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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻5号

1975年05月発行

雑誌目次

特集 第28回日本臨床眼科学会講演集(その4)

第28回日本臨床眼科学会特集目次

ページ範囲:P.534 - P.534

講演
多発性硬化症の眼症状を中心とした再発因子の追究
 ―特に気象との関連性について―………………棚橋雄平・他…541

学会原著

多発性硬化症の眼症状を中心とした再発因子の追究—特に気象との関連性について

著者: 棚橋雄平 ,   河本道次 ,   川名洋美 ,   橘川真弓 ,   大岡良子

ページ範囲:P.541 - P.547

緒言
 気象の人体に与える影響については,紀元前より気付かれており古くはヒポクラテスも季節や天候が健康や疾病に影響をおよぼすことをのべている。その後も多くの気象学的考察がなされたが,真に科学的な気象と人間の関係の追究は19世紀の終り頃から始まり,とくに前線と特定疾患との関係を大規模に調査し近代気象医学研究の先駆をなしたのは,1929年De-Rudder B.1〜2)であつた。彼は多くの気象病が不連続線の通過に関連して誘発されることを示して注目され,リュウマチ,疼痛,心臓循環器障害,急性緑内障等を分類している。また最近の研究では,気管支喘息,蕁麻疹,腸重積症,ベーシエット病等が,その発症増悪と前線通過との関連において気象病としての性格をもつことが立証されている。一方,多発性硬化症(以下MSとす)については,本邦では3)1951年桑島により急性球後視神経炎とMSとの関連が追究され,また内科的には1954年冲中4)〜5)により本症の存在が確認されたが,いまだその原因の不明な点において,今後の研究の余地を残している。
 先にわれわれ6)は,MSの眼症状を中心とした統計的観察を行ない,その臨床像の一端をあきらかにしたが,今回MSの再発因子の追究の一つとして特に気象病にもつとも関係があるとみなされている前線の通過との関連を検討し,MSが気象病的要素を持つと思われる若干の知見をえたので報告する。

Checkerboardを用いたVECPの研究—第1報屈折検査への応用

著者: 千葉弥幸 ,   金井塚道節 ,   安達恵美子

ページ範囲:P.549 - P.558

I.緒言
 パターンを表示して誘発されるヒトの大脳視覚領からの電位(VECP)は,一般にplain stim—uli (無構造刺激)によるものより,その振幅が大きいことと閾値が低いことが知られている。
この2種の型のVECPが,果して異なつた視覚系のactivityを表現しているものか否かは,いまだ議論の多いところであるが(Regan1),上記の理由で,パターン刺激の方が臨床応用の見地からはより望ましい刺激方法ではないかと考えられる。(Huber, Adachi-Usami andKellermann2);Behrman, Nissim and Arden3)

屈折異常者のAccommodo-GramのPatternの臨床的解析

著者: 鈴木直子

ページ範囲:P.559 - P.569

緒言
 調節機能が全身あるいは眼局所の変調のもつともすぐれた指針となりえることはすでに多くの報告がありここに上げるまでもない。屈折異常のある場合に,その調節機能の状態を把握することは,診断,治療などに有用であることは萩野1),鈴村1),寺本2),堀3),佐野4)ら多くの報告があり,明らかなところである。とくに,堀は近視の診断治療における調節機能の意義について検討し,反復測定の調節時間変動状態と治療経過について報告している。かように調節緊張,弛緩時間の反復測定値の変動状態は調節機能の異常の診断に有力な資料になり,その原因の解析に価値がある。この変動状態については鈴村5)のAcoommod-Polyrecorderでは,連続的な鋸歯状型(Acoommodo—Gramと仮称しAGと略す)として記録される。そして,それらは,緊張時間,弛緩時間ともに第1図に示すごとき6つの変動型に分類できることが明らかにされている。
 さらに筆者6)らは,AG-patternの読みには相当の熟練が必要であり,また判定者による個人差もいちじるしくなることから診断価値を明確にするため6つの変動型の分類をSonymini-compu—terによつて客観的に自動判定をする方法論を明確にした。

全身麻酔下の斜視患者の眼位

著者: 松山秀一 ,   田中幸子

ページ範囲:P.573 - P.578

緒言
 全身麻酔の発達に伴つて,眼科手術も全身麻酔下に行なわれる機会が多くなつている。ことに,斜視の手術が全身麻酔下に行なわれていることは諸家の報告1)2)3)からも明らかである。しかし,諸家の報告をみると,麻酔の手技,安全性,有用性について言及したものは多いが,全身麻酔の眼球運動または眼位に及ばす影響について論じたものは少ない4)5)6)7)
 われわれは,斜視患者の全身麻酔下における眼位の変化,ことに麻酔深度と眼位との関係および麻酔下眼位と安静位との関係に興味をもち,症例数は少ないが,GOF全身麻酔時における動脈血中Fluothane濃度と眼位を検討したのでここに報告する。

頬骨(上顎骨)骨折による眼合併症

著者: 中川喬 ,   小野弘美 ,   田所哲司 ,   篠崎文彦

ページ範囲:P.579 - P.582

緒言
 頬骨は眼窩を構成している骨のうち,もつとも外力を受け易く,その骨折は顔面中央1/3の骨折のうちもつとも頻度が高い。頬部の骨折はいわゆるblow-out fractureとことなり,必らずしも眼症状を伴わないため,眼科医の診察をうける機会も少なく,眼合併症は比較的少ないと報告されていた。
 外傷により頬骨が,変位,骨折する場合には,周囲の前頭骨,側頭骨,蝶形骨あるいは上顎骨の骨折を伴う。このうち眼窩底を構成している上顎骨および頬骨の離解,骨折は,眼機能障害に関係が深い、,題名を頬骨(上顎骨)骨折としたのは,頬骨骨折に伴つて生ずる上顎骨骨折を強調する意味,およびLe Fort Ⅱ,Ⅲ型を合併した症例を含めた頬部の骨折という意味である。

徳島県下における農薬の使用量と近視学童の推移

著者: 田村修 ,   三井幸彦

ページ範囲:P.583 - P.587

緒言
 最近学童の近視が増加していることは,世界共通の問題とされている。徳島県でも学童の近視は増加しており,この原因にはいろいろのことが推論されている。石川らは,佐久地方に発生した原因不明の眼疾患の研究をおしすすめ,慢性有機燐農薬中毒によつて近視が発生することを証明した。したがつて学童の近視の一部が有機燐農薬が原因となつておこつている可能性がある。しかし軽症の有機燐農薬中毒によつておこつた近視があつたとしても,それは一般に行なわれている眼科の検査では他の原因による近視と区別することはできない。有機燐農薬と学童の近視との関係を知るためには,統計的,疫学的調査が必要である。よつて私どもは,今回徳島県下の学童の近視の罹患率の推移と農薬の使用量の推移を比較調査して,両者の関係を検討した。

有機水銀中毒症の固視微動について

著者: 岩田和雄 ,   難波克彦 ,   児島守 ,   阿部春樹 ,   健石忠彦 ,   桜井泉

ページ範囲:P.589 - P.596

緒言
 1964年阿賀川流域に発生した有機水銀中毒症いわゆる新潟水俣病に対し,私どもは視野,眼球運動,VERなどの神経眼科的検索を行ないいろいろの知見をえてきたが,今回固視微動とくにFlickの成分について検討したみたので以下に報告する。

早期単性緑内障の長期観察成績

著者: 近藤武久

ページ範囲:P.597 - P.604

緒言
 古くより緑内障の視機能の予後は不良とされており,現在でも,もつとも失明率の高い眼疾患の一つである。
 単性緑内障の長期観察成績についてはすでに多数の報告があり,眼圧調整と視機能障害の関係,薬物療法と手術療法との比較,失明率などいろいろな面から検討がなされている。しかし,これを早期緑内障の長期観察成績に限つてみると,その報告は意外に少なく眼十分な検討がなされているとはいえない。これは,緑内障の初期においては視機能障害の進行が緩慢であり,その変化をとらえるには非常に長期間の観察を要することと,視機能障害の程度が軽微であることが多く,あまり関心が払われることがないことなどに起因するものと思われる。因にLeydhecker1)は視機能障害出現前に眼圧の調節不良期間は実に20年近くにも及ぶとしているが,同一患者を10数年にもわたつて観察し続けることは非常に困難なことである。

色光線照射による眼圧変動に関する実験的研究

著者: 永井真之

ページ範囲:P.605 - P.613

緒言
 緑内障の診断上重要な役割をしている負荷試験には,飲水試験,暗室試験,散瞳試験,priscol試験,不安定試験,頭部低位試験,頸部圧迫試験,マッサージ試験,読書試験,温罨法試験等があるが,患者の苦痛を伴つたり,またある程度の危険性を有するものがある。今回著者は,光線,とくに色光線照射にて眼圧低下を示すという報告1)に接し,この方法が一種の負荷試験(緑内障検出試験)として応用できるか否かの実験を行なつてみた。とくに光線は,われわれ日常生活上欠くべからざるものであり,色光線は室内照明等,各種照明や,テレビ,サングラス等々われわれの眼に様々な刺激を与えているがこれらは完全に無害なものであろうか,この点もあわせて検討してみた。色光線の中でも,緑色光,赤色光,青色光,黄色光を中心にこ色光線刺激と眼圧の変動について検討してみたのでここに報告する。

学会抄録

コーテッド眼鏡レンズの耐久力吟味

著者: 高尾宗良 ,   戸塚清

ページ範囲:P.571 - P.572

緒言
 コーティングが施された眼鏡レンズの方が,反射が少なく,またゴーストや迷光も少なく,明視の効果があるので,ここ十年来,一般の趨勢として,眼鏡レンズには,表面,および裏面のコーティングが行なわれている。工法も進歩し,最近ではマルチコーティングが通則となつてきた。しかし工法の一部は企業秘密で覗い知るをえないこともある。
 カメラのレンズでは,コート面を拭くような機会は比較的少ないが,眼鏡レンズでは,これらが顔面に露出して掛けられている関係上,汗,皮脂がつく,雨滴,塵埃がかかる,衝撃がおよぶ,化粧液がかかる,ハンケチで拭くなど,いろいろの因子が関係し,コート面が損壊される怖れがあると考える。

連載 眼科図譜・210

Transpupillary Cyclophotocoagulation—出血性緑内障の一症例

著者: 望月学

ページ範囲:P.537 - P.538

〔解説〕
 症例は21歳の女性で,左眼網膜中心静脈閉塞症を生じ,その約3カ月後に激しい眼痛を伴う緑内障を併発した。初診時(1974年1月1日),右眼圧は17mmHg,左眼圧は46mmHg (Applanation)で,虹彩にはルベオージス,隅角には線維柱帯の血管新生がみられた。
 エピネフリン点眼,ダイアモックス内服,浸透圧剤療法(アミラック内服,マンニトール点滴),穿孔性毛様体ジアテルミー(半周)などを行なつたが,一時的な効果しか得られず,ソフトコンタクトレンズを装用しながらのエピネフリン点眼も行なつたが,なお高眼圧が持続していた。経過中にブドウ膜外反が強く生じ,虹彩と水晶体の間に間隙ができて,隅角鏡を装用するとその間隙を通して毛様体突走が全周にわたつて透見可能となつた(第1図)。

臨床報告

網膜剥離手術後にみられる黄斑部皺襞の螢光眼底像

著者: 浜田幸子 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.623 - P.628

緒言
 網膜剥離手術後にみられる黄斑部皺襞形成については以前より報告はあるが,その成因についての定説はなく,すでに挙げられている諸説の中でその主なものとしては,一つは硝子体に原因を求めようとする硝子体説,他は網膜に原因を求める網膜説があげられる。
 硝子体説は硝子体の変化を重視する考えで,後部硝子体剥離が発生する時,なんらかの理由で黄斑部に硝子体剥離が起こらなかつたとき,眼球運動にさいし黄斑部に牽引力が加り,黄斑部に浮腫を生じ,黄斑部の硝子体にcondensation,網膜表面で硝子体細胞の増殖がおこる結果,黄斑部皺襞が形成されると説明するもので,Jaffe1),Ta—nenbaum et al,2),Lincoff3)等がこれに属する。一方,Klien4),Davis5),Straatsma and Allen6)Wise et al.7)等は網膜の変化を重視し,preretinalmembraneを網膜起源であると述べ,黄斑部に硝子体癒着を認めず,網膜細胞要素,グリア細胞の増殖が内隣接する硝子体のcondensationにそつて延びると説明している。Wise et al.は網膜血管の障害が原因になつていると述べている。いずれにせよ,現在の段階では,生体顕微鏡によつても微細な黄斑部網膜硝子体癒着の存在を確かめることは困難で,諸説を生むもとにもなつている。

Behçet病眼球の病理組織学的所見について

著者: 川田芳里 ,   鬼木信乃夫 ,   倉員健一

ページ範囲:P.629 - P.635

緒言
 1937年Behçetの報告以後,原因不明のブドウ膜炎から一つの新しいclinical entityとしてBehcet病が確立されてきたが,その病因に関してはvirus説,細菌アレルギー説,膠原病説,自己免疫疾患説などいろいろあり,今日なおいずれも推定の域を出ない。眼球の病理組織所見についても多数の報告があるが,病因追求への有力な手がかりはいまだ得られていない。
 今回私たちは,最近2年間に続発性緑内障のため摘出したBehçet病の6眼について,組織学的検索を行なつた。1例を除いては,いずれも末期のものであつたため特に新しい所見はなかつたが,6眼について得られた結果をまとめて報告する。

Transpupillary Cyclophotocoagulation出血性緑内障の一症例

著者: 望月学

ページ範囲:P.637 - P.640

緒言
 出血性緑内障は治療のきわめて困難な緑内障の一つである。著者は,Argon Laserを用いてTranspupillary Cyclophotocoagulationを行ない,良好な結果を得た出血性緑内障の一症例を経験した。
 この方法が用いられたのは,毛様体ジアテルミーをはじめとした種々の治療にもかかわらず高眼圧と眼痛が持続していたこと,患者は若い女性であり眼球摘出は避けなければならなかつたこと,与える疼痛と侵襲を最小限にしたかつたこと,経過中に虹彩と水晶体の間に間隙が生じ,隅角鏡を装用するとその間隙から毛様体突起が透見可能になつたこと,Lee (1971)3)のこの方法を用いた実験では,眼圧下降がみられ大きな副作用がなかつたこと,この方法に対する患者の同意が得られたこと,などの理由のためである。

GROUP DISCUSSION

第14回緑内障

著者: 沢田惇

ページ範囲:P.641 - P.645

〔宿題報告〕
緑内障眼に対する超音波診断
 緑内障検査に対する超音波診断法の導入応用のため,演者は次の項目について,その検査法と結果の大要を述べた。
1)原発性緑内障眼の超音波計測

眼の形成外科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.646 - P.648

まず世話人より来年はグループディスカッションけ行なわれず,そのかわりに臨眼に教育講演があることの説明があり,そのテーマ,演者の選定に会員の意見を求めた。引き続き学術集会が座長井出醇により開始された。(今年は抄録未提出者と討論用紙未提出者があつたが本稿締切りになつたので筆者の記憶で記載した。誤記があつたら悪しからず了承願います。)

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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