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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻2号

1975年02月発行

雑誌目次

特集 第28回日本臨床眼科学会講演集(その1) 学会原著

瞼板欠損補填材料について

著者: 関本俊男

ページ範囲:P.99 - P.104

緒言
 眼瞼瞼板の欠損形成にはFox法1)が愛用されている。しかし,本法では移植された瞼板内のマイボーム腺排出管口は,眼瞼遊離縁に対して逆方向に向くことになる。そこで,このような状態に移植されたマイボーム腺は,どのような運命をたどるかを病理組織学的に検討し,さらに本法より優れた瞼板再建法はないものかという観点に立ち次の実験を行なつた。

外傷性眼瞼下垂に対する治療

著者: 福地悟 ,   服部吉幸

ページ範囲:P.105 - P.110

緒言
 交通事故や労務災害にあつては,身体の露出部分である顔面に傷害を蒙ることが多く,そのさい眼部にもまた大きな損傷を受けることが多い。眼瞼裂傷にあつては併存する上眼瞼挙筋断裂に深い注意が払われず,特に外科医はその点に対する無知から単に皮膚創の縫合のみが行なわれ,創傷治癒後,完全な眼瞼下垂がのこり,眼科医へ送られてくることが多い。著者らは最近約3カ年間にこのような外傷性眼瞼下垂の6症例を経験し,二次的に断裂した上眼瞼挙筋の縫合を行ない,幸いにして全例にほぼ満足する結果を得たので,その成績について報告し,いささか考察を加えてなたい。

バセドー眼の上眼瞼後退(lid retraction)に対する手術治療

著者: 井上洋一 ,   井上トヨ子

ページ範囲:P.111 - P.114

緒言
 Dysthyroid ophthalmopathyの上眼瞼後退(lid retraction)に対する手術治療としては,上瞼挙筋の後転法がある。しかし,これまでの術式では,術後合併症として眼瞼下垂をきたす危険がある。また,眼瞼下垂をきたさないまでも,眼瞼鼻側部に下垂する傾向が現われ,外見上問題となる。これに対して,後転法に対する定量化1)が試みられているが,手術効果が不十分となる傾向がある。術前に上瞼挙筋の筋力を予測できないため,後転量が不十分になるとともに,術後組織の瘢痕性収縮による瞼裂開大の負効果も見逃せない。これらを考慮して著者らは種々の方法を試み,症例数も50例を越え,上瞼挙筋の部分的後転法によい成績を得た。この術式を紹介し,手術治療に関する2,3の興味ある知見を報告する。

角膜の創傷治癒過程における組織化学的研究

著者: 今泉亀撤 ,   小林秀樹 ,   小原喜隆 ,   星兵仁 ,   宮下浩 ,   佐瀬義彦 ,   近藤駿 ,   村田蓉子

ページ範囲:P.115 - P.121

緒言
 角膜は元来透明で無血管の組織であるが故に,古来より興味ある研究対象となされている。最近は角膜移植術の発展と相まつて,その基礎的実験として,角膜創傷治癒がいかなるmechanismによるものかについての組織学的あるいは生化学的な実験の報告が数多くなされている。
 今回われわれは,創傷角膜が修復されるさいの形態学的変化を,主として走査型電子顕微鏡ならびに光学顕微鏡を用いて経時的に観察し,創傷を受けた角膜が修復する過程で,多量のエネルギーを要求する事実に鑑み,H332PO4(以後32Pと略す)を指標として,創傷角膜のリン脂質およびリン酸代謝変動をもあわせて追求したので報告する。

涙腺部腫瘍の臨床所見,とくにレ線所見について14例についての検討

著者: 高木郁江

ページ範囲:P.123 - P.129

緒言
 涙腺部腫瘍は副涙腺や異所性涙腺に発生するまれなものを除くと,眼窩骨に密接して発生するため,骨の変化をきたしやすい。したがつてその診断にさいしては,頭蓋単純レ線撮影を欠くことはできない。しかし現在まで,涙腺部腫瘍における眼窩骨の変化については,良性のものと悪性のものが混同されたり,あるいは悪性腫瘍の骨浸潤による骨破壊像のみが強調されてきたきらいがある1)〜3)。また涙腺部腫瘍が比較的まれな疾患であるためか,わが国では多数の自験例をまとめた報告はみられず,頭蓋単純レ線写真で異常を認めたものも意外に少ないようである。
 今回著者は涙腺部腫瘍14例の臨床所見,とくに頭蓋単純レ線写真所見を検討し,興味ある知見を得たので報告する。

眼窩横紋筋肉腫の微細構造

著者: 玉井信 ,   菊地糺 ,   室井繁

ページ範囲:P.131 - P.139

緒言
 横紋筋肉腫は小児の眼窩内悪性腫瘍のうち頻度の高いものの1つであり,眼窩は好発部位の1つである。しかし光学顕微鏡では横紋の確認が比較的困難なため,現在までわが国での報告例は,著者らの集計では22例にすぎない。
 近年,電子顕微鏡を用い,比較的容易に細胞内筋線維が証明されるようになつたが,その微細構造は眼窩部1)〜3)5)31),耳4),骨格筋5)6)(顔面,四肢),前立腺7)に原発した横紋筋肉腫で報告されている。

急性出血性結膜炎にみられた角膜点状上皮下混濁について

著者: 金子行子 ,   内田幸男

ページ範囲:P.141 - P.144

緒言
 急性出血性結膜炎(Acute hemorrhagic con—junctivitis以下AHCと略)は流行性出血性結膜炎Epidemic hemorrhagic conjunctivitisとも呼ばれるが,ここでは前者を用いることにする。これはガーナ国アクラ市での1969年における大流行1)以前には全く知られなかつた疾患である。患者からウイルスが分離され,起炎病原体であることが決定したのは,わが国で甲野らによつてなされた研究の結果である2)。わが国をも含めた世界的の規模における大流行の疫学は同氏によつて詳述されている3)
 AHCには発病初期に上皮性角膜炎が高率に合併し,これが患者の自覚症である眼痛や異物感などの原因として考えられている。しかしアデノウイルス角結膜炎にみるような,急性結膜炎の症状が消失したのちに生ずる点状の上皮下混濁は,AHCには起こらないとされてきた。そしてこのことが両疾患の臨床的鑑別点の一つともされている。

Behçet病の螢光眼底所見—特に病型別所見について

著者: 上野脩幸 ,   高畠稔 ,   松尾信彦 ,   大藤真 ,   山名征三

ページ範囲:P.145 - P.155

緒言
 Behçet病の螢光眼底造影所見については清水1)の詳細な報告があるが,文献的に多くはない。特に臨床的に眼病変を認めない症例や,眼発症早期例,軽症例の螢光所見を報告したものは少ない。今回著者らはBehçet病の初期眼病変の機序を明らかにするため,いまだ眼症状の出現していない不全型症例,眼発症初期例を中心に臨床的ならびに螢光眼底造影法により観察し検討したので報告する。

ブドウ膜炎の一原因としての脈絡膜悪性腫瘍の臨床的意義

著者: 吉岡久春 ,   杉田隆 ,   青木昭彦

ページ範囲:P.157 - P.167

緒言
 ブドウ膜炎はその半数が原因不明であるが,この原因不明のブドウ膜炎のうち,高年者にみられるものとして,われわれはさきにコレステリン結晶によるものの存在を臨床例および動物実験から推定した。従来ブドウ膜炎の原因の項をみても,ブドウ膜の腫瘍をあげている教科書は,とくにわが国ではまつたくないようである。しかし40歳以上の高年者の原因不明で,治療に全く反応しないブドウ膜炎をみたら,ブドウ膜の悪性腫瘍の可能性を考えることが重要であること,さらに脳神経症状,あるいは眼球突出を伴うブドウ膜炎をみたら,悪性リンパ腫を考慮すべきことを強調し,ブドウ膜の悪性腫瘍が原因不明のブドウ膜炎の原因の一つとして臨床的に見落とされないよう注意を喚起するのが目的である。

酸素非投与未熟児の網膜症発生と双胎の影響について

著者: 幸塚悠一 ,   田野保雄 ,   西山苑 ,   依光純子

ページ範囲:P.169 - P.175

緒言
 最近未熟児網膜症の発生について,医師の管理不十分によるものだとする判決があり,それに対する反論も出ているが,それらをみると本症に関する知識は普及したとはいえ,まだまだ意外な誤解も多いのに驚かされる。ことに酸素の使用に関連して,一般には,本症を医原病のように考えている人が多く,われわれも出産を扱つた産科医を責める親に出会つて困つた経験をもつている。こういう一方的な誤解は論外としても,医師の側にも本症の実態について正確な認識が不足していると,患児の親や世間の人たちを納得させることができず,行き違いの原因になりうると思われる。
 われわれは数年来,未熟児室入院児の定期的眼底検査を行なつてきたが,今回の裁判は同じ日赤病院でのできごとであり,この機会にこれまでの成績を集計して本症発生の実態を知る一助とするため,以下の調査を行なつた。

眼科リハビリテーションクリニック10年間の経験より

著者: 赤松恒彦 ,   中島章 ,   紺山和一 ,   田辺歌子 ,   石野砂智子

ページ範囲:P.177 - P.186

緒言
 われわれは1964年2月より10年間,眼科外来の中にリハビリテーションクリニックを開設し,視覚障害者の相談にあたつてきた。リハビリテーションクリニックの内容は開設当初2),眼科医,心理ワーカー,ソーシャルワーカーおよび歩行訓練,点字およびカナタイプの指導員などから構成され,失明宣告から職業前訓練までの業務を行なつていた。
 1969年より東京都心身障害者福祉センターの開設に伴い訓練部門はのぞいた。したがつてそれ以後は失明宣告,障害者の心理的立ち直りを目的としたカウンセリングと,方向決定および施設紹介を内容としている。

連載 眼科図譜・207

家族性原発性アミロイドーシス—ガラス綿様硝子体混濁("glass-wool"vitreous opacities)

著者: 猪俣孟 ,   生井浩 ,   岡山昌弘 ,   大島健司

ページ範囲:P.97 - P.98

〔解説〕
 家族性原発性アミロイドーシスはアミロイドが身体諸種の臓器組織に異常沈着し,多彩な臨床症状を呈する原因不明の遺伝性疾患である。遺伝形式は常染色体優性で,20歳代に発病し,経過は10年ないし20年である。主な臨床症状は全身的には末梢神経障害,自律神経障害,消化器障害などで,眼症状としてはいわゆる「ガラス綿様硝子体混濁」("glass-wool"vitreous opacities)が特徴的である1)。眼症状は硝子体混濁による飛蚊症(dancing black spots)や視力低下の他に,羞明,眼瞼痙攣,眼瞼皮下出血,眼球突出,眼球運動障害,内眼筋麻痺,瞳孔異常,網膜出血および白斑,網膜動脈周囲炎などが挙げられている1)〜3)
 本症例(死亡時39歳,男)はガラス綿様硝子体混濁を主徴とし,反復性の悪心,嘔吐,腹痛などの消羞化器障害および意識障害発作を示し,末期には周期性無呼吸,四肢麻痺などをおこして死亡した患者で,生前に直腸生検によつて原発性アミロイドーシスの診断がなされたものである4)。なお本症例の同胞8人のうち3人にも類似の硝子体混濁が確認されている。わが国では本症は過去に8家系が報告されているが5),眼球剖検が行なわれたのは本例が最初である。

臨床報告

諸種点眼薬の軟性コンタクトレンズ内へのとり込みと放出に関する研究—第3報硫酸アトロピン,IDU,サルファ剤について

著者: 水谷豊 ,   三輪克治 ,   渡辺恵美子 ,   安井啓子

ページ範囲:P.191 - P.196

緒言
 第1報および第2報で,縮瞳剤と抗生物質点眼薬の軟性コンタクトレンズ(以下SCLと略す),内へのとり込み,および放出について説明し,用いる点眼薬によりそれぞれとり込み方も放出の仕方も異なるので,SCLと併用し,眼内での薬剤の持続的効果を持たせるためには,薬剤の選択と使用法に注意する必要のあることを報告した。今回はさらに散瞳剤である硫酸アトロピン,角膜ヘルペス化学療法剤であるIDU点眼液,およびサルファ剤について,SCLといかなる併用効果を持つかを検討し,2,3の知見を得たので報告したいと思う。

いわゆるCellophane Maculopathyについて

著者: 三木徳彦 ,   砂田勲 ,   吉田愿

ページ範囲:P.197 - P.203

緒言
 黄斑部疾患については多数の報告があり,その大部分は網脈絡膜病変で,網膜内面の変化による疾患の報告は少ない。網膜剥離手術後等の黄斑部皺襞形成(macular packer, Sternfalten-reti—nitis等)はよく知られているが,黄斑部網膜内境界膜収縮による特発的網膜皺襞形成,いわゆるcellophane maculopathyについては, Mau—menee, Jaffe, Gloor等の報告が散見されるが,本邦ではまだ関心が薄いようである。
 このたび,網膜内境界膜の収縮による黄斑部症の11例について,眼底検査,細隙灯眼底検査,螢光眼底血管造影法等を行ない臨床的に検討を加え,その知見を報告する。

小児におけるステロイド白内障の臨床的検討

著者: 大口正樹 ,   大野重昭 ,   花田一誠 ,   塩野寛 ,   門脇純一 ,   奥野晃正

ページ範囲:P.205 - P.209

緒言
 今から約20年前,Henchらが,リウマチ様関節炎の炎症症状にコーチゾンをはじめて用い,著明な効果を得て以来,副腎皮質ホルモン剤が臨床的に使用されるようになつた。わが国においても約15年前よりその使用が普及し,現在は多くの薬剤のうちでも最も重要なものの1つにかぞえられているが,その反面,副腎皮質ホルモンによる副作用が増加してきており,大きな問題となつている。このうち,眼科領域においては,ステロイド白内障,ステロイド緑内障,ステロイド離脱時のReboundなどが問題となつている。なかでもステロイド白内障は,その診断基準や年齢関与,病状進行性の有無,手術的治療法の適否など,いまだ未解決の点が多く残されている。このような背景のもとに,最近われおれは,副腎皮質ホルモンを使用している109例と,副腎皮質ホルモンを使用したことのない対照の71例の小児を対象として眼科的検査を行ない,ステロイド白内障の発生について若干の知見を得たので報告する。

緑内障と虹彩萎縮を主徴とする特異な急性虹彩毛様体炎

著者: 宇山昌延 ,   浅山邦夫

ページ範囲:P.211 - P.218

緒言
 激しい急性虹彩毛様体炎に急性の眼圧上昇を伴い,あとに斑状の脱色素性虹彩萎縮を残した特異な虹彩毛様体炎3例を最近経験した。この症例は,その経過中に角膜後面に無数の色素顆粒の付着がみられ,さらに隅角検査によつて隅角線維柱帯上に多量の色素沈着がみられた。このような所見から,本症例は虹彩毛様体から多量の色素脱出をきたしたのが主病変であり,脱出した色素が角膜後面に沈着してプレチピタートとなり,また,隅角線維柱帯上に沈着して房水流出をさまたげて高眼圧をもたらし,さらにあとに虹彩に脱色素斑を残したものと思われる。
 色素性緑内障にみるごとく,前房隅角における色素沈着は,緑内障発生機序の一つとして従来から注目されているが,ここに示す症例もそのいみで興味深い。

Spontaneous Cilio-choroidal Detachment (特発性毛様体・脈絡膜剥離)の9症例

著者: 當麻信子 ,   三村康男 ,   市橋賢治 ,   湯浅武之助

ページ範囲:P.219 - P.226

緒言
 毛様体・脈絡膜剥離が白内障や緑内障の眼内手術や外傷のあとで発症することは,よく経験するところである。しかし,手術や外傷などの直接的な原因がなくても発症することがあり,Duke—ElderのSystem of Ophthalmology1)では,spontaneous cilio-choroidal detachmentとして分類されている。最近,私たちは毛様体・脈絡膜剥離が自然的に発症し,著明な網膜剥離を続発した9症例を経験した。この疾患は眼底所見が多彩であり,観察の時期によつて著しく変化することがあつて,まつたく異なつた疾患との印象を受けることがある。過去に報告され,この疾患に相当すると思われる症例でも,実にさまざまな表題で報告されている2)〜11)
 今回,私たちは9症例を観察したが,臨床上多くの共通点を有し,独立した疾患と考えられたので,臨床所見,経過,病因および治療について報告したいと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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