icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科3巻10号

1949年10月発行

雑誌目次

綜説

プロワツェク氏小體とトラコーマ

著者: 靑木平八

ページ範囲:P.426 - P.435

はしがき
 1907年Hallerstädter, v.Prowazek兩氏によつていわゆるProwazek氏小體(以下P氏小體と略す)が發見されて以來,既に半世紀になろうとしている。其の間P氏小體の本態特にトラコーマ(以下トと略す)病原體としての意義について内外の諸家により幾多の研究が發表されているにも拘らず,未だに何人をも納得せしむるに足る全面的解決に達していない。
 私はP氏小體とトとの關係について綜説を試みると同時に,2・3の點について少しく卑見を述べたいと思う。

醫局だより

熊本醫科大學眼科教室

ページ範囲:P.435 - P.435

 金峰山の美しい夕映えがこれも又見事なプロフェツサーの前額部に照り映える醫局の一室,さつき迄みつちりと脂を搾られた研究の後の團樂が今日も賑かに繰返へされ,熱い番茶に英氣を養つています。
 本誌創刊號に通信してから早くも2年有餘,ひたすら教室の再建に一歩々々と眞劍な努力を續けて今日漸くその勞が酬いられすべての機能が順調に動いています。この間新しい胎動への教室は誠に想ひ出深い多くの變遷を經ていますので,顧みて今昔の感に耐えません。

臨床實驗

角膜鐵粉異物の發生機轉に關する實驗的研究(第1報)

著者: 武藤法夫

ページ範囲:P.436 - P.437

 私共(三井,武藤)わさきに角膜鐵粉異物の發生機轉に關する臨牀的研究に就て發表した(臨牀眼科第3卷第3號)。そして鐵粉が好んで角膜異物となる理由を次の如く結論した。
(1)すべての小さな異物わ,結膜嚢に入ると涙で洗い流されない限り,結膜嚢を轉々として上瞼結膜の異物溝に定住する樣になる。

眼瞼交互開閉能

著者: 小島克

ページ範囲:P.438 - P.439

(I)
 眼瞼交互開閉能は,caperklem (1912)が記載したのに始まる。莊司秋太郞氏(昭5)も報告された。大體5程度に分けられている。瞼の横絞筋と滑平筋とに混合分布している交感神経繊維の状態それは更らに顔両,動眼三叉神經にもあるからその混合程度にも關係をもつて,兩眼に於ける開閉拮抗作用に變調を來すものとされている。大體どの樣な型があるのか調べてみたので茲に記載したい。
 15歳〜25歳迄の572名。26歳〜45歳迄の120名。計692名を用いた。凡て男子である。初め右眼瞼を閉鎖せしめる。次で左限瞼を閉鎖せしめる。次に兩眼瞼を閉じ右眼瞼を開銷かしめる。次に兩眼瞼を閉じ左限瞼を開鎖せしめる。その運動の強弱缺如を+±—と誌るす。【++++】は,上段は閉鎖,下段は開瞼の運動を示し,右眼は,左側,左眼は右側に示されている。

B.C.G.接種を受けた事のある人のフリクテン—第1報 ツ反應態度

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.440 - P.442

緒論
 フリクテン(以下フとす)はアレルギー(以下アとす)性疾患とされ,然も其の大部分は結核に基調を置くア性疾患とされて居る。B.C.G.は弱毒化された牛型結核生菌であるから,それに因つてもフが發生し得る可能性がある。予はB.C.G.接種を受けた事のある人でフを發生したときのツ反應態度を調査し,それがB.C.G.接種後フ發生迄の期間と一連の關係があり,其の期間に因りツ反感態度が異りそれに因りB.C.G,のフか自然感染結核のフかの大體の傾向線を示すので茲に報告する。

種々な眼症状を伴つた眼外傷の1例

著者: 笹野敏治

ページ範囲:P.443 - P.444

緒論
 鈍體打撲による眠外傷としては前房出血,結膜出血,散瞳,網膜出血,眼瞼皮下溢血,網膜震盪,角膜損傷,硝子體出血,網膜剥離等を始めとして近視,角膜溷濁,外傷性緑内障,黄斑部孔形成,脈絡膜破裂,視神經萎縮,一過性白内障,外傷性白内障,外眼筋麻痺等種々なものがあるが,著者は網膜脹絡膜出血,外傷性脈絡膜破裂,近視,外眠筋麻痺等を伴つた興味ある鈍體打撲の一例に遭遇したので茲に追加報告する。

利眼の研究—第1報所謂利眼に就ての實驗的批判

著者: 長又博之

ページ範囲:P.444 - P.447

緒言
 利眼とは一般に採用されている定義によれば,我々が前方の一點を注視した際に,兩眼は平等にこれに働きかけているのでわなくて,一眼はこれに向い(注視し--利眼),他眼はこれから外れている(茫然と見ている)というのであるが,この定義は明らかに,雨眼視は兩眼が平等に外界,に働きかけ,兩眼網膜に於ける相對應する印象が,一つの主觀的感覺を成立せしむるという概念と完全に對立するものである。
 その事の最も端的な表現として莊司氏は,「兩眼の視力ほゞ同一にして兩眼視するに際し,吾人は無意識的に一眼を以て稍々茫然と觀望する間に他眼を以て著眼諦視するを普通とす。その後者を利眼という」。と述べ,豊島氏は,「一目標を兩眼視する際は,大多數の人は,一眼を以て目標を注視し,他眼は荘然と見ている。即ち他眼の視線は目標に向はずして傾斜している。この主として注視に使はれる眼を利眼と呼ぶと述べている。

精密試視力表と視標の見え方

著者: 小島克

ページ範囲:P.447 - P.449

(1)
 中島教授の精密試視力表を以つて,5米から10米迄1米毎に視力を測り,片假名とラ環の見え方に就いて調べた。本篇では,兩眼視力に就いて觀察した。5米視力3.0の者と,それ以下の視力群とを以つて視距離と視認差の推移を見たので茲に記載したい。
 1群,5米視力3.0の者7例。片假名とラ環の視力差を各視距離に就いて平均視力からみると,5米(3.0—−3.0→0.片假名—ラ環視力→差以下倣え)6米(2.75—2.75→0)7米(2.34-2.37→−0.07)8米(2.06-2.0→0.06)9米(1.56l1.43→0.13)10米(1.28-1.26→0.02)となり,9米で0.13以外は,差が0.1に及ばない。II群。5米視力28-2.4の者8例。同樣にして,兩視標の差は5米(2.51-2.23→0.23)6米(2.11-2.13→−0.02)7米(1.73-1.72→0.01)8米(1.42-1.43→−0.01)9米(1.18-1.16→0.02)10米(0.99→1.11→0.04)で,5米以外は0.1に達しない。乃ち,精密試視力表に於いでも兩視標の視認差は,平均視力からは,各観距難に於いて餘の目立たない。

アレルギー性眼疾患に對するレスタミン「コーワ」の治療成績(第1報)

著者: 植村操 ,   石川明

ページ範囲:P.450 - P.452

 毎年春先にはフリュクテンや鞏膜炎並上鞏膜炎外來患者が多い。現今之等の疾患は結核アレルギー性疾患と考えられ度重なる再發や經過永きによつて患者を惱ます疾患の一群である。私共は常々之等疾患の治療に留意し,其の再發を豫防し或は治療を短縮できないものかと考えて居つたのでちるが,最近米國のBenabrylと化學的同一藥品である邦製レスタミンコーワの提供の機會を得たので本質的に卓効あるかわ疑問であるが偶々結核アレルギー性疾患に使用し好結果を齋すことを知り得たので,未だ症例不充分ではあるが角膜フリュクテン五例,上鞏膜炎並鞏膜炎五例,計十例の實驗例を報告する次第である。

保險のしおり

社會保險取扱いに就ての疑義に對して

ページ範囲:P.452 - P.452

 ◇奮樣式請求書の使用に就いて,
 從來の舊樣式請求書は使用しても差支えなく,此の事は,厚生省とも了解濟みである。
 舊樣式の物は無効であると言う樣な通知わしていないとのことです。しかし,新舊兩樣式を混同して記入しない樣に例えば政府管掌50件中舊が20件,新を30件という如くされると事務取扱上甚だ不便であり迅速を缺きますから此點御留意下さい。

臨床講義

球後視神經炎

著者: 弓削經一

ページ範囲:P.453 - P.456

 第1例 46歳,女,3月7日初診,
 主訴兩眼視力障碍既往症本年2月15目,39度程の發熱惡心,食思缺損があつて,數日此状態が續き,22日頃からは,兩眼に高度の視力障碍が起つた。左眼では殊に甚だしく眼前で手動を辨ずる程度であつたが其後更に進んで,現在では何も見えない。右眼視力障碍は左程でも無く,現在迄に,少しく良くなつで來た。

私の研究

眼の屈折度と視力の光學的研究

著者: 山森昭

ページ範囲:P.456 - P.461

 網膜に達する光を論ずるに當つて,眼球内の光學的境界面での反射や透光體の散亂吸收を度外視する。網膜上の一點Pに達すべき屈折率nなる色光が,xyを直交座標とする瞳孔面C上の點(x,y)を入射角iをなして通過する張さをF (n|x,y)とすれば,其色光がPを照らす強さH (n)はH (n)=ΣF (n-x,y)Δx△y・cosi…………(1)で表される。ここにΣはC全面で集める意味である。以下論ずる眼は完全には矯正されてゐない眼,即ち不矯正眼に就てである。點光源に對する瞳孔縁に於ける廻折による第1光斑圓の直徑は,瞳孔の直經を4mmとして7μ程度であるので,今は廻折を問題にしない事にする。次に光の收差を度外視すれば次の事が言へる。(圖1參照)眼球の透光體及び装用されたレンズを一括した光學系Aに關して,Pの光學的共軛點をP'とする。視標BのAによる像をB'とする。Bを出てP'を通る光がCを通る部分をB''とする。Pに達する光は全てP'を通る。

眼科小史

風眼(4)

著者: 福島義一

ページ範囲:P.461 - P.462

 我國に於て江戸時代中期以降存在するところの特有な疾患であるこの風眼は,何んな發想根據に由來するものであらうか? この課題について考へてみよう。
 過去の日本眼科が中國眼科を摸倣し,隨つて,その病理思想が(13)所謂陰陽五輪八廓の説に在ることは明らかである。ところが,この風眼は既述の通り中國眼科の飜譯ものではなく,先輩醫人の獨創的見解が加はつてゐることは確かである。

外文抄録

American Journal of Ophthalmology No 2, 1949/Achives of Ophthalmology No 2 1949

著者: 季慶義

ページ範囲:P.463 - P.466

(1)熱線放射と外科術による兩側性網膜膠の治療
 (Treatment of bilateral retinobastoma by irradiation and surgeryAlgernon B. Reese, George R. Merriam,Hayes E, Martin.
 外科術と熱線放射の併用法による兩側性綱膜膠腫治療の5ケ年間の成績が報告された。患者の55名が此の方法で治療された。其の内53名は統計學的研究がされ他の名は除外された。全例中の2略(47.2%)は20/200又は其より良い視力を持つて生き永らえた。12名(30.2%)は視力無しに生き永らえた。16名(22.6%)は網膜膠腫の爲に死んだ。5年又は其以上生きたものは全體の19%である.之等の中6名(31.6%)は20/200又は其より良い視力を持つて生き永らえた。6名(31.6%)は再發しないが盲目になつて生き永らえた。7名(36.8%)は此の病氣で死んだ。第2眼に於ける腫瘍早期認識と治療の重要性が議論された。放射線と之に隨伴する合併症に續く腫瘍の臨床的進路が記述された。治療の技術と最後やり通す方法が掲示された。

--------------------

手術メモ(IV)

著者: 中村康

ページ範囲:P.467 - P.468

 兎眼症は色々の場合に見られる。瞼裂の充分閉鎖されないで角膜が露出し兎眼性角膜炎を招來し角膜潰瘍を造り角膜を破り失明に到らせる危險がある時其の防止に輕度のものは無刺戟性ワセリンを瞼裂に塗布し角膜結膜の乾燥を防ぎ高度のものは瞼裂縮少或閉鎖手術を行ふ。
 後療法:創縁は4-5日にて癒着する故其後拔糸し蒸氣罨法域赤列線照射を行い癒着創の充血を去る。若再開の必要ある時は癒着創部のみを剪刀にて切斷する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?