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臨床報告
塩酸オキシブプロカイン(Benoxil)による角膜障害の症例
著者: 近藤武久1 坂上英1
所属機関: 1京都大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.751 - P.755
文献購入ページに移動1884年Karl KollerがCocaineを発見して以来,眼科領域においてはこれまでCocaine,P—rocaine,Xylocaine,Novesineなど多数の表面麻酔剤が使用されてきているが,Novesineは現在Xylocaineと並んで最も広く普及している表面麻酔剤の一つである。1952年Witmer1)の報告以来,Novesineはその速効性と,強い鎮痛作用および毒性の少ないことから,わが国でも眼科用表面麻酔剤として急速に普及し,0.4%液が商品名Benoxilとして販売されている。その主成分である塩酸オキシブプロカインの化学名はβ—Diethylaminoethyl−4—amino−3—butoxyben—zoate Hydrochlorideであり,その構造式は第1図のごとくである(以下Benoxilと略す)。
これまで本剤の有効性を論じた報告2)〜5)には多くのものがあるが,重篤な副作用についての報告はほとんど皆無といつてよい。しかし,1973年Hilsdorf und Zenklusen6)により,本剤による重篤な後遺症をのこす角膜障害例がはじめて報告され,その濫用に対する警告が発せられた。また本邦では大野・高田7)によりBenoxilの急性角膜障害が発表された。最近,われわれもBenoxilの連用により耽溺の弊に陥り,重篤な角膜障害を惹起した症例を2例経験したのでここに報告する。
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