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Ⅴ私の經驗
ブロム水素酸アレコリン特異體質
著者: 福島義一
所属機関:
ページ範囲:P.40 - P.40
文献購入ページに移動 「アレコリン」は檳榔の種子中に含有せられるアルカロイドであつて,最近は「ピロカルピン」,「フイゾスチグミン」などの代用點眼料として縮瞳並に眼壓下降の目的に使用せられてゐる。最近「アレコリン」液を點眼すると,急激な中毒性眼瞼炎を發生する1患者を診る機會を得たので概報してみよう。
患者は39歳男(船員)で,昭和23年5月5日初診。眼科的には,兩眼の網膜剥離並に續發性緑内障と診斷せられる所見が認められるので,減壓の目的を以てエリオツト氏鞏膜管錐術を施行し,1%「アレコリン」液(以下「ア」液と呼ぶ)を點眼しつゞけた。數日後,輕度な頭痛と外皆部附近の皮膚に輕度なエロヂオンを認めたが,同樣に「ア」液を1日3囘點眼しつゞけた。5月21日囘診してみると,患者は兩眼瞼を中心として顔面全體が強く發赤腫脹して,假面樣の顔貌を呈し,眼瞼部には相當廣範圍にわたつてエロヂオンが發生してゐる。また,著明な頭痛並に全身倦怠感を訴へるが嘔吐は缺く。眼壓は,正常より稍低くなつてゐる。そこで,はじめて「ア」に對する特異體質に氣付いて「ア」液の點眼を中止した。症状は,その翌日から次第に輕快し,5月31日には殆んど正常に復した。6月3日,5%「ア」液を作つて之れを上膊部に塗布し,更らに,硝子棒を以てその上から充分にすり込み,後にガーゼをあてゞ繃帯した。
患者は39歳男(船員)で,昭和23年5月5日初診。眼科的には,兩眼の網膜剥離並に續發性緑内障と診斷せられる所見が認められるので,減壓の目的を以てエリオツト氏鞏膜管錐術を施行し,1%「アレコリン」液(以下「ア」液と呼ぶ)を點眼しつゞけた。數日後,輕度な頭痛と外皆部附近の皮膚に輕度なエロヂオンを認めたが,同樣に「ア」液を1日3囘點眼しつゞけた。5月21日囘診してみると,患者は兩眼瞼を中心として顔面全體が強く發赤腫脹して,假面樣の顔貌を呈し,眼瞼部には相當廣範圍にわたつてエロヂオンが發生してゐる。また,著明な頭痛並に全身倦怠感を訴へるが嘔吐は缺く。眼壓は,正常より稍低くなつてゐる。そこで,はじめて「ア」に對する特異體質に氣付いて「ア」液の點眼を中止した。症状は,その翌日から次第に輕快し,5月31日には殆んど正常に復した。6月3日,5%「ア」液を作つて之れを上膊部に塗布し,更らに,硝子棒を以てその上から充分にすり込み,後にガーゼをあてゞ繃帯した。
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