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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科3巻7号

1949年07月発行

雑誌目次

Ⅲ私の經驗

アメリカ製眼科藥品使用をしてみて

著者: 金田利平

ページ範囲:P.230 - P.303

 アメリカ製藥品の眼病治驗成績に就ては眼臨42卷10號に報告したが今回追加訂正し少しく私見を述べん。
(本論丈に於ては,ペニシリン軟膏をペ・サルフア・グァイアジンをダ・コッホ・ウイークス氏菌をコ・ウ菌,本菌による結膜炎をコ・ウ結膜炎プロバツェック氏小體をプ小體,トラコーマをト,濾胞性結膜炎を濾結炎,新産兒包括體性膿漏眼を新兒包眼,サルバルサンをサル,中性多核白血球を中,淋巴球を淋,と略記す)

眼球摘出後及び眼球癆で結膜嚢が淺くなつた時の一處置法

著者: 淸水新一

ページ範囲:P.299 - P.230

 眼球癆や眼球萎縮で義眼を挿入しても何等障碍がない時は義眼は多少共動くし,突出の工合もよく殆んど理想的な事がある事は御存知の通りである。だが何かの原因で一方では眼球癆又は眼球萎縮を來し他方では結膜嚢が淺くなつて義眼挿入の困難な事も,又例え挿入しても直ぐ出てしまう事もあるし,義眼を裝用して居たが或年月の後に次第に結膜嚢が淺くなつて義眼を入りにくくなる事やすぐに出てしまう事もある。斯樣な場合口脣粘膜等移植して結膜を嚢形成を行つていた。幸に此で落付いて居る者もあるが一年も經たない内に再び結膜嚢が淺くなつて義眼が入らなくなり終にクサポデー氏法を行つた者もある。然しクサボデー氏法は人手も時間もかかり患者にも相當大きい損傷を與え,切角出來上つて義眼を入れても動きが惡い。まして本手術が不成功に終つた時のみじめさは言語に絶する。茲で私は人手も時間もかからす不成功の心配も少い且義眼が多少でも動く方法をいうので義眼臺を應用する方法を試みたので報告する次第である。

眼科小史 風眼(2)

著者: 福島義一

ページ範囲:P.303 - P.304

 前述した樣に,既に,本庄氏は風眼は日本固有の病名(呼び方)であつて,日本風眼と支那(中國)風眼とは同名異證であると斷定したのは確かに卓見と言わねばならぬ。
 そもそも,江戸時代以前の日本醫學,例えば,眼科の如きも,中國醫學(眼科)を宗祖と仰いだのであつたが,その氣候風土その他の民族的特徴を考慮して,日本の國土,民衆の性情に適合せる様に中國眼科を改廢したものも少くない(皇漢眼科の特徴の一つ)。例えば,病名は中國傳來のものをそのまゝ使用しても,その疾病觀念の内容を全く異にするものがあるが,風眼の如きもその一例と申さねばならぬであらう。以下,しばらく,この課題に就いて考えてみよう。

Ⅰ綜説

第53回日眼總集會の印象記

著者: 宇山安夫

ページ範囲:P.270 - P.273

 今春の日眼總集會は,京都と共に戰火を免れた北の都金澤醫科大學講堂で,5月7・8兩日に跨つて華々しく開かれた。其前日は例の通り,日眼評議員會が午後3時頃から兼六公園内の成巽閣で催され,多數の議事を協議したあと,金澤眼科會及教室主催の招宴に一同歎を盡して散會した。
 學會出席者の顔振れば大分變つて來たが,鹿兒島(熊本),中村(信州),早野(豐橋),藤原(京都)の名譽教授の方々が,いつもの元氣なお姿を見せていたのは嬉しかつた。庄司(東京),伊東(千葉)の兩教授が缺席されたのは淋しかつたが,各地からは,廣瀬(長崎),須田(熊本),田村(福岡),萩原(岡山),井街(兵庫),山本(京都)弓削(京府),中島(名古屋),三國(新潟),林(仙臺),中村(東京),植村(東京),大橋(東京),馬詰(東京),藤山(北海道)其他多數の現役教授が參加された。尚お古い常連では,高木(東京),田上(富山),井街(岡山),赤塚(大阪)の諸氏の顔も見えて居つた。

Ⅱ臨床實驗

眩輝に關する研究—第2編 色の明度對比と視力との關係に於ける眩輝の影響に就て

著者: 馬詰譲

ページ範囲:P.274 - P.276

緒言
 第1編視力と照度との關係に於ける眩輝の影響に於て,背景の照度が高い程,眩輝を招來する時の明度對比は小さくなる事が證明されたが,該實験には視標並に背景共に無彩色々紙を用いたのである。
 色の對比と視力との關係に就て(日眼51卷,第51回總集會講演)の研究論文中の第3編「色の明度對比と視力との關係」に於て視標の明度が地色の明度より大きい場合,明度の差が或程度以上増大すると,眩輝の爲に視力は惡化する事を3つの組合せに見られたのである。夫れ故,他の種々な組合せに於ても,視標の明度をもつと高めてゆくと,本現象を惹起するものと推定される。

網膜色素變性症の研究(其6)—網膜色素變性症患者尿によるメラノフォーレン反應に就て

著者: 緖方昇

ページ範囲:P.276 - P.277

緒言
 腦下垂體後葉ホルモンを蛙の皮下淋巴腔内に注入すれば,數十分で其の皮膚は黒變する。此の現象をメラノフォーレン反應(以下メ反應と記す)と稱す。然し又此の現象は腦下垂體後葉ホルモン獨特でなく,他の物質例えばヒヨリン,ヒニン,アセチールヒヨリン等でも類似反應が起ると云う。然し武永氏は之等の類似反應と眞のメ反應とを比較鑑別して其の差異を列擧し眞のメ反應は腦下垂體後葉ホルモン特有であると述べた。尿又は血清によつてメ反應を試みた疾患では,疫痢,赤痢,癲癇,食餌中毒,黄疸,前立腺肥大等は陽性を現わすと云う。網膜色素變性症は屡々内分泌異常を思めせる合併症状を呈することがあり,本症患者の血清又は尿に就てメ反應を試る事は興味深いと思う。1938年Cunningham氏は本症患者7例に就てメ反應を試み屡々陽性を現わす事を報じた。
 私はさきに網膜色素變性症患者の血清が蟇の血管及心臟に及ぼす作用を調査したが,更に同一患者に就て其の尿を以てメ反應を檢し興味ある結果を得たので報告する。

B.C.Gに因るアラジー前期のフリクテン

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.277 - P.279

緒言
 B.C.G接種に關係ある眼疾患に關しては桑原安治氏水川孝氏の報告があるのみであるが,桑原氏例の鞏角膜炎は恐らくB.C.Gに基くものとの見解を探られ,水川氏は何れもB.C.Gが原因でなく自然感染との見解を採られて居る。
 予はフリクテン(以下「フ」とす)發生後ツベルクリン反應(以下「ツ」とす)を追試し其の反應態度を觀察してそれがB.C.G接種に基く陽轉である事を確めたのでB.C.Gに因るアラジー(以下「ア」とす)前期の「フ」として結核「ア」前期の「フ」に追加すると共にB.C.Gが誘因としてでなくB.C.G其のものの「ア」に因つても「フ」が發生する事があり得る事を報告する。

結核屍眼に於て黄斑部脈絡膜粟粒結核と網膜前滲出液を認めに症例—特に黄斑部粟粒結核と漿液性中心性網膜脈絡膜炎との關係に就て

著者: 生井浩

ページ範囲:P.280 - P.283

 私はさきに漿液性中心性網膜脈絡膜炎(增田)の比較的初期の1例を剖檢して,其の中心窩に貯留した漿液性の網膜前滲出液を認め,更に結核屍眼の中心窩及び其の附近に同樣の滲出液があつた例の組織學的所見を報告した。
 この2症例に於て得られた所見は次の通りである。

再びB.C.G接種に關係ある角膜縁フリクテンに就て

著者: 水川孝

ページ範囲:P.284 - P.285

 B.C.G接種後發病したフリクテンについては綜眼39卷4號に3例を發表した事があるが最近同樣な四例を經驗した。さきに私等はフリクテン患者にB.C.Gを接種その反應を檢索し第3回大阪眼科集談會(大阪醫學雜誌に掲載)に發表したがこれ等成績を綜合「フ」發生の本態について若干の考察を試みたい。

アディー氏症候群(Adie's Syndrome)の1例

著者: 市原正文

ページ範囲:P.285 - P.287

緒言
 アディー氏症候群(Adie's Syndrome)は主として片側性に瞳孔散大兼瞳孔緊張症と片側又は兩側のアヒレス腱及び時に膝蓋腱反射の消失を伴い原因は完全に黴毒を除外し得る疾患で,1931年アディー氏が腱反射消失を伴う僞性アーガイルロバートソン瞳孔,脊髓癆に似たる良性異常として發表し,次の年に緊張瞳孔及び腱反射消失,良性獨立性異常,其の完全型及び不全型と發表。
 此れを一つの獨立せる疾患なりと提唱せるを嚆矢とす。

高張糖液頸動脈注射時の眼壓及び腸運動に就いての實驗的研究

著者: 荻野周三

ページ範囲:P.287 - P.289

緒言
 高張糖液血行内移入に依り限壓の低下する事はHertel以來多數の學者の認める所である。然しその機轉に關しては滲透壓説,血管運動神經説,滲透壓及び粘調度の變化に依る房水産出増減説,毛細血管障碍説等種々ありて一定せず。私は高張糖液頸動脈注射時の眼壓並びに腸運動の變化をいささか觀察したので此處に報告する。

打撲に因る外傷性虹彩毛樣體炎の1例

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.289 - P.291

 前眼部に開放性損傷がなく單なる打撲に因つて起つた虹彩毛樣體炎の報告例は比較的少ないので最近私が經驗した1症例に就いて追加報告する。

眼科領域に於るニトロフラツオーン軟膏試用成績

著者: 初田博司

ページ範囲:P.291 - P.292

緒言
 最近に到り新しい制菌物質として,フラン化合物の置換物質たる合成品5 Nitro furaldehyde-Semlcarvazone C6H6O4N4の發表があり,吾國に於ても山之内製藥よりニトロフラツオーン軟膏として生産せられることゝなり,之が市場に大量に出現するのも近いと聞いている。本品は20〜30萬分の1の濃度で抑制的に働き,50〜75萬分の1で殺菌的に働くとされて居り,生體内に於てグラム陰性並に陽性の細菌に對して有効であるとされている。但し緑濃菌に對しては全く發育抑制の作用なく,又肺炎双球菌に對しては殆ど殺菌作用がないとされて居る。
 當教室に於ては去る昭和23年7月より,昭和24年2月現在に到る約八ケ月間に亘り,0.2%ニトロフラツオーン軟膏を眼科領域各疾患に試用する機會を得,いさゝか見るべき成績をあげ得たので茲に報告する次第である。

サルフア劑内服によるトラコーマの集團治療成績

著者: 今井英世 ,   村岡一枝 ,   大歳富美子

ページ範囲:P.293 - P.295

緒言
 近時化學療法は非常に發達し,サルファ劑或はペニシリン,ストレプトマイシンと次々に偉効ある新劑が發見せられ,その効果はスピロヘータ原虫等の疾患のみでなく細菌性疾患史にヴイールスその他に依る疾患にまで及んで來ている。
 手術分野に屬している眼科領域に於ても現在迄にサルファ劑の使用は所々で用いられ,その効を漸次認められつゝあるが,その見解は一定せず,一般には効果期待し得ず,と云ふ説が多いらしい。

眼瞼皮角の1例

著者: 栗崎正孝

ページ範囲:P.296 - P.298

 皮角とは獸角状をなす皮膚の限局性の過角化症である。
1)分類皮角には種々の分類があるが,Veressに依れば,次の如くである。

Ⅳ外文抄録

EXCERPTA MEDICA

著者: 關亮

ページ範囲:P.305 - P.308

牛眼の1例
 Epstein E.The British Jonrnat of Ophthalmology 1946,30:476.
 急性緑内障の出現遲き爲,普通の症候像が見られぬ牛眼の存在が發見されなかつた巨大角膜の一例と見なさるべき臨床例が述べられた。此の巨大角膜は牛眼がなくとも存在し得る事が幾人かの學者に支持され,又反對もされて來た。現在では兩者の鑑別診斷は困難であるとしている樣だ。

Ⅴ手術メモ

眼科手術メモ

著者: 中村康

ページ範囲:P.308 - P.309

斜視手術
 斜視の手術は眼筋の附着部を本來の位置から遠ざけ(後轉法,截腱術)或は近づける(前轉法)のを目的とする。手術に際しては角膜縁から外眼筋附着部迄の距離を知つて置く事が必要である。
 手術前に兩限の視力(假性黄斑部の存在に注意)を檢査し斜視の程度を測定して置く。

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醫局便り

ページ範囲:P.309 - P.309

 戰災後長い間不自由な臨床及び研究生活に置かれていた當教室も,昨年10月附屬病院の新館落成以來やうやく立直つて來ました。
 植村教授は昨年春以來四谷の醫學部復興主任及び副院長として大活躍されましたが,復興の一段落と共にこれを辭任され臨床と研究指導に專念してをられます。又昨年來國家試驗委員に任命されて試驗時には問題選定や案採黙等に多忙な一時を過ごされてをります。

各校職員名簿

ページ範囲:P.310 - P.311

學校名 教授 助教授 講師
岡山醫科大學 萩 原 朗(岡山市岡町 164)

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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