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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科29巻4号

1975年04月発行

文献概要

特集 第28回日本臨床眼科学会講演集(その3) 学会原著

高安病における網膜内循環時間と血漿フィブリノーゲン値との関係

著者: 伊藤翠子1

所属機関: 1東京医科歯科大学眼科学教室

ページ範囲:P.481 - P.488

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緒言
 高安病は明治41年(1908),高安右人氏の症例報告「奇異なる網膜中心血管の変化」1)以来,中島2)3),百々4)5),柳田6),広瀬7)〜10)の諸氏により,主に眼科領域において研究が進められてきたが,1948年清水氏,佐野氏は視神経乳頭周囲の花環状血管吻合という特有な眼症状のほか,上肢の脈が触れない点に注目して,本症に「脈なし病」の名を与えた11)。その後,前川12),那須13)14),稲田15),上田16)の諸氏により,種々の検査法の開発が行なおれ剖検例も増加した。かくして広く大動脈およびその主要分枝動脈などに好発する狭窄,閉塞にいたる病態が明らかになり,それらの考察から上田氏17)は本症を「大動脈炎症候群」と呼び,この名称は今日広く用いられるようになつた。眼科領域においても浅山・宇山18),宇山19)〜21),浦山22),生井23)28)の諸氏は,いずれも高安病を全身的な疾患とする新しい概念のもとに論述をすすめている。こうした一連の研究の結果,診断,治療の進歩がもたらされ,本症はごく初期の段階で発見されるようになり,症状の進行が停止,軽快するものも増えた。このため以前に記載されたような,典型的な高安病に伴う眼底変化を呈する症例は現在ほとんど見られないが,初期変化すなわち網膜静脈の拡張,蛇行とその暗色調および動静脈細枝の拡張等を伴う高安病の症例はかなりの頻度に認められる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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