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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻8号

1975年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・213

脈絡膜転移腫瘍の10例—特に放射線療法について

著者: 田淵祥子 ,   小田逸夫 ,   大川智彦

ページ範囲:P.891 - P.892

解説
 脈絡膜転移癌患者は生命予後が悪いためか,これに対し積極的保存療法が行なわれることはまれである。放射線療法,抗癌剤の発達につれて,転移病巣を持つ癌患者に対する延命効果も上がつてきた現在,本症眼球を摘出せず視機能を維持することが,患者に対し精神的にも身体的にも意味あることとなつた。私どもは最近6年間に癌研で経験した本症10例中の7例に,Linac X線療法を行ない好結果を得た。図はその代表4例の治療前および治療後の眼底写真である(左側が照射前,右側が照射後)。

臨床報告

眼瞼結節をきたしたLipoid proteinosisの1例について

著者: 小林佐恵子 ,   大牟田幸子 ,   清水眞一

ページ範囲:P.893 - P.898

緒言
 Lipoid proteinosisあるいはHyalinosis cutiset mucosaeと呼ばれる疾患は,1908年スイスの耳鼻科教授Siebenmann1)により最初に記載され,今日までにその報告例は本邦の10数例を含めて200例に満たない稀有な疾患である。本疾患は劣性遺伝を示し,臨床像として皮膚粘膜に汎発性角化症を生じ,眼瞼縁睫毛部にはビーズ状配列を示す丘疹が認められ,睫毛乱生をきたすものもあり,また口唇,舌,上気道粘膜の硝子性変化と黄白色斑をきたし,生来嗄声を伴う疾患である。
 本症の発生機序に関して脂肪代謝,蛋白代謝異常など諸説があるが,今回著者らは典型的な症状を呈した1症例を経験し,これについて報告するとともに,特に眼瞼縁皮膚病巣の生化学的および病理組織学検索を行ない,いささかの知見を得たのでここに報告する。

こども病院における重症視力障害児の実態

著者: 田淵昭雄 ,   山本節

ページ範囲:P.899 - P.902

緒言
 眼科医にとつて,重症視力障害児は関心が高まりつつあるが,未熟児網膜症による盲児に対しては,近年ほど神経質にならされたことはないのではないかと思われる,,本症は重症視力障害の第一原因疾患1)で,生後4〜5カ月にして盲という事態を生むばかりでなく,いまや訴訟問題がからんでいるという点においても大変な問題を生じている2)
 乳幼児にとつて眼が不自由であることは,他の器管が不自由であること以上に,彼が成育し,社会に溶けこむのに大変なことである。しかし,もし重症視力障害児に対する養育施設や社会的な受け入れ体制が整い十分に活動するなら,眼科医のみならず患児の両親にとつてどれほど安心できるであろうか。それは障害児を取り巻く社会が努力すれば十分可能なことである3)。そして盲すなわち非社会性と考える現在の風潮を,まず私たち眼科医みずからの手で改めていくことが最も大切である。

脈絡膜転移腫瘍の10例—特に放射線療法について

著者: 田渕祥子 ,   小田逸夫 ,   大川智彦

ページ範囲:P.903 - P.908

緒言
 私どもは1968年8月から1974年7月までの間に癌研において,通常比較的まれとされている転移性脈絡膜腫瘍を10例経験した。本症患者は一般に生命予後不良であるためか,積極的に保存療法を試みた報告は本邦では非常に少ない1)2)。私どもは眼球および視力保存の目的で10例中7例に放射線療法を試み,好結果を得たので報告する。

学会原著

円運動視標追跡検査Circular Eye Tracking Test (CETT)—中枢疾患における病巣細別診断の可能性について

著者: 梅田悦生 ,   坂田英治

ページ範囲:P.909 - P.914

緒言
 視運動性眼振(OKN)検査において,水平性OKN検査のみならず,垂直性OKN検査が行なわれているように1),運動視標追跡検査(ETT)においても,眼運動の水平成分のみならず垂直成分の分析は必要である。しかしながら,ETTに関しては,そのほとんどの臨床応用例が主として眼運動の水平成分についてのみ行なわれていて,垂直成分の分析を企図したETTの試みは少ない。その理由のひとつとして,従来の垂直性ETT装置を用いた記録では,視標追跡にさいし上眼瞼の動きに伴うartifactの混入が生じ,記録の客観性を失わせることがまれでなかつたことがあげられる(第1図)。したがつて,この問題点を解決するために,従来の純水平,純垂直,あるいはメトロノーム型に運動していた視標にかえて,視標が円運動をする円運動視標追跡検査(CircularEye Tracking Test,以下CETTと略す)装置を独自の立場で開発した。

手術

私の現在行なつている斜視手術法—輪部切開法と顕微鏡下手術を中心に

著者: 馬嶋孝

ページ範囲:P.915 - P.920

緒言
 いかなる手術でも,はじめて行なう場合はもちろん,手慣れた術式でも,術前に手術書をひもとくことは,眼科医として当然行なわれねばならぬことである。手術書は概して一般的な術式の記述が多く,学ぶ所も多いが,また細かい点に関しては舌足らずと思われる記述も多い。たとえば,斜視手術で,筋肉を付着部で切腱するという記述でも,強膜に接して切るのか,少し付着部を残して切るのか,剪刀を筋肉の下に入れて一挙に切るのか,少しずつ切つた方がよいのか,というような疑問が生じてくる。したがつて,術者は各人の経験により最もよい方法を見出し,それを自分の方法として体得していく場合が多い。このような観点から,現在私の行なつている斜視手術法につき少しくわしく述べる。
 斜視手術は眼科領域でしばしば行なわれる手術の一つであり,眼科医であれば誰でも手がけるものである。また,研修期間に,内眼手術に先立つて執刀者となるのもこの手術である。そして,その術式においても歴史的にそれほど大きな変化はなく,今日まできわめて一般的な手術として盛んに行なわれてきた。その手術手技には,内眼手術にみられるような緊張感と微妙さはないかもしれないが,最終的に満足をうることができないという点できわめてむずかしい手術の一つであると考えられている。

眼・光学学会

制限された視野による文章判読

著者: 斎田真也 ,   池田光男

ページ範囲:P.923 - P.925

緒言
 おれわれ人間の眼の網膜上の特性は写真フィルムのように一様ではなく,視力は中心窩が最も優れている1)。したがつて細かいものを識別しようとするときは,眼球を移動させ中心窩で捕えていると考えて良い。しかし中心窩はかなり狭い範囲であるので,細かいものを識別しているときでも中心窩の回り,かなりの網膜部分を使用しているものと思われる。
 今回われわれは,文章を読むという比較的視力を要する場合,中心窩の回りどの位まで活用しているかを調べた。具体的な方法としては,中心窩を中心にある範囲だけ文字を見ることができるように人工的に視野を制限した。この制限された視野でもつて文章を読んだ場合いかなることになるか,視野の大きさと文章を読むスピード,そのときの眼球運動の状況に関して計測を行なつた。

光束の平行移動によるパタン認識—その2回折の影響および総括

著者: 武田啓治

ページ範囲:P.927 - P.929

緒言
 網膜視細胞の方向感受性をStiles-Crawford効果を用い表現できることは広く知られており,Enochは弱視眼の視細胞の方向感受性を測定し,弱視の原因に視細胞層の配列異常が推測されうる症例を得,これにreceptor amblyopiaという名称を提唱している。視細胞層の配列異常のため視障害をきたす眼疾患は,その他に中心性網膜炎等々があるが,私どもはreceptor amblyopiaを臨床的に描出することを目的として基礎実験を行なつてみた。実験は測光法とは異なり,パタンを用い,眼前に円孔板をおき,これを移動することにより入射高を換え,網膜への入射角を変化させ,視細胞の方向感受性を視力として表わせないかどうかを試みた。この実験の結果,および眼収差による影響は第1報1)で発表しているが,今回は回折による影響,また同様の実験をカメラを用いて行なつた結果を追加発表し,合わせて考察を行なつてみた。

眼のフーコーテストの試み(その2)

著者: 八百枝浩 ,   岩田和雄

ページ範囲:P.931 - P.933

緒言
 フーコーテスト(Foucault Test)を眼球光学系に応用する試みを私どもは1973年に発表した(第9回日本眼・光学学会,本誌28巻10号)。当時の装置は初歩的なものであつたが,その後種々改良を加えて新たに実験を試みた。新装置の特徴を中心に簡単に報告する。

第79回日本眼科学会印象記

第1会場第1席〜第10席

著者: 大鳥利文

ページ範囲:P.939 - P.970

 第1日目,第1会場における一般講演け,早野三郎岐阜大教授が座長となり定刻に開始された。第一会場は特別講演や宿題報告にも使用された立派な会場で,音響効果もよく,非常に聴きやすい会場であつた。
 第1席は1岐阜大向井正直氏が,サルおよびヒトの涙液の蛋白,とくにLysozymeについて,disc電気泳動法により研究した結果につき報告した。この種の報告はアメリカではかなりの数みられるが,本邦では少ない。向井氏は,prealbumin分画とLysozyme分画の間に量的な相関関係があることを報告し,また従来よりいわれているLysozyme量と涙液分泌量の関係やSjögren症候群患者におけるLysozyme量の減少などを再確認する結果を報告した。これに対し,中央鉄道病院岡村氏より簡単な追加があつた。

GROUP DISCUSSION

網膜剥離

著者: 岸本正雄

ページ範囲:P.973 - P.979

1.ライソゾームと網膜剥離(1)網膜および下液の酵素活性
 網膜剥離患者の網膜下液にlysosome酵素であるacid phosphatase, β—glucuronidase, cathepsin活性が検出された。それらはiftL清より数倍高く,また剥離の持続期間に対応して活性は高くなつていく傾向のようだつた。だが,lysosome酵素でないLDHは下液と血液ではほぼ同じ活性だつた。
 家兎の長短毛様動脈結紮により実験的網膜剥離が観察されたが,そのさいに網脈絡膜のacidむ phosphatase,β—glucuronidase, cathepsin活性の上昇が認められた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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