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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科3巻8号

1949年08月発行

雑誌目次

Ⅰ綜説

網脈絡膜疾患に對する線治療の效果に就て

著者: 中村康

ページ範囲:P.313 - P.317

總論
1.眼疾患に對する有效X線照射量
 X線が眼科に應用されたのは1897年であつてX線發見の後2ケ年であつた.Schaupecky氏の報告がそれであつて氏は家兎に試みて角膜上皮の剥離角膜實質浸潤溷濁を報告している.次で1904年Birch Hirschfeld氏により人眼に對するX線障碍の種々なるものが報告された.X線治療をする上には出來る限り均等X線を使用する事が望ましい。その目的で長波長X線はアルミニューム板,短波長X線は銅板で瀘過するのである.そして長波長X線に依る表在性の組織の障碍即紅斑,火傷,潰瘍形成を防禦し深部病竃えのX線の到達性を高めるのである.然し眼組織はそれ程深達性のX線を用うる必要わない.

Ⅱ臨牀實驗

ツベルクリン反應陰性のフリクテン患者の種々相

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.318 - P.319

緒言
 予は曾て.フリクテン(以下「フ」とす)患者のツベルクリン(以下「ツ」とす)反應を檢査して小兒期では陰性者が意外に多いのを知つた。そして其の場合のフは非結核性のフであり.一般にフは意外にも非結核性のフが多いのではないかと云う疑念を持つた.其の後種々此のツ反應陰性者に對して對結核檢査を行い,其の場合にも身體に結核が感染している事實が明かな場合があることを知つた.其の一部としてツ反應に因り誘發されるフで,然かも間もなく胸部レ線像に結核性病變を認めて,フ發現時已に結核感染ありと推定されるアレルギー(以下「ア」とす)前期のフを報告したが,更に既往症Koch氏現象等より結核感染があると推定せる場合,陰性アネルギー(以下「アネ」とす)の場合を報告して御批判を仰ぐと共に結核豫防上眼結核は重要なる役割を演ずべき事を強調する.

重症眼瞼縁炎に對するペニシリンイオントホレーゼの效果に就て

著者: 佐々木芳岡

ページ範囲:P.320 - P.321

緒言
 眼瞼縁炎の重症なものは諸種の治療に抵抗して治癒せず,或は輕快しても病勢一進一退して,根治させる事は極めて困難なものがある.私は此の難症と思われる眼瞼縁炎に對しペニシリンイオントホレーゼ(以下「ペイ」と略す)を施行した所,極めて有效で顯著な效果を收め得たので此處に報告する.

動作制限性回轉斜視と斜筋の手術に就て

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.322 - P.325

緒言
 共動性斜視,麻痺性斜視に似て非なるものに動作過剰性斜視と動作制限性斜視とがある.
 動作過剩性斜視は外傷等によつて筋膜索(抑止系) Retinaculumが切斷されて其方向に過剰運動を示すものであり,恰も拮抗筋麻痺に似た複像を現わし,特に田野邊氏(昭和10年)によつて眼筋過剩作動症と命名せられたが,田野邊氏によれば先天性に下斜筋にも見る事があると云う.

化骨を伴つた眼窩肉腫の1例(化骨性肉腫)

著者: 船橋知也

ページ範囲:P.325 - P.330

 私は組織學的に間質組織に化骨の見られた化骨性肉腫とも云うべき症例を經驗した.此の樣な肉腫は私が内外の眼科領域の文獻を調べた所では未だ無い樣である.

眼瞼内リグラ幼裂頭條虫の1例

著者: 進藤剛

ページ範囲:P.330 - P.331

 リグラ裂頭條虫の成虫は元來犬,猫の腸管に寄生するものであるが,其の幼虫は人體にも往々發見される.眼科領域に於ける最近の報告では中眼第32卷第1號に京大盛教授の「稀なる眼寄生虫に就て」と題する一文があり,更に遡ると中眼第27卷第3號と第29卷第3號に,有馬氏並びに森田氏の夫々球結膜と眼瞼から幼虫を摘出した一例報告の抄録が見られる.
 余も最近眼瞼内リグラ幼裂頭條虫の一例に遭遇したので報告する次第である.

四丘體(又は其の附近)疾患の2例

著者: 淸水光太 ,   栗崎正孝

ページ範囲:P.331 - P.336

 四丘體又は其の附近の疾患に就いての報告例は甚だ稀である.余等は其の2例を經驗したので茲に報告する.

後頭葉肺ヂストマ症に因る右側同名性半盲症の1例に就て

著者: 佐々木芳岡

ページ範囲:P.336 - P.338

緒言
 右側同名性半盲症及び右側同名性1/4半盲症等の報告例は内外の文献に相當數あるが,私は初診時右側同名性半盲を有する患者に就き經過觀察中の所,外科手術の結果,大腦後頭葉から肺デストマの虫卵を發見し,術後兩眼上1/4の視野が恢復し,右側同名性下1/4半盲を呈した一稀例に遭遇したので此處に報告する.

臨床講義

下方瞥見麻痺

著者: 宇山安夫

ページ範囲:P.339 - P.341

山○四○ 46歳 男 實業家
既往症

私の研究

視力の日差について

著者: 富安仙之

ページ範囲:P.342 - P.347

 視力は環境の條件により,又は身體の状況によつて,相當廣い範圍に動搖すると云うことは既知の事實である.然し同一個人の日常生活で5m臨床視力が如何に變動するかという動搖範圍について,系統的に又視力測定方法を嚴密に長期間繼續して計測したものは見當らない.私は先づ健常者の自然状態に於ける視力の動搖を,次で外來診察室で中泉式試視力表照明裝置に,中島一淸家式精密試視力表(同試視力表は0.8-0.1迄は0.05區劃,1.0〜2.0迄は0.1區劃,2.0-3.0迄は0.2區劃にランドルト氏環と片假名,ヒ,ロ,コ,ラ,ナフ,ン,ニ,カの文字で畫けるもの)を貼付した場合を,つづいて照度其の他の條件を一定にした暗室で陸軍式廻轉視力器に中島一淸家式精密試視力表及び石原式萬國試視力表の環状視標を切抜いて貼り,健常者並に屈折異常者の視力を同1人につき毎日,朝,晝,夕3回又は朝,夕2回10數日間繼續して計測し,その日差及び1日平均變動量をみて,どの程度の變化を生ずるか,第2段として變動の原因は何に因るかを,2-3の想定條件の下に探究した.

眼科小史

風眼(3)

著者: 福島義一

ページ範囲:P.348 - P.348

 目を轉じて,西洋に於ける淋菌性膿漏眼の歴史をかえちみることにしよう.西洋の古醫書を繙くと.隨分古い時代から(10)性病性眼炎と意譯せられる急性の眼疾患が收載せられているが,それは必ずしも全部が今日の淋菌性結膜炎を指すものではなかつた.しかし,少くとも性病と關係深い眼炎を指し,隨つてその中には,現代の淋菌性結膜炎を含んでいたことは間違いない.
 偉才Charles de Sairt-Yves(1667-1736)は眼炎(11)を14種類に分つことを提示したが,彼は性病性眼炎に就いて次ぎの樣な解釋を下している.

歐文抄録

Achives of Ophthalmology No 1, 1949,

著者: 李慶義 ,   劉秉輝

ページ範囲:P.349 - P.351

 放射能療法の使用には2つの危險がある(B線療法) Beta Radiation Therapy.
 A.D. Ruedemann.
(1)患者に對して.過剩量の誤用し激烈な反應を起す場合
(2)眼科醫に對して.

温故知新

わが畑文平先生

著者: 志熊常也

ページ範囲:P.352 - P.352

 畑先生が岡山醫大に着任せられたのは,大正15年5月でありました.爾來在職22年3ケ月の永きに亘り,わが眼科領域の爲に盡くされた御功績は枚擧に暇がありません.
 即ち,大正15年庄司教授の後を引き繼がれて,中國四國眼科集談會を主宰せられ,常に中國四國及び山陰地方の眼科醫の啓蒙と共に,お互の知識の交換に盡くされたのであります.尚又,昭和3年11月より盲人開眼檢診を實施せられ,その足跡は岡山はもとより廣島,愛媛,高知等の諸縣に及び,開眼の惠みに浴するもの數知れず,先般來朝された三重苦の聖女ヘレンケラーの會より,其の功績を激賞せられ表彰の榮に浴せられた事は普く人の知る所であります.

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手術メモ(Ⅴ)

著者: 中村康

ページ範囲:P.353 - P.355

1.涙嚢摘出術
 涙嚢摘出は涙道が狹害し閉鎖し慢性涙嚢炎を起し涙點から膿漏甚だしく其爲め慢性結膜炎を招來し流涙の頻にたへない時行うものである.然し其前に消息子を以て通道し流れの鼻腔内に通するようになつた時は先づひかえる.全く閉鎖して消息子の通らぬ時も一度はペニシリン溶液(5000單位cc)の結膜嚢内點眼を試みてみるべきである.此の爲め膿漏が殆どなくなることがある.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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