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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻4号

1975年04月発行

雑誌目次

特集 第28回日本臨床眼科学会講演集(その3)

第28回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.386 - P.386

講演
Uveal Effusion 典型例の治療および経過……………福喜多光一・他…391
原発性・転移性脈絡膜腫瘍の6例……………………林 倫子・他…401

学会原著

Uveal Effusion典型例の治療および経過

著者: 福喜多光一 ,   米倉欣彦 ,   横山実

ページ範囲:P.391 - P.400

緒言
 1963年SchepensおよびBrockhurst1)は,Uveal effusionなる標題のもとに一種のブドウ膜疾患17例についての報告を行ない,その臨床像における特殊性から新たなclinical entityであると主張した。本報で述べる典型例とは,彼らが挙げた臨床所見の特徴にほとんど一致する一症例である。本症は長い年月にわたつて再発をくり返しながら徐々に悪化する傾向のあることが指摘されているが,著者らの例は最終的とも思われる高度の発症を起こすと同時に来院している。その後,2年間にわたる眼,全身症状と,治療に対する反応の経過を観察した結果,本症は原田病や周辺性ブドウ膜炎,あるいは漿液性網脈絡膜症などとは異なる,やはり非常に特殊な,そしてかなりまれな眼病であるとの印象を深くした。
 施行した手術的療法が確実に奏効したという所見は得られなかつたが,現在かなりの視機能障害を残しながらも,一応治癒とみなしうる状態に達したので,Schepensら1)が触れなかつた螢光眼底造影の新たな所見と併せて報告しておきたいと思う。

原発性・転移性脈絡膜腫瘍の6例

著者: 林倫子 ,   広瀬清一郎

ページ範囲:P.401 - P.407

緒言
 脈絡膜腫瘍が全眼疾患に対して占める割合は決して多いものではない。近年悪性腫瘍に対する治療法の進歩に伴い,転移性脈絡膜腫瘍に遭遇する機会が多くなる一方,診断技術の向上により原発性腫瘍の発見率も高まりつつある。しかし,なお脈絡膜腫瘍の診断が下される以前に,網膜剥離あるいは中心性網脈絡膜炎などの診断を受けている例も少なくない。私たちは最近5年間に6例の脈絡膜腫瘍を経験したので報告する。

Angioid Streaksの長期観察例—経過中にAngioid Streaksの新生が見られた症例について

著者: 山之内夘一 ,   原潤一郎

ページ範囲:P.409 - P.414

緒言
 網膜色素線条(以下ASと略)の基盤をなす病理組織学的変化は,Bruch膜のLamina elas—ticaにあるというのが今日の通説である,この弾力膜の変性,破裂によつていわゆるASという臨床像が得られる。また身体他部の弾力組織を侵す系統疾患の一つとも考えられ,皮膚にみられるPseudoxanthoma elasticum (以下PXEと略)はよく知られており,Groenblad-Strandberg症候群の名で呼ばれている。
 ここにあげる症例はAS,PXEが認められたGroenblad-Strandberg症候群の患者で,初診から4年半後,右顔面打撲により両眼の眼底出血をきたし,その後田血吸収されるに従つて出血部に典型的なASの新生が認められた症例である。AS眼底の易出血性は知られているが,AS新生例の報告は少ないので,ここに追加報告する次第である。

網膜静脈閉塞症における線溶療法後の螢光眼底所見

著者: 小沢勝子 ,   種田光成 ,   高井みちえ

ページ範囲:P.417 - P.426

緒言
 網膜静脈閉塞症の治療目的は,まず第一に中心視力の改善であることはいうまでもない。視力に影響する黄斑部の浮腫および出血は,いずれはなんらかの機転により吸収されるにせよ,吸収に長期を要すれば視機能の回復は悪い。著者らは1973年の第27回日本臨床眼科学会において,網膜血管閉塞症に対してurokinaseの早期連続投与により,出血と浮腫の吸収,視力や網膜循環状態の改善が著明であることを報告した1)。今回は網膜静脈閉塞症の30症例に対して,urokinase療法前および後の数回にわたり高速連続螢光眼底撮影を行ない,網膜血管所見,特に閉塞部近くの状態と,出血や浮腫の吸収過程について検討し,どのような症例に光凝固の適応があるか考えてみたい。

螢光眼底映画における螢光濃度測定の試み

著者: 川浪正 ,   山本敏雄 ,   足立興一

ページ範囲:P.427 - P.431

緒言
 螢光眼底造影法は今日日常診療に欠かせない検査法となつているが,現在一般に行なわれているのは,一駒ずつ撮影する螢光眼底写真である。時間とともにすみやかにかつ連続的に変化する眼底の循環動態を検討するためには,駒撮り写真より螢光眼底映画の方がすぐれていることは確かであるが,いまだ一般に普及していない。一方,眼底螢光像の濃度測定は試みられてはいるが,臨床的に日常使用されるまでには至つていない。
 今回私たちは螢光眼底映画を撮影し,自家現像を行ない,映画による螢光像の濃度測定を試みた。そして,それぞれの過程の中で日常診療に応用する上での問題点や隘路について検討してみた。

網膜動脈閉塞症に対する高気圧酸素療法について(その2)

著者: 三宅養三 ,   長谷川康紀 ,   渡辺郁緒 ,   欣作 ,   高橋英世

ページ範囲:P.433 - P.441

緒言
 網膜動脈閉塞症のなかには高気圧酸素療法により視機能の改善を示す症例があり,その作用機序,電気生理学的探究,ならびに副作用等に関してはすでに詳しく報告した1)。今回は既報の4例に加え,14例の本疾患に対する高気圧酸素療法の効果につき述べる。

異所性松果体腫の眼症状

著者: 大鳥利文 ,   中尾雄三 ,   魚住徹

ページ範囲:P.443 - P.449

緒言
 異所性松果体腫はわが国でもまれな疾患とされ2)5)〜8)10)11)14),脳外科領域からの報告は次第に増加しているが1)3)4)9)13)15),眼科領域からの研究はほとんどなされていない5)11)18)
 本症のTriasはKageyama and Belsky6)によれば,尿崩症,脳下垂体前葉機能低下と視機能障害といわれ,その診断は困難でないともいわれているが,頭蓋咽頭腫,脳下垂体腫瘍など視交叉部腫瘍との鑑別診断は眼所見だけからは容易ではない。

乳頭血管炎と思われる症例

著者: 桜木章三 ,   高橋信夫 ,   酒井文明 ,   田中泰雄

ページ範囲:P.451 - P.456

緒言
 健康な若年者の片眼にみられる,乳頭浮腫様あるいは中心静脈閉塞様所見を呈し,視力障害が軽度でかつその予後の比較的良好なものを,Reti—nal VasculitisあるいはOptic Disc Vasculitisなる概念でとらえた報告が多くみられるようになつた。
 われわれも最近2年間にこれに一致する所見を呈した3症例を経験したので報告する。

フルオレスセイン前房染色による人工的無水晶体眼の検討

著者: 永田紀子 ,   村田恵美子 ,   高橋正孝 ,   丸子順子

ページ範囲:P.457 - P.461

緒言
 Fluorescein-Na溶液(以下F.と略記)静脈注射において,正常では,この色素が血漿蛋白と結合しやすいため血液房水柵をほとんど通過せず,血中濃度に比較して,前房内濃度は非常に低い。しかし,白内障手術後では,この血液房水柵が破壊されるために,F.は容易に前房内に出現し,肉眼的にも確認することができる。
 そこで,著者らはこの事実にもとづき,無水晶体眼の前房の回復過程の良否を明確にするために,白内障術後にF.の静脈注射を行ない,前房内への出現の仕方を観察したところ,2,3の知見を得たので報告する。

視交叉前症候群—球後視神経炎様症状を呈した髄膜腫症例

著者: 諫山義正 ,   高橋俊博 ,   近藤哲夫 ,   小原実 ,   玉木紀彦

ページ範囲:P.463 - P.472

緒言
 視交叉部近傍の脳腫瘍,ことに髄膜腫の場合,神経眼科学的には両眼の単性視神経萎縮,両耳側半盲を示し,いわゆる視交叉症候群といわれている。しかし非定型的な場合には球後視神経炎との鑑別が非常に困難なことがしばしばある。このたびわれわれは比較的急激な視力障害,中心暗点等の球後視神経炎様症状を呈した4症例の視交叉部近傍の髄膜腫症例に遭遇し,その問題点について検討し,視交叉前症候群を提唱したので報告する。

諸種眼疾患における視神経乳頭の螢光造影所見の解析—第1報乳頭の発赤,腫脹をきたす疾患について

著者: 渡辺千舟 ,   吉原正晴 ,   山地真三郎 ,   山岨三樹 ,   平野敏行

ページ範囲:P.473 - P.479

緒言
 視神経乳頭は視神経疾患のみならず,疾患の二次的影響により検眼鏡的に,ある時は発赤,腫脹をあらわし,またある場合には褪色,萎縮の変化を生じ,原疾患特有の形態を示すが,これら種々の変化は乳頭部血管系の循環状態を反映する所見と考えられる。
 したがつて,病変に相当する乳頭の特定の変化を,螢光眼底像の面からとらえようとする試みは,視神経疾患に関しては早くから行なわれてきた。

高安病における網膜内循環時間と血漿フィブリノーゲン値との関係

著者: 伊藤翠子

ページ範囲:P.481 - P.488

緒言
 高安病は明治41年(1908),高安右人氏の症例報告「奇異なる網膜中心血管の変化」1)以来,中島2)3),百々4)5),柳田6),広瀬7)〜10)の諸氏により,主に眼科領域において研究が進められてきたが,1948年清水氏,佐野氏は視神経乳頭周囲の花環状血管吻合という特有な眼症状のほか,上肢の脈が触れない点に注目して,本症に「脈なし病」の名を与えた11)。その後,前川12),那須13)14),稲田15),上田16)の諸氏により,種々の検査法の開発が行なおれ剖検例も増加した。かくして広く大動脈およびその主要分枝動脈などに好発する狭窄,閉塞にいたる病態が明らかになり,それらの考察から上田氏17)は本症を「大動脈炎症候群」と呼び,この名称は今日広く用いられるようになつた。眼科領域においても浅山・宇山18),宇山19)〜21),浦山22),生井23)28)の諸氏は,いずれも高安病を全身的な疾患とする新しい概念のもとに論述をすすめている。こうした一連の研究の結果,診断,治療の進歩がもたらされ,本症はごく初期の段階で発見されるようになり,症状の進行が停止,軽快するものも増えた。このため以前に記載されたような,典型的な高安病に伴う眼底変化を呈する症例は現在ほとんど見られないが,初期変化すなわち網膜静脈の拡張,蛇行とその暗色調および動静脈細枝の拡張等を伴う高安病の症例はかなりの頻度に認められる。

第28回臨眼特別講演

眼のトキソプラスマ症

著者: G.Richard

ページ範囲:P.489 - P.495

まえがき
 かつては眼にToxoplasmosisが起こるのはまれなことと思われていましたが,今では網脈絡膜炎のありふれた原因と考えられています。実際眼の後極部の肉芽性炎症の30から50%がそうであると言われています1)2)。この病気の再発型は眼科医にとつては困つた病気で,トキソによく効くといわれている薬を使つているにもかかわらず,網膜の中心部がおかされて,毎年何千人もの人が失明しています。
 この病気の成り立ちと,病原体であるToxoplasmagondiiに対する生体の防衛の仕方をよく理解していないと,治療に失敗します。それで本日に,眼の病巣の成り立ちと,眼が侵された時の治療と,2つのことに重点をおいてお話しします。

連載 眼科図譜・209

蜂巣状類嚢胞黄斑部変性症から黄斑部円孔形成をきたした一例

著者: 高橋寬

ページ範囲:P.389 - P.390

解説
 本症は,両眼性の蜂巣状類嚢胞黄斑部変性症の一例で,本稿28巻3号(1974年)において報告した症例である,その後,経過をfollow upしていたところ,黄斑部中心窩の大きな類嚢胞が破れて,円孔を形成するに至る所見を認めたので追試報告する。
症例:27歳男タクシー運転手

臨床報告

糖尿病性網膜症のstabilityと進行

著者: 小嶋一晃 ,   酒井寿男 ,   杉田元太郎 ,   三宅三平 ,   原田敬志 ,   市川宏 ,   小嶋克

ページ範囲:P.501 - P.507

緒言
 内科的に一定の管理を受けていても,本症の発生はある程度不可避である。その進行も同様である。本症自体の発生原因や機序には未詳のことが多いので,これは当然である。マクロ的なものではあるが,5年以上の観察で本症の発生進行に関して,ここに2,3の点を扱つてみたい。
 材料:1969年までの5年以上の観察例で,福田氏(1972)1)の1969年次の5〜10年観察例と年次的に比較してみた。

未熟児網膜症の光凝固症例

著者: 田淵昭雄 ,   山本節

ページ範囲:P.509 - P.512

緒言
 兵庫県立こども病院にて,未熟児網膜症(以下網膜症と略す)に対し1971年2月にはじめての光凝固術を行なつて以来,1974年3月31日までの光凝固症例は54名(のべ119眼)に達している。
 現在まだ十分長期にわたる術後経過を観察し得ていないが,症例の87%が視力の予後については良いと推測される成績を得た。しかし,不幸にしてすでに盲あるいは重症視力障害にいたつた者もあり,手術の時期,適応,その他については,なお検討しなければならない問題が残つている。

GROUP DISCUSSION

斜視・弱視

著者: 丸尾敏夫

ページ範囲:P.513 - P.516

 斜視・弱視グループディスカッションは昭和49年度秋季日本弱視斜視研究会総会として,粟屋忍講師(名大)の司会のもとに開催された。

遺伝性眼疾患

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.517 - P.520

1.Oculo-Dento-Digital Dysplasia Syndromeの一例
 Oculo-Dento-Digital Dysplasia Syndromeとは,小眼球と,歯のエナメル質形成不全,合指症などの四肢の奇形を伴う症候群である。本症候群はきわめてまれで,現在までに12例の報告があるが,わが国では1966年の久保田らの一例のみである。最近私どもは本症候群と思われる一症例を経験したので報告する。症例は3歳の男児で,眼位異常を主訴として入院した。その後の眼科的,小児科的,その他の全身検査で軽度の小角膜,鼻翼の発育不全,歯のエナメル質形成不全,第5指の屈指,第4,5指の合指などを認め,本症候群と診断した。その他に本症候群では,内角贅皮,上内斜視を認めた。また染色体異常が発見された症例は一例もなく,本症候群でも末梢血流の染色体分析では異常を認めなかつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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