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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科29巻9号

1975年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・214

結膜の反応性リンパ組織増殖症の1例

著者: 早坂征次

ページ範囲:P.1007 - P.1008

〔解説〕
症例:井○敦○43歳女
初診:1973年11月7日

臨床報告

向精神薬服用患者でみられた水晶体の変化について

著者: 瀬戸川朝一 ,   玉井嗣彦 ,   松浦啓之 ,   小椋力

ページ範囲:P.1009 - P.1013

緒言
 向精神薬を服用している患者の水晶体変化の性状,投与量,服用期間等の関係についてはすでにいくつかの報告がみられ1〜8),われわれも前報9)にて検討したが,今回はその後に当科外来で観察した2例を加えた9症例について検討し,そのうちで完全混濁例に嚢内摘出術を施行し,特に上皮細胞の電顕的観察を行なつたので報告する。

顆粒状角膜変性症の一家系

著者: 原敏

ページ範囲:P.1015 - P.1018

緒言
 顆粒状角膜変性症はGroenowによつて初めて報告されて以来,内外を通じ多くの報告があり,決して珍しい疾患ではない。しかしその進行過程を観察した研究はきわめてまれである。今回私は一家系内に初発症状,進行過程および吸収過程を示すと思われるいろいろの型の角膜混濁を示す患者を観察する機会を得たので報告する。

軟性白内障に対する二方向吸引術

著者: 澤充

ページ範囲:P.1019 - P.1023

緒言
 先天性白内障を主とした軟性白内障に対する吸引術は古くから行なわれており,Ⅱ〜Ⅲ世紀にすでに存在したとされている。19世紀に至り,Laugier4)10)らにより再び行なわれるところとなり3),1960年Scheie13)の発表以来多くの人々の注目を集め,さらに技術的に進歩がもたらされた。Scheie,Patonら1)8)11)12)14)は吸引のみを行なつたが,Ferguson5),Fuchs7),Fink6)らはDouble-barreled cannulaを使い吸引と灌流を同時に行なうことにより,前房を常に維持し,手術操作をより容易にする方法で吸引術を行なつた。Girard9),Barraquer2)はこうした方法をさらにすすめ,未熟白内障等においても,まず水晶体切割術を行なつた上でしばらく間をおいて吸引するという従来の方法と異なり,両手術操作を同時に行なえるように灌流針を改良し,灌流,吸引両系統のいずれかを術者と助手とで操作することで手術をおこなつてきた。わが国においても桑原がScheieの方法から発展して吸引を行ない15)〜17),また他に竹内18),増田19)らの報告がある。

アイベルD点眼液の使用経験

著者: 村田恵美子 ,   加藤桂一郎

ページ範囲:P.1025 - P.1028

緒言
 リゾチームは1922年Flemingにより発見された酵素で,体液や分泌液中に含まれており,その多彩な薬理作用は各科領域で注目を集めている。アイベルDはよ塩化リゾチームを0.5%含有する点眼液で,今回私どもは,本剤を前眼部疾患に使用し,若干の知見を得たので報告する。

Alcon冷凍手術装置Cryoceps 2 System 3300の白内障手術に対する使用経験

著者: 丸尾敏夫 ,   竹内忍

ページ範囲:P.1029 - P.1031

緒言
 白内障手術は近年著しい進歩を遂げ,より安全に行なうことができるようになつてきた。その理由の一つには冷凍手術器械の開発をあげねばならない。わが国では,著者の一人丸尾が大場とともに冷凍手術器械を試作し,それを用いてはじめて白内障手術を行なつて以来1),種々の報告がなされ2),現在白内障手術は冷凍摘出法が主流を占めていると思われ,とくにAmoils冷凍手術装置3)が好んで用いられているようである4)。私どもも白内障手術にはAmoils冷凍手術装置を用いているが,この度Alcon社より発売された冷凍手術装置Cryoceps 2 System 3300を使用する機会を得たので,その使用経験について述べてみたいと思う。

Attachmentを使用した手持眼底カメラによる簡単な倒像眼底撮影法

著者: 木村肇二郎 ,   大沢満雄 ,   田中靖彦 ,   松橋正和

ページ範囲:P.1033 - P.1037

緒言
 近年著しい発展をとげた螢光眼底撮影を含めた眼底撮影技術の中にあつて,周辺部網膜撮影法はいまだに完成されておらず,このことが周辺部網膜疾患の診断,治療,病態解明をおくらせている原因の一つとなつている。現在国産のカメラの中には,周辺部撮影を考慮にいれて設計されたものは一つもなく,わずかにZeiss眼底カメラが一定の条件の中で可能であるにすぎない。一方倒像眼底検査法は直像眼底検査法に比較して周辺部網膜の観察にはきわめて有利であり,双眼倒像検眼鏡,ボンノスコープなどの出現,普及により従来の倒像検査法では発見できにくかつた所見も見出せるようになり,今や日常の臨床で生体顕微鏡とともに欠くことのできないものとなつている。最近になり倒像眼底撮影法が永田1),河崎2),飯島3)らによつて報告された。著者らもこの原理を応用することが周辺部網膜撮影には絶対的に有利であると考え,永田らの方法を追試してみたが,技術の未熟さも加わつて予想外に撮影が困難であることがわかつた。そこで種々検討の結果,カメラとレンズの光軸を一定に保持するための簡単なat—tachmentを試作して使用してみたところ好結果をえ,市販のカメラになんら改良を加えることなく,従来永田らの方法では不可能であつた螢光眼底撮影も可能であり,十分実用に供することがわかつたのでここに報告する。

網膜嚢胞を伴つた網膜剥離の一例

著者: 小沢勝子 ,   高井みちえ

ページ範囲:P.1038 - P.1042

緒言
 網膜剥離を伴う網膜嚢胞については,外国では比較的多数の報告があるが,わが国の報告例はきわめて少ない。網膜剥離に嚢胞を伴つているものは,百々ら1)は850眼中2眼(0.2%),白井ら2)は約400眼中2眼(0,5%)と報告している。網膜嚢胞はsenile retinoschisisの結果として生ずると考えるものがあるが,網膜剥離と網膜嚢胞を同時に認める場合,綱膜嚢胞またはretinoschi—sisと網膜剥離との因果関係,すなわちretino—schisisが以前から存在していて,retinoschisisの内外層両方に裂孔を生じて網膜剥離となつたのか,進行の遅い剥離網膜に網膜嚢胞を生じたのかが問題となり,その診断は非常に困難な場合がある。しかし両者は病因のみならず,治療,予後の上からも鑑別する必要があると考える。著者らは最近,片眼の耳側下方に巨大な網膜嚢胞を持つ網膜剥離症例で,scleral indentationにより嚢胞の末梢に裂孔を認め,裂孔閉鎖術により治癒させた症例を経験したので報告する。

手術

涙小管鼻涙管再成術—第1報涙小管鼻涙管再成術の術式説明について(涙道形成に関する研究—その14)

著者: 三宅正夫

ページ範囲:P.1045 - P.1049

緒言
 涙小管ならびに鼻涙管の閉塞が共存する時その根治手術の術式として,従来の文献では涙小管涙嚢鼻腔粘膜吻合術,涙湖涙嚢鼻腔粘膜吻合術,涙湖鼻腔吻合術,下円蓋部結膜嚢上顎洞吻合術などがみられる。
 著者は涙小管の閉塞に対して涙小管再成術1)〜3)(Reconstructive canaliculoplasty以下RCPと略す)を,鼻涙管の閉塞に対して鼻涙管再成術4)〜8)(Reconstructive Nasolacrimaloplasty以下RNPと略す)をすでに何回かにわたり報告してきた。それ故,RCPとRNPの術式を組み合わせれば,涙小管ならびに鼻涙管が共に閉塞している症例に対する根治手術の一術式になるのではないかと考えた。

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第29回日本臨床眼科学会・日程/プログラム

ページ範囲:P.1052 - P.1057

その他の行事・日程◎10月16日(本)(東京ステーションホテル)国際眼科学会組織委員会14:00〜19:00

談話室

赤緑色覚異常と絵画について

著者: 小林守

ページ範囲:P.1060 - P.1061

 石原式色盲表で世界的に有名な石原忍先生の著者で「日本人の眼」(畝傍書房,昭和17年発行)がある。内容は眼の構造,眼病,日本人の眼の特色(優秀性)などを一般人にも理解しやすいように挿図を多くして平易に記述されてあるが,石原先生の独創的なアイデァと思われる文章が随所に散見されて,小冊子(文庫版,242頁)ながら大層興味深いものである。
 その中でも,"色神と色盲"の項には,石原先生ご自身が見聞なされた興味深い実話が豊富である。その一部を以下に転載してみる。

眼・光学学会

乱視眼鏡レンズの軸の狂いと矯正効果の変化

著者: 大島祐之

ページ範囲:P.1063 - P.1065

緒言
 乱視矯正のさい円柱レンズ軸を乱視軸に一致させることはもとより大切である。さればといつて完全無欠な一致は通例望めない。眼の乱視軸測定の正確さもさることながら,眼鏡調整の実際,さらには眼鏡を実際に装用する状態に照らして,多少の誤差発生を免がれ得ないからである。また眼鏡装用時の異様な歪曲感を減ぜしめるため斜乱視の場合,円柱レンズ軸を乱視軸から多少ずらす方法をとる場合がなくもない。ところで眼前に装用する円柱レンズ軸が眼の乱視軸と斜交する場合,新たな乱視が出現し,その軸は円柱レンズ軸とも眼の元の乱視軸とも異なる方向をとることは古くから知られ,その現象は円柱検影法に応用されていて,数量的関係はEuler定理1)から求められるので,矯正円柱レンズの軸の方向の狂いによつて生ずる影響の検討に利用してみた。

有限距離におけるZero-verging Powerを有するlensの実験—第1報Overall type Iseikonic Lenses

著者: 保坂明郎 ,   加藤桂一郎 ,   岡島弘和 ,   松居和男

ページ範囲:P.1067 - P.1070

緒言
 今回著者らはzero-verging powerの理論にもとついてoverall iseikonic Hensesを製作した。さらに正常者を対象として2〜3の基礎的実験を行なつたので報告する。

Retinophotにおける多層膜干渉filterの使用経験

著者: 林勝満

ページ範囲:P.1071 - P.1073

緒言
 Retinophotに多層膜干渉filterを用いてXenon Lampの効率を改善した結果,若干の知見を得たので使用経験と併せて報告する。

GROUP DISCUSSION

眼の公害・医原性疾患

著者: 今泉亀撤

ページ範囲:P.1075 - P.1085

ラットの紅涙分泌現象について
 有機燐剤による眼障害の発症機序については,有機燐剤の抗コリンエステラーゼ作用により蓄積されるアセチルコリン(以下Ach)の役割が重視されている。この点を確認する意味で,演者はラットにAchを皮下注射して,その眼および付属器官にいかなる変化が惹起されるかについて検討した。Achの少量を1回皮下注射した場合,肉眼的には口のそしやく様運動,紅涙分泌,虹彩血管の拡張がみられ,これらの現象はアトロピンの前処置(腹腔内注射)により完全に抑制された。ネムブタールの前処置では口のそしやく様運動は阻止されたが,紅涙分泌は抑制されず,かなりの量の唾液が口外に排出された。このことから,口のそしやく様運動や紅涙分泌は副交感神経系を介して誘起されたものであり,さらに前者は分泌を促進された唾液の嚥下に関する運動と考えられた。
 Achをくりかえし投与(20〜60回)した例では,虹彩後面上皮細胞の萎小扁平化,毛様体突起の毛細血管の拡張充盈,細胞配列の異常が認められ,これらの所見から眼内圧の変化が示唆された。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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