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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻11号

1976年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・228

Congenital Hereditary Corneal Dystrophy (Maumenee)の同朋例

著者: 三宅謙作 ,   三宅千佳子 ,   三宅武子

ページ範囲:P.1239 - P.1240

〔解説〕
 比較的所見に特徴が少ないため多くの呼称で報告されてきた。1960年Maumenee1)がレビューを行なつて以来,米国を中心に彼のCongenital hereditary corneal dys—trophyの呼称が多く使用されている。本邦でもKomoto2)以来数例の類似疾患の報告をみるが上記のclinical entityに立つた報告をみない。
 Maumeneeのまとめた当疾の臨床像の要約は,(1)びまん性の実質混濁および浮腫--このため角膜は厚みを増し,スリガラス状を呈する。(2)上皮には著しい水泡形成はみとめないが時にbedewingはみる。(3)デスメ膜には著明な変化をみない(この点はMaumenee以外の報告あるいは本号の著者らの報告(1289頁)でも,デスメ膜の不規則な混濁肥厚をみとめるので改めるべきである)。(4)内皮にはcornea gutata等の変化はみず,モザイク模様もみとめない。(5)血管新生を欠く。(6)病巣は通常出生時に存在し,停在性である。(7)眼圧,角膜知覚,角膜径等は正常。視力は0.3ないし光覚。(8)遺伝については優性,劣性両者がある。

総説

オンコセルカ症の現況と問題点

著者: 保坂明郎

ページ範囲:P.1241 - P.1251

緒言
 オンコセルカ症(Onchocerciasis,以下オンコ症)は糸状虫類(Filarioidea)の1種であるOnchocerca vol—vulus (以下O.volv.)が,ブユを媒介虫としてヒトに寄生して起こる疾患である。アフリカでは,Riverblind—ness,中米ではRobles病として恐れられている。日本でも家畜のオンコ症は分布しているが,この場合の寄生虫はO.gutturosaやO.cervicalisであつて,O.volv.によるヒトのオンコ症は見られていない。近年,アフリカについての関心が高まつたためかテレビ,新聞などでもRiverblindnessが二,三度取上げられたが,未だ一般には,よく理解されるに至つていないようである。
 ヨーロッパにもヒトのオンコ症は土着していないが,ある程度長く流行地に滞在した主として宗教関係の白人の罹患が報告されている。最近は日本からも発展途上国に海外駐在員としてかなりの人々が滞在しているので,オンコ症を持ち帰る危険性もあるわけである。著者は昨年オンコ症について紹介したので,なるべく重複を避け,この2,3年の新知見に重点を置いて現況を紹介し,問題点を記してみたいと思う。

座談会

緑内障研究:今後の動向—最近の国際眼科学会から

著者: 北沢克明 ,   井上洋一 ,   岩田和雄 ,   須田経宇

ページ範囲:P.1252 - P.1263

 須田(司会)まず,今年の3月29日から4月10まで,プラハでありましたInternational GlaucomaSymposiumを中心にして話をすることにいたします。
 このプラハでありましたInter—national Giaucoma Symposiumの性格といいますか,それはどんなふうなんでしようか。と申しますのは,各地でみんなInternationalGlaucoma Symposiumと,inter—nationalを盛んにつけるんですけれども,これも国際的だからつけてもいいんでしようけれども,これはどういうような性格か,どなたかひとつお話を願いたいと思います。

臨床報告

内斜視患者の身体平衡機能に関して

著者: 尾林満子 ,   小沢治夫 ,   臼井永男 ,   石川哲

ページ範囲:P.1265 - P.1269

緒言
 斜視患者は眼位異常が相当強くても全身症状は軽微であるが,何らかの微小神経症状,すなわちminimum dysfunction syndromeが存在する例が多いことがLancetその他に疫学調査を中心に最近報告されている1,2)。その他先天性内斜視に脳幹部の異常を報告している者もある3)。しかし何らかの全身系の運動機能系の異常の存在を他覚的にしかも定量的に行なつた研究はまだ報告がない。前述の報告では前庭神経核と眼球運動神経核の間の障害を推定している。著者らは約2年前から身体平衡機能が斜視患者でいかに障害されているか否かについて興味をもち研究したところ,これらの患者は何らかの平衡機能障害が存在するという若干の興味ある結果が得られたのでここに報告する。

Acetazolamide (Diamox)の長期結膜下注射の家兎眼圧におよぼす影響

著者: 木村良造

ページ範囲:P.1271 - P.1274

緒言
 Carbonic anhydrase inhibitorが全身投与により房水産生を抑制し眼圧を下降せしめることはすでに多くの実験的,臨床的研究により確認されている1)。著者ら2)も臨床的にfluorophotometryを用い本事実を確認している。一方局所投与についてはFoss3),Greenら4),東ら5)により試みられたが,いずれも無効とみなされ,その後10数年を経た今日もなお広く承認されている。Have—ner1)はその理由として,赤血球に多量のcarbo—nic anhydraseが含まれている事実をあげている。すなわち,血管豊富な毛様体でcarbonicanhydraseの働きを抑制するためには赤血球のcarbonic anhydraseの働きもともに抑制されなければならず,したがつてそのためにはcarbo—nic anhydrase inhibitorの全身投与が必要となると推論している。しかし,眼圧計も圧入眼圧計から圧平眼圧計,さらには簡便な手持圧平眼圧計へと改良が加えられ,動物実験においても眼圧測定が容易となり,かつ正確性をましてきている現状よりみて,carbonic anhydrase inhibitorの局所投与が無効との結論の上にたつてのかかる推論を行なうより以前に,前提である局所投与の効果の有無につき再検討を要すると考えた。

毛様体上皮剥離の症例

著者: 近藤武久 ,   安積慶子 ,   前島伸二子 ,   福味陽次 ,   千原悦夫 ,   宮代汎子

ページ範囲:P.1275 - P.1279

緒言
 毛様体上皮剥離という言葉は,本邦では比較的馴染のない言葉であるが,外国では既に,病理組織学的所見に言及しているKlien1)の報告を始め,Dobbie & Phillips2)の報告や,外傷眼に毛様体上皮剥離を認めているLong & Danielson3),Eisner4),Tasman5)らの報告,更にはWeiden—thal&Schepens6)の動物眼の実験成績など毛様体.上皮剥離に関するかなりの論文がみられる。本邦では1975年竹本ら7)が毛様体上皮剥離の症例を報告し,文献的考察を加えたのが最初のものであり,わが国でもようやく,毛様体上皮剥離に対して関心が持たれるようになつてきたといえる。著者らも最近,竹本ら7)の症例とほとんど同一の臨床所見を呈し,毛様体上皮剥離に網膜剥離を併発した症例を経験した。本症例に手術的療法を加え網膜剥離を治癒せしめたので,今回,その手術療法に焦点を合せ,若干の検討を加えてみたい。

Salmonella Typhiが検出された眼瞼膿瘍の1例

著者: 大石正夫 ,   本山まり子 ,   小川武

ページ範囲:P.1281 - P.1284

緒言
 眼瞼膿瘍の起炎菌としては,通常Staphyloco—ccus aureusがもつとも多く,その他Strepto—coccen,Pneumococcen,Proteus,E.coli,Ps—aeruginosaなどの報告もあるが,Salmonellaによると思われるものはこれまで報告がないようである。
 著者らは今回,再発性の眼瞼膿瘍で切開排膿によりえられた膿培養からSalmonella typhiが分離,同定された珍しい症例を経験したので,ここに簡単に報告する。

Congenital Hereditary Corneal Dystrophy (Maumenee)の同朋例

著者: 三宅謙作 ,   三宅千佳子 ,   三浦花

ページ範囲:P.1289 - P.1293

緒言
 角膜の先天性疾患に対する認識はわが国と特に白人種国との間には個体差あるいは検査設備の差などにより少なからずひらきがあつたように思われる。さらに諸外国においては特に角膜移植術の普及により稀少例のrecipientからの形態学的研究が急速に進歩し先天性角膜疾患の分類の上でも大きな変化をよぎなくされてきている。そのために従来異なつた呼称が与えられていた疾患が実は同一であつたりその逆であつたりすることも起こり比較的症例の少ないわが国で報告する場合ますます困惑させられる結果にもなる.本編で報告するCongenital Hereditary Corneal Dystrophy(以後CHCDと略)もその例にもれず諸外国で使用されたいくつかの呼称を列挙すると第1表のごとくなり,これらは1961年MaumeneeがレビューしたCHCH1)と同一もしくは近似した疾患と考えられる。わが国でもKomoto2)以来5編のあくまで類似疾患と考えられる報告3〜6)をみるが,CHCDの認識にたつた検討は本編をもつて嚆矢とする。今回の報告ではCHCDの分類上の位置,鑑別診断,最近の特に形態学的所見からの成因論に対し主に文献的に言及する。

全身性エリテマトーデスにより角膜潰瘍を来した症例

著者: 越生晶 ,   土井治道 ,   大熊紘 ,   福田富司男 ,   吉田秀彦

ページ範囲:P.1295 - P.1299

緒言
 全身性エリテマトーデス(SLE)の眼症状は眼瞼,結膜,角膜,ブドウ膜,網膜,視神経などに生じる。しかしその多くは眼底の変化であり,角膜の障害についての報告は少ない1〜10)。わが国のSLEによる眼症状の報告例を調査した吉本ら4)によれば,過去42例の報告があり,すべてが眼底病変についての報告であったと述べている。
 このたびSLEの患者で,両眼の角膜中央部に点状の角膜上皮びらんと角膜浸潤を発生し,同剖にて穿孔した症例を経験したので報告し,若干の文献的考察を行なった。

網膜中心静脈血栓症をきたした頸動脈海綿静脈洞瘻の4例—自然治癒との関係について

著者: 西村みえ子 ,   井上泰彦 ,   百枝栄 ,   沼口雄治

ページ範囲:P.1301 - P.1306

緒言
 頸動脈海綿静脈洞瘻(Carotid-Cavernous Fis—tula,以下CCFと略)では拍動性眼球突出などの特異な眼症状が現われることが古くから知られているが,眼底に網膜中心静脈血栓症様の大量の出血をきたしたという報告は少ない。また症状は一般に進行性で,自然治癒は稀といわれている。今回著者らは本症の経過観察中に網膜中心静脈血栓症様の眼底出血を伴つて眼球突出などの眼症状がいつたん増強し,その後眼症状が消失して自然治癒をきたしたと思われる症例4例を経験したので報告する。そのうち1例は脳血管造影によつてCCFの自然治癒が証明されたものである。

Clinical Conference

診断および治療困難な黄斑部病変

著者: 土坂寿行

ページ範囲:P.1285 - P.1288

 土坂本日は診断がつけにくく,また診断がついても治療が困難な黄斑部の病変について紹介いたします。症例は23歳の女性。左眼視力低下と変視症を訴えて1974年8月16日,当科を受診しました。患者は当科受診前,5月初旬に急激な視力低下と変視症を訴えて近医を受診,以後,数ヵ所の病院を受診してトキソプラズマ血清反応を検査し,各病院で1:32から1;2,048までの抗体価が測定され,そのたびに診断がかわり,また治療もかわつていつたとのことです。
 既往歴については15年間各種の小鳥を飼育していましたが,他に特記すべきことはありません。また家族歴は家族は4名,結核等の家族歴はありません。現症は初診時,視力はVd=0.1(1.0×−6.0D),Vs=0.01(0.1×—6.0D)で中等度の近視が認められます。視野検査では,周辺視野は正常ですが,約6度の中心比較暗点があります。右眼には異常所見はありません。左眼は前眼部,中間透光体正常です。左眼眼底は黄斑部に約1/2乳頭径の境界明瞭な円形灰白色の斑点があり,周囲の網膜よりもわずかにもりあがつてcysticな感じがいたします。これは網膜深層の瘢痕と思われます。その周囲には軽度の浮腫,病巣の乳頭側の網膜下には放射状の出血があり,黄斑部輪状反射は認められません。この出血と浮腫は長期にわたり,軽快増悪を繰り返して,病巣は20カ月の間に少しずつではありますが,拡大しております。

眼・光学学会

ディジタル式カラー超音波診断装置の階調性改善

著者: 太根節直 ,   室本雅夫 ,   伊藤健一 ,   木村陽太郎

ページ範囲:P.1311 - P.1312

緒言
 従来の装置ではエコー信号をA-D変換する際に4dB間隔でスライスしていたが,新たに眼科領域の検査,診断に適するように2dB間隔のスライス・レベルをもつ装置を開発し,表示階調を向上させることができた。更に超音波診断装置ではエコー信号出力を連続的に可変でき,また減衰器(0〜42dB:3dB間隔ステップ)を併用すればカラー表示装置への入力レベルを適当に設定でき最適な観察,検診が可能である。

固視点撮影の新しい試み

著者: 新美勝彦

ページ範囲:P.1313 - P.1316

緒言
 眼底カメラに視標を内蔵させ被検眼がそれを注視することで視機能を反映した写真の得られることは,固視の研究に既に採用されている所である。著者は臨床的に更に活用の幅を広げる目的でマミヤ眼底カメラFR−200の反射主鏡の周囲に発光ダイオードを敷設し,眼筋麻痺の程度判定や複数視標をみる眼位などをみるのに役立つことを第28回臨床眼科学会で報告した。しかしこの方式では黄斑中心窩を直接撮影することができないのでそのための視標を考案し,これが固視点記録にも利用できるので報告したい。

Laser干渉縞による視覚特性の測定第Ⅲ報小型MTF測定機の開発とその使用経験

著者: 杉町剛美 ,   普天間稔 ,   糸井素一 ,   中島章 ,   河原哲夫 ,   大頭仁

ページ範囲:P.1319 - P.1323

緒言
 Laserの干渉縞を利用して,眼球の光学系をby passして網膜以後の空間周波カットオフ周波数を視力測定に応用する,いわゆる干渉縞視力(Interference Fringe Visual Acuity=I.V.A.)や網膜以後の空間周波数視覚特性(ModulationTransfer Function=M.T.F.)の測定により,いわゆる眼の"みやすさ周波数特性"として眼科臨床に導入する事は有用である。以上の見地からわれわれは第10回眼光学学会においてHe-NeLaserによるYoungの干渉縞でのMTFの眼科臨床応用のいとぐちを述べた,,しかし従来の機器は手造りの大型セットであるため光路の調整や使用法が煩雑であり手軽に短時間に測定が行なえなかつた。
 今回われわれは上記の試作機を改良してさらに小型で使いやすい機器を開発しその臨床使用経験を得たのでここに発表する次第である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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