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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻1号

1976年01月発行

雑誌目次

特集 第29回日本臨床眼科学会講演集 (その1)

第29回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.2 - P.2

講演
Glaucomatocyclitic crisis の房水動態………………………長瀧重智…7
Posner-Schlossman症候群様病像を呈する
 ブドウ膜炎について………………………………………吉岡久春・他…11

学会原著

Glaucomatocyclitic crisisの房水動態

著者: 長瀧重智

ページ範囲:P.7 - P.9

緒言
 Glaucomato-cyclitic crisis1)の病態生理については,従来トノグラフィーを用いた研究で,眼圧上昇時に房水流出率が低下し,寛解期には正常に復すことが証明されている2)3)。また本疾患の前房水に含まれるプロスタグランディンズが眼圧上昇時に有意に増加することが報告されている4)5)
 人眼の房水動態をフルオレセインを用いて研究する新しい方法を,著者はすでに報告した6)。この研究方法の利点は,トノグラフィーと異なり眼に接触することなく房水流量の係数Kfaを測定することが可能であり,同時にblood-aqueousbarrierの状態を,フルオレセインの虹彩透過性の係数Kdpaで表現できることである。そこで今回この方法を用いて,本疾患の眼圧上昇時と寛解期における房水流量の変化と,blood-aqueousbarrierの変化を測定して,本疾患の病態を解明することを試みた。

Posner-Schlossman症候群様病像を呈するブドウ膜炎について

著者: 吉岡久春 ,   川島謙一郎 ,   龍元昭

ページ範囲:P.11 - P.17

緒言
 Posner-Schlossman症候群(以下P-S症候群と略)は本邦においても近年その存在が注目されてその報告も枚挙にいとまがない。また本症候群は注意して観察しないとしばしば原発緑内障に間違えられる場合があることも強調されている6)10)。しかしある種のブドウ膜炎および続発緑内障が本症候群に酷似した病像を呈する場合のあることについて現在までとくにこれを論じた報告はないようである。
 われわれは,最近,ある種の原因が推察されるブドウ膜炎及び続発緑内障でP-S症候群に酷似した病像を呈した症例を3例相次いで経験したのでここに報告する。

Non-Contact Tonometerによる各種眼圧値の比較検討

著者: 瀬戸川朝一 ,   玉井嗣彦 ,   山西陽子

ページ範囲:P.19 - P.23

緒言
 眼球にはまつたく触れることなく,角膜上に圧搾空気を吹きつけることにより,角膜頂点の扁平化を電子の目で読みとり,直ちに眼圧(mmHg)としてデジタルに表示されるNon-Contact To—nometer (NCT)を用い,正常人,各種眼内疾患患者,そして緑内障患者の眼圧値を求めた。先報1,2)では,NCTとComberg眼圧計との比較検討をおこなつたが,今回はさらに症例を増し,とくに角膜曲率半径(BC)との関係も検索し検討を加えたので報告する。

原発性家族性アミロイドージスの眼所見—第1報続発性開放隅角緑内障

著者: 松尾俊彦 ,   小谷幸雄 ,   鴇沢宏 ,   塚原重雄

ページ範囲:P.24 - P.31

緒言
 アミロイドージスは,全身のあらゆる組織間隙に糖蛋白を主成分とする物質が異常に沈着する疾患で,1842年Rokitanskyが最初に報告1)して以来多数の報告がみられる。1855年Virchow2)が本物質が類澱粉質に類似した性質を所有しているところからアミロイドと,またアミロイドが沈着する疾患をアミロイドージスと命名した。本疾患は全身疾患に続発するものと何ら認むべき疾患がなく発生する原発性のもの3)と2種類に大きく分類される。またアミロイドの沈着部位の拡がりにより限局性と全身性2)に分けられ,遺伝関係の有無により家族性と非家族性に分類される。また組織学的にはアミロイドの初期の沈着部位により膠原線維の周囲に沈着するものと細網線維の周囲に沈着4)するものの二型に分類される。全身性のアミロイドージスはアミロイドの沈着する主要臓器によりNeuropathy型,Nephropathy型,Cardiopathy型5)の三型に分類される。

Pseudo-Exfoliation SyndromeとそのTrabeculotomyによる治療成績

著者: 永田誠 ,   山岸直矢 ,   田渕保夫 ,   鶴岡祥彦 ,   木村好美 ,   尾崎吏恵子 ,   深尾隆三

ページ範囲:P.33 - P.40

緒言
 Pseudo-Exfoliation Syndrome (以下PE症候群と略記)は,水晶体表面の仮性落屑(第1図),虹彩縁への白色細片の付着,虹彩萎縮,隅角線維柱帯への色素沈着およびSampaolesi線等の所見を呈する一種の退行性変性疾患で,しばしば開放隅角緑内障を合併する。わが国においてもすでに多数の報告1〜5)のある周知の疾患である。本症候群に伴う開放隅角緑内障は,単性緑内障にくらべ薬物治療に抵抗し,予後不良とされてきた6〜9)
 われわれは1972年初め頃より,手術治療を要する開放隅角緑内障に対してほぼ全例にTrabec—ulotomy ab externoを行なつてきたが,これらの症例の8例11眼が,PE症候群に合併したものであり,その眼圧調整成績はきわめて優秀であつた。

静注されたフルオレスセインの前房内循環動態

著者: 村田恵美子 ,   大滝正子 ,   永田紀子 ,   高橋正孝

ページ範囲:P.43 - P.48

緒言
 著者等は,前報1)でフルオレスセイン前房染色法を白内障術後経過良好な症例について応用し,それらの前房の回復と視力の改善がフルオレスセイン(以下fluo.と略記)の前房内出現時間の推移と密接な関連のあることを報告した。
 今回はこれと相前後するが,本法のstandardを確立をすべく正常眼に応用したところ,fluo.の出現パターンと出現時間についてほぼ満足のゆく結果がえられたので報告する。またこれと併せて白内障手術中硝子体脱出を合併した症例,ならびに白内障手術後虹彩炎の長期間消失しない症例についても同様の観察を行なつたところ,興味ある知見をえたので報告する。

糖尿病虹彩の螢光血管造影法による観察

著者: 半田幸子

ページ範囲:P.49 - P.54

緒言
 螢光眼底造影法は,Novotny1)が1961年に発表して以来,めざましい発展をとげ,種々の疾患の病態の解明に寄与してきた。健常な網膜血管からは螢光色素であるフルオレスセンは漏出せず,また脈絡膜血管からの螢光は,健常な網膜色素上皮を通過しないという特異性がある。これが網膜および脈絡膜血管の循環動態をしらべる上での基礎となつている。
 その後螢光血管造影法は角膜,結膜,虹彩などの外眼部,前眼部にも応用されるようになつた。眼底疾患に対する応用ほどの華やかさはないが,それでもこれによつて新知見が増しつつある。この中で虹彩の螢光血管造影法(螢光虹彩法と略)の所見は,虹彩色素の量の多少のため白人と有色人種との間では大きな差が生じてくる。色素のうすい虹彩では,支質中を走る血管を螢光像として認めることができるが,色素の濃い虹彩では表面の新生血管でもない限りまず観察できないとされている2)。このため,欧米に比してわが国では虹彩血管の螢光造影に関する業績はほとんどないといつた状態である。

手持眼底カメラによる倒像螢光眼底撮影の試み

著者: 糸田川誠也 ,   上野明廣 ,   三木弘彦 ,   福地悟

ページ範囲:P.55 - P.60

緒言
 Novotny-Alvis (1961年)1)らにより螢光眼底撮影法が開発されて以来,現在では螢光眼底撮影は,種々の眼底病変の検索に欠くことのできない臨床検査法の一つとなつてきた。
 現在一般に普及し,使用されている直像式螢光眼底カメラを用いて眼底周辺部の撮影を行なうと,その撮影可能な範囲に限界があり,真の眼底周辺部の螢光眼底撮影は困難である。

クロロキン網膜症の臨床像—とくに発病後の進行に関する要因について

著者: 窪田靖夫 ,   黒田紀子

ページ範囲:P.63 - P.67

緒言
 クロロキン網膜症の臨床上,特に重要な問題点は,一旦発病すればクロロキン投与を中止しても治癒する事はほとんどなく,むしろ,進行,悪化する症例が多い事である。軽快,改善を見たという報告1〜3)もあるが,過半が投薬中止後も症状は進行,悪化するという4〜6)
 今回,われわれは,このクロロキン投与中止後の進行性に関与する諸要因について検討したので,ここに報告する。

放射線照射を受けた人眼の網膜病変

著者: 郡山昌太郎 ,   坂田広志 ,   荻田昭三

ページ範囲:P.69 - P.78

緒言
 眼球周囲組織の悪性新生物に対する放射線療法が普及するにつれ,照射野に含まれる眼球の放射線障害を被る機会が多くなつた。眼組織の中でも,網膜は放射線に対する感受性が低いと考えられていたが,種々の程度の障害を受けることが数多く報告されている。しかし,放射線照射を受けた人眼網膜を電子顕微鏡で観察した記載は,まだあまりみられない。
 私どもは,さきにCo60照射を受けた2例の人眼網膜外層の電子顕微鏡所見を報告1)したが,その後,さらに2例を観察する機会をえた。既報の所見に加えて,色素上皮細胞の非薄化および部分的消失,脈絡毛細血管基底板の著明な肥厚ならびに網脈絡膜血管内腔の閉塞など,興味ある所見がえられたので追加報告する。

連載 眼科図譜・218

光凝固を行なつた特発性虹彩嚢腫の1例

著者: 大原國俊

ページ範囲:P.5 - P.6

〔解説〕
 虹彩嚢腫,なかでも特発性虹彩嚢腫はきわめて稀れなものとされている。発生異常が関与していると考えられ,若年者に好発し,増大によつて種々の合併症を惹起する場合がある。著者は特発性虹彩嚢腫と考えられる1例に遭遇し,アルゴンレーザーを用いて光凝固を行なうことによつて嚢腫を縮小せしめることができた。
 症例は40歳の女性で,虹彩嚢腫の診断のもとに近医より紹介され,当院分院外来を受診した。左眼前房内に,前房容積の約1/3を占める虹彩嚢腫を認めた。嚢腫の存在は約11年前に指摘されていたが,自覚症状がほとんどなく放置されており,嚢腫はその間に約2倍大となつたという。

眼疾患と遺伝相談

その4マルファン症候群

著者: 小林守

ページ範囲:P.86 - P.87

 本誌上での遺伝相談シリーズで,すでに常染色体性劣性遺伝を主とする網膜色素変性症,X染色体性劣性遺伝の赤緑色覚異常とを解説したので,今回は常染色体性優性遺伝を主とするマルファン症候群の遺伝相談を述べてみよう。
 遺伝相談に来院したのは,マルファン症候群の息子と娘を生んだ母親である(第1図)。

学会印象記

第11回日本眼光学学会から

著者: 大島祐之

ページ範囲:P.88 - P.91

 「眼科学と理工学が完全にドッキングした学会になりました」とは,昭和50年9月21日金沢大学医学部の十全講堂で開催された第11回日本眼光学学会の最後に,会長米村大蔵教授が述べられた閉会の辞である。参会者ひとしくその感懐に浸つたこの学会の印象をたどり,学会に出席されなかつた方々への紹介ともしたい。

臨床報告

未熟児網膜症に対する片眼凝固例の臨床経過について

著者: 馬嶋昭生 ,   高橋美与子 ,   日比野由子 ,   鎌尾憲明 ,   高井みちえ

ページ範囲:P.93 - P.97

緒言
 未熟児網膜症に対する光凝固法は,すでに確立された治療法として広く行なわれているが,実施の時期,方法については現在でも研究者間で相違がみられるようである。本症には,insidious ty—pe,いわゆるrush type,さらに両者の混合型ともいうべき病型があり,それぞれの型によつて治療法も異なる。とくに,insidious typeでは自然寛解がきわめて多いことは周知の事実である,いずれにしても,活動期に続く瘢痕期の病変と,数年後から起こる晩発性合併症があり,この合併症まで考慮すると凝固の時期,方法についてはなお今後の研究にまたねばならない問題が残されている。著者らは,もつとも多いinsidioustypeの治療について5年間の経験に基づき,片眼を光凝固してその臨床経過を非凝固眼とともに詳細に比較検討したのでここに報告する。

光凝固を行なつた特発性虹彩嚢腫の1例

著者: 大原國俊

ページ範囲:P.99 - P.102

緒言
 特発性虹彩嚢腫は,穿孔性眼外傷後あるいは眼手術後に発生する外傷性虹彩嚢腫の報告が比較的多いのに比して1,3,19〜21),きわめてまれなものである。著者は,今回40歳女性の左眼に認められた特発性と考えられる虹彩嚢腫の1例を経験し,これに対してアルゴンレーザーによる光凝固を行ない,嚢腫を縮小せしめることができた。外傷性虹彩嚢腫に対するクセノンランプを用いた光凝固法の報告はあるが2,16,17,21),特発性虹彩嚢腫に対しては従来,嚢腫壁切開術,摘出術などの外科的療法のみであり9,18),光凝固を行なつた報告例はないので,著者の経験した症例の臨床経過を報告し,本法の問題点について考えたい。

Drug-induced purpuraと思われる1症例—フルオレセイン静注と血小板動態について

著者: 岡和田紀昭 ,   矢地通子 ,   梶尾高根 ,   浦野治男 ,   江藤正則

ページ範囲:P.103 - P.107

緒言
 螢光眼底撮影の際用いる螢光色素剤5%(10%)Fluorescein. Na (以後Fl.—Naと略)の副作用については,すでに多くの報告がなされ,注目されている。
 今回私達は5% Fl.—Na静注によると思われるDrug-induced purpuraの1例を経験したので報告する。さらにこの発端症例に興味をもち,5% Fl.—Na静注前後の血小板数を検査したのでその結果をのべ,あわせて文献的考察を行なう。

前頭骨眼窩縁より発生したosteogenic sarcomaの1症例

著者: 中内正興 ,   中谷一 ,   尾藤昭二

ページ範囲:P.109 - P.112

緒言
 眼窩に原発する骨腫瘍は一般に少なく,中でもosteogenic sarcomaの報告はまれである。
 今回われわれは,左前頭骨より発生したosteo—genic sarcomaを摘出,骨欠損部を即硬レジンにて補充し,眼球を保存しえて,術後3年半以上の今日に至るも再発を見ず,美容的にも顔面に著しい醜形を残していないまれな症例を経験したので報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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