど実用にたえうるものは不可能という感が支配的であつて,ひいては各報告者により細隙所見が極めてまちまらな状態をひきおこし,あるいはいちじるしく誤解を招くようなスケッチがまかり通る原因ともなつている。

睫毛にみられたケジラミ(Phthirus pubis)の1症例

著者: 上野明廣 ,   糸田川誠也 ,   小山田義貴

ページ範囲:P.1325 - P.1326

緒言
 近年,公衆衛生の向上とともに寄生虫特にシラミ(lice)による疾患に遭遇するのは絶無に近くなつてぎた。最近著者らは感染源は不明であるが,3歳女児の睫毛にケジラミ(Phthirus pub—is)寄生の新鮮例を経験したので報告する。

手術

人眼Schlemm氏管手術を修得するための段階的トレーニングについて

著者: 原たか子 ,   原孜

ページ範囲:P.1327 - P.1330

緒言
 近年Schlemm氏管(以下Sと略)を中心とする緑内障手術が盛んに行なわれるようになつてきているが,手術顕微鏡の性能が向上しても,Sを確実に扱うことは容易ではない。動物および屍体眼についての経験や,電子顕微鏡レベルでの知識もただちに生体人眼に応用できるわけではない。誰にとつても,人眼Sの発見およびとり扱いに苦労するという時期が存在する。術者の腕の修練のために患者の眼が犠牲になることは許されない。人眼を土台に,術者も手術顕微鏡のレベルでSについての知識をえられると同時に,患者にとつては余計な侵襲とならない方法を見出すことは,特に医学教育の上で重要な問題である。ここに私達の考察を述べる。

眼疾患と遺伝相談

—その3—小眼球microphthalmia

著者: 小林守

ページ範囲:P.1343 - P.1345

 左眼小眼球の男児(生後1カ月)をつれて,両親が遺伝相談のために来院した。右眼には特に異常を認め得なかつたが,左眼は臨床的には無眼球anophthalmiaと言えるほどの小眼球であつた。
 この男児は出生時体重3200g,全身的異常の有無については,産婦人科医や小児科医による精密検査を受けており,四肢の奇形や心臓その他に異常を認めていない由であつた。

眼・光学学会

軟性白内障の治療としてのレーザー水晶体穿刺術

著者: M.M ,   百瀬皓

ページ範囲:P.1347 - P.1350

 医学におけるレーザーの利用はごく最近始められ,そしてその可能性の研究は最初の進歩をなしつつあるのみである。臨床的研究の最初の目標は通常はレーザー照射の熱(凝固)効果であつた。眼科学におけるレーザーの応用は現在まで眼底の病変即ち,網膜剥離,糖尿病性網膜症等に対して主として限られていた。その他の(非熱)効果はごく最近研究されており,そして臨床眼科学に於いて初めて応用されている(M.M. Krasnov,1972)。
 現代医学の殆んど,いかなる外科的分野においても(例えば,神経外科学,皮膚科学,耳鼻咽喉科学,実質器官の外科など)発表されたデータはメスの代りにレーザービームを用いる問題に対して間違いのない関心を示している。同じことは生物学にも関係する(細胞のレーザーマイクロサージェリー)。

開眼手術後における視知覚の成立

著者: 鳥居修晃

ページ範囲:P.1351 - P.1354

I.問題の背景
 W.Molyneuxは「生来性の盲人が成人して新たに視覚をえた際,それまで触覚を介して把握していた立方体と球とを,すぐにその眼で区別することができるであろらか」という疑問を友人のJ.Lockeに書き送つたといわれいる。Lockeはこの疑問に否定的な見解を表明しているが,その後G.BerkeleyもこのLockeの否定的な推測に同意している。
 Molyneuxの疑問を検証する一つの方法は,生来性の全盲の症例について,開眼手術直後どのような視覚体験をもつたかを尋ね,立方体や球を見せて果してすぐに弁別することができるかどらかを観察してみることであろう。Senden (1932)4)は,1020年から1931年までに,アラビア,ヨーロッパ,アメリカなどの各地で開眼手術を受けた症例に関する記録を集め,それらの手術前後における視覚体験や医師の観察結果を整理して,Moly—neuxの提出した疑問に答えようとしている。それらの資料によると,開眼手術直後においては,距離や奥行はもとより,触わればすぐにそれとわかるような周囲の事物についてさえも,新しくえたはずの「視覚」によつては捉えることができない。

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臨床眼科 第29巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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