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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻3号

1976年03月発行

雑誌目次

特集 第29回日本臨床眼科学会講演集 (その3)

第29回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.274 - P.274

講演
大阪市内某保健所における3歳児健康診査での視力検査5年間の成績………………………………山崎康宏・他…279
Cycloscopy(毛様体検査)およびFluorescein Cycloscopy(螢光毛様体検査)〈第1報〉…………………………朝岡 真・他…289

学会原著

大阪市内某保健所における3歳児健康診査での視力検査5年間の成績

著者: 山崎康宏 ,   湖崎克 ,   中岸裕子 ,   福井久子 ,   梅垣嘉子 ,   岩井寿子

ページ範囲:P.279 - P.285

緒言
 小児の視力発達過程で,その阻害となる可能性のある眼異常を早期発見し管理することは不可欠のことである。そしてもつとも早く小児に視力スクリーニングを実施しえる機会は,3歳児健康診査である。
 著者1,2)は,先に3歳児健康診査における視力検査の重要性を述べ,検査法として図形視標とランドルト環視標の両者を用いて,大阪市内2保健所における3歳児健康診査時に,スクリーニングと精密検査を行なつた成績について報告した。そこでランドルト環視標より図形視標の方が,3歳児には応答し易いことと,スクリーニングとして0.5未満をふるいわけることが適当であることを報告した。

Cycloscopy (毛様体検査)およびFluorescein Cycloscopy (螢光毛様体検査)第1報

著者: 朝岡真 ,   水野勝義

ページ範囲:P.289 - P.294

緒言
 ブドウ膜炎,緑内障はじめいろいろの疾患においては本来毛様体の異常が推測されるにもかかわらず,その臨床的観察は系統的にはいまだ行なわれていない。わずかに,虹彩欠損部や無虹彩症において隅角鏡検査に際して観察されるか,iridolen—ticular space1)からわずかにのぞいている毛様体を観察される程度にすぎない。indentationとcontact glassを利用した周辺部網膜の臨床的観察が広く行なわれているにもかかわらず,毛様体観察がきわめて困難であるために未知のまま放置されていたのであろう,,Slezak2)はposteriorchamber contact glassと名付けて毛様体の検査をしているが,写真撮影には成功していない。そこでわれわれは毛様体の臨床的観察を目的としたcyclos copeを作り,いろいろの症例にCyclo—scopy (毛様体検査)およびFluorescein Cyclo—scopy (螢光毛様体検査)を行ない,写真撮影ならびに興味ある知見をえたので報告する。

調節麻痺剤点眼により著明な緩解を繰り返えす執拗な調節の異常状態の1例

著者: 戸塚清 ,   谷野洸

ページ範囲:P.295 - P.297

緒言
 毛様体が持続して収縮している場合,これを調節緊張とするか,調節痙攣とするかについては論議があるが,ここではその論議はしばらくおいて,まず電々公社の,女性職員で,奇異な調節の異常状態を呈し,現在も同じ状態が続いている症例について報告する。

Farnsworth-Munsell 100—Hue Testの検討—第1報総偏差点について

著者: 深見嘉一郎

ページ範囲:P.299 - P.303

緒言
 色相配列検査法は,1943年Farnsworthにより創案され,1949年Farnsworth-Munsell 100—Hue Test (以下F-M 100—Hue Testと略す)として発売された。それを範として日本色彩社から色彩弁別検査器(Color Discrimination Test--以下C.D.T.と略す)が発売された。わが国では今まで主としてこのC.D.T.に関してのみ業績が発表されていて,F-M 100—Hue Testについての基本的な研究はわずかしかない。今回第1,第2色覚異常者約50名についての成績をえたので,それについての報告をする。総偏差点を中心にC.D.T.の成績との比較について論じてみる。

眼科におけるサーモグラフィ的研究

著者: 平光忠久 ,   馬嶋慶直

ページ範囲:P.305 - P.310

緒言
 医用赤外線カメラは1957年米国で開発実用化されて以来,各臨床分野で用いられ,特に近年の赤外線工学・電子工学の進歩による器械の性能の向上とともに,その診断効果が評価されるようになつた,この赤外線カメラによる温度の分布状態を図または写真などの像にあらわして研究する方法が,サーモグラフィ(熱像法と訳される1))と呼ばれるものである。赤外線サーモグラフィの利点としては,
 ①非接触的である。

Modulation Transfer Function (MTF)の臨床的応用

著者: 糸井素一 ,   加藤和男 ,   杉町剛美 ,   川村緑 ,   大頭仁 ,   河原哲夫

ページ範囲:P.313 - P.321

緒言
 私達は,眼の形態覚がどの程度鋭敏であるかを,普通視力であらわしている。しかし視力は,分離閾値を示しているだけで,形態覚のごく一断面しか表現することが出来ない。
 眼の形態覚を,より普遍的にあらわすために,視覚系の空間周波数特性をはかり,その結果をModulation Transfer Function (MTF)であらわすという方法がある1〜10)

網膜受容器のスペクトル感度測定とその臨床応用

著者: 北原健二

ページ範囲:P.323 - P.331

緒言
 網膜受容器機構の研究は,光化学的,電気生理学的,心理物理学的など各分野にわたり研究が進められ,現在錐体にはblue, green,ならびにredにそれぞれ最大吸収感度を持つ3種類のvisualpigmentが確認されている。
 心理物理学的には,従来各種の閾値測定法によりこれら3種類のvisual pigmentあるいは機構体に相当するスペクトル感度の測定が行なわれている。しかしながら,心理物理的手法による閾値測定はMaxwellian viewの方式を用いて行なわれるが,測定手技の繁雑さのために臨床上これを実用的に用いるのはなお困難である。臨床的には量的視野計の反射面を利用することが実際的であるが,現在使用されているTübinger peri—meterは検査点用光源の光量が充分でなく,組み込まれているinterference filterの数が少ない等の欠点がある。

白内障手術後におけるBlue cone系反応の変化について

著者: 吉田輝也 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.333 - P.338

緒言
 白内障手術後に青視症を訴える患者が多いことは,古くより知られているが,それは加齢と共に黄色化した水晶体が除去されることの効果であると一般には考えらねている。もちろん常識的にそれは間違いのない推論であるが,網膜における色覚機構の面から,この問題を検討した報告は少なく,わずかにDodtおよびWalter7)が,暗順応ERG (bs波)を指標として水晶体眼と無水晶体眼の比較を行なつているにすぎない。しかし明所視における「清」の感覚に主役を演ずるものは,Blue cone系に属するニウロンであるから,水晶体摘出前後で,それがどのように変化するか,あるいはGreen, Red系反応との均衡がどう変るかについて分析を行なう必要がある。著者らは前報において,強力な黄色光による明順応下で,Blue cone系反応が分離記録出来ることを述べたが,今回白内障手術の前後における同反応系の変化,差異について検討した結果を報告する。

人工水晶体(Worst's Iris Medallion Lens)挿入人眼の組織学的所見

著者: 早野三郎 ,   小森敏郎 ,   高橋捷允

ページ範囲:P.339 - P.342

緒言
 1949年Ridleyによりはじめて人工水晶体挿入術がなされてから26年,また最近世界中で広くかつ急速に行なわれつつある瞳孔支持レンズが1957年Binkhorstにより開発されてから18年となる。
 この間すでに多数の臨床例が重ねられ,瞳孔レンズについても優に1万を越える症例が経験されているものと推定される。しかし,その病理組織学的検索はきわめて少ない。

学会抄録

局所ERGに関する研究—黄斑およびそれ以外の眼底疾患における経験

著者: 濱崎陞 ,   濱崎淳二 ,   加藤秋成 ,   松尾治亘

ページ範囲:P.311 - P.312

緒言
 ERG検査は,網膜機能を他覚的に知りうる数少ない方法の一つであるが,通常の方法は全網膜刺激である。そこで局所からERGを検出することが大きな意義を持つことであると考えられ,主に黄斑部を中心として数多くの研究がなされてきた。今回われわれは,できる限り刺激光の散乱を抑えるために,まず刺激光を弱くして,その反対に刺激面積を大きくした。それによつてbackground illuminationを強くしても,実質刺激光量を維持または強めることができたので,この方法によつてえた結果を報告する。

連載 眼科図譜・220

常染色体性優性遺伝型網膜色素変性症

著者: 谷野洸 ,   大庭紀雄

ページ範囲:P.277 - P.278

〔解説〕
 原発性網膜色素変性症は,遺伝学的には単一のentityではなく,異質性をもつことがひろく知られている。特定の遺伝形式に対応する特定の遺伝子表現があるか否かは,いろいろの角度から興味ある問題であるが,多数の症例を集積した分析的検討はなされていない。ここには,常染色体性優性遺伝型の家系を紹介し,問題の一端にふれてみたい。
 この家系は,主として千葉県市原市に居住し,すくなくとも3世代の累代発現が確認されている。(家系図の記号説明。■,●:罹患者(男,女性);□,○:非罹患者;〓:死亡者;〓:同胞3名,性別不明;〓:発端者;✓:著者らが検索したもの)。世代Ⅱは,非罹患者とみなされ,優性遺伝のばあいにときとしてみられる,遺伝子表現の不安定さを示すといえよう。

教育講演

トラベクロトミーについて

著者: 河本正一

ページ範囲:P.353 - P.359

緒言
 開放隅角緑内障の房水流出抵抗が主としてシュレム管内壁のトラベクルムにあることがElling—sen, Grant6〜8), Becker18)らによつて実験的に証明されている。Trabeculotomy ab externoという手術は,シュレム管の内壁を破るものなので,理論的に興味がある。本手術は,強膜をきりひらいて,シュレム管に到達するものである。
 本手術は,1960年Smith32), Burian3)がおのおの別々にはじめたものであるが,いずれも輪部に近い強膜に子午線切開を加え,発見したシュレム管にSmithはナイロン糸を通し,弓の弦のように引張り,トラベクルムを破つたのである。Smithの長期観察の結果では,開放隅角緑内障26眼中11眼(42.3%)が,点眼なしにその眼圧が制御されている。BurianはMarfan症候群の1例に独自のゾンデをシュレム管に挿入して,シュレム管の内壁を破つた。

視覚の発達過程における視的経験の修飾の感受性をめぐる2,3の問題

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.361 - P.369

緒言
 小児,ことに乳幼児の時期は,視覚にとつても発達の重要な時期にあたる。この期間においては,発達に適切な視的環境(経験)と正常な眼位,屈折状態,明視を妨げる中間透光体の異常がない,視路,中枢に異常がない,など生体側の条件が必要である。すなわち,この発達の期間は,視的環境(経験)により左右されやすく,また遮眼,斜視,不同視,著明な屈折異常,白内障,角膜混濁などの影響をうけやすい外部的,内部的要因による感受性の強い時期にあたる。この感受性は,年齢の幼いほど強いものであり,乳児期にもつとも強く,幼児期,学童期と急激に減少し,年長児,成人にはなくなる。この事実は,臨床的にも実験的にも幾多の証拠が出されており,小児眼科が,乳幼児眼科と称されるほど,この視覚形成期,障害に対する感受性の時期は重要で,この時期におこる障害を予防し早期に発見し,早期に治療する重要性は強調しすぎることはない。
 さて,今回は,小児期にしばしば遭遇する2,3の眼疾患をとりあげ,これらの実験的研究を紹介し,現時点におけるこれらの疾患の概念,対策などを述べてみたいと思う。

GROUP DISCUSSION

色覚異常—色覚研究会1975年夏期大会

著者: 横山実

ページ範囲:P.371 - P.375

〔特別講演〕色覚の神経機構

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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