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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻12号

1976年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・229

Bowen病の1例

著者: 原田敬志 ,   渡辺郁緒 ,   小嶋一晃 ,   星野元宏 ,   市川宏

ページ範囲:P.1351 - P.1352

〔解説〕
 Bowen病の報告は,現在までに海外では60数例を数えるが,国内では10例に満たない。われわれの症例は,66歳の女性で最近2年間に結膜充血が強くなり諸種点眼療法に抵抗するため,近医から当科に紹介されてきた。
 第1図は,左眼の細隙燈顕微鏡写真であり,左眼角膜輪部を中心として円形に拡大する灰白色膠様組織を示す。この組織は,表面はやや粗く軽度に隆起する。注目に価するのは,表面を走向する新生血管であつて,樹枝状・糸球状・打ち上げ花火状の特異な血管の形態がみられた。そしてこの新生血管は角膜上皮より表層に位置し,ところによっては血管係蹄を形成する。この,一見翼状片に酷似した灰白色組織と健常組織との境界は急峻であるが,境界付近にはわずかな細胞浸潤が観察された。

総説

近代日本眼科の郷愁—日本眼科学会創立80周年記念講演を終えて

著者: 福島義一

ページ範囲:P.1353 - P.1359

目次
1.はじめに
2.v.Sieboldという人物

座談会

国際螢光眼底シンポジウム:今後の動向—最近の国際眼科学会から

著者: 松井瑞夫 ,   箕田健生 ,   茂木劼 ,   清水弘一 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.1360 - P.1373

 宇山(司会)今年の3月28日から4月1日まで,ベルギーのゲントで国際螢光眼底シンポジウム--一番最初がフランスのアルビー,その次が日本で,1972年に東京,それに続いて,ゲントは第3回になりますが,螢光眼底の国際学会が行なわれました。非常に盛会で,全体で350人ほどの出席者があり,その中で,日本からは30人余り出席されており,演題も,全体で90数題のところに日本から10題余り採択されていました。このように日本からもたくさん出席,講演されて,大いに有意義な会であつたわけです。
 今日は,この会に出席され,そして,いままでにも螢光眼底について大いに研究を進めておられる先生方に集まつていただいて,その会の模様の紹介と,これから螢光眼底検査がどういう方面に発展していくか,という展望をかねてお話しいただきたいと思います。群馬大学の清水弘一教授も本日のメンバーに予定されていましたが急にこられなくなりましたので,誌上参加していただきます。皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

臨床報告

緑内障眼前房隅角の微細構造—(5)アミロイド緑内障

著者: 瀬川雄三

ページ範囲:P.1375 - P.1380

緒言
 原発性家族性アミロイドージスに開放隅角緑内障が続発することはKaufmanの報告1)以来よく知られているが,本疾患が地域特異性が高くまれな疾患であるためこの型の緑内障に関する報告はきわめて少ない2)
 著者は今日までにこの稀有なる緑内障症例を5例経験しその前房隅角組織を電顕にて観察する機会を得た3〜5)。その結果原発性家族性アミロイドージスに続発する開放隅角緑内障はアミロイド緑内障とも呼ぶべき特異的な前房隅角組織の微細構造変化を呈することを確認すると同時に,開放隅角緑内障の流出抵抗増大の場は内皮網であることを強く示唆する所見が得られたのでここに報告する。

3% N-Acetyl cysteine点眼液の種々なる角膜疾患,特に単純ヘルペス性角膜炎に対する臨床的効果について

著者: 日隈陸太朗 ,   馬場裕行 ,   村田忠彦

ページ範囲:P.1381 - P.1385

緒言
 潰瘍性角膜疾患は一般に難治であり,近年col—lagenase inhibitorの効果に期待が寄せられている。なかでも単純ヘルペス性角膜炎(以下HS—Kと略)は発生頻度も高く,いまだ確実な治療法もなく,角膜代謝の崩壊による不透明化のため,治療薬であるIDUのある現在でも失明例があとをたたない。これまで著者らはcollagenaseinhibitorとしてcysteineを含有している強力ネオミノファーゲンC注射液(以下強ミノCと略)1)をそのまま点眼薬として使用していたが,cysteineそのものが酸化されやすく,その薬理効果を長く保つことができないため,期待するほどの十分な治療効果は得られなかつた。今回,著者らはcollagenase阻害効果,安定性共にすぐれた3% N-Acetyl cysteine点眼液(以下AC—ETと略)を試用する機会を得,HSKその他の角膜疾患に応用したとしろ,満足すべさ治療効果を得たので報告する。

学童期の裸眼視力および自覚的屈折度の変動

著者: 稲富誠 ,   普天間稔 ,   林正泰 ,   下島よし子 ,   川村緑 ,   岡崎洋 ,   木下京子

ページ範囲:P.1387 - P.1397

緒言
 学童期の屈折状態が年とともにどのようにかわるかは重要な題問であるが,これについての報告1〜3)はあまり多くない。著者らはかねてから,軽い近視(自覚的屈折度−1.0D程度)を示した場合や,裸眼視力が0.9以下になつた学童がその後どのような経過をたどるのか,できればその変動パターンを知りたいと考えていた。
 著者らは1970年から6年間毎年,和歌山県田辺市近郊地区と周辺部農村地区で学童を対象に眼検診を行なつてきた。今回,このうち1972年在学中の小,中学生の検診データを分析し,さらに3年後の検診結果からこの間の変動がわかつた学童について,裸眼視力と自覚的屈折度の変動パターンを検討した。また少数ではあるが,この中の近視治療経験者についても,その変動を調べ,非治療者との比較検討を行なつた。これらについて前に発表された保谷市4)での資料との比較検討を行なつた。

Candida albicansによる内因性眼内炎の1例

著者: 根本慧子 ,   大石正夫

ページ範囲:P.1399 - P.1404

緒言
 抗生剤の普及による菌交代現象ならびに免疫抑制剤の使用による宿主の抵抗力の減弱とが相まつて,非病原菌による感染,すなわちopportuni—stic infectionが注目されている。このなかで,もっとも典型的なものはCandida症であるといわれている1)
 眼科における真菌症の一つとして,内因性Can—dida性眼内炎がある。これについて,欧米にはかなりの報告例2〜5,8,9,13,14,16)があるが,本邦には詳細に報告された症例はまだない。

典型的なStargardt型黄斑変性をともなつたFundus Flavimaculatus—臨床的,機能的ならびに電気生理学的検討

著者: 中野秀樹

ページ範囲:P.1405 - P.1411

緒言
 1909年Stargardt1)によつて,2家系7名の若年性遺伝性黄斑変性症が報告されて以来,同疾患に関する報告は数多くなされている。そしてSt—argardtの最初の記載が,Stargardt病という特異的疾患の原型として定義づけられてきた。しかしながら,過去の記載を見ると,同じStarg—ardt病とされているものの中に,かなり異質の疾患が含まれていこるとが明らかである。同じ誤まりは,Stargardt自身にも認められる2)
1972年KrillおよびDeutman3)は,Stargar—dt病と診断された疾患を詳細に検討し,いくつかの異なつた疾患として分類されることを報告した,その中で彼らは,Stargardtの最初に記載した疾患すなわちStargardt病は,1962年Fran—ceschetti4)によつて新しく報告されたfundusflavimaculatusの中で,特に萎縮性黄斑変性を合併する型5)と同一疾患であることを強調している。この考えは,最近欧米で次第に支配的立場をとりつつあることは確かである。

Bowen病の1例

著者: 原田敬志 ,   渡辺郁緒 ,   小嶋一晃 ,   星野元宏 ,   市川宏

ページ範囲:P.1413 - P.1421

緒言
 1912年,ボストンの皮膚科医J.T. Bowen1)が2名の男子の臀部あるいは下肢の皮膚に,組織学上奇異な病像を呈する皮膚疾患を認め,その組織学的所見をprecancerous dyskeratosis,この特色を有する慢性疾患をprecancerous dermato—sisと名付けた。これより2年後パリの著名な皮膚科医J. Darier2)は,この疾患が明らかな独立疾患単位であることを確認し,ボーエン病3例のうち1例に悪性腫瘍の発生を観察した。そしてこれをdermatose précancéreuseと呼び,ボーエンの提唱した名称に臨床的な裏付けを提供した。
 ついで,1921年,Jessner3)は口腔粘膜に発生したボーエン病を記載した。眼科領域におけるボーエン病の報告は,1942年のJ.S. McGavic4)のそれをもつて嚆矢とする。彼は,5例の角結膜におけるボーエン病の症例を呈示しているが,これはいずれも顕微鏡標本を検索するうちに得られた診断であつて,臨床的には2例を見ているのみである。今回著者らはボーエン病と思われる症例1例に遭遇し,表層角膜移植を施行して良好な結果を得たのでそれについて報告する。

新刊紹介

Clinical Ophthalmology (in 5 volumes)

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1429 - P.1429

 眼科の勉強をするのに,どの本を読めば良いのかと若い医局の諸君に訊かれるとき,誰しもすぐには返事ができないものである。個々の分野についての研究書ならもちろんあるのだが,眼科全体にわたる教科書となると一長一短ありで,これだけ読んでおけばまず必要充分な学識が得られるといつた本はなかなか無いものである。Duke-ElderのSystem of Ophthalmologyは別格だが,これとて,巻によつては少々古くなつてきているし,病気の歴史の話など,徹底かつ多岐にわたり過ぎて,「読む」ための本であるように,むしろ「引く」ための本になつているきらいが強いのである。
 アメリカなどでの研修医Residentの勉強や,専門医Boardの試験準備などについても事情は同様であり,最新の知識と定説とを網羅した本は今まで無かつたのではないかと思われるが,今回「臨床眼科全書」とでもいうべき"Clinical Ophthalmology"全5巻が現われ,事態が一変した。

Clinical Conference

急性緑内障ではじまつた原田病

著者: 白土城照

ページ範囲:P.1431 - P.1435

 白土下記のような所見より急性緑内障の発作と判断いたしまして,即座に,4%のピロカルピンを頻回に点眼し,かつ,イソバイド内服,マニトン点滴を行なつたにもかかわらず,眼圧の下降が見られず,その時点で,右眼のperipheral iridectomyを行ないしました。そして,右眼のperipheral iridectomyを行なつたあと,すなわち初診から5日目になつて右眼にかすみが生じたということで視力を調べますと,右眼の網膜に浮腫がみられ,視力が0.3に低下しておりました。
 この原因として急激に眼圧が下降したためと判断し,そのまま加療しましたところ,さらにそれから2日後になりまして,左眼の視力の急激なる低下をきたしました。

眼・光学学会

眼底用Reflex-Free Contact Lensの試作

著者: 岩田和雄 ,   八百枝浩 ,   納田昌雄 ,   加藤尚臣

ページ範囲:P.1437 - P.1439

緒言
 著者らは隅角鏡について種々検討し,これまで二,三新しい試作を発表してきた。このたびはこの一連の研究から,コンタクトレンズの前面に角度をつけることによつて,ここにおける反射光の反帰を減ずる方法を眼底用コンタクトレンズに応用してみた。
 眼底用コンタクトレンズでは観察光軸と照明光軸の間の角度が小さく,従来のものではコンタクト表面からのフレア・ゴーストが観察画像の劣化を来すことがよく経験されたが,この試作レンズによればこれらのことがかなり改善される。その性能等につき簡単に報告する。

スペックルパターンによる眼屈折度の測定(乱視度の測定)

著者: 和田新二 ,   加藤康夫

ページ範囲:P.1441 - P.1446

緒言
 レーザースペックルパターン(以下スペックルと略す)を利用した眼屈折度測定法1)は自覚式検眼法と検影法との中間の性質をもつもので自覚的な検影法といつてもよい。被検者に課せられる判断はスペックルの流れの方向,速度を指示するだけで比較的容易であり,幼児,老人等検者と被検者の意志伝達が困難な場合にも有効な眼屈折度測定法であるが,現在のところ測定例は多くない2〜4)
 今回著者らは,イメージローテーターを利用した乱視度の測定が可能なスペックル眼屈折度測定装置を試作し,E. Ingelstam4),D. Malacara5),の提案によるそれぞれわれわれが直接法,間接法と呼ぶ2種類の方法で測定を行ない,自覚式検眼法との対比によりその実用可能性を検討したので報告する。

倒像検査用+28Dptr非球面レンズ

著者: 梶浦睦雄 ,   岡嶋弘和 ,   上原誠

ページ範囲:P.1447 - P.1450

緒言
 著者らはすでに+14,+20,+33Dioptreの倒像検査用非球面レンズを発表し,広く内外の眼科医に使用されているが,Pars-Planitisを初め,最近注目されている周辺部眼底の諸疾患や,網膜剥離およびそれに関係する変性などを観察するのに特に優れたレンズを製作する目的で幾種類かのレンズを作製検討した。
 こういう目的には+33Dioptreが用いられ,欧米では愛用する人が多いが,邦人の場合眼底の色素が多いため,白人に比べ眼底が暗く見えるので,この+33Dioptreは特別な照明系を用いないと十分な明るさが得られず,その特長を生かせないのが現状である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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