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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻3号

1975年03月発行

雑誌目次

特集 第28回日本臨床眼科学会講演集(その2)

第28回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.246 - P.246

講演
13番染色体長腕部分欠失を認めた網膜芽細胞腫の1例………小沢博子・他…253
保存的治療に成功した網膜芽細胞腫 液状198Auの使用経験……西村宜倫・他…261

学会原著

13番染色体長腕部分欠失を認めた網膜芽細胞腫の1例

著者: 小沢博子 ,   田中靖彦 ,   田村昭蔵

ページ範囲:P.253 - P.259

緒言
 1963年Leleの報告1)以来,網膜芽細胞腫の患児に染色体異常をみた報告はこれまでに12例あり1)〜12),このうちDown症候群とTriplo X症候群との合併例にみられた一例12)を除き,他の11例は,いずれもD群染色体長腕の部分欠失(Dq)または輪状染色体(Dr)と報告されている。11例のうち,異常染色体が同定されたものは5例で,すべて13番染色体の異常と報告されている。わが国では染色体異常を伴う網膜芽細胞腫の症例はまだ報告されていない。
 著者らはこれまでに6例の網膜芽細胞腫の染色体検索を行なつてきたが,今回,視力発達遅延を主訴として来院した5カ月の女児に,両側性網膜芽細胞腫を発見し,染色体検査の結果,13番染色体長腕の部分欠失と判明した一例を経験したので報告する。

保存的治療に成功した網膜芽細胞腫—液状198Auの使用経験

著者: 西村宜倫 ,   大島健司 ,   加納正昭 ,   川田芳里 ,   吉本清一 ,   川平建次郎

ページ範囲:P.261 - P.267

緒言
 網膜芽細胞腫は,眼科領域における小児の悪性腫瘍の中で最も頻度の高い致命的な疾患である。そのために従来より早期の眼球摘出が最も良い治療とされてきた。
 しかし,最近の悪性腫瘍に対する化学療法や放射線療法の進歩により,とくに眼科領域では光凝固術の開発にともない,網膜芽細胞腫においても眼球を保存する治療法が種々検討されてきている。

未熟児網膜症の臨床的研究

著者: 丹羽康雄 ,   鈴木正子 ,   竹内豊 ,   藤塚万里子

ページ範囲:P.269 - P.278

緒言
 わが国の全出生数は,1971年度の統計で2,000,973人である。その内,届け出された2,500g以下の低体重児(以下,未熟児とす)数は,125,927人である。未熟児死亡率の約18%9)25)を引くと,推定約102,000人の未熟児の眼底検査をしなければならず,眼科医にとつて非常な負担である。眼科管理を能率的に行なうために,網膜症の発生および進行の恐れのある非常に危険の高いグループを予測できれば,診療上非常に有益である。著者らは,未熟児の発育状態および治療を検討し,本症の発生と進行にいかなる因子が関与しているか手がかりをえる目的で統計的解析を行なつた。

GM2—Gangliosidosis Type I (Tay-Sachs disease)におけるcherry red spotの組織学的検討

著者: 喜早光紀 ,   松田英彦 ,   有賀和雄 ,   五十嵐良 ,   穴倉廸弥 ,   荒島真一郎

ページ範囲:P.279 - P.285

緒言
 GM2—Gangliosidosis Type I (Tay-Sachs di—sease)(以下TSD)は遺伝学的に常染色体劣性遺伝形式を示し,cerebro macular degenera—tionまたはcerebro retinal degenerationともいわれる特有な臨床像を示す疾患として知られている。
 近年,酵素学の発達に伴い,本疾患の病因がlysosomal enzymeのうちHexosaminidase.Acomponentの全欠如によることが解明され1),この結果として中枢神経系の神経細胞を中心に脂質代謝異常が起こりGM2—Gangliosideが細胞内に残留,蓄積されてくるものと考えられている2)3)。これら蓄積された脂質は電顕下にmem—branous cytoplasmic body (以下MCB)として神経細胞の細胞体内に観察されている2)3)

父子にみられたvon Hippel病—その染色体分析

著者: 河崎一夫 ,   柳田隆 ,   森田嘉樹 ,   米村大蔵 ,   松田健史 ,   白石行正

ページ範囲:P.287 - P.292

緒言
 von Hippel病における染色体分析の報告はすくなく,著者らの知る限りでは3編9)10)14)にすぎず,またその成績はかならずしも一致しない。本報ではvon Hippel病を有する発端者である娘(症例1)とその父(von Hippel-Lindau病,症例2),および祖母,母,弟の染色体分析所見を報告する。

白内障手術後に発生した急性びまん性色素上皮網膜変性の4例

著者: 永田誠 ,   田淵保夫 ,   鶴岡祥彦 ,   木村好美 ,   深尾隆三 ,   菅謙治

ページ範囲:P.293 - P.300

緒言
 近年眼科手術の進歩にともない白内障手術は,合併症の少ない安全な手術となりつつあるが,最近われわれは,白内障手術後に急激な視力障害を起こした4例と,整形外科手術後片眼の視力喪失を来した症例を経験したので,その臨床所見と発生機転について考察を行なつてみた。

Y座標による網膜色素変性の視機能の評価と分類について

著者: 山本覚次 ,   才野恂子

ページ範囲:P.301 - P.305

緒言
 網膜色素変性の病因を検討する場合に,その患者の集団が同一病因によつて,発病しているのかという問題に直面して病因の解析を複雑かつ困難にしている。
 遺伝学的な立場から,本症を分類した場合,優性遣伝型,劣性遺伝型,伴性劣性遺伝型の3型に分類されるから1),少なくとも3種類以上発生機序の異なつた型の網膜色素変性が存在することが考えられる。しかしながら実際には発病時期,病歴,経過,合併症,症候群の一症候としての網膜色素変性等考慮すると,一層複雑な病因の分類が考えられる。

高眼圧と虹彩炎を伴つた無裂孔性網膜剥離の2例

著者: 市橋賢治 ,   当麻信子 ,   松本和郎 ,   清水芳樹 ,   東郁郎

ページ範囲:P.307 - P.312

緒言
 網膜剥離は一般に低眼圧を示すことが多いが,高眼圧あるいは緑内障を伴う症例も10%前後存在することが報告されている1)2)
 Schwartz3)は緑内障と虹彩炎を伴う特発性網膜剥離について報告し,また内田4)は緑内障を伴う無裂孔性の網膜剥離について報告している。私どもも無裂孔性網膜剥離でかつ高眼圧,虹彩炎を伴う2症例を経験したので報告しておきたい。

糖尿病性網膜症の凝固・線溶系

著者: 瀬戸川朝一 ,   藤永豊 ,   玉井嗣彦 ,   松浦啓之 ,   中村克己

ページ範囲:P.313 - P.318

緒言
 糖尿病性網膜症(以下本症と略す)における網膜出血は,直接視力に影響を及ぼす重要な問題であり,その機序についても以前よりいろいろ論じられてきた。一般的に出血は血管壁の障害,血小板系の異常,血液凝固系の障害,循環抗凝血素の量,そして線溶系の亢進などいろいろな要因により影響を受け,一元論的には結論は下されない。
 本症における網膜出血も,従来線溶能の亢進と関連を持つとの報告もあり1)〜3),また最近では糖尿病患者では線溶能は抑制傾向を示すことが多いという事実から,福田4),宇山ら5)は線溶能の低下傾向を指摘している。そしてこれらのことは,治療面にも直接影響をきたす事実でもあり,著者らは本症の出血に関与する凝固系,線溶系および血小板について諸種検索を行ない,比較検討を加えたしだいである。

眼科超音波診断に関する研究第9報—眼科カラー超音波診断の検討(ディジタル式同時断層装置によるカラーおよび白黒超音波診断法について)

著者: 太根節直

ページ範囲:P.319 - P.323

緒言
 著者らは,従来白黒像で判定していた眼科の超音波検査所見の診断精度向上と,鑑別の容易化をはかることを目的として,カラー断層表示装置を開発して,すでに第8報で発表(日眼,78:214〜219,1974)したが,今回はさらにその臨床応用上の諸問題を検討する。
 著者らの方式によるディジタル式カラー同時断層診断装置の開発および使用は,眼科領域については世界で最初のものであり,東芝およびゼネラルの技術協力をえて完成されたものであるが,これによりモノクローム表示では広い階調率grayscaleがえられ,カラー表示では,これらが7色の色調でディジタル化して表示されるので,従来の超音波断層像では,白黒の濃淡差が少なく,したがつて反射波の強弱についての十分な情報に欠けていた欠点を補い,広い階調率の病的組織のBモード断層像をえることができて,従来よりも診断精度をより一層向上させえたので,そのカラー断層診断の実際につき大要を報告する。

視線誘導装置内蔵眼底カメラとその応用

著者: 新美勝彦 ,   馬嶋慶直 ,   鈴木みち子

ページ範囲:P.335 - P.343

緒言
 従来の眼底カメラは,他の眼科機器と同様に観察面を露呈させるには,他眼による視線誘導方式が採用されてきた。これはごく限られた光路内にさらに視標を加える困難性を避けるためだが,次のような欠点がある。
 ①他眼の視力が良好でなければならない。

赤外線カラー写真の眼科的応用—正常および脈絡膜黒色腫とその類似病変について

著者: 重河康弘 ,   福永裕 ,   郡山昌太郎 ,   石田尚央 ,   稲原明肆 ,   調枝寬治

ページ範囲:P.345 - P.349

緒言
 従来眼底変状の記録および病態把握のために種々の試みがなされ,これまでに螢光眼底撮影をはじめ,単色光撮影,無赤色光撮影,立体撮影等が診断上有効な手段とされている。
 近年,赤外線に感光性を有するカラーフィルムが市販され,容易に入手可能となつて眼科的にも応用しうるようになつてきた。このフィルムによる眼底撮影の報告は,Ernest1)(1968)によりはじめてなされ,眼底の色素性変化をより鮮明に表現できると述べられた。わが国では松井2)(1970)が正常眼についての所見を報告し,その後,2,3の報告がみられたが,最近ではあまり顧りみられていないようである。

前眼部螢光血管造影に関する研究—その1正常眼房水静脈の螢光造影所見について

著者: 浅井美子

ページ範囲:P.351 - P.361

緒言
 1942年Ascher1)は,眼球表面の血管に房水が流れているのを発見し,この血管を房水静脈と名づけた。房永がシュレム管を通して前毛様静脈に流出するというLeber学説は,1951年Ashton2)のNeoprene latexを使用したSchlemm管および房水静脈の解剖学的研究,日本では宮田3)4)らの研究,その他,Thomassen5),Bakkenらの研究により実証され,これに伴つてAscherの房水静脈もSchlemm管よりおこることが実証された。
 他方,三井6)7)(1967),松井ら8)〜11)(1972〜1974)およびJensen12)13),Rosen14),Vannas15),Rai—tta16),Graandijk17),Easty18)19),Amarlic20)21)らが,前眼部螢光撮影を相次いで発表し,1974年には池上22)による前毛様血管の造影に関する研究もあらわれ,前眼部螢光撮影の研究は近年しだいに盛んになつてきたように思われる。

学会抄録

ディジタル直読式超音波診断装置とその臨床応用

著者: 河鍋楠美 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.325 - P.327

緒言
 超音波による眼屈折などの眼計測の研究は,わが国においても1960年に端を発して諸氏の報告があり,とりわけ多数の生体人眼の精密計測分析を行なつた世界最初の業績にもかかわらず,その器械の取り扱いの複雑さと,特にブラウン管にうつるエコーグラムを写真にとり,それをノギスで測定し,さらに換算式に代入して眼軸長を測るという結果処理の面倒から,いまだ一般的でなく,ごく限られた研究者の手にゆだねられているのみで,日常外来でたやすく検査できるまでに至つていない。そこで超音波による眼計測を簡単に行なえるようにする目的で,新しくディジタル直読式超音波診断装置(Aスコープ)を開発した。

連載 眼科図譜・208

角膜内浸潤によつて発見された

著者: 新富芳子 ,   松田英彦

ページ範囲:P.249 - P.250

〔解説〕
 Malignant Melanomaが角膜にみられることは非常にまれなことであり,本邦での報告はまだみられない。外国の文献では角膜に原発したと考えられた症例が,これまで数例報告されている。しかし,毛様体に発生したMalignant Melanomaが角膜に浸潤して発見されたという例はない。
 私たちは,10歳女子の角膜にみられ,臨床的に診断の困難であつた黒色の腫瘍を切除したところ,組織学的に毛様体のMelanocyteに由来するMalignant Melanomaと考えられた症例を経験したので報告する。

臨床報告

先天性色覚異常に対する選択刺激周波訓練の長期観察(第5報)

著者: 今村勤

ページ範囲:P.363 - P.370

緒言
 先天性色覚異常に対するリハビリテーションを目的として,東北大学医学部生理学教室本川弘一教授が研究された網膜の電気生理学理論のうち,色光共鳴周波数電流1)と網膜の色過程2)から着想をえて,これを臨床的に応用することを企図して,先天性色覚異常者に対して,赤色光(650nm)および緑色光(515nm)の共鳴周波数77cpsおよび42.5cpsの正弦波交流を3秒交代に,湿電極を用いて経皮的に網膜の中心部へ通電する選択刺激周波訓練を試みて,その基礎的理論,訓練装置の電気的構成ならびに実験症例について,第1報3),第2報4),第3報5)として報告した。
 その後,これを家庭用として小型化するために,回路をトランジスタ化し,スイッチング回路を採用し,電圧波形を短形波に,電源に乾電池を使用して,「サンビスタ」と命名し,1965年10月に厚生省認可(40B第188号)〔医師の指示により使用〕となり,同年11月以降,指導医制によつて指導医師の検査,指導,管理の下においてのみ,一般の希望者にこの訓練を実施させることになり,その後1カ年間の成績を第4報6)として報告した。

諸種点眼薬の軟性コンタクトレンズ内へのとり込みと放出に関する研究—第4報コーチゾン点眼薬およびコンドロン点眼薬について

著者: 水谷豊 ,   三輪克治 ,   水野研介

ページ範囲:P.371 - P.373

緒言
 すでに第1〜3報において,多くの点眼薬について,軟性コンタクトレンズ(以下SCLと略す)へのとり込みと放出について実験成績を報告し,各種点眼液はそれぞれ個有の性質を持つていることを示した。今回は,副腎皮質ホルモンの1つであるコーチゾンと,角膜保護剤であるコンドロン(コンドロイチン硫酸ナトリウム)について検討し,知見をえたので,ここに報告するしだいである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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