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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科3巻12号

1949年12月発行

雑誌目次

綜説

最近の近視諸説の批判

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.514 - P.524

 近視の原因論は昔から沢山あり.現在もなお種々論議されている.近視研究の專門家でも簡單にいづれが正しいのか否か判定し難い.判定し難い理由は屈折は角膜,水晶体,眼軸等の3要因の結合した結果であるのに,角膜のみが正確に測定し得て,他の二者は單純には測定し難い所より由來する.
 從來及び現在の近視説の殆ど大部分は屈折決定の3要因を正確に測定したものでない故,如何なる風にでも説明出來る.例えば調節で眼軸が延長するとDoborowolsky (1868)が述べると,逆にGrunert (1934)は調節せぬと眼軸が延長すると主張するが如くで,互に確たる根拠が無いから何とでもいえる.同樣に批判する側も確たる根拠が無いから正否が判定し難いのも当然である.

臨床實驗

第2光斑點に依る瞳孔經の一自覚的測定法

著者: 山森昭

ページ範囲:P.525 - P.527

 暗室に於て,角膜前面に近く,半面の半鍍銀鏡を当て,遠方の光源を望む時,光源の外にもう1つの明るさの弱い光点が見える.此光点を注視し乍ら,半鍍銀鏡の面を傾けると其につれて此光点は移動するがだんだん薄くなり,光源の方向と球角度をなすに至ると消滅する.又半鍍銀鏡を角膜より遠ざけると,此光点はだんだん薄くなり遂に消滅する.此光点を第2光斑点と名づける.
 図1に依つて判る如く,光源からの平行光線KT,KW,KUは半鍍銀鏡ABにより,半ばは反射しTL,WL,UL,の方向に去るが,半ばはABを透過し眼内に入り瞳孔II内を通り.網膜上の点Gに集る.Gで乱反射した光線の一部は元來た経路を辿つて,TWUに達し半ばはABを透過し光源の方へ帰るが,半ばは反射する.ここでTW間で反射した光線は再び瞳孔を通り網膜上の点Fに集る.図1では此部分に蔭影を施した。然しWU間で反射した光線は再びは瞳孔内に入る事は出來ない.

Vitamin Aと光神との關係に就て

著者: 桑原安治 ,   伊藤寛 ,   坂上俊彦 ,   土肥直方

ページ範囲:P.528 - P.531

緒論
 ビタミンAが吾々の生活に極めて必要であることは周知の事実である.然るに一度V.A.が欠乏すると諸種の眼症状傳染性疾患に対する抵抗力の減弱,蛔虫に対する罹感率の増大その地種々の症状が現れてくる.それらの疾患の中で特発性夜盲症が最も顯著であるので,眼科領域ではV.A.欠乏症の研究の中心が特発性夜盲症に置かれ,感覚生理学的に或は病理学的に各方面から多数の研究が行われている.ところが自覚的には夜盲を訴えない程度であつても体内のV.A.量が正常以下に減少するとビタミンA減少症と呼ばれ,この時期には体力が減弱することが判明するに及んで近來大いに注目されるに至り,特に現今の如き食糧事情においては,更に大なる意義の存するととが明かになつてきた.
 ところでV.A.減少症の体内におけるV.A.を測定する方法は大別して次の二つがある.

諸種眼底疾患に於ける網膜黄斑部毛細血管血圧の研究—第1報 中心性脈絡網膜炎に就て

著者: 宮田五郞

ページ範囲:P.532 - P.535

緒論
 眼疾患と血圧との関係に関する研究は從來既に多数の業績が発表されているが,之等は主として上膊動脈の血圧との関係に対する考察であつて,網膜中心動脈血圧と眼疾患との関係に就ての研究は未だ多くはない.即ち,Magitot, Bailliart,Voncea, Baurmann, Lauber等の諸氏が夫々2.3の眼疾患に就て網膜中心動脈血圧を測定したが,我國に於ては北堀,菅沼,長谷部氏等がその成績を発表しているに過ぎない.又皮膚毛細血管の形状と眼疾患との関係に就てはScheerer氏等の研究があり,我國では三條,松山氏等の業績がある.然し眼内特に網膜の血液循環状態を比較的容易に且つ正確に知る事の出來る網膜毛細血管血圧と眼疾患との関係に就ては,その研究は皆無と云つてよい状態である.僅かにScheerer, Hornik-er氏等が網膜毛細血管の血球運動状態を内視現象を應用して形態的に分類観察したに過ぎない.我國では菅沼定明氏が植村教授の内視現象観察裝置を應用して,高血圧患者の少数例に就てその網膜黄斑部毛細血管血圧を測定した報告があるのみである.
 此処に於て私は諸種眼底疾患に際して網膜黄斑部毛細血管血圧を測定することは,網膜の血液循環状態を知る爲に極めて重要且つ興味ある問題であると考えたのである.

B.C.G.接種を受けた事のある人のフリクテン—第Ⅲ報 遠隔予後

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.536 - P.538

緒論
 フリクテン(以下フとす)の大部分は結核に関係があるとされているが,フと其の遠隔予後の関係は未だ明かにされていない.或は予後良好と云われ或は不良のものが多いと云われていて定説はない.予はフ患者に就いて,フ発生後1年以上を経て結核発病と其の轉機を調査したが,其の中B.C.G接種を受けた事のある人に就き一般B.C.G接種後の結核発病と比較して論じて見たい.

角膜周擁毛細血管の構造に就て

著者: 呉基福

ページ範囲:P.538 - P.543

緒言
 角擁膜周毛細血管は球結膜及び角膜の栄養に於ける場合ばかりでなく,眼表在性疾患殊に炎症の場合に於て重要なる役割を演ずるものである.從つて結膜角膜炎症及び此れに対する治療的研究,角膜栄養の研究をなさんとするには角膜周擁毛細血管の解剖学的構造,機能,循環,炎症の場合に於ける血管構造の変化,機能障碍,循環障碍及び滲出,吸收機轉を明らかにする必要がある.
 此の意味に於て私は角膜周擁毛細血管の研究の第1段階として,先づ複雜なる終末蹄係を完成している角膜周擁毛細血管の構造を究明すべく,細隙燈顯微鏡によつて探索を試みたのである.

保險ニユース

社會保險診療報酬算定協議會に於て決定した事項

ページ範囲:P.543 - P.543

 8月30日午後から日本医師会館で開かれた厚生省内に設置されている社会保險診療報酬算定協会に於て討議されて決定した事項中,保險医の周知しなければならぬ事柄は次の通りである.
 左記の事項はその解釈上誤りやすいものであるから再確認したい.

臨床講義

駆梅療法中に起った視神経の變化

著者: 中島実

ページ範囲:P.544 - P.547

 大平洋戰爭が終つてから,我國には花柳病が甚だしく増加し,戰前暫くの間は極めて稀であつた種々の時期の梅毒性眼疾患が見られるようになつた.特に最近目につくのは駆梅療法を受けている間又は一クール位終つた後に現われる梅毒性疾患である.不完全な駆梅療法後暫くして起る烈しい乳頭炎はサルバルサンが発見せられてから屡々観察せられ神経再発症として注意せられていたが,駆梅療法中又は後に起る梅毒性眼疾患はやはり視神経に変化を生するものが大部分で,他の部分の変化は稀にしか起らない.
第一例.26歳女(磯部)

私の経驗

裏を見せた網膜剥離

著者: 萩原朗

ページ範囲:P.548 - P.549

 東大に居た頃,20歳前後の青年の硝子体内に不思議なものを見た.網膜剥離らしいが一般に見られる夫れと異なり鈍い銀白色に輝く膜で,硝子体内を垂直に走り,眼球運動と共に浮動する.特異なことには,その前面に血管を見出し得ない.増殖性網膜炎の結合組織膜かとも見たが,その色,形が大分異ふ.結局確たる診断を下し得ないで終つた.
 其後3ケ月程して岡山へ移つたが,此処で又同樣の患者に遭遇した.患者は17歳の女子.4ケ月前より右眼に飛蚊症を訴え始め,漸次視力が減退して現在に至つた.現在視力は40糎指数である.所が1ケ月前より左眼にも霧視を感ずるやうになつたので,診察を請うた次第であると云う.

醫學ニュース

ヒロポンなどの禁止厚生省の態度決定

ページ範囲:P.549 - P.549

ヒロポン,セドリン.ホスヒタンなどの覺せい剤の製造禁止を考慮していた厚生省では,ヒロポンなどの注射藥はすでに製造販賣許可を與えているが,藥事法の見地から法的にこれを禁止させる根拠がないので,10月26日葛西次官通達をもつて全國都道府縣知事あて覺せい剤の製造販賣禁止を要請した,また同錠剤についても藥事委員会では,今後製造販賣を許可しないことに決定した。
 次にヒロポンなどの濫用するもの多数あるので,大阪府医師では役員会に於て左の決議を決定し各方面の禁止の運動を開始した.

外文抄録

American Journal of Ophthalmology No 1.1949

ページ範囲:P.550 - P.552

落葉性天疱瘡の眼症状
Qcular Manifestation of pemphigus foliaceusFrancisco A Mendola
 老人姓白内障の原因が尚眼科學者の論爭の焦點であるのと丁度同じく,落葉性天疱瘡に於ける白内障の病因も尚目下調査中である.其の理由は其の病因も將た落葉性天疱瘡の病因も亦不明瞭であるからだ.此れは水晶體の榮養を完全に防害する所の天疱瘡に於ける虹彩の疾患に續發する變性的或は炎症的過程ではなかろうか.白内障と落葉性天疱瘡の原因に重大な役割を演ず所の「ビタミン」缺乏症は謂所「fogoselvagem」に苦しむ患者達に訴えられる水晶體の典型的溷濁の形成を説明し得るだらうか.落葉性天疱瘡の原因に關する研究,それは"Servicdo Penfigs Foliateo"で熱心な研究家達に依り行われている故此の病氣に屡々觀察される所の白内障の病原に關してもやがては多分幾らかの光明を齎らすであろう.

手術メモ・Ⅶ

(1)眉毛補充法/(2)睫毛補充法

著者: 中村康

ページ範囲:P.553 - P.554

 眉毛の補充は火傷に依つて起つた前額,眼瞼に亘る巨大な瘢痕に伴うことが多い,眉毛の部分欠損のことがあり全欠損の事がある.瘢痕の処へ毛髪のある皮膚を移植するのである故手術其ものは六ケ敷しくなくても癒着治癒経過が思うように行かぬことが多い.皮弁の剥離,壊死,萎縮が起り又,皮弁は癒着しても脱毛してしまつて毛を植える目的の達せられぬと言うことも起る.
 後療法手術竈の被覆繃帶は以前は創口とガーゼと癒着しないように硼酸ワセリンを塗つた,次で無菌処置の爲め青酸々化汞ワセリンを塗つた.更にスルフアミンの現われるや其粉末を創面に撒布した.最近はペニシリンワセリンが塗布される.又創面の接触部にはペニシリン溶液が滴加されるようになつて化膿もなく又癒着も非常に良好になつた.

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保險のしをり

ページ範囲:P.554 - P.556

耳鼻咽喉科処置
(イ)耳処置(片側) 2点
(チ)鼻処置 2点

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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