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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科30巻4号

1976年04月発行

雑誌目次

特集 第29回日本臨床眼科学会講演集 (4)

第29回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.392 - P.392

講演
老人性白内鏡に関する臨床的研究
 1.統計的観察…………………………………………中枝武豊・他…397
光化学スモッグの眼に及ぼす影響について…………清水敬一郎・他…407

学会原著

老人性白内障に関する臨床的研究—1.統計的観察

著者: 中枝武豊 ,   黒沢明充 ,   木村重男

ページ範囲:P.397 - P.403

緒言
 老人性白内障は65歳以上の老人の約95%にみとめられるといわれるほど頻度の高い疾患である。それにもかかわらず,成因は現在までほとんど不明である。本症を水晶体老化の延長線上におこるとする考えは,今日一応妥当なものと思われるが,実際には,遺伝,あるいは幾多の環境因子が発病と進行に複雑に絡みあつている。私共は今回老人性白内障の型と進行に影響を与える諸要因を明らかにする目的で,臨床的統計を試みた。成績の一部をここに報告する。

光化学スモッグの眼に及ぼす影響について

著者: 清水敬一郎 ,   原田万里 ,   宮田幹夫 ,   石川哲 ,   溝口勲

ページ範囲:P.407 - P.418

緒言
 ここ数年来,毎年夏になると,気象条件によつては連日にわたり光化学スモッグの発生が報告され,スモッグによる被害は夏の日常的な出来事の一つになつてしまつた感がある。この被害のうちとりわけ頻度の高いものは,眼に関する症状とされているが,その実態はいまだ十分に解明されているとはいえない。そこでわれわれは1974年5月20日より7月19日までの61日間にわたり,連日大気汚染状況を現場にて測定しつつ,世田谷区立八幡中学校において行なわれた,環境庁の"光化学大気汚染による健康影響調査"の眼科部門を担当したのを機会に,疫学的調査,臨床検診,さらにアクロレインガスによる人眼および動物眼の曝露実験の3方面より,光化学スモッグの眼に及ぼす影響の実態,眼障害の本態の解明を試み,①疫学的に眼障害の存在の確認,②臨床検診における涙液pH,リゾチーム活性の低下,および③動物実験において,角膜表層に形態学的な障害の発生を確認したので,ここに報告したい。

弱毒性農薬による角結膜炎について

著者: 藤田邦彦 ,   鈴木弘子 ,   落合富士也

ページ範囲:P.419 - P.423

緒言
 1969年以降,有機りん製剤,有機水銀剤,有機塩素剤等の毒性の強い農薬が使用禁止となつてから,近年使用されている農薬は弱毒性のものが主流を占めている。したがつて最近見られる農薬による障害は,従来のような全身的な重篤症状を呈する症例は少なく,局所障害が大部分である。われわれは,この4年間に12例の農薬による眼障害(角結膜炎)を経験し,その経過を観察しえたので報告する。

硝子体出血膜状混濁切除例の超音波検査成績

著者: 山本由記雄 ,   平野史郎 ,   鏑木ふく代 ,   冨田美智子 ,   岡田栄子 ,   松尾キミ

ページ範囲:P.425 - P.431

緒言
 先年,私どもは,硝子体出血に対する超音波断層法の応用1〜3)により,術式の選択と施行時期の判断を,その感度断層的表現法に求めたが,なお的確性を欠き,患者の心理的不安の除外を意識し過ぎて,手術の成功は見ても,視力的な回復は不可能といつた事例に遭遇することも多く,患者を絶望的な心理に置くことがしばしばであり,この因循性に関して後悔することが多かつた。
 最近になつて,超音波診断技術がにわかに進歩し,眼科的にも,A-modeによる計測の正確性,B-modeの画像の信頼性,これに加えてスキャン・コンバータ7)や,ディジタル式カラー同時断層装置,接触型ハンディ・スカナーの出現があり,さらに探触子の発達のため画像の解析がさらに容易になつてきた。一方,眼部血管の動態の検査の目的で,M-mode8)や超音波Doppler法の応用4〜6)も可能となり,超音波診断技術がかなり多彩となつてきた。

Behçet病に対する免疫抑制療法

著者: 高畠稔 ,   松尾信彦 ,   上野脩幸 ,   山名征三

ページ範囲:P.433 - P.442

緒言
 Beçet病の本態は依然として不明であり,従つてその治療法も未だ確立されていない。われわれは本症の発症機転に何らかの免疫異常が関与していると考え,1968年よりCyclophosphamide(CP),6—mercaptopurine (6MP),Azathioprine(AP)などとステロイドホルモン剤(STH)の維持量との併用投与(以後併用療法と略す)を主として行なつてきた1,2)。免疫抑制療法に関してはRosseletら3),青木ら4),鬼木ら5)の報告がみられるがその成績は一定していない。その要因のもつとも大きなものとして治療対象となつた症例の活動性,年齢,性差などが考えられる。そこで今回これらの有効例と無効例との間に何か他覚的に捉えうる相異点はないか,治療効果を他覚的に判定する事ができないか,と考えて螢光眼底所見を主体として症例の検討を行なつた。また併用療法の比較対照としてSTH維持量単独投与例,免疫抑制剤単独投与例,未治療例も併せ検討したところ興味ある知見がえられたので報告する。

諸種眼疾患における視神経乳頭の螢光造影所見の解析—第2報乳頭の褪色をきたす疾患について

著者: 渡辺千舟 ,   吉原正晴 ,   山地真三郎 ,   山岨三樹

ページ範囲:P.443 - P.449

緒言
 視神経萎縮にみられる乳頭は,原疾患によつて特徴ある所見を示すため,従来からいくつかの型に分けられているが,この相違は主として乳頭部に存在する毛細血管のVascularity減少の様式に関係があると考えられる。
 そこで,血管造影を応用し,最近の乳頭血管構築に関する知見を導入して褪色乳頭の微小循環を観察し,この面から原疾患といかなる関連性があるかを追求するために今回の検討を行なつた。

乳頭血管炎の症例と病理組織学的所見

著者: 谷口慶晃 ,   崎元剛 ,   藤田晋吾

ページ範囲:P.451 - P.457

緒言
 optic disc vasculitis1)などと称される一連の疾患は,若年者の片眼に乳頭浮腫様あるいは中心静脈閉塞症様の所見を呈することで知られている。今回私たちは,乳頭血管炎と思われる軽症と重症の2症例を経験し,螢光眼底撮影にて検査し,特に重症例は眼摘後,病理組織学的検索を行なう機会に恵まれたので,主としてそれらの所見について述べる。

連載 眼科図譜・221

Geographic Choriocapillaropathy

著者: 荻野誠周 ,   田淵保夫 ,   深尾隆三 ,   永田誠

ページ範囲:P.395 - P.396

〔解説〕
 Geographic choroiditisの概念は,これまで全く定かでなかつた。しかし最近choroidal vascular networkの研究やPosterior ciliary artery obstructionあるいはChoriocapillaris ischemiaなどの臨床的知見の増大と相まつて,本症例ならびに類似症例の報告もしばしば誌上にみられるようになり,ようやくclinical entityとして確立せんとしている。Helicoid peripapillar chorioretinal degeneration, Geo—graphic helicoid peripapillary choroidopathy, Subacute posterior multifocalplacoid pigment epitheliopathyさらにAcute retinal pigment epithelitisなどと障害程度が脈絡膜深部にまで及び変化のやや強いものから,障害が表層性で網膜色素上皮層に主として認められる症例群をも含めて,現在なおその異同については様々の考え方が存在することは否めない。しかしいずれも,病変の座がchoriocapillarislevelに存在することは螢光眼底所見上ほぼ明らかとなつてきている。

眼科診療の管理・1【新連載】

1.診療管理の必要性とその内容

著者: 湖崎弘

ページ範囲:P.492 - P.493

 1.眼科診療の現状はどうであろうか。昔から患者数の多い科でもあつたが,さらに最近は老人医療保険の普及で,患者数が多くなり過ぎて困つているというのがおおかたの眼科クリニックの現状であろう。
 次には疾患の変遷のため,感染性疾患が減り視機能障害が主体となる,いわゆるred eye clinicからwhiteeye clinicにうつり変り,診療の主体が検査となつてきた。したがつて診療室の面積の大部分を,検査器械が占めることになり,それにより当然検査員が必要となる。かくして眼科の診療室は患者と器械,検査員とが占領し,広くもないclinicが全く人と物で身動きできなくなつているのが,現在の眼科診療であろう。

教育講演

白内障手術の合併症(硝子体脱出)とその対策—アンケート調査を中心として

著者: 増田義哉

ページ範囲:P.469 - P.480

緒言
 今回の第29回臨床眼科学会では,加藤謙会長の英断により,従来のグループーディスカッションの代りに,この画期的な教育講演が採用され,僭越ながら,白内障グループを代表して,私にこの講演の機会を与えて下さつた加藤会長ならびに白内障グループの世話人の方々に心から感謝いたします。
 ところで,白内障グループ—ディスヵッションでは,基礎と臨床と二つの研究班に分かれていて,その両方を紹介する時間も資格もないので,本日は,演題を少し変更して,「白内障手術の合併症(硝子体脱出)とその対策」として,しかも教育講演の主旨に従い,実地医家の明日からの診療に役立つような話をしたいと思う。

形成眼科の考え方—日本人眼瞼の解剖と形成眼科

著者: 久冨潮

ページ範囲:P.481 - P.489

緒言
 眼瞼の解剖は,古来多くの学者が研究し尽してしまつて,今さら余す所はないように見えるけれども,探してみれば未だはつきりしていない部分も多いものである。現在の日本の解剖の本や眼科の教科書を見ると眼瞼のことは余り詳しく書いてない。多少くわしく書いたものでも,その根拠が不明だし,外国の本をそのまま借りて来て日本人に当てはめてしまつたのではないかと思われるものが多い。そこで,本にあるからといつてそのまま信用するわけには行かないことになる。
 ということは昭和9年広瀬金之助5)が,邦人眼瞼の形態学的知見補遺の緒言に述べているが,40年を経た今日でもそれは余り変つていないので,その意見には全く同感である。

GROUP DISCUSSION

斜視・弱視

著者: 粟屋忍

ページ範囲:P.494 - P.497

 斜視・弱視グループディスカッションは例年日本臨床眼科学会の際に行なわれていたが,今年は第41回目本中部眼科学会のグループディスカッションとして開催された。これはまた第22回日本弱視斜視研究会総会でもある。一般講演11題については,久保田伸枝助教授(帝京大)と馬嶋孝助教授(名市大)が,特別講演については,粟屋忍助教授(名大)が司会した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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