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特集 第28回日本臨床眼科学会講演集(その5) 学会原著
Uveitisを初発症状とする脳腫瘍Reticulum cell sarcomaの1例
著者: 中林正雄1 高槻玲子1 宇山昌延2 福田富士男3 栗山剛4 前川潔4 小田冨雄5 岡久雄5 中谷俊生5
所属機関: 1和歌山県立医科大学眼科学教室 2京都大学医学部眼科学教室 3和歌山日赤病院眼科 4和歌山日赤病院脳外科 5和歌山県立医科大学第I病理
ページ範囲:P.719 - P.727
文献購入ページに移動従来ブドウ膜炎と脳腫瘍との問には関連する点はまつたく考えられず,過去においてブドウ膜炎の分類の中にも,また鑑別診断の中にも含まれていなかつた。1972年にNeaultら1)は,ブドウ膜炎を伴う脳内原発性細網肉腫の7例を報告した。その報告では,12年間に開頭術によつて脳内細網肉腫を見出した17例のうち,7例においてブドウ膜炎の既往があつたが,細網肉腫以外の脳腫瘍では,ブドウ膜炎の既往のある例はなかつたという。その7例の年齢は42歳から64歳まであり,眼症状発症から死亡までの期間は1.7年から12.7年におよび,眼症状発症より神経症状発症までの期間に最長で7.8年もの期間をおくものがあつた。7例中1例のみが死後剖検されているが,その時点まではブドウ膜炎との関連に気づかれていなかつたらしく,眼球の剖検はすべて行なわれていない。またNeaultはその論文中に,それ以前の記載にはVogel2)の記載した2例があることを述べている。Vogelは1968年,眼内の細網肉腫の6例を示し,そのうち2例で眼球以外に脳に細網肉腫を認め,かつ眼所見はブドウ膜炎であり,緑内障を合併したので摘出剖検している。
今回私らも原因不明のブドウ膜炎で発症した脳内細網肉腫の1例を経験したので報告する。
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