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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科29巻12号

1975年12月発行

文献概要

眼・光学学会

開眼手術後における視知覚の成立

著者: 鳥居修晃1

所属機関: 1東京大学教養学部心理学教室

ページ範囲:P.1351 - P.1354

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I.問題の背景
 W.Molyneuxは「生来性の盲人が成人して新たに視覚をえた際,それまで触覚を介して把握していた立方体と球とを,すぐにその眼で区別することができるであろらか」という疑問を友人のJ.Lockeに書き送つたといわれいる。Lockeはこの疑問に否定的な見解を表明しているが,その後G.BerkeleyもこのLockeの否定的な推測に同意している。
 Molyneuxの疑問を検証する一つの方法は,生来性の全盲の症例について,開眼手術直後どのような視覚体験をもつたかを尋ね,立方体や球を見せて果してすぐに弁別することができるかどらかを観察してみることであろう。Senden (1932)4)は,1020年から1931年までに,アラビア,ヨーロッパ,アメリカなどの各地で開眼手術を受けた症例に関する記録を集め,それらの手術前後における視覚体験や医師の観察結果を整理して,Moly—neuxの提出した疑問に答えようとしている。それらの資料によると,開眼手術直後においては,距離や奥行はもとより,触わればすぐにそれとわかるような周囲の事物についてさえも,新しくえたはずの「視覚」によつては捉えることができない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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